弱さも脆さもときめきも抱えて――
デビュー30周年を迎えたSIONの旅は続く
過去の遺産でも栄光でもなく、今を生きる音楽
『俺の空は此処にある』インタビュー&動画コメント
(2/2)
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これまでは最後に“きっと乗り越えられる”って歌ってた
でも、これは言い切っちゃいけねぇ。分かんねぇぞって
レコーディングでそう歌えなかったんだよ
――タイトル曲の『俺の空は此処にある』(M-9)と、『唄えよ讃えよ』(M-2)に関しては『Naked Tracks』には入っていませんが、そのセレクションの後に書き下ろしたんですか?
「そうそう。『唄えよ讃えよ』は…まぁ、(結婚式で)よくあれだけ泣いて、みんなに祝福されても、しょっちゅう別れるじゃん。最近は3組に1組は別れるんだっけ? あんなに好きだったものが、ちょっとした瞬間に“もうダメだなこれ”って思うときがあるわけじゃん。あとは、自分でコントロール出来んぐらいに惹かれるときってあるじゃない? “うわ、どうして? 俺いい歳して落ちるん?”みたいな(笑)。そういうことと、“あぁ…このままじゃ死ぬに死に切れない”みたいな。これまでは最後に“きっと乗り越えられる”って歌ってたの。でも、これは言い切っちゃいけねぇ。分かんねぇぞって。そりゃ“乗り越えられる!”って言い切った方が聴く分にはまとまりがいいんだけど、ところがね、レコーディングでそう歌えなかったんだよ。だからもう、それはそのままにしたんだけど」
――それがやっぱりSIONさんの2014~2015年のリアルなんでしょうね。そして、それこそ『水色のクレヨン』(M-5)『いつでもどこでも会いたい』(M-6)なんかは、刹那の喜びに怯えるSIONさんが見え隠れするのが(笑)。
「大変だよね。もうさぁ、昔どうやって気持ちを伝えてたのか分かんねぇんだよね(笑)。何とかしたいんだけどさ、出来ない。それこそ口にも出せないんだよ」
――何かキュートだなぁ(笑)。そりゃ人生、生きてりゃいろいろありますもんね。
「ね(笑)」
――そして、このタイトル曲『俺の空は此処にある』はどうやって生まれたんですか?
「何なんだろうなぁ。最近さ、だんだん膝も足首もグニグニしてきて(笑)、あれ~?って。毎日走って身体を鍛えてる人ならいいんだけど、そうでもないし。だけどさ、50代ってまだ年寄りでもねぇぞっていう、微妙なお年頃なんだけど。その辺で何かずーっと思ってたところがあったのかなぁ…。あと、去年は空と川が必要なときがちょっと多くてさ。何だかね、それこそ弱ってたのかもしらんけど。でも、空をボーッて見てて、“何かヘンなオジさんが川の側にいるんですけど”って通報されなくてよかったよ(笑)」
――フフフ(笑)。何でしょうね。空とか川とかって、癒されるというか、気持ちが整理出来るというか。
「ずーっとただただ見てるだけだけど…いいんだよね、何か。あんまり大きい川じゃダメなんだよね。小ちゃい橋が架かってるような」
――この曲をタイトルにしようとなったのは?
「あ、それはね、あそこのテイチクの(笑)(とスタッフを指す)」
――毎回恒例の(笑)。
「時々ね、『東京ノクターン』(‘05)とか自分の中で“あ!”って思うときは自分でタイトルを付けるんだけど、普段はもう何でもありですから(笑)」
許されてきた20代と、ちょっと試された30代
40代辺りからの方が、音楽はちゃんとやり出したような気がする(笑)
――折りしも30周年ということで、この30年を振り返って、みたいなことも聞きたいなとも思うんですけど。
「まぁ、10代でライブハウスで歌ってた頃から考えて、レコードを1枚出せたらもう死んでもいいって思ってたときから、デビューが出来て、30を過ぎても歌ってるなんて考えもしなかったし、“生きてるわけない”ぐらいに思ってたわけで。ヘンな言い方をすると、30を超えたヤツが歌なんか歌ってちゃいけないんじゃないか、嘘じゃねぇかって。そう思ったら、随分と俺は20代の頃は…もしかしたら今もだけど、“許されてきた”んだなぁって。うん、許されてきた20代と、ちょっと試された30代。40代辺りからの方が、音楽はちゃんとやり出したような気がする。何だろう。自分で勝手に残りの人生を数えていくように、折り返しで大袈裟に考えることがあるから、何かケツに火が点いたじゃないけど、それこそ頼まれてもないのに曲を書き出したりしてね(笑)。また、その頃に久しぶりにニューヨーク行ったりして、向こうのみんなに会ったのもあるかもしれない。みんな続けてるっていう」
――さっきのTHE ROOSTERSの話じゃないですけど、30年前を知ってる仲間たちがね、まだやってるっていう。
「『ARABAKI ROCK FEST.15』でも、花田が生誕55周年で“お祝いで歌ってくれないか?”って。でも、“あれ? そう言えば俺もそうじゃねぇか?”って(笑)。でもね、花田とかは普段あんまり会わないから。いつだったかなぁ…アコースティックツアーのリハーサルをしてるとき、花田バンドが隣のスタジオで、“花田! コーラス要らんかねぇ?”って入って行って(笑)。何かね、顔を見ただけで嬉しいんだよね。そういう人って少ないじゃない? (胸の辺りを指して)この辺がね、ホクホクするじゃないけどさ、ほっこりするんよね。あったかい気持ちになる」
――たまたま会ったときに、テンションが上がる相手っていますよね。しかもそういう仲間って、いっぱいるわけじゃないですし。
「そうそう。嬉しいよ、そういうの。MOGAMIのメンバーもそうだし。何かね、嬉しいよ」
――もう音楽を辞めてやる!って思ったことはないですか?
「辞めるときは、天に召されるときだから(笑)」
――アハハハハ!(笑) 最高です!
「この前、フワッとメロディが浮かんだんだけど、それが故・加藤和彦さんの曲で。何でこのメロディが浮かんだろう? あの人はもうこの世にいないんだっけ?って調べてみたら、“創作意欲が全く湧かないから、もう僕には価値がない”みたいに話していたのを見て…。でも、確かに俺からそれがなくなったら、どうやって立っていればいいんだろう?って思った。これっていうものがあるから、きっと頼まれてもないのに続くんだと思う。そして、いろんな想いで“しんどいぞ”って思いながら、正反対の歌がスルッと出来たりする。あの喜びっていうかは、何かもう若いときのセックスみたいな(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「うぉー! 全部出たー!ってね(笑)。曲が出来たときのあの喜びを超えるもんが、なかなかないの。何かね…池畑さんと話してても、“SION、とりあえず1年ずつよ”って。東京オリンピック(‘20)まではぶっ叩いていようってさ(笑)。よっしゃ!って」
『SION-YAON』は、俺と、MOGAMIと、みんなの祭り
――まずは近い目標からということで、今年も恒例の『SION-YAON』がありますが、ちょっと時期が早めですね。
「去年は8月で、真ん中で歌ってる人が気絶しそうになってたからね(笑)」
――確かにやる方も観る方も大変ですから(笑)、気候的には野外が気持ちいい時期かもしれないですね。あそこで観る光景は格別だって言ってましたもんね。
「本当にね、緑があって、ビールがあって、晴れてようが、曇ってようが、鳥が飛んだり、飛行機が飛んでったり。あとね、お客さんがいい顔してるんだ。明るいからさ、割と目が悪くても笑ってる顔が見えるから。結構いい顔してる。俺が見させてもらってる感じ、ライブのときはね」
――以前ステージ脇の席でライブを観させてもらうことがあって、いつもは一番後ろでお客さんの背中越しにステージを観ることが多いんですけど、その日はお客さんの顔が見えて…みんなめちゃくちゃいい顔してたんですよ。それを見たとき、俺がもしステージに立っててみんなにこの顔されたら、もう泣いて歌えないなって思いましたよ(笑)。
「アハハハハ!(笑) いや、嬉しいよね、アレはね。幸せですよ。アンコールとかでメンバー紹介してるときも、もう自分のことのようにウワァーッって喜んでる。俺と、MOGAMIと、みんなの祭りですからね。この1年元気だったかを、確認し合わなきゃいけない(笑)」
――でも、その顔されたら、まだ続けないとダメですね。もう次の曲を書いてるぐらいだから、また近い内に出るんですよね?(笑)
「アハハハハ!(笑) そうだね」
――その再会を、楽しみにしています。本日はありがとうございました!
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2015年6月11日更新)
Check
Movie Comment
胸に残る話し声にもシビれます!
SIONからの貴重な動画コメント
Release
気心知れた仲間たちと作り上げた
グッドヴァイブな今を刻んだ最新作
Album
『俺の空は此処にある』
発売中 2778円(税別)
テイチクエンタテインメント
TECI-1444
<収録曲>
01. ONBORO
02. 唄えよ讃えよ
03. jabujabu
04. けちってる陽だまり
05. 水色のクレヨン
06. いつでもどこでも会いたい
07. 休みたい
08. 人様
09. 俺の空は此処にある
10. 諦めを覚える前の子供みたいに
Profile
シオン…’60年生まれ、山口県出身。’85年に自主制作アルバム『新宿の片隅で』で衝撃的にデビュー。’86年、アルバム『SION』でメジャーデビュー。その独特な声、ビジュアル、楽曲は、日本のミュージックシーンにおいて唯一無二の存在で、多くのアーティストから敬愛されるミュージシャンズ・ミュージシャンであり、ワンアンドオンリーの存在感で輝き続けている。リスペクトしているミュージシャン、俳優、タレントには枚挙にいとまがない。また、長年培った充実したライブには定評があり、高校生から子ども連れの40代まで、年齢、性別を越えた幅広いファンに支持されている。近年は、20~30代を中心とした客層を持つバンドとも積極的に対バンライブを行っている。特に、毎年恒例の日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブは、夏の風物詩として定着している。
SION オフィシャルサイト
http://mars-music.jp/?page_id=13
http://www.interq.or.jp/rock/sion/
Live
SIONの歴史とは切っても切り離せない
年に一度の恒例の宴が今年も!
【東京公演】
『SION-YAON 2015 with THE MOGAMI』
チケット発売中
▼6月14日(日)18:00
日比谷野外大音楽堂
指定席6480円(当日7020円)
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
※雨天決行。高校生以下は当日会場にて1500円返金。要学生証。
Column
後ろに歩くように俺はできていない
くじけそうなとき、今日もSIONの
メッセージと歌声に鼓舞される
絆と時代を刻んだ2年ぶりの作品
『不揃いのステップ』インタビュー
Comment!!
テイチクのまごころプロモーター
村上友菜さんからのコメント!
「私の大好きなアーティストのSIONさん。SIONさんに会うたびに心が和やかになるというか、癒されるというか…。ライブのときはあんなにカッコよく、楽曲の世界観も素敵で、みんなの憧れの兄貴的存在ですが…実はとってもシャイなのです。媒体キャンペーンのときには、女性のDJさんがお相手だと照れちゃって相手が見れないシャイボーイなのです。そんなSIONさんが喫茶店でささっと書いてくださった、通称“おにぎりニャンコ”。ご自身で飼われている愛猫タマゴちゃんがモチーフなのです。人柄を感じますね。SIONさんのビジュアルからは全く想像出来ない、かわいい絵を描くのです。昨年末の大阪・梅田AKASOのライブのとき、上手くいかないことがありしょげていた私に、いろんなことを見透かした様なSIONさんの言葉が胸に響いた。「いろんなたいへんなことがあるけど、頑張り過ぎるなよ。また会おうな」。何だか救われたような気分がして涙が出そうだった。是非6月14日(日)は、日比谷野外大音楽堂へお集まりください」