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5thEP『これから/先生のススメ/good bye』で
彼らは再びバンドとなった――
戦い続けるplentyの“沈黙の3年間”を語る
江沼郁弥(vo&g)&新田紀彰(b)インタビュー&動画コメント

 昨年12月にリリースされた『r e ( construction )』が、とにかく素晴らしかった。過去の自分たちの楽曲をリアレンジしたコンセプトアルバムではあったが、オリジナルアルバム級のすごみを持っていたこの作品。そして、今年1月に間髪入れずに発表された5thEP『これから/先生のススメ/good bye』。動き続ける…そんなパワーが嫌でも伝わってくる。江沼郁弥(vo&g)は『r e ( construction )』で何を感じ、『これから/先生のススメ/good bye』で何を活かそうとしたのか。そんなことを聞いている内に、話は中学時代からの友人で、江沼をバンドに誘い、plentyという屋号を作った新田紀彰(b)との関係性に触れられることになる。“沈黙の3年間”…この時間を経たことで、江沼は再びバンドとして切磋琢磨をしていくことを決意し、新田も全ての想いを素直に江沼ぶつけることで繋がりを確かめ合う。曝け出された内容になったが、ここに憂いはなく、希望しかない。とにかく、江沼は強い言葉を投げかけてくる。本気でしか、伝わらない。是非とも、このインタビューを読んでいただききたい。

 
 
面倒くささを感じるくらい、バンドに戻ろうと思ったんです
 
 
――まず、去年発表した『r e ( construction )』が素晴らしくて。今までの作品をリアレンジするコンセプトとは言え、確実に次へと向かっている気がして。完全にオリジナルアルバムの強さを感じたんです。
 
江沼(vo&g)「グローブ座でストリングスを入れたライブをすることが先に決まっていたんですけど(‘13年12月27,28日)、そのライブ単発だけだと不親切かなと思ったんです。じゃあ、それに伴ったストリングスを入れた作品も出そうと。ただ、実際に作業が始まったら大変で…まぁ、ちまちましたオタク作業は好きだし、1回ぶっ壊して作業するのも好きなんですよね。でも没頭し過ぎて溺れていくので、いつまで経っても終わらない(笑)。それでも過去の自分たちと向き合ういい時間になりました」
 
――その作品もそうだけど、今現在、江沼くんは自分の中の音楽を1人で形に出来るようにもなっている。なのにバンドにこだわって、今回また新しいEPを出してくれたのが嬉しくて。
 
江沼「いろいろなことがあって、“バンドになりたい!”と思うようになったんですね。メンバーが3人いた時代は、弾き語りの状態で曲を持っていって、“光がほとばしるように弾いて!”とか言うんだけど、2人はさっぱり分かっていない(笑)。しょうがないから、その日の作業は終わりにする。だから、1曲にかける時間が本当に長くて…。でも当時のその曲には、ちゃんと3人の“念”が込められていた。人と物を作ることは面倒くさいけど、重要なことだなと」
 
――筋道を立てて、いろいろと考えられるようになったんだね。
 
江沼「だから、『r e ( construction )』でアレンジに溺れたときも、何でなのかと改めて考えたら、全ては“歌のため”だったと気付いたんです。そこに込められた想いを聴いて欲しいから。気持ちよく歌えるアレンジにしようと思ってからは、手こずっていた作業がサクサク進みましたね。『r e ( construction )』に『理由』という曲が入っていて、高校の文化祭のときに作った曲なんですけど、当時は理由なんかなく作っていて。でも、今はいろいろと理由が付き纏うから歌うテンションが決まらなくて、収録出来ないと思ったんです。でも、“歌う理由”があると思って歌えばいいじゃないか、自分勝手でいいじゃないかと思ったら、自然に曲調もワルツに出来ましたね」
 
――『r e ( construction )』という作品が、どれだけバンドにとって大きかったか改めて分かりました。
 
江沼「やっぱり、メンバー間がギスギスしていたんですよ…。まぁ、そうするしかなかった。それは、マイナスではなかったと思うし。中学の頃から一緒にいたメンバーが1人抜けて、新田(b)もいつかいなくなるんじゃないか!?って思うわけですよ。だから、俺がしっかりしなきゃって、出来もしないコンピューターを教わって、ベースも勉強して。ベースは、弦が四本なことに今さら驚きましたけど(笑)。ドラムも打ち込みで勉強したし。でも、新田はその間ボケ~っとフワフワしていたんですよ(笑)」
 
新田(b)「(笑)。3人で2枚のミニアルバムと2枚のEPを出しましたけど、全然違う音楽を聴いていたような3人だから、自分の表現ばっかり押し出そうとしていて。EPを出して少しまとまったと思ったら、ドラムが抜けてしまい…(江沼)郁弥が1人で作るしかなくなって…。そんな風に頑張ってくれてるのを見ていると、気軽に“メシに行こう”とかも誘えなくなって、そうなると連絡もしずらくて…。ヘンな気を使っていたのがよくなかったんです」
 
江沼「俺は俺で自分の世界へ入ってますから…。でも、『r e ( construction )』を作って、振り返ったら、新田がいたんですよ。本当に喋らなくなった時期もあったんです、照れくさいみたいな感じもあったし。“怖い…目が血走ってる”とかも言われてたし(笑)。以前は仲良しこよしでも良かったんだけど、それでは済まないことも増えてきた。だからと言って、ギスギスした感じはヤメにしようと。面倒くささを感じるくらい、バンドに戻ろうと思ったんです」
 
新田「話すきっかけも郁弥からくれて、こっちも怖いと思っていたこと、自分がバンドにいる意味がないと思っていたこともを素直に話して。そして、今回のEPに繋がった感じで」
 
江沼「俺が歌詞を書いてる間に、以前はリズム隊で音を考えられたと思うんです。でも、1人になって、俺とも喋らなくなって、クリックを聴きながらベースを弾くくらいしかなくなって…。そりゃ当然伸び悩むと思うしね。結果、その“沈黙の3年間”は必要な時間でした。今は普通に話せるし、これでよかったんだなと思いますね」
 
 
結局、バンドって生き様をどう見せられるかという
エンタテインメントだと思うんですよ
 
 
――さっき“自分勝手でいいんじゃないか”と思ったという話があって、その上でバンドとしても面倒くさくやっていく…すごい大変な道を選んだなって思うんです。
 
江沼「自分勝手というのは=周りを巻き込まないといけないという意味なんですね。俺が全てを分かってないと、周りも応援しにくくなるので。自分の宇宙を肥大化させて、巻き込んでいく。もちろん、迷惑をかけてはいけないですよ。ただ、巻き込んでいくことは必要だなと思いましたね」
 
新田「俺は郁弥が作る音楽がカッコいいと思っているんです。郁弥の作る音楽を信じているので、それが強みでしたね。“バンド感を出そうよ!”と言われて今回の作業に入って、レコーディングも楽しくて」
 
江沼「ベーシックを一発で録ろうと思ったんです。緊張感も生まれましたし。そうすると、ちゃんと練習をしないといけなくなって。以前只々間違えたらいけないと思っていたのが、今回はいい意味で“間違ってもいいや!”とリラックスして思えるようになりましたね」
 
新田「その感じがバンドっぽくて、すごくおもしろかった」
 
江沼「俺は1人でドリブルで突破出来るタイプじゃないんです。ボーカリストなんですけど、バンドの人だと思うんです。まぁ、そうじゃないといけないとも思うし。本当に新田とはいろいろあって、よく怒ってましたけど(笑)。でも、振り返ればやっぱり相性はいいのかなって。だって、そんな状態でも辞めないで付いてきてましたから。だから、バンドで進むのは自然だったし、これからも歌おうと思っただけですね。結局、バンドって生き様をどう見せられるかというエンタテインメントだと思うんですよ。テクニックも大事ですけど、それだけじゃなくて、何かよく分かんないんだけど、その人たちが出てきただけで泣けちゃう、みたいな。聴いてる人には、生き様を愛してもらいたいなと。例えば、曲が出来ないならそのことを歌っちゃうみたいな。それくらいの方がいいかなって。変にこざっぱりする必要はないし、暗いとか明るいとかも関係なくて、強いかどうかだと思ったんです」
 
新田「だから、今回の作品が出来上がったとき、“いいのが出来たな!”ってとにかく嬉しくて」
 
江沼「いいのが出来ましたよ。バンドになろうと思ってるので、ドラムも正式メンバーを探そうと思ってるんです。サポートの方がいてくれたら、やっぱり上手だから甘えてしまうんですよ。今なら新メンバーも招き入れられるような気がしていて。すごく面倒くさいし、大変だと思うけど、バンドとして乗り越えていくべきなんで。遠回りするくらいが、ちょうといいと思いますよ」
 
――覚悟を感じます、作り手としての。
 
江沼「ずっと同じことを、これからも言い続けるんでしょうね(笑)。25歳のガキンチョなんだけど、人を感動させることが楽に出来るはずがないってことは分かっていたいんです。逃げないで、戦い続けないといけないから。知ってるんだけと、知った上で行動に移すのはまた違いますから。覚悟が必要です、気合も必要です。(新田に)お前が俺を誘ったんだからな! plentyという屋号を付けたのもお前なんだから。逃げられないよ!(笑)」
 
――(笑)。plentyにインタビューしていて毎回思うのは、これだけ強い言葉をもらったんだから、こっちも必死に伝えないとと思うんですよ。
 
江沼「そういう意味では、取材してくれる人たちもチームなんですよ。それはさっき言った、“巻き込んでいく”ということなんですけど。俺が何を思ってるかを聞いてもらって、記事にしてもらって、それが多くの人に伝わる。もう全員野球です(笑)。俺は音楽を作ることしかやりませんよ…っていうのは筋が通ってない。曲作りも取材も、その他のことも、バンドに関わることは、全部同じテンションでやりたいんです。そうしたら、この念がマジなことが伝わるので。本気じゃないと、絶対に無理ですから」
 
 
Text by 鈴木敦史



(2014年3月20日更新)


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Movie Comment

バンドへの想いと大阪でのエピソード
をいい空気感で語る動画コメント!

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Release

丹念に想いと決意を積み上げる
強く美しきポップミュージック

Single
『これから/先生のススメ/good bye』
発売中 1000円
headphone music label
XQFQ-1211

<収録曲>
01. これから
02. 先生のススメ
03. good bye

Profile

プレンティ…写真左より、江沼郁弥(vo&g)、’88年9月24日生まれ。新田紀彰(b)、’88年4月8日生まれ。’04年茨城にて結成。’08年末、『COUNTDOWN JAPAN 08/09』に一般公募枠で出演。’09年、1stミニアルバム『拝啓。皆さま』を、翌’10年には2ndミニアルバム『理想的なボクの世界』を発表。’11年は2枚のEP『人との距離のはかりかた/最近どうなの?/人間そっくり』『待ち合わせの途中/終わりない何処かへ/空が笑ってる』をリリース後、ドラマーが脱退。さらには楽曲からインスパイアされた映像作品をパックしたSound Film Track『あいという』と、ストイックに作品を発表し続けた。’12年には集大成とも言える1stフルアルバム『plenty』に加え、3rd EP『傾いた空/能天気日和/ひとつ、さよなら』4th EP『「ACTOR / DRIP / ETERNAL』を立て続けにリリース。’13年には2ndフルアルバム『this』、コンセプトアルバム『r e ( construction )』を発表し、次なるplentyを感じさせた。現在は、’14年1月29日にリリースした5thEP『これから/先生のススメ/good bye』を引っ提げ、『plenty 2014年 春 ワンマンツアー』を開催中。

plenty オフィシャルサイト
http://www.plenty-web.net/


Live

ツアーも残すはZepp東名阪!
大阪公演が間もなく開催へ

Pick Up!!

【大阪公演】

『plenty 2014年 春 ワンマンツアー』
チケット発売中 Pコード217-090
▼3月22日(土)18:00
Zepp Namba(OSAKA)
1Fスタンディング3500円
キョードーインフォメーション■06(7732)8888
※6歳未満は入場不可。

【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード216-820
▼3月23日(日)17:00
Zepp Nagoya
1Fスタンディング3500円
2F指定3500円
サンデーフォークプロモーション■052(320)9100
※6歳未満は入場不可。

【東京公演】
チケット発売中 Pコード217-197
▼3月29日(土)18:00
Zepp Tokyo
スタンディング3500円
ディスクガレージ■050(5533)0888
※6歳未満は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

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