――喋って……といえば、今季途中からガンバに加わったロチャ選手に宇佐美くんから声をかけている姿を見て成長したなって勝手に思っていて。それはドイツに行ったからこその変化ですか？

｢そうですね。あと、喋れるから。アジ(ロチャ)に関しては通訳がいますけど、いちばんは通訳なしでみんなとコミュニケーションを取れるようになれるのが一番いい。やっぱり通訳を挟むとその人のトーンとか熱がしっかり伝わらないんですよね。会話にはなりますけど、その人の人格だったり、熱意とかは直接しゃべらないと分からないところがあるじゃないですか。オレがドイツに居た時に、第一言語じゃなくても通訳を挟まんでも喋れる存在が居たら大きかったと思う。だから、アジに対してそういう苦しみをなんとかしてあげれたらなって思いましたね。ドイツ語が話せるって聞いた時に。オレがそうやって苦労した分、同じ苦労をさせないように。さすがに自分が苦労して、同じ苦労を人にさせようと思うほど、性格は悪くないし。性格は曲がっているし、ひねくれているけど(苦笑)。サポートして馴染ませて上げようっていうのはなかったですけど、ガンバで助けてあげられるのがオレしかいなかったら、多少喋ってリラックスする時間になればいいなって思っていたくらいですけどね｣

――そういう想いがあったのですね。そういう姿を見てチームメイトはびっくりしてた？

｢いや、どっちかっていうと、ドイツ語を喋っているオレにびっくりしていました。『あいつ喋れるようになったんや～。日本語もろくに喋られへんかった奴が！』って(笑)。ドイツ語って耳馴染みがないじゃないですか。日本人にとっては未知の言語やから、『すごい言葉を喋っているじゃないか。通じるもんやね』って。だから、コミュニケーションを取っているっていうよりはそっちにビックリしていると思います｣

――あはは(笑)。コミュニケーションをとるのも得意ではなかったような……？

｢はい。インドアやったし、外からの刺激が嫌いやったから。オフはずっと家にいて、家で出来ることをするみたいな。でも、ドイツに行ってから、テレビとかパソコンで音楽とか、マンガ、ゲームとか、その趣味が一切なくなりましたね。あっちの人は、できるだけ外に出て何かを取り込もうとするんですね。外に出ないと……みたいな。オフは家族で絶対にどこか出掛けたりする環境にいくとそうなるし、日本に帰ってきてもそうですね。疲れない程度に出ています｣

――そうなんだ。宇佐美くんのほかの変化については、ジュニアユースから一緒の大森くんに訊いたら分かりますか？

「多分。でも、あいつはチョケ(ふざけ)て答えると思います。香水の匂いがきつくなったとか、身体の毛を剃るようになったとか。そういうことしか言わないと思います。そんな深い話が出来るやつじゃないんで(笑)。コミュニケーションを取れるようになったとか、アジに対して気を使って……とか言える奴じゃない(笑)。ましてや、それを感じられる奴でもない(笑)。野性的やし、本能で生きているから。そういうところがいいんですけどね。オレも好きやし、面白いからいいけど｣

――本当に仲が良いんですね(笑)。
ガンバに戻ってきて、宇佐美くんから“結果”っていう言葉をよく聞くようになったなと。

｢そこしかいらいないですよね。チームの動きというか、チームがバランスよく回るようにとか、周りの選手を生かしたりっていうプレーも自分の持ち味でもあるのでそれもやらないといけないですけど、やっぱり数字だと思います。どれだけ記憶に残るゴールを取れるかっていうところだと思うので。そこに尽きるっていう感じです｣

――ガンバは結果を残して当たり前と思われている節もあると思います。

｢毎試合、毎試合勝てるほど甘いリーグでもないし、対ガンバでこられたりとかするし。多少の難しさはありますけど、そんなのは言っていられないので。それに勝っていかないと。相手を崩して点を獲るのがガンバやと思うし、そういうガンバにしていきたいです｣

――初のJ2になりますが、J1との差は感じますか？

｢全てにおいてJ1のが上かなとは思いますけど、ガンバとやる時はサポーターもすごいし、オレらに対してもガンバ対策で引いて守ってきたりとかするから難しさがあって。ただ、攻撃の面でいうと、そういうものを崩して点を取っているから、J1より良い環境でやっているかなって感じですね。死ぬ気で守ってくるというか、くらいついてくるというか。点を取られないようにしようとブロックを作って、引いて、引いて……っていうのはJ1ではないんじゃないですか。そういうのを崩すためには、よりアイデアも必要になるし、運動量も必要やしっていう気がします｣

――そうですね。あと前に、長谷川監督に新しいところを引き出してもらっていると言っていましたが……

｢前はサイドアタッカーっていう感じやったし、西野さんのときも2トップの一角のストライカーっていう感じやったんですけど、そのどれでもないような役割をいい意味で与えてもらっているというか、自然にそうなっているのを許してもらっている感じですね。逆にいえば、それで責任も重くなるし、勝たせないといけないし、結果をださないといけないし……というので、プライドや危機感も生まれています。あと、こういうことも出来たやんっていうのがみつけられたのもある｣

――こういうことっていうのは？

｢前でポストプレーをしたりとか、裏に抜けてシュートを打ちにいったりとか、ボランチまでひいてロングパス１本入れたりとか、パス交換の中に入っていってとか、全部ですね。いまはドリブラーでもなく、パサーでもなく、ストライカーでもなく、司令塔でもなくって感じです。でも逆にいえばドリブラーであり、パサーであり、ストライカーであり司令塔でもあり――みたいなのが理想やし、そういうポジションを任せてもらっている気がしますね。(監督からは)そういう感じでやれとも言われてないですけど、中2のときにそういうスタイルでやっていて。それを前のポジションに入った段階で意識しだしてやったらけっこうハマりだしたんで、自分の向かうべきプレースタイルはここなんやなって思いましたね。サイドアタッカーをやっていたときよりも、2トップの一角としてやっていた時よりも充実感もあるし、サッカーも楽しいし、よりイメージが膨らんでいくっていうか。ここやなっていう感じはあります｣

――ガンバに戻って見つけた、と？

｢見つけてもらえたっていう感じです｣

――なるほど。さて、リーグ戦も残りわずかになりました。ガンバがJ1昇格、J2で優勝するためには何が必要ですか？

｢勝ち越したら点を取られないようにするとか、先制点を取って主導権を握るとか色々ありますけど、でも先に3点取られても4点を取ったら勝点3がつくわけで。最終勝てばいいんで。そういうところにこだわっていかないとチームとして成長しないというのはあるんで。もちろん監督が言っている先制点を絶対に取らせないとか、追加点を簡単に与えないとか、安定観のある試合をしようとかありますけど、勝てばいい。常勝軍団になっていかないといけないし、ねじ伏せて勝てばそれが正解だと思います｣

――最後に、サッカー選手としての目標を教えてください。

｢ガンバでタイトルを獲りたいのと、もう１回ビッグクラブに行きたいです。いくためにガンバでやっているわけじゃないですけど、もう１回ビッグクラブでやりたいです。もう１回行って、あのときは違うなっていう感じでサッカーをやりたいです｣

 

【おまけ】 ジュニアユースから一緒の大森くんに、宇佐美くんの変化について訊いてみました。 ちゃんと答えてくれましたよ！ 大森｢ずっと見てきているんで。あいつもやっぱり上を向いてやっているんで、自分が一番じゃないなっていうのは分かっているとは思うし、だからこそ天狗になることはなくて、練習からきっちりやる。そういうところはあいつのすごいところじゃないですかね。(ドイツに行っての変化は？)筋トレをよくするようになりました。もう毎日筋トレをしています。昔はけっこう早く帰る奴やったし、遅く練習にくる奴だったのが、今は早く来て身体のケアをしたりとか。人より遅くまで残って筋トレしているのを見て、やっぱり変わったなって思います」

 

（取材・文　金子裕希）

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（9月27日更新）