ホーム > インタビュー&レポート > 「会おうぜ、また『蜜フェス』で! 俺たちの秘密基地!」 Bye-Bye-Handの方程式、2日間にわたる主催フェスの先に 見えたもの 『秘密蜂蜜FES-2025』DAY2レポート
熱狂のDAY1を終えて迎えたDAY2。心斎橋BIGCATにはやはり高揚感が漂っていた。会場の装飾も昨年よりパワーアップ。会場入口のガラス扉はイベントロゴ入りの黄色い布で彩られ、ロビーにはフォトスペースをはじめ、バイハンのメンバーとチームがDIYで用意した案内板やフォトプロップスが用意されていた。また、ドリンクカウンターではオリジナルドリンクも限定販売。
フロアに設置されたサブステージ・Secret STAGEの上にはキラキラの電飾やガーランドのほかに『蜜フェス』のバックドロップが飾られ、メインのHoney STAGEには天井まで届くほど巨大な2025 ver.のバックドロップが吊られていた。フロアを埋め尽くしたオーディエンスは、Tシャツやタオルを身につけて準備万端で開演を待つ。
開演5分前、バイハンの汐田、岩橋茅津(g)、中村龍人(b)、清弘陽哉(ds)がHoney STAGEに登場して前説を行う。「1日目を超えるDAY2を作りたいと思うんですけど調子どうですか〜!」と盛り上げ、「『秘密蜂蜜フェス』DAY2始めます!」と開幕宣言。ライブは昨年同様、メインのHoney STAGEとサブのSecret STAGEで交互に行われた。
【Arakezuri】
"トッパーを任せられる奴は限られている"と汐田が話していたが、DAY2のトッパーを担ったのは、昨年サブステージのトリ前をつとめた滋賀県発のArakezuri。FM802 DJ 樋口大喜による蜜フェスのジングルとバンドSEが流れ、晴れやかな表情でステージに登場した白井竣馬(vo)は「トッパーは俺たちしかおらんって任せてもらいました。初っ端からクライマックスの気持ちでやりに来た! あんたのヒーローになりに来た!」と『ヒーロー』を投下すると、いきなり拳が突き上がり大音声のシンガロングが発生。「俺たちがバイハンのヒーロー、Arakezuriだよろしく!」と叫んでギアを入れると同時にダイバーが転がりまくり、『ウルトラエール』では石坂亮輔 (g)がステージダイブを繰り返す。のっけからこの熱量。何と壮観だろう。『クアトリーセンチュリー』では白井が「俺を連れてってくれよ!」とオーディエンスの上に乗ると、あっという間にSecret STAGEに運ばれそこで歌う。次にサブに出演する猫背のネイビーセゾンのファンを気遣いつつ、歩いてメインに帰還した白井は「楽しい(笑)」と心からの笑顔を浮かべた。"バイハンのために"という想いがあふれ出し、宇野智紀(b)と椿佑輔(ds)の演奏にも熱がこもる。中盤で披露された『蕾』や『たいせつ』は、バイハンに贈るエールのように優しく響き渡った。
「きっとこれから、俺たち何か躓くねん。そんな時誰かが横にいてくれて、今日まで起き上がってきたはずやねん。だから絶対大丈夫(白井)」と言葉を添えた『だめでもともと』では、「これからも『蜜フェス』が続けばいいな」と願い「今日バイハンがあんたを頼りにしてる!」と、全員で『蜜フェス』を盛り上げようと巻き込んでいく。最後は『キーホルダー』で熱く眩しく突き抜けた。Arakezuriのくれる言葉はおまじないのようだ。"あんたの味方だ"、"大丈夫"と全面的に肯定し「背中は任せとけ!」と見守ってくれる。そんなArakezuriが「ライブハウスは音楽はロックバンドは、俺たちの傍にいてくれる!」と言うのだから、今日の『蜜フェス』も大丈夫、最高だと思える。DAY2を勢いづけてほしいという想いもあると思うが、もしかしたらバイハンのメンバーもArakezuriの音楽と言葉で安心したかったのだろうか。そんなことを思う、頼もしくてあたたかいライブだった。
Text by ERI KUBOTA
Photo by かい
【猫背のネイビーセゾン】
Secret STAGEのトッパーは、BIGCATに立つのは『十代白書』ぶりという、"神戸、夜を彩るネオンロックバンド"こと、猫背のネイビーセゾン。Arakezuriを観て「カッコ良すぎるわ!」と興奮した様子でリハをしていた4人は「俺らは違う角度でやるぞ!」と気合い十分。石坂圭介(ds)のビートが心地良く走ると同時に、井上直也(vo&g)は「さぁさぁさぁ、『秘密蜂蜜フェス』調子はどうだい!」と絶好調で煽り、キラーチューン『kimiOS』からぐんぐんアゲていく。佇まいはクールながら、目を輝かせて歌う井上に『蜜フェス』という舞台で良い化学反応が起きていることがよくわかる。おかともき(b&cho)と横山大成(g)も前に出てフロアと距離を近づけ、中毒性のあるダンスチューン『Demonize』でパーティー感を醸し出した。
井上は「バイハンはワクワクドキドキを俺らに提供してくれるやん。俺は『風街突風倶楽部』が超大好きなんですけど、イントロからガシって心掴まれるやん。バイハンはすげえ尊敬する存在やし、エンタメの塊で、自分たちの心に火をつけてケツを蹴ってくれる存在。そんな関西のバンドマンが周りにいて、我々を誘ってくれるのが嬉しい」と愛を口にして「あのメインステージに立つことは蜂蜜のように甘い道のりではないと思ってるけど、次は誰も秘密にできないぐらいデカくなって、メインステージに帰ってきます!」とライブを見守るバイハンに向けて力強く宣言した。後半は彼らの世界観を存分に表現する『ごく身近な監獄』『偽り切ないな』『DANDANDANCE』で華やかに着地。バイハンへの愛をこれでもかと伝えながら、パンクさもキャッチーさもあざとさも演奏力も兼ね備えた新世代サウンドで自分たちの実力を提示して、昼のBIGCATを彩った。
Text by ERI KUBOTA
Photo by マスダユウタ
【ammo】
続いては2年連続出演のammo。暗転したステージで岡本優星(vo&g)が静かにギターを鳴らし空気を醸成していく。真っ直ぐに『CAUTION』を届けると、「Orange Owl Records所属、大阪ammo始めます!」の言葉から川原創馬(b&cho)と北出大洋(ds)が荒々しくビートを繰り出し『突風』を投下。もちろんフロアはダイバー続出で大騒ぎ。「今日は休憩なしでいきたいんですけど大丈夫ですか!」という言葉でさらに会場に火を点け、『星とオレンジ』『SHI'NE』『これっきり』とパンクナンバーを連投してものすごい熱狂を巻き起こす。
岡本は「俺たちがバイハンの1番の親友、大阪ammoだよろしく!」と叫び、「去年は言えなかったことがある。6年前、ここから数百m先、俺たちのホーム・心斎橋BRONZEで出会った同じ年のバンドがバイハンでした。たった数百メートルだけど、6年かけて(BIGCATに)来た! ただの数百メートルか?ちげえ。俺たちが"カッコ良い"で繋いできたバトンだろ。俺たちが今日やれること、2年目だから言えること。なぁ『蜜フェス』! BIGCATは小さくねえか!? 俺は今日、バイハンの、あなたたちの、来年のための背中ぶん殴りに来た!」と『フロントライン』を力の限り叩き込む。「この数百メートルを本気で走ってきたから今日がある!」と岡本が言うように、大阪のバンドマンの聖地であるBIGCATへの道のりは決して容易ではない。バイハンとammoはデビューやメジャーデビューの時期が同じだ。「炎上する時期も被っちゃったねってあいつ(泰輝)は笑ってたけど、俺は知ってる。眠れなかった夜がきっとある。自分が自分でいられなくなったステージがきっとある。だから俺なりの応援歌を歌いたい(岡本)」と『身体一つ、恐怖断つ。』を言葉を置くように優しく奏でた。同い年の友達だから分かり合える想いを歌に込め、ラストの『歌種』では<誰も描けない かけがえのない 秘密を残し続けたい>とメッセージを贈る。最後まで熱を宿した30分。ステージを去る岡本が優しい顔で『蜜フェス』のタオルを大切そうに掲げたのが印象的だった。袖では汐田とハグをする姿も。友情が見える時間だった。
Text by ERI KUBOTA
Photo by 烈
【Re:name】
結成当初からの旧友ながら、音楽性の違いからなかなかバイハンと交わることがなかったRe:nameは、『蜜フェス』における"カオス担当"として汐田に誘われた。「このフロア、クラブに変えましょう!」と高木一成(vo&g)が高らかに放ち、「『蜜フェス』やろうか!」と『BABY BOY』からライブをスタート。オートチューンを使いつつも、透明感のある高木の歌声ととびきり爽やかなメロディラインを飛ばしていく。初見の人も多いであろう中、フロアはしっかり手を上げて応える。続きヤマケン(ds)のタイトなビートとSoma(g)のグルーヴが気持ち良い『People』、ポップパンクチューン『Living Fool』を疾走感たっぷりに響かせる。英語詞も交えた洋楽ライクなサウンドメイクとボーカルは『蜜フェス』では異色かもしれないが、自信と軸を持って堂々とステージに立つRe:nameのパフォーマンスは驚くほどカッコ良く、見る者を惹きつける。
高木は「最高の景色が見えてます。我々はバイハンと同い年、同じ地元、1番歴の長い友達で、かつ当時と全く違う音楽性をしてるがゆえに浮いてる感じになってるんですが、皆さんの熱量ですごく安心してます。バイハンが僕らを呼んでくれた意味に応えるのは、フロアをあっためて皆を笑顔にすることだと思ってるので、僕らの音楽を鳴らして帰ります」と述べ、同期も使って『Magic Hour』をグルーヴィーかつ美しく響かせた。
嬉しそうな高木は「これだけのフェスができるのはすごいことだなと、MBTIでI側の俺たちはすごく思う(笑)。バイハンが本当に愛されてるのは、身に沁みて感じてる。高校1年生の時からずっとお互いの姿を見て、刺激を受け合ってきた仲間です。『蜜フェス』2daysが実現してることが本当に誇らしい」と絶賛し、「今日帰る時、君たちのプレイリストに入ってたら俺たちの勝ちですから!」と『Saturday, Sunday.』、FM802ヘビロにもなった『prettyfine :)』で軽やかに満たしていく。ラストは『24/7』。<2・4・7!>の手の振付にすぐさま順応したフロアと一体感を作り出した。今年結成9周年、自身のワンマンツアーを終えたばかりで脂の乗った状態が伝わるライブで会場を魅了したRe:nameだった。
Text by ERI KUBOTA
Photo by かい
【reGretGirl】
続いてはバイハンのレーベルの先輩・reGretGirl。平部雅洋(vo&g)は「ここにおる全員、可愛い!」と叫び『KAWAII』をドロップ。前田将司 (ds)の軽快なリズムとハイトーンボイスで、フロアは楽しそうに身体を揺らす。続けて「この曲は泰輝がやれという圧をかけた曲なんよ」と久々にプレイするという恋愛ソング『インスタント』をロックにかっ飛ばした。
事前の紹介動画で汐田が平部を呼び捨てにしていたことも相まって、フロアから「平部ー!」と声が飛び「何や。ありがとう」と気さくに応える平部。「(バイハンは)可愛い後輩ではあるねんけど、熱い男たちやから絡むと燃えるやん。でも日頃"兄さん"みたいに慕ってくれるし、そういうところが僕の熱いハートに火をつけたので、今日は炎上させて帰ります。一緒に痺れるような恋に落ちよう」と詞の情景が浮かぶ『純ラブ』をパワフルにプレイ。前に出た十九川宗裕(b)と平部は疾走感を増して楽器をかき鳴らした。そして「『蜜フェス』のために、reGretGirlで1番美しい歌を歌います」と春にぴったりの『スプリング』で、柔らかくもあたたかく会場を満たしていった。
「地元愛が強すぎて、大阪ではめっちゃ良いライブするんですよ」と誇らしげに手応えを口にする平部。大阪時代を含めて「下積みを経験してきたから、大きいハコでライブすると思うことがある」と話す。「今日は可愛い後輩のために、ひと肌脱ぐという言い方は偉そうかもしれへんけど、そのつもりで大阪の先輩としてここに来ました。愛すべき大阪ででっかい声で一緒に歌いたいねん」と投下された『ホワイトアウト』で特大のシンガロングを発生、さらに「大きな愛で包み込むから大きな愛で返してくれ!」と『soak』を豪速球で投げつけた。とにかく包容力あふれる優しい時間だった。
Text by ERI KUBOTA
Photo by 烈
【the奥歯's】
リハから攻撃的なパンクロックでフロアをガンガンに揺らし、本番さながらの熱狂を巻き起こしたのは、広島発のthe奥歯's。次に登場するbokula.も同郷ということで、アサベシュント(g&vo)はリハを終えて「やべえ、今日めちゃくちゃ楽しいわ! 今から広島時間。自分らしく自分のままで、ライブをやりたいと思います」とのんびりファンと交流する。実の兄であるアサベハルマ(b&vo)にツッコまれる場面もありながら、板付で本番へ。「ザ・奥歯's」と紹介されたジングルを「ジ・奥歯'sです」と訂正し、ミドルナンバー『鈴鳴メモリーズ』からライブをスタートした。
アサべ兄弟のツインボーカルに重ねて、フロアはいきなり大合唱。ジン(ds&cho)のビートが加速した『初期衝動継続時間』からは爆裂サウンドを解き放つ。「俺やべー奴だから、俺のやべーのについてこいよ!(シュント)」と叫び、『トラッシュシャワー』『羊が好きな君』『男子中学三年生』『夏休み』とノンストップで楽曲を連投。爆音に抗えない衝動がフロアに広がっていく。サブステージはダイバーを逃すスペースがないため、ダイバーは前までいくとそのままの姿勢でまたフロアに戻される。そんなカオスな状況も瞬く間に歓喜の渦へと昇華していくのはさすがだ。
「バイハンありがとう! めちゃくちゃ良いバンドばっかり。とんでもないイベントになってください。なってます。何かに縋りたくなった時、音楽が関わってくれてたら良い。僕は今日そんなふうに思いました。このフェスが今楽しいと思ってるならどうか持ち帰って、できるだけ忘れないようにしてくれたらいいと思ってます」と披露された『ハニーハニー』では「バイハンにプレゼント、受け取ってくれよ!」と<シャララ>のシンガロング。最後に『おやすみせかい』を全力投球した。アウトロでブレイクを挟むと「良いこと思いついた。ジャーンってやるから、bokula.の方を向こう(シュント)」と、フロア全員でなぜかメインステージでリハ中のbokula.の方を向く。困惑するメンバーに「お前らそれで終わり?」と聞かれたシュントは「広島をお願いします!」と叫び、bokula.にバトンタッチした。
Text by ERI KUBOTA
Photo by マスダユウタ
【bokula.】
the奥歯'sに不思議なバトンを渡されたbokula.。昨年TRACK15が出演キャンセルになった時、えい(vo&g)が汐田に電話をしたことから、DAY1のBlue Mashとbokula.には恩をもらったと汐田は語る。えいは「去年泰輝さんに"絶対に呼ぶ"と言われた約束、今日は守ってくれました。俺たちも全力で応えたいと思います」と述べ『愛すべきミュージック』を奏で始める。1人残らず拳を上げてひとつになったフロア。音楽の元に集まった仲間たちに惜しみない愛を届けると、勢いを増して『溢れる、溢れる』を演奏! ふじいしゅんすけ(ds)のパワフルビート、かじ(g)とさとぴー(b)が弾くエッジーな音の塊は大迫力。間髪入れず叩き込まれた『愛わない』『満月じゃん。』でダイバーが続出。耳をつんざく轟音でフロアをド派手にかき混ぜる。
えいは「今日はどのバンドもキラキラした気持ちを持ってると思うけど、俺たちは君たちがこれから先、このバンドがいればカッコ良くあれるんじゃないかという、宝探しみたいな日になれば良いなと思ってライブさせてもらいます。花を満開にさせる準備段階でありたいけど、やっぱりどこかで負けたくないなと思ったり。今日は少しだけハメ外させてください」とバイハンへの良きライバル心も覗かせて、アンセム『愛してやまない一生を.』を披露した。間奏では、えいとかじがお立ち台でギターを背弾きするパフォーマンスも。4人の想いに応えるように、フロアも熱を宿して食らいつく。
その後も勢いは緩めず、低音グルーヴがヒリヒリする『怪火』、さとぴーが華麗なダイブをキメたイントロの高速ギターユニゾンがたまらない『夏の迷惑』を投下。フロアとのシンクロ率もますます上昇していった。えいは「bokula.を始める前からバイハンを知っていて、ずっと怖い先輩だと思ってて。こういう関係になれてめちゃくちゃ嬉しいです。今日一緒にやれてるバンドも俺からしたら青春の1ページ。俺が言うのも何ですけど、バイハン、カッコ良いロックバンドと音楽に出会ってくれてありがとうございます!」と命を燃やすように『FUSION』を鳴らし、最後は希望の唄『高鳴り』で思い切りエモーショナルに締め括る。情熱的なライブでバイハンとの関係を深めたbokula.だった。
Text by ERI KUBOTA
Photo by かい
【the paddles】
Secret STAGEのトリは昨年同ステージのトッパーを担ったthe paddles。柄須賀皇司(vo&g)が「これだけは胸張って言います! バイハンの1番の友達、the paddlesです!」と叫び、アカペラとコーラスから「もっとこっち来いよ!」と勢いをつけて『25歳』をロックに響かせる。続けて「Arakezuriがつけてくれた"蕾"、皆で咲かせようぜ!」と1日の流れを汲んだMCも交えて『花』を投下。<咲く 咲く>では、手で花を開く振付でフロアに満開の花と笑顔が咲き誇った。松嶋航大(b)のベースラインと渡邊剣人(ds)の四つ打ちビートに身体を揺らされたキレキレの『WARNING!』、クラップが爽快に響いた『倦怠モラトリアム』でなおも熱を上げていく。
柄須賀はバイハンについて「泰輝は僕のこと何でも知ってます。茅津は何時に呼び出しても飲みに来てくれます。龍人は打ち上げ終わった後に俺をロードスターの助手席に乗せてくれます。陽哉は......ドラムを叩いてるよね〜」とオチを作って大爆笑をさらい、「今日の僕の1番のハイライトが、Re:nameの『24/7』の振付をammoのタオルかけてる方がやってたのが、マジで『蜜フェス』やる意味あるなって思いました」と笑顔を見せる。「ここだけの秘密を、僕たちで来年も再来年も、10年も20年先も作っていきたいなって、俺、心の底から思ってます」と主催さながらの強い想いを伝えると、下を向いてモードを切り替え、ミドルナンバー『予測変換から消えても』を丁寧に歌い上げた。
『ブルーベリーデイズ』の前に柄須賀は「いろんなバンドのボーカルが今日への想いを吐いてるのを見て、"やっぱり皆一緒やったな"と思ったのは、とても単純で、愛を伝えること。これが今日1番バンドがバイハンにやってあげられること。愛はどんな形であれ伝えないといけないと思う。それが例えばこんな不器用な歌だったとしても」と言葉を添えてグッドメロディーを響かせ、最後は「バイハンにでっかい愛の塊ぶつけるぞー!」と『愛の塊』を大切そうに歌い上げた。後半は音を止めて、メインステージにいるバイハンに向けてとびきりのシンガロング。とても美しくあたたかな光景で、これも間違いなくこの日のハイライトのひとつだった。「次はメインステージで会いましょう」と野心も燃やし、最高の愛のバトンを渡したthe paddlesだった。
Text by ERI KUBOTA
Photo by マスダユウタ
【Bye-Bye-Handの方程式】
いよいよこの時がやって来た。2daysの大トリ、我らがBye-Bye-Handの方程式。DAY2もArakezuriからthe paddlesまで、全バンドがそれぞれの言葉と音楽でバイハンへの愛を伝えてきた。皆がバイハンの1番になりたがる、これほどまでに愛されているバンドであることは素晴らしいが、確かに受け取る側の重みは相当なものだろう。
音出しレベルどころではないほどの熱いリハを終えて、汐田は「楽しかったか? 2日間、最後まで誰も欠けることなくやれたこと嬉しいです。最初に言っときます。ありがとうございます。嫌でも終わっちゃうんで、最後の最後までよろしくお願いします!」と述べて一度ステージを後にする。
ジングルとSEが流れ、赤く染まったステージにメンバーが登場。ジャーン! と音を出して前に出た汐田、岩橋、中村がフロアを見つめる。その眼差しは鋭く、少しの緊張感が感じられる。汐田が「BIGCATー! もっと来い!! 大トリ、大阪豊中、Bye-Bye-Handの方程式です!」と叫び『ラブドール』を歌い始めるも、一度間を置いて汐田は「ライブハウスは無音も音楽になる!」と緩急をつけ、挑むような目つきで一気に加速! 早速発生したダイバーに岩橋と中村は笑顔を見せる。とてつもないエネルギーで放たれた『風街突風倶楽部』では中村がダイブ! さらに『タヒ神サマ』『閃光配信』『風鈴』と、とにかく真っ直ぐに音楽をぶつけていく。岩橋は床に寝転び、中村は咆哮&開脚して楽器をかき鳴らし、清弘は重厚な高速ビートを全身で放ち、汐田は叫ぶように歌声を前に飛ばす。昨年と違う空気を纏う4人の本気が、痛いほど伝わってきた。
汐田は「どんな気持ちで2日目を迎えるんだろうと思って」と昨夜を振り返る。「昨日も当たり前に誰一人手加減せず、いつも以上のライブを観せてくれた最高の日だったけど、俺たちが主催するからには、1日目を超えないと2日目をやる意味がないなと思って。自分の中で不安な気持ちも若干あったけど、Arakezuriを観て"今日は問題ないな"と。心配せずに預けて、皆のライブを観ることができました」と感謝を述べる。「俺が今日思ったのは、結局音楽のジャンルも俺が勝手に思ってただけで、俺の"好き"ひとつで何かに繋がる糸があるんだって。それは凧糸みたいに細い糸じゃなくて、輪ゴムみたいにビヨーンって伸びてパチーンってちぎれる糸じゃなくて、むちゃくちゃ太い手綱。その音楽を身体全体で浴びれて、皆と共有できて本当に楽しかったです。ありがとう!」と早口で感情を乗せて『midnight parade』へ。<言葉より先に行動で示したいのさ>という歌詞に覚悟が滲むようだ。汐田の想いに高まったファンは前へと詰めかけ、クラップとシンガロングで一層ひとつに。さらに密度を増して最新曲『ウルトラ面』、アンセム『darling rolling』とアッパーチューンを豪速球で駆け抜けた。
昨年の『蜜フェス』で初解禁された『春のチャンス』を爽やかに演奏した後、「俺たちにとっては大舞台のBIGCATでこの曲を歌うのは、何となく今日が最後の気がする。だからしっかり聴いてほしい」と、17歳の頃に作り『十代白書』で歌った『湿恋』を優しく紡ぐ。「この曲で何か変わると思った! そこから8年が経った!」と叫ぶ汐田。主催フェス初の2days大トリを迎え、仲間との強固な繋がりと愛を実感し、BIGCATと自分たちの歩みを振り返る。10年間がむしゃらに走り続け、手にしたもの、できなかったもの。ステージに立ちながら、汐田は"今自分から湧き出ること"に意識を向けていた。
ギターをつま弾きながら汐田が話し始める。「俺にとって未知の2日目。今日も変わらず好き勝手に愛を投げつけられて、愛を受け取めきれなくて、全部返しきれなくて、40分じゃ物足りなくて、また愛を返しに行く旅がここから始まるんだなって思います。『蜜フェス』はBIGCATは小さすぎないかって、ケツをしばかれました。だけど正直なところ、俺にはまだまだ大きくて。今日いる700人全員を幸せにできる自信なんか俺にはなくて、700人の中のたった1人が救われたらいいなと思って、今日もそのたった1人を救いに、小さな覚悟を持ってステージに立ってきました。色んな奴の力と言葉を借りて、今日もこのステージに立てました。去年はBIGCATとおさらばするために、皆の力を借りてでも次のステージに上がるために頑張った。自分の足で立ちたかった! 同い年の友達は数百メートルの先のワンマンを叶えて、昨日出てた後輩も『蜜フェス』の前に叶えて、去年出れなかったバンドはこの後に叶えて。俺がもし次BIGCATのステージに立つなら、『蜜フェス』じゃなくてワンマンライブしたいと思います!」と決意を叫ぶ。
「バンドってやめたら終わるんだ。あの時報われなかった。それは曲のせいじゃない。ただ俺がこのステージを全うできなかった。このステージに"この足で"立てなかった。やめたあいつのために歌う気はない。今日まで続けた俺のために歌って帰ります!」と悔しさをぶつけるように『君と星座の距離』を投下。さらに「ラスト1曲歌おうか!」と叫び、『あの子と宇宙に夢中な僕ら』へ。つんのめるほど前のめりなエネルギーを放出して岩橋はダイブ! 4人とも全身全霊で音楽を鳴らし、汗と熱気と余韻を残してステージを去った。
すぐさま起こったアンコールに応え、ホッとしたような表情でステージに戻るメンバー。汐田は「皆のこと幸せにしようと思ったら1番幸せになりました!」と笑顔で出演者とスタッフを労う。ステージ袖で大勢のバンドマンが見守る中、「誰一人傷つけない音楽やっていいですか!」と『ロックンロール・スーパーノヴァ』を大合唱。間奏では汐田が華麗にダイブ! 岩橋も中村も清弘も音に全てを込めてエネルギッシュに叩き込む。そこからの『swamp (沼)』のパワーといったら。とんでもない瞬発力でさらに会場を牽引し、突き上がる拳とシンガロングで最高潮の熱を生み出した。最後は出演者全員で記念撮影。
こうして『秘密蜂蜜FES -2025-』は大団円で幕を閉じた。「会おうぜ、また『蜜フェス』で! 俺たちの秘密基地!」と明るく言った汐田の言葉は、次なる『蜜フェス』開催を予感させる。来年は、どこでどんな形で開催されるのだろう。
終演後バイハンのメンバーに会うことができ、汐田にMCの真意を訊いてみた。兼ねてから聖地・BIGCATに「自分の足で立ちたい」と話していた汐田。だけど昨年も今年もそれは叶わなかった。汐田は「"俺もワンマンでBIGCATに立ちたいんや"という気持ちを受け入れられた」と話してくれた。「周りのバンドがBIGCATを埋めてるからというのもあった。これまで見ないようにしてたけど、受け入れるのに勇気要ったけど、受け入れた。それはライブ前はわからなかった。ライブ中にじわじわわかってきました」とスッキリした顔で笑っていた。悔しさを素直に認め、本当の望みを受け入れた人は強い。きっとバイハンは近いうちにその夢を現実のものにするはずだ。
今後もっと大きくなるであろう『蜜フェス』も、続いていくバイハンと仲間たちの未来も、楽しみで仕方ない。
Text by ERI KUBOTA
Photo by かい(1~4枚目)、烈(5、6枚目)
【DAY1はこちら】
(2025年5月 2日更新)
●Arakezuri
01. ヒーロー
02. ウルトラエール
03. クアトリーセンチュリー
04. 蕾
05. たいせつ
06. だめでもともと
07.キーホルダー
●猫背のネイビーセゾン
01. kimiOS
02. Demonize
03. ごく身近な監獄
04. 偽り切ないな
05. DANDANDANCE
●ammo
01. CAUTION
02. 突風
03. 星とオレンジ
04. SHI'NE
05. これっきり
06. フロントライン
07. 身体一つ、恐怖断つ。
08. 歌種
●Re:name
01. BABY BOY
02. People
03. Living Fool
04. Magic Hour
05. Saturday, Sunday.
06. prettyfine :)
07. 24/7
●reGretGirl
01. KAWAII
02. インスタント
03. 純ラブ
04. スプリング
05. ホワイトアウト
06. soak
●the奥歯's
01. 鈴鳴メモリーズ
02. 初期衝動継続時間
03. トラッシュシャワー
04. 羊が好きな君
05. 男子中学三年生 [中断]
06. 夏休み
07. スパイキーニート
08. ハニーハニー
09. おやすみせかい
●bokula.
01. 愛すべきミュージック
02. 溢れる、溢れる
03. 愛わない
04. 満月じゃん。
05. 愛してやまない一生を.
06. 怪火
07. 夏の迷惑
08. FUSION
09. 高鳴り
●the paddles
01. 25歳
02. 花
03. WARNING!
04. 倦怠モラトリアム
05. 予測変換から消えても
06. ブルーベリーデイズ
07. 愛の塊
●Bye-Bye-Handの方程式
01. ラブドール
02. 風街突風倶楽部
03. タヒ神サマ
04. 閃光配信
05. 風鈴
06. midnight parade
07. ウルトラ面
08. darling rolling
09. 春のチャンス
10. 湿恋
11. 君と星座の距離
12. あの子と宇宙に夢中な僕ら
En1. ロックンロール・スーパーノヴァ
En2. swamp (沼)
【千葉公演】
▼8月8日(金) 千葉LOOK
【宮城公演】
▼8月9日(土) LIVE HOUSE enn 3rd
【福岡公演】
▼8月16日(土) 福岡Queblick
【広島公演】
▼8月17日(日) ALMIGHTY
【京都公演】
▼8月29日(金) KYOTO MUSE
スタンディング-3500円(ドリンク代別途必要)
[出演]他
※未就学児入場不可、小学生以上チケット必要。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
【兵庫公演】
▼9月11日(木) 神戸 太陽と虎
スタンディング-3500円(ドリンク代別途必要)
[出演]他
※未就学児入場不可、小学生以上チケット必要。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
【香川公演】
▼9月15日(月) TOONICE
【北海道公演】
▼9月19日(金) SPiCE
【静岡公演】
▼9月22日(月) 静岡UMBER
【新潟公演】
▼9月23日(火) GOLDEN PIGS BLACK STAGE
【栃木公演】
▼10月4日(土) 宇都宮HELLO DOLLY
【神奈川公演】
▼10月5日(日) F.A.D YOKOHAMA
【愛知公演】
▼11月3日(月) ell.FITS ALL
【大阪公演】
▼11月16日(日) 18:00
Shangri-La
スタンディング-3500円(ドリンク代別途必要)
[出演]他
※未就学児入場不可、小学生以上チケット必要。
[問]キョードーインフォメーション■0570-200-888
汐田泰輝(Bye-Bye-Handの方程式)×岡本優星(ammo)×高木一成(Re:name)の同い年ボーカリストが本音トーク!
https://kansai.pia.co.jp/interview/music/2025-03/mitsufes1.html
“裏も表も全部繋がった、幸せのループを作りたい”
主催者・汐田泰輝(Bye-Bye-Handの方程式)と出演バンド・岡本優星(ammo)&高木一成(Re:name)が開催間近の『蜜フェス』を語る
https://kansai.pia.co.jp/interview/music/2025-03/mitsufes2.html