ホーム > インタビュー&レポート > 『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』 ライブレポート【ZONe ENERGY LIVE HOUSE Antenna・ 12月27日(金)~29日(日)】
【12月27日(金)】
●シンガーズハイ
2024年のAntennaステージのトッパーはシンガーズハイ。2023年末にRADIO∞INFINITYに出演した際、「来年はレディクレ出ます!」と宣言し、有言実行で掴んだステージ。リハーサルから熱量高く、その演奏が耳に届いた人から前のめりにステージに集まっていき、開演前にはパンパンに。
ロック大忘年会の始まりに相応しいパーティーソングのようなSEで登場し、内山ショート(g&vo)が「RADIO CRAZY 2024!始めますよ!」と叫び、1曲目『愛の屍』からトップギア。その激しい演奏に合わせて照明も激しくフラッシュし、拳と手拍子が駆り立てられるフロア。そして2曲目が『Kid』と分かると、会場は「待ってました!」と言わんばかりのさらに大きな反応に。この曲はSNSで内山の歌うパンチ力のある2番の歌詞が注目され、実際そのパートではフロアも真っ暗にして彼だけを照らしたオンステージで伝えたが、みつ(b&cho)、ほりたいが(g&cho)、りゅーいち(ds)の3人もあのダークさや胸ぐらを掴む感じを内山と同じ温度感で演奏する姿とその音、コーラスで伝えてくる。次の曲『サーセン』ではシンガロングが起こるが、ただ開放感があるやつではなく、少しだけこの世界への呆れた感じも混じっているのが特徴的。フロアからの大きな歌声に内山も「よくできました」と返し、歓声が上がる。続く『ニタリ』では、そんなフロアにみつが「全員跳べるか!」と促し、大きな振動に包まれるAntenna。完全に自分達の空気になったことが伝わる。
MCで内山は「出るってそう言えば去年言っちゃってたね! 叶って良かったわ! 叶わんかったらカッコ悪かったで!」と話し、拍手が起こる。そして集まってくれた人への感謝を述べ『STRAIGHT FLUSH』から後半戦スタート。りゅーいちが「ウォイ!」と煽ったり、ほりもみつもお立ち台に上がる回数が増え、よりアクションも大きくなって、さらに鬼気迫るステージに。そして「We are ROCKBAND,SINGER'S HIGH! from TOKYO!」と内山が叫び始めた6曲目は『パンザマスト』。サビで繰り返される<許さないで>の歌詞のリズムは強く耳に残った。
高い音の攻撃力の余韻がある中、続く『すべて』ではその歌い出しで一気に雰囲気を変えた。この丸裸の寂しさや優しさが伝わってくるメロディと歌声に、フロアも噛み締めた表情に変わる。バンドからの深い愛も感じ取ったところで、ラストはこの日バースデーボーイ・みつのベースから『ノールス』へ。紫の照明やフロアのクラップもさらにこの楽曲を盛り立てる。途中、内山は「大阪が一番です!」と叫び、大歓声。ほりのギターソロも轟き、最後までロックバンドの強い存在感を入場規制した会場に見せつけた。
突き刺さる内山の歌声とキレと爆発力を兼ね備えた演奏。しかしライブで見ると、その僅かな音の変化で喜怒哀楽だけでない豊富な感情が伝わってくる。激しいパンチのラッシュなのに1つ1つ鋭さが違って、うまくガードを外され常にクリティカルヒットしてしまうような感覚。それはバンドだからこそ生まれる圧倒的な求心力だし、そこに私はカリスマ性よりも、リスナーと同じように懸命に生活をしていることが分かる人間らしさを感じた。途中、内山は「俺たちのことをじっくり教えていくから、どうかあなたのことを教えてほしい」と言ったが、その音楽にこちらも何度も本当の自分を曝け出した35分だった。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
●紫 今
先ほどのシンガーズハイの客層とはまた違い、バンド好き以外も集まっている雰囲気があるフロア。そこに雷を轟かせ、ハードなロックが響くSEはこれから戦場にでも行くのかのような雰囲気を漂わす。
その中で登場した紫 今は、まずその圧倒的な歌声をアカペラで約18秒響かせて、会場を支配する。全員が「なんだこの声量は」と思っているのも束の間、激しいロックナンバー『青春の晩餐』からスタート。ハンドマイクの彼女はステージを躍動しながら1人1人の顔を見るように歌い上げる。ステージ上は暗めであり、彼女もフードを深く被っているが、それでも伝わる彼女の気迫。加えて「そんなもんじゃねぇだろ!」とフロアの煽りもあり、大音量のシンガロングを巻き起こす。2曲目は「一緒に踊ろう」と始まった『正面』。<ぐるぐるぐるぐる><すき きらい><赤 蒼>といった短い言葉が乗ったリズムが体を軽くする。彼女自身も軽快なステップで、フロアを指差しながら言葉をしっかり届けてくる。この音のカラフルさは生で体感してほしい。
MCで「初レディクレ嬉しいぜー!」と喜びを爆発させたが「でもあたしはレディクレこんなもんじゃないと思ってるんですけど、まだまだいけますか?」「今日ブッ飛べる曲たくさん用意してきました! じゃあちょっとみんなの本気をもうちょっと見せてほしいんですけど...いけるか大阪ー!」と煽ると大歓声。「やればできんじゃん。じゃあラストまでよろしく」と伝え、新曲『メロイズム』に入る。音源ではもっとゆったりしたメロウ感があった印象だが、ライブではタオルをブン回す。しっかり激しくかき混ぜられたが、それくらい攪拌したからこそ生まれた旨味成分たっぷりのとろみがサウンドにある。そこにライブならではのクラップやジャンプが入ると、食感の違いが生まれ、よりとろみを感じさせる効果がある。続く『フラットライン』はこれまでのノリの良さに、どこか深みに落ちていく危うさも秘めている。まぁ私はここまでで彼女に既に沼ったので手遅れだが。しかし「こっからなんですけど!」と止まらない彼女が繰り出すは『凡人様』。「伝説作りませんかー!」と叫ぶ彼女はフロアから大音量の<凡人様ー!>の合唱を引き出す。
暗転した後、『酔い夏』へ。先ほどまでの猛々しさから打って変わり、ミュージカルで悲劇のヒロインが歌い出したような雰囲気に。シリアスで悲しいピアノの旋律に色と温度を失うフロア。そしてもうライブも後半だというのに変わらぬハイトーンの伸びに圧倒される。加えてこの曲はスタンドマイクの前で表現する手の動きがより気持ちを捕まえる。
「超楽しかった...来年も絶対レディクレに戻ってきます」と決意を示し「歌える人は一緒に歌ってね!」とラストの『魔性の女A』へ。花魁の世界観にぴったりな怪しげな赤い照明に照らされて歌う彼女は表情こそしっかり見えないがフードを取り、衣装もはだけて、全身から生まれるその表現力に、あの、本当に、見惚れちゃった。
2月にFM802主催イベントのざわめきプレイリストで見た時は、その歌唱力のスペシャル性が印象に残ったが、今回はロックフェスで戦えるだけの総合力の高さや会場とのコミュニケーションの濃さも印象に残った。そして大胆さと繊細さを持ち合わせたその表現力。様々なカルチャーからもお声がけがかかるのではないか。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
●jo0ji
2024年はSpotifyの『RADAR: Early Noise 2024』に選出され、夏にはサマソニに初出演。次々と新曲を送り出して注目されてきた鳥取県出身のシンガーソングライターjo0ji(ジョージ)がRADIO CRAZYに初登場。一曲目から自身の鍵盤弾き語りでしっとりと歌い始め、途中からバンドサウンドで厚みをましていく5分近い圧巻のバラード『雨酔い』を披露。情感こめて揺さぶりかける歌にはjo0ji節ともいえる訴求力があり、LIVE HOUSE Antennaに集まった観客をじっと聴き入らせていた。
MCでは当日に地元鳥取から大阪に来たということで、「あったかいね大阪は。日本海は寒い...」などと人懐っこい口調で気さくに声をかけて、2月にimaseとなとりとの3マンが、3月には東名阪で自身の2マンツアーが控えていることをアピール。
アップテンポで新たな気概に満ちた最新曲『ワークソング』、転調を駆使してユニークなフロウを生み出す『escaper』など、ジャンルレスともいうべき幅広い曲調。曲によって鍵盤やギターを奏で、ハンドマイクの時は自由に動いて観客に歌いかけていた姿が印象的だ。特にFM802のヘビーローテーションとなった『駄叉』は表現力に富んだボーカリゼーションで引きこみ拍手喝采に。
『Nukui』では「歌ってくれますか? 頼むよ」とやさしく促し、観客のシンガロングに「ありがとう」と嬉しそう。終盤に歌った『不屈に花』は心が弱っている時に効く処方箋のようなナンバーだ。"自分自身を大切にして"という思いも感じられてポジティヴな気持ちにさせてくれる。
ラストは彼の死生観や思想が伝わってくる『≒』。友達や仲間に話しかけるようなリリックに、スキャットや笑い声も交えた独特の歌唱が耳に残る。jo0jiの歌がもっと聴いてみたい。そう思わせる独特の雰囲気と熱を帯びたパフォーマンスに惹きつけられたステージだった。
Text by エイミー野中
Photo by 松本いづみ
●CLAN QUEEN
男性の荒い息遣いから始まった荘厳なSEの中、暗闇の中に現れた3人。この雰囲気だけでも、これからどんな壮大なダークファンタジーが始まるのかと思わせた。加えてAOi(Vo/Gt)がクラップを要求したことで、さらに期待感が高まる。
そしてyowa(vo)が「CLAN QUEENです。よろしく!」と伝え、『自白』からスタート。ミステリアスと激しさが共存したサウンド。それをAOiの静かにも狂気性を孕みながら捲し立てるボーカルとyowaの力強く凛としたボーカル、このツインボーカルのコンビネーションでもって、フロアに危険なほど流し込む。1曲目で期待感を優に超えたスケールを見せつけた彼らは『プルートー』を続ける。強制的に脳内快楽物質が分泌される支配感のあるサウンドに加え、サビ前でAOiに「飛べるかレディクレ!」と言われちゃ、本能剥き出しでフロアは飛ぶしかない。マイ(b&cho)も前に前に出て刺激的なベースラインを喰らわす。この流れで『救世主』を続けるこの日のCLAN QUEENはいつもにも増して凶暴だ。もう既にノックアウトしてるフロアを<もう1回>と何度も立ち上がらせては踊らせている。もちろん抗えないフロアは狂騒する。
4曲目は『天使と悪魔』。悲壮感のある世界観で少し落ち着いた雰囲気に変えるが、色気のある美しく洗練されたサウンドに没入感はむしろ増していく。その次が彼らの中でも最もムーディさのあるゆったりとした楽曲『ファンデーション』なのがニクい。先ほどの狂騒が嘘のようにうっとりと揺蕩うフロアを生み、奥深く幅も広いCLAN QUEENの音楽を味わせた。
そして大阪では初披露の新曲『ゲルニカ』をここで投下。ライブで見て分かったのは、1〜3曲目で見せた理性を奪うような狂気性と4、5曲目で見せた人間の生っぽさが合わさっていて、強いアート性が生まれているというところ。今後の定番ナンバーになるのではないか。
続いて焦燥感を生み出す『サーチライト』が始まると自然とクラップが巻き起こる。yowaの<見してよ>というサビ前の歌詞を合図にフロアもステージ上に"まだまだいきます!"という盛り上がる姿を見せつけていて、彼らのライブならではのコミュニケーションがそこにはあった。そして「CLAN QUEENでした。ありがとうございました!」とyowaが告げ始まったのは『踊楽園』。ここまでついてきたフロアへのご褒美かのように、アッパーなダンスチューンを浴びせた。
大団円には充分な空気を作り、これで終わりかと思ったら、思わず防衛反応を引き起こすレベルのバイブレーションをフロアに与える楽曲『PSIREN』を最後に披露。絶望に再度引き戻すような楽曲。CLAN QUEENはそんなに甘くない。それを伝えるようにギターを弾き倒し、投げ捨てたAOi。ステージ上にその残響が残ったまま3人は去っていった。
人間の持つ怪物性と脆さ、アート性。そういったものをCLAN QUEENというクリエイティブを通して受け取ったあなたはもう彼らを欲さずにはいられないのではないだろうか。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
●moon drop
「RADIO CRAZYー!みんな元気してましたかー!このAntennaステージ最後ですけど、まだまだ有り余っているんじゃないですか⁉︎」
その浜口飛雄也(vo&g)の問いかけに元気に応えるフロアはまだ疲れてない!「全員で最高の日にしよう! ここに訪れた全てのボーイズアンドガールズ!」と『ボーイズアンドガールズ』からスタート。美しいメロディとクセのない澄んだボーカルに乗せられて、フロアも手をしっかり振り、クラップも起こす。一瞬で会場をリフレッシュさせたのを通り越して、朝に戻ったかと思う爽やかさ。浜口も楽しんでおり、途中から入ってきたお客さんに「いらっしゃーい」と伝える場面も。
続く『シンデレラ』では坂知哉(b&cho)のベースラインが鳴り響き、浜口の合図でジャンプするフロア。清水琢聖(g)もそれを見て笑顔になる。原一樹(ds)の安定感のあるドラムは、このバンドの優しさの基盤になっていて、シンプルながらもしっかり解けない魔法をAntennaにかけていく。その結果「めっちゃいい顔してるよ!」(浜口)に。「踊っていこうぜ!」から始まった『ラストラブレター』も最後方に対しても、ちゃんと手書きのような温かみのある言葉と音が届く。この安心感からか、手拍子だけでなく、力を抜いて頭を動かしてリズムを取る人も多かった。清水のギターソロも冴え渡った。
MCでは原のドラムのリズムに合わせた手拍子が鳴る中で浜口は「とうとうやってきましたよ!」「みんなの今年一番の大きな声を聞きに来たんですけど、大阪いけますかー!」と言い、コールアンドレスポンスから入る『アダムとイヴ』へ。大きなアクションで手拍子を促すメンバーに、フロアも大きな声で応える。そしてそこに本心からの「ありがとう」を伝える浜口。シンプルなやり取りだが、こんなに大切で美しい光景はない。これも<色も形もない愛情ってやつ>の1つ。5曲目は歌詞にもある夕焼けのような照明がドラマチックだった『風のお便り』。ここではアウトロの手をゆっくり横に振っての「ららら」の合唱が温かい。
最後のMCで浜口は「初めてのレディクレなのに、このAntennaステージのトリを任せてもらいました! どうせならさ、今年最後の大阪でのライブ、今日がレディクレの中で一番やばい日だったって言わしたくないですか、みんな!そういう日にしに来ました。最後まで愛だの恋だのラブソングだけ歌います!よろしく!」と会場を盛り上げて、全身全霊を込めて『ex.ガールフレンド』へ。歌い出しのサビを歌い終わると「こっちはさ、やっと出れたステージなんですよ。こっち準備万端なんですけど、そっちはどうですか⁉︎」と問いかけ、フロアは最高潮に。そして「思い切りやろうぜ」の合図で曲が進むと、パワーをもらったメンバーもさらに全身を使って力強く演奏。「いろんなバンドに恋をする、みんなは美しいよ!」と叫んだ浜口もそのフロアに向けて拳を高く上げる。最後の『どうにもならんわ』でも、そのままの勢いと、さらに高く上がったクラップと、<君に恋してしまったんだ>の合唱が生まれ、美しい光景のまま終了。浜口は「また来年も絶対レディクレで会おうぜ!」と伝えた。
汚れなくただただ真っ直ぐな軌道に乗って届く音楽は非常に爽やか。しかしシンプルに見せかけてしっかり現場を重ねたことが分かるたくましい音や繊細なバランス、それを35分間安定して力強く出すタフさはむしろコッテリ。ラーメンで例えるなら口当たりさっぱりなのに、熟成された深いコクがあるということ。これが嫌いな人はいない。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
【12月28日(土)】
●レトロリロン
お馴染みの水滴の音が印象的なSEが流れると、フロアは次第にクラップの輪が広がり、明るく登場するメンバーを迎える。最後に登場した涼音(vo&ag)が「僕らはライブ納め! 楽しんでいこうぜ、どうぞよろしくーーーーー!」と高らかに挨拶し、「好きに体動かして楽しもうぜ、レディクレ」と付け加え『ヘッドライナー』からスタート。言わずとも頭上高くクラップするフロア。4人は非常に眩い照明を背にしていたが、それに負けない透明感のある洗練された音楽が届き、すぐに心を預けたフロア。永山タイキ(ds)のパワフルなドラムから2曲目『DND』が始まると、涼音がハンドマイクに代わる。手を大きく広げたり、降ろしたり、誰よりも飛び跳ねたりして、フロアにうねりを起こし、彼のエンターティナー性が増していく一方。誰にも止められない。事前のFM802DJ高樹リサの紹介した通り"ポップマエストロ"の真髄を早くも見せる。
MCではFM802のヘビーローテーションに選ばれたことや、大阪でライブする機会が増えたことに感謝する涼音。しかし「こんなもんじゃないからね。来年はもっともっと皆と、一人一人と一緒にもっと上に行きたいと思ってます。よろしく」と伝えると、そのヘビーローテーション曲となった『焦動』をプレイ。今年最後だからと言わんばかりにメンバー3人からの音をステージ中央で誰よりも浴びる涼音。受けたエネルギーは伸びやかな歌声となって放出される。間奏でmiri(key)も手が思わず離れるか心配するくらい体を目一杯動かしながら弾く姿も目を引いた。続く4曲目『Document』は少しディープなサウンドから生まれるシンガロングはアーバンでシャレてるのに、自然と心がスッポンポンになる解放感があるから不思議。ただ「3,2,1,ジャンプ!」の合図で飛び跳ねるフロアより解放されたのはステージ上の4人。涼音は座り込むし、飯沼一暁(b)も前に前に出て、巧みでパワフルな演奏を見せた。その後のMCで「はしゃぎすぎた」と話す涼音が全て。
そのままフロアへ今年1年の感謝を伝えると、『アンバランスブレンド』へ。イントロ中に「いやー本当に良い1年でした! 来年はもっともっと皆と一緒に良い1年にしていきたい。どうですか、もう来年のこと考えようよ!」と伝えると会場から歓声が上がる。2024年の言えずじまいだった、抱えたままだった心の内を代弁するような楽曲は、たしかにスッキリと来年へ向かうのにピッタリだった。そんな身も心も軽くなった時間も終わりを迎えることに涼音自身も名残惜しく思うが「ここで皆友達になって、来年も全員で頑張っていこうと思うんですけど、どうでしょうレディクレ!」という問いかけを当然受け入れるフロアにラストナンバー『TOMODACHI』を届ける。最後まで軽快でポップなサウンドを流しながら、4人全員しっかり入場規制のフロアにいる1人1人に目を合わせて、音楽で通わせていく心。そして「来年もどうぞよろしくー!」と叫び、ライブは終了した。
いろんな季節で彼らのライブを見てきたが、年末に彼らはとても合う。この時期に浴びるクールでポップな楽曲は年末年始にしか会えない親戚からおもちゃのプレゼントをもらった時のようで、ニヤニヤワクワクしてしまう。あと間違いなくこのステージを見た人は心身スッキリしてるから良い初夢を見れたはず。1年の嫌なことを最後に忘れたいなら、居酒屋での忘年会もいいけど、レトロリロンのライブをオススメしたい。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
●PK shampoo
肩にバンドのロゴタオルを掛けて登場したヤマトパンクス(vo&g)が「やぁどうもRADIO CRAZY。PK shampooです。よろしくお願いします」と言い『天王寺減衰曲線』からスタート。爆音が鳴らされると、それまで自然体に見えたヤマトパンクスも「来いよ!」「やれんのかRADIO CRAZY!」と声と大きな手振りで煽ると、一気に前方の密度が高まり歓声も大きくなったフロア。ニシオカケンタロウ(b)も頭を振り乱しながら演奏するなど激しさがある一方、爆音の中で聴こえてくるメロディや福島カイト(g)のコーラスがそれだけではない曲の持つ美しさを同じくらい伝える。「お前らホンマ...お前らホンマ今年いっぱいで天使にしたるわ!」という言葉から始まったのは『天使になるかもしれない』。その<天使になるかもしれない>という歌詞の繰り返しが強烈に刷り込まれて、今もあの時の耳鳴りとこの歌詞が頭で鳴り響き続けている人も多いことだろう。そのまま止まらず『奇跡』『君の秘密になりたい』を投下。何度か曲中や曲間に「PK shampooです。どうぞよろしく」とヤマトパンクスは伝えていた。この爆音で美しく鳴り響きながら絡み付くメロディと、そこにかき消されず届くヤマトパンクスのボーカルと後でまた確認したくなる歌詞に、改めてその存在の認識をアップデートしているはずだ。
MCに入るとヤマトパンクスは「マジ昨日から全然寝てない」と話す。緊張とかではなく普通にらしく「正味まだ本気じゃない」と話すと「まだ寝てないアピールをするイキリの段階⁉︎」と3人から総ツッコミ。福島が「レディクレに来てまでやることですか?」とツッコむと「まだ全然通過点にすぎひんやろ」「じゃあどこまでいくんすか?」「どこまでって...(主催フェスの)PHYCHIC FESに決まってるやろ!」と言うと会場からは拍手。が「商魂たくましいな」「宣伝すな!」とメンバーに引き続きツッコまれていた。
「僕ら生まれ育ちも関西のバンドですけど、明日(12月29日)お世話になったライブハウスがラスト営業日ということで、そこでの思い出を歌った曲を」と話し『二条駅』を始める。感傷的なメロディが1人のギター少年の夜の情景をしっかりと浮かばせる。その浸った感情に、続く『S区宗教音楽公論』がさらに追い討ちをかける。いよいよ意識が天に持ってかれそうなほど、圧倒的なステージング。そこからの『京都線』。前方のお客さんはグチャグチャな感情を顔に出しながら、そして後方の恐らく初見と思わしきお客さんも何かを感じ取って、曲に合わせて叫んでいた。
「最後の曲です」と伝えて、『空のオルゴール』を披露。彼ららしいノイジーでパンキッシュでオルタナティブなショートチューンを見せてヤマトパンクスは「ありがとうございました。来年も呼んでくださーい」と言い、その複雑で激しいメロディを支えていたカズキ(ds)はスティックをフロアに投げ入れて、ライブは終わった。
ある時には強引にも変わる転調は膨大なパワーを必要とし、曲そのものを崩壊しかねないが、ヤマトパンクスの歌詞とボーカル、4人の高い演奏力でむしろさらに曲を強める。ただそこには衝動だけでなく、優しさやノスタルジーも浮かぶのは、なぜかそのエグみの中に必然性とあらゆる日本の曲の本質や原型にも似たような馴染みのある美しさもあるからだ。ある種発明的な日本語パンキッシュオルタナに、前方はいつものライブハウスの如く魂擦り切れるほど叫び、あまり彼らに触れてこなかったであろう後方は途中から「只者ではない」とより真剣に聴いていたように見えたのが印象的だった。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
●森 大翔
SEはなく、森本人が早速"イカつい"という表現が似合うギターソロを轟かせる。そして「イエーーーーイ!」と叫んだのに合わせて、会場のボルテージも上がり、「クレイジーになる準備はできてますか⁉︎」と問いかけ『剣とパレット』からスタート。躍動感があり、早口で捲し立てるボーカルで気迫を見せるステージは、良い意味で彼から"好青年"感を奪う。また、バンドメンバーのGenTi(g)、月川玲(b)、杉本雄治(key)との息の合った動きでも魅せる。「あったまったかい、皆さん! Crap your Hands!」とクラップを促し、さらに先ほどを上回る息の合った森、GenTi、月川のステップで始まったのは『ラララさよなら永遠に』。上質な音楽にこういったステップも見れたら2倍お得だし、森が多くの音楽から吸収して作っていることが分かる。リズムカルなドラムの田中駿汰(ds)も含めて、多様な個性がいっぱいの戦隊ヒーローに見えてきた。
「RADIO CRAZY楽しんでますかー! 後ろの方も楽しんでますかー! 僕たちも楽しんでます、よね?」と全員が楽しんでいることを確認し、「2025年始まっちゃったんじゃないかという熱量」を感じたとのこと。そして「仲間や居場所の尊さを歌った曲」「孤独を感じる人に居場所っていうのは音楽だったり作品の間にも生まれるものだと思うので、僕の音楽もそんな居場所になって孤独じゃないんだと思ってくれたら」とバラード曲『群青日記』を披露。ここまで熱いステージを見せたが、一度しっかり深呼吸。そして優しく森とフロアが縫合されていく。
終わって優しい拍手に包まれたのも束の間、田中の力強いドラムが鳴り響き、森もハンドマイクに変わって『VSプライドモンスター』へ。今度の森はダンスパフォーマーボーカリストに!あまりレディクレでは見られない本格的なダンスだ。各パートの演奏シーンもしっかりハイライト級。終わると森は再びギターを持ち「もっといけますかー!」と何度も煽って、とっておきのダンスチューン『アイライ』へ。初見でもノリやすいサビのリズムに盛り上がるし、さらには森が背面ギター演奏も見せる。空間のどこを切り取っても"楽しい"しかないのは、こういうことを言うのか。
「今度こそ年越したんじゃないでしょうか?」と息切らしながら話す森からは充実感が漂う。そして2024年を振り返り、大阪やFM802へ感謝を伝える。そして「これからも頑張ったり頑張らなかったりすると思うんですけど、そんな日々に自分に言ってあげたい言葉があるんですよ。大変な日々の中でまずは自分が自分のことを大切に思ってあげるというのを大切にしたいと思います」と伝え、最後の『たいしたもんだよ』へ。歌詞中の夕暮れや涙を思わすような照明も合わさり、何より最後までエモーショナルなステージを見せる5人から、今年の自分を褒められている感覚と来年も自分の足で歩いていくための大きな勇気をもらう。そんなステージに向けては大きな感謝の声もあったし、帰りながら口ずさむ人も多くいた。それだけこの言葉を、この曲を待っていた人が多かったということだろう。
シンガーソングライターの域を超えたような、捲し立てる早口歌唱に、ダンス、幅広いサウンド。しかしその軸になっているのは紛れもなくギター。歌唱に演奏にステージングにと、ハイレベルなことをしているが、それをポップに伝えるものとしてギターは最強というか、自分という人間を出すのに最高な楽器だということを示していた。むしろ何度か「あ、ギターが歌っている」と思うシーンもあったと感じたのは私だけではないと思う。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
●Bye-Bye-Handの方程式
「レディクレお待たせー! 今年いろいろあったバンドです」と汐田泰輝(vo&g)が切り出し、ステージ上でメンバー4人で気合を入れると、エンジン全開のまま『swanp(沼)』『daring rolling』『ソフビ人間』『ひかりあうものたち』と駆け抜けていく。常に煽りや感謝を叫び散らしながら体全身で演奏する4人から溢れ出るパワーは時間をも置いてけぼりにして届いてくる。ただその音にフロアも負けじとついていき、バチバチと衝突して光り輝く。ただ、衝動性をもって続いたこの4曲はしっかり個性も持っている。岩橋茅津(g)、中村龍人(b)のフロントでの息の合った動きは衝動だけでは生まれないものだし、その4曲それぞれがワクワク感を持っていて、五感で触れた者全員を破顔させていた。
MCで汐田はRADIO CRAZYのAntennaステージに「帰ってこれて嬉しい」と話した。2022年に彼らと同年代の関西4バンドが参加した"電波無限大"というプロジェクトでAntennaステージに立ったことがあった。「次は各々で帰ってこよう」という中で、2023年はRe:nameに先を越された悔しさもあったが、今年立つことができた感謝と「いろんなステージがある中で選んでくれたことは間違いない」という自信を示した。
後半も勢いは衰えない。『風街突風倶楽部』ではステージ上の4人の音圧とフロアの拳の圧の真っ向勝負。『タヒ神サマ』は怪しげな照明と勢いの中でも複雑なプレイをハイブリットさせた彼ららしさが出ていた。豪快に駆け抜けつつ、きっちりリズムを作る清弘陽哉(ds)のドラムにも驚かされる。フロア1人1人の目を見ながら届けているように見えた『閃光配信』を終えた後、「大切な曲を歌います」と前置きして始めたのは『ラブドール』。「誰かの1番になりにきたんじゃない。お前の1番になりたい!」と叫んだ曲は、しっかり歌詞が届き、これからの寂しい夜に寄り添ってくれる曲。リスナーや様々な人と助け合いながらここまで来たことが分かる曲で「今日を信じてやってきて良かった」と最後に汐田は添えた。
最後のMCで汐田は「10年間ライブハウスでコツコツと積み上げては崩されを繰り返しながらも、今日あなたの人生とクロスオーバーして、今年出会えてよかった」と話す。そして「お前の人生に俺らの曲が必要じゃなくなったら、それは良いことなのかもしれない。だけど音楽がないと生きていけない奴!お前は弱いんじゃなくて、ただ音楽が好きなだけ。誰に何を言われたって、このバンド辞める気ないから! これからもよろしくお願いします!」と力強く伝え、『ロックンロール・スーパーノヴァ』へ。汐田の地声とフロアの大合唱が合わさると「ありがとう」と伝え、そこからボルテージが最高潮に上がるAntenna。そのままずっとピークを1秒ごとに更新しながら、弱さも傷も強さも愛も何もかもが終わるまで輝いた。
疾走感と熱量の溢れる9曲を詰め込んだセットリスト。オーバーヒートしてもフルスピードで駆け抜けることができる無尽蔵なエンジンがあるのは、大阪・豊中から始まり、ライブハウスで10年育ったロックバンドだからというのを十二分に見せつけた。汐田は最後に「俺らはレディクレに戻ってくる。お前らはライブハウスに帰ってこい」と告げた。この4人なら必ず実現するし、必ず求めるその日にライブハウスで待ってくれている。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
●離婚伝説
SEなしで登場。開演前から入場規制のフロアは独特な緊張感も漂っていたが、1曲目『本日のおすすめ』の松田歩(vo)の歌い出し、<だからね>で一気に会場の空気が綻ぶ。松田の上品なボーカルに別府純(g)らのバンドメンバーの演奏は、開始早々に腕揃いであることを分からせる。
MCはなく『あらわれないで』『まるで天使さ』と繋げていくが、音の雰囲気は毎回違う大人のサウンドに変化し、進むにつれ「ねぇマスター、今度はどんな服で現れるの?」という気持ちで見てしまう。その華やかな色気は、例えるなら普段気軽に接しているオシャレなバーにいる柔和ながら謎多きマスター2人組の本気を目の当たりにしている感覚。『まるで天使さ』は夏の海を感じさせたが、「ねぇマスター、海って好き?」って聞いて、実は昔いろんな出会いがあったんだよ、と奥深い話をしているよう。ただクールに佇んでいるように見えて、松田の表情やコードを握る手は強くなり、そういうところに彼らのここまでの足跡やステージに立つ覚悟のようなものが見える。
続く2024年を彩った『愛は一層メロウ』は既にフロア全員の曲。サビでの一体感がすざましい。その思わず乗ってしまうビートは音源以上に力強く、今日このフロアとでしか作れない光景となる。松田も「みんな最高だった。ありがとう」と告げた。
「新曲やります」と伝えて始まったのは『しばらく』。ピアノとアコギが印象的な壮大なバラードは神々しさを与え、生命を優しく包み込む。そして次の『眩しい、眩しすぎる』で、その包み込んでいた生命に別府の感情的に鳴り響くギターや、より高音が響く松田のボーカル、そして「みんな歌って」と促され歌い、クラップをするフロア自身によって、徐々に温度を与えられ輝き出す。フロアにいる多くの人が、自分の大切な人がキラキラと<裸足で駆けてく>情景を、非常に鮮明に思い浮かべていたはずだ。
MCもなくあっという間にラストの『メルヘンを捨てないで』へ。最後は圧巻の8分間。松田もこの日1番体を仰け反って歌うなど全てを出し切ったが、やはり印象に強く残ったのは3分以上のアウトロだろう。お立ち台に上がり、歪んだギターを鳴らし続ける別府の姿。この凄みにスタンディングのフロアは、ありえないが、さらにもう一段立ち上がってのスタンディングオーベンションを与えているくらいの大歓声と大拍手。もはや現実感すらなく、あのマスターは、あの時間は夢だったのだろうか。それくらい目の前で何が起きているのかが分からないくらいの迫力があり、クライマックスに相応しい光景だった。
最後は熱演でギターのストラップの外れた別府が「また来年よろしくね」と伝えて終了。音楽を通して、掛け値のない愛情が溢れた空間だった。
Text by 遊津場
Photo by 松本いづみ
【12月29日(日)】
●Billyrrom
ライブ前にFM802DJ土井コマキが「世界でも活躍する彼らは言葉の壁を感じないバンド。つまり初見でも楽しめるバンド!」と説明したが、その言葉通り、初見も多かった会場を揺らしに揺らした。
「忘年会のつもりでよろしく!」とMol(vo)が伝えた通り、1曲目からダンスナンバー『Danceless Island』を披露し、会場を一瞬で温める。メンバーの無邪気に楽しんでいる姿があって、それもフロアへの安心感に繋がったはずだ。期待感も立ち込める中、さらに力強く「Are you ready⁉︎」とMolが叫び上げて『Defunk』へ。ダンディさが増し、息遣いまでセクシー。Taiseiwatabiki(b)とShunsuke(ds)のアンサンブル、Rin(g)のギターソロでも会場を掌握。どこに目を向けても、どこに手を伸ばしても美味しい。
続く『Once Upon a Night』でギターを手に取ったMolは「こんな朝早くからありがとう。絶対に後悔させないので楽しもうよ!」と伝え、会場を盛り上げる。その歌声に最初は"上手い"という反応だったが、この頃にはもう"好き!"に変わっていたのが分かるフロア。Leno(key&syn)のコーラスも良い味を出す。間奏では全員がジャンプして盛り上がったが、Yuta Hara(DJ/MPC)のスクラッチ音が、またこちらの跳躍力を引き出していて最高の相性。最後はRinの気持ちよく響き渡るギターで締めた。
「大阪ではまだこれだけの人に見られる機会もないから、名前だけでも覚えて帰ってください」と伝えてから始まった『Flower Garden』がまた衝撃。Rinがマイクを持ち、Lenoの夢遊感を与える優しいキーボードを軸にしたサウンドの中、ハイレベルなラップを見せる。サビでのMolのボーカルとのハーモニーの新感覚に驚いている中で続く『CALL CALL』でも引き続きラップを見せるRin。より縦横無尽に動くテンションの上がったRinにつられて、フロアも再び飛び跳ね出す。
Rinがギター、Molがピンボーカルに戻って、重厚なベースから始まったのは『Solotrip』。このサウンドがもたらす高揚感はどこかギリギリな危険性もあって、それが本能を刺激してならない。ステージ上の6人のステージングもより熱を帯びていくままにラストの『Magnet』へ。この35分で完全に引かれあったステージとフロアで熱狂をどこまでも高め合い、完全燃焼のエンディングとなった。
ステージ上の6人はどこに視線を向けても美味。忘年会のように楽しんでと言っていたが、私はそのバラエティ豊かで豪華な特別感はおせちのように思った。ただ和のものだけではなく、様々な音楽ジャンルの要素を感じるので、和洋中エスニックなんでも入ってる。加えて途中でRinが最高にハイなラップを見せてくれたから、さらに別皿も用意された感じ。
何度も書くが、ブラックミュージックやシティポップと一括りできない。いろんな音楽をとにかく吸収して、自分達のグルーヴを作って、自信を持って出している。まぁこのレポよりも、帰るときに若い2人組が「すげぇもん見たな」と言っていたのが全てかもしれない。
Text by 遊津場
Photo by キョートタナカ
●TRACK15
登場したステージ上で4人は静かに気合を入れ、蓮(vo&g)が「よろしくお願いします」と言うと、晴れやかなギターが鳴り響き『話したいこと』からスタート。クラップしながらも思わず聴き入ってしまう優しい蓮の歌声。奏でられるメロディも優しいが、裏腹に力強く躍動感のある演奏をする寺田航起(g)、高橋凛(b&cho)、前田夕日(ds&cho)もしっかりフロアの目を引き付ける。
続く『シティーライト、今夜』では「全員、跳べる?」の合図でジャンプし、よりクラップの音も大きくなった。Bメロの"パンパパン"のリズムのキャッチーさは、よりライブへの没入感を高める。前田のドラムの繋ぎとフロアのクラップが合わさって、高橋のベースも響かせながら始まったのは「外がめちゃくちゃ寒いんで夏の曲やります」ということで『青い夏』。寒さを溶かしながら耳に入ってくるこの暖かな音を聴きつけたのか、この曲の最中に人が次々と入ってくる。
MCでは関わってくれる全ての人に感謝。TRACK15にとってRADIO CRAZY出演は結成当時からの目標であり、特に高橋は高校3年間レディクレに通っていたため「感無量」とのこと。そしてFM802と繋がるきっかけになった曲『眠れない』を披露。歌詞には<802を垂れながす>という歌詞もあって、結成当初の曲らしい若々しいバンドのエネルギーを感じる。フロアのクラップを浴びるようにドラムを叩く前田、蓮の歌い上げる姿を見ても「やっとここでやれた」という万感の思いが詰まっていた。
「千年先も音楽とラジオで繋がっていけますように」という言葉からの『千年計画』は春の暖かみを感じるサウンドと曲中の桜を思わすような淡い照明が印象的で、あなたの心のアルバムの中の1ページにも焼き付いたのでは。蓮は曲中「出会ってくれてありがとう」とも伝えた。
最後の曲の前に蓮は「今から5年くらい前、バンドを組む前に地元の高槻駅で1人で歌ってたんですよ。今日みたいな寒い日も毎週のように。思い出すなぁ...全然誰も聞いてくれないこともあったし、沢山の人が聴いてくれる日もあったし、配ってたチラシを丸めて投げられた日もあった。でもどんな時でも横にいて手を擦りながら聴いてくれた人がいます。その人の曲をやらせてもらいます。「いつか大きなステージでやれるといいね」と言ってくれました。今日この会場にはいないですけど、まだ僕達途中なんで、いつか恩返しできるように自分達の音楽を信じて、俺らのこと好きって言ってくれる皆のこと信じて、関西のバンドとしてまたこのステージに帰ってきたいと思います。最高の景色でした。ありがとうございました」と決意と感謝を伝えて『ふゆのうた』を披露。このMC、曲で描かれた物語、そこに蓮のエモーショナルなボーカルがリンクして生まれた感動は、その後の止まらない大きな拍手が示していた。
何度も「一緒に音楽をしてくれてありがとう」と蓮は伝えていたが、優しくも芯のあるバンドのエネルギーとフロアの上げる手から生み出すエネルギーの交差が目に見えて分かったのが印象的だった。曲中にフロアに歌を任せるシーンが3度ほどあったが、6月にBIGCATでライブレポを書いた私からしても、その音量は断然大きくなっており、彼らの音楽が浸透していることが分かる。この日もThis is LAST、ねぐせ。、Saucy Dogなどのグッズを持って見ていた人も多かったが、帰りは満足感のある表情に溢れていた。見事に入場規制。歌モノロックの未来を担うバンドは大阪にいる。
Text by 遊津場
Photo by 桃子
●the paddles
「ライブハウスAntennaー!」と柄須賀皇司(vo&g)が叫び『プロポーズ』からスタート。後のMCで確認していたが、初見が多い中でそうとは思えないくらい大量のハンズアップを引き起こしていた。曲の前半で言っていた「みんなを笑顔にしに来ました」という言葉を早速有言実行。これは曲の力もさることながら、リハーサルの時点で「楽しませるぞ!」という気持ちの強さが伝わっていたからだろう。ただそれは明るいキャラクターがすぐ伝わる柄須賀だけではなく、寡黙ながらもそのアクティブなプレイスタイルで同じ気持ちや熱量を伝えていた松嶋航大(Ba)も、サポートのワタナベケント(ds)も同じだ。
2曲目は『永遠になればいいのに!』。これも後のMCで触れていた地元・寝屋川の自動車教習所"ネヤドラ"のブランドムービー挿入歌。歌詞とリンクした「今日のこと絶対忘れるなよレディクレ!」という柄須賀の言葉に会場は盛り上がる。『花』では「油断すんなよ」「どきどきしてんちゃうん?」と煽るも、サビの<咲く咲く>でフロアはしっかり花が開くように手をグーパーして「さすがレディクレ!」と柄須賀を納得させる。その開花はどんどん増えていき、圧巻の花景色。曲中、「なぁレディクレ。後ろの方なのに目が合ったんちゃう?と思ったでしょ。大丈夫! 俺、目を見て歌ってます! それがthe paddles!」と言い、ステージ中央でギターを弾く姿も頼もしい。続いて彼らの中でもハードさが際立つロックナンバー『WARNING!』。その疾走感と一段と取り憑かれたかのように演奏する松嶋に振り落とされないように、クラップが大きくなるフロア。
MCで柄須賀は2年前に4バンド合同で出演した"電波無限大"を経て、今年正式にthe paddlesとして出演できたこと、RADIO∞INFINITYのコーナーでレギュラーDJを務めたこと、そのきっかけもあってネヤドラで類を見ない自動車教習所内でのロックフェスができたことと、FM802との思い出を話す。そして「まだ思い出作るチャンスが残ってると思うんですけど、皆さんどうでしょうか?」と話し『予測変換から消えても』を披露。力強くも優しく鳴らされるメロディに乗った赤裸々な歌詞が飛び込んできて、しっかり聴き込むフロア。演奏後の拍手も優しいものとなっていた。
最後のMCで来てくれた人や聴いてくれている人に感謝を述べた後、「人生で笑顔でいる時間は意外と短い。でもthe paddlesを見てる間くらいはずっとずっと笑顔で、大切な人のことが思い浮かぶようなロックバンドでありたいなと思ってます」と話す。そして必ず来年も戻ってくると宣言し「ついて来てくれよ、皆!大阪寝屋川VINTAGE!From RADIO∞INFINITY!the paddlesでした。ありがとう!」と伝え『ブルーベリーデイズ』『カーネーション』『愛の塊』とノンストップで駆け抜けた。最後までライブハウスで鍛え上げてきたサウンドを見せて、愛と優しさと笑顔で溢れた空間を作り上げた。
Text by 遊津場
Photo by キョートタナカ
●muque
まずKenichi(g)、Lenon(b)、Takachi(ds)の3人が登場し、SEと3人の生演奏が合わさった神秘的かつ壮大なイントロが鳴り響く。テンションが盛り上がったところでAsakura(vo&g)が登場し『Dear,My friends』からスタート。段々と海中から快晴の空へ向かうような解放さが増すロックサウンドとフロアのクラップが相性良く絡む。
「こんばんはmuqueです。よろしくお願いします!」と力強くAsakuraが叫び『tape』へ。悠然とステージを歩きながら歌うAsakuraがサビになり「Say!」と問いかけるとフロアから<なってしまった>の大合唱。演奏する3人の的確な音、Asakuraの楽しそうなステージング、そしてフロアが一体となって、間違いなく体を浮かすような追い風を巻き起こしている。続く『456』もKenichiの繊細なギターとTakachiのトラックが融合したイントロを聴いてすぐクラップが起こる。ステージ上の4人はとにかく笑顔でこの4人の良いコミュニケーションがここまでのグルーヴを生んでいるのだと分かる。Kenichiは特に動き回っていて楽しそう。そのグルーヴのままにAsakuraが「ブッ放していこうよー!」と盛り上げて『feelin'』へ。またギターの音色も変わり、少しタイトさもあって焦燥感もあるサウンド。サビではフロア全員が横に手を振って、また新しい景色に。Takechiのドラムパートも炸裂。
MCではKenichiが挨拶し「僕ら福岡のバンドなんですけど、大阪大好きで2024年は気付いたら15回来てました! 今日で16回目。来てくれたみんなも最高です!」と伝えると大歓声。そしてFM802のヘビーローテーションにも選ばれた『jabber』を披露。等身大の学校生活とどことなく気怠けで哀愁のあるサウンドは僕らを秘密のアフタースクールへ誘うよう。
Asakuraが今日のフロアを「めっちゃ柔らかい人がいっぱい」と独特に評した後、Kenichiが「来年は今年以上に大阪来たいと思ってますので、また遊びに来ます!」と伝えて歓声が上がる。そして「アガる3曲を持ってきました」と言い、まずは『nevermind』から。明るくアッパーなナンバーにもう1段階ギアを外したテンションで盛り上がると、『my crush』ではLenonがお立ち台に上がりベースを響かせる。負けじとKenichiも間奏でギター炸裂。フロアに目をやると、パンパンな中で独自のダンスをしてノっている人も(気持ち分かるわー)。ラストは『Bite you』。先ほどまでの軽快な雰囲気とは変わり、攻撃的なベースに、メタルなギターやドラムを響かせるイントロは少し海外のフェスに移動した気分に。Asakuraも「ラストですよ。もっと声出せますかー!」と今日1番強く煽る。始まるとその強いビートが緑と紫と白の光を無秩序に照らしまくる照明も相まって、フロアのカオスとクレイジーを極限まで引き出して終了した。
様々な楽曲の引き出しがある中で攻撃的な『Bite you』で締めるのは個人的に意外だった。もちろん満腹感は満たされたが、これがこの日より5分長いメインステージの40分尺になったら、どういうセットリストになるのか...。よし、もっと大阪を好きになってもらって、メインステージに出てもらおうと考えた私は既にmuque中毒。
Text by 遊津場
Photo by キョートタナカ
●礼賛
リハーサル前で入場規制のフロアにメンバーが順に登場していき、セッションをしながら最後にCLR(vo)が登場。「礼賛納めだ!」と繰り返してから『スケベなだけで金がない』をスタート。この曲が作る景色を見て、本当にリハーサルでCLRの言うところの「ウォーミングアップ」「リハーサルという本番」をしといて良かったと思った。そのくらい序盤から高々とハンズアップをしてしまう曲で、いきなりだったら肩を痛めていただろう。さらに"スケベアンドレスポンス"でボルテージをあげるし、サビのリズムと歌詞、伸びやかな歌声、カオスさを増強する晩餐(g)と簸(g)のギターで1曲目にしてテンションを最高潮まで持っていく。
2曲目は「フェス飯食べてムチムチになった人?」という問いかけから『むちっ』。独特ながら縦ノリとクラップを誘うサウンドはどこか色っぽく、じわじわと温度を上げていく。続いて春日山(b)とfoot vinegar(ds)の重厚なサウンドの繋ぎから、CLRがカチンコで合図を出し、今度は一転クールでタイトな雰囲気な『TRUMAN』へ。もはや少しのズレや息継ぎのミスが許されない演奏とボーカルの高い歌唱力の応酬に、盛り上がりつつも気圧されさえもする。続いてノイジーなギターから始まったのはタオル曲『オーバーキル』。「自分の推しをアピールしろ!」と言われ、タオルを掲げてブン回すフロア。簸の轟くギタープレイを見るだけでも鬱憤がぶっ飛びそうだが、そこにさらにタオルが加わって、精神のサイクロン大掃除に。ラストのfoot vinegarのドラムプレイまで超高速で掻き回された。
熱狂のフロアを前に「今年一番息が吸えない」と話すCLR。"THEゴールデンコンビ"の話を少し挟み、その主題歌となった『GOLDEN BUDDY』へ。ホーンサウンドと重厚なツインキーボードが底のない不気味さを見せる。音源ではあるが、コラボした高比良くるま(令和ロマン)とのボーカルの掛け合いでも会場を盛り上げる。そして「とても暑い夜になったので」とRIP SLYMEから公認カバーの『熱帯夜』へ。晩餐のボーカルパートは「え、見れるの⁉︎」というさすがの盛り上がり。その晩餐は2番になると、お立ち台まで移動してフロアを煽るように歌い出し、ルール無用のカオスが巻き起こった。
最後の曲の前にCLRは「来年はもっと動きを活発にしていきたいと思いますので、回せるもの全部回していただきたいと思います」とお願い。そしてツアーで京阪神を回ることを伝えてフロアを喜ばせ『Take it easy』へ。「来年も落ち着いていきましょう」という言葉もあってか、このライブで一番ピースフルなクラップが鳴り響き、サビでも空気がやわらかく軽くなる。ただやはり終盤には圧倒的な畳み掛けが繰り出され、最後まで理性がトんだ熱狂と途轍もない凄みが入り乱れるライブとなった。
今思えば、なぜゲスの極み乙女の2人を?なぜラランドのサーヤを?なぜライブハウスAntennaで見れていた?と考えるけれども、ライブ中はそんなことを考える暇など与えず、脳死のまま汗だくで楽しんでいた自分がいた。この頭空っぽになった感じは、クレイジーを掲げるフェスのステージの締めに相応しさしかない。
Text by 遊津場
Photo by キョートタナカ
(2025年2月 6日更新)
●シンガーズハイ
01. 愛の屍
02. Kid
03. サーセン
04. ニタリ
05. STRAIGHT FLUSH
06. パンザマスト
07. すべて
08. ノールス
●紫 今
01. 青春の晩餐
02. 正面
03. メロイズム
04. フラットライン
05. 凡人様
06. 酔い夏
07. 魔性の女A
●jo0ji
01. 雨酔い
02. ワークソング
03. 眼差し
04. escaper
05. Nukui
06. 駄叉
07. 不屈に花
08. ≒
●CLAN QUEEN
01. 自白
02. プルートー
03. 求世主
04. 天使と悪魔
05. ファンデーション
06. ゲルニカ
07. サーチライト
08. 踊楽園
09. PSIREN
●moon drop
01. ボーイズアンドガールズ
02. シンデレラ
03. ラストラブレター
04. アダムとイブ
05. 風のお便り
06. ex.ガールフレンド
07. どうにもならんわ
●レトロリロン
01. ヘッドライナー
02. DND
03. 焦動
04. Document
05. アンバランスブレンド
06. TOMODACHI
●PK shampoo
01. 天王寺減衰曲線
02. 天使になるかもしれない
03. 奇跡
04. 君の秘密になりたい
05. 二条駅
06. S区宗教音楽公論
07. 京都線
08. 空のオルゴール
●森 大翔
01. 剣とパレット
02. ラララさよなら永遠に
03. 群青日記
04. VSプライドモンスター
05. アイライ
06. たいしたもんだよ
●Bye-Bye-Handの方程式
01. swamp(沼)
02. daring rolling
03. ソフビ人間
04. ひかりあうものたち
05. 風街突風倶楽部
06. タヒ神サマ
07. 閃光配信
08. ラブドール
09. ロックンロール・スーパーノヴァ
●離婚伝説
01. 本日のおすすめ
02. あらわれないで
03. まるで天使さ
04. 愛が一層メロウ
05. しばらく
06. 眩しい、眩しすぎる
07. メルヘンを捨てないで
●Billyrrom
01. Danceless Island
02. Defunk
03. Once Upon a Night
04. Flower Garden
05. CALL,CALL
06. Solotirp
07. Magnet
●TRACK15
01. 話したいこと
02. シティーライト、今夜
03. ドラム繋ぎ
04. 青い夏
05. 眠れない
06. 千年計画
07. ふゆのうた
●the paddles
01. プロポーズ
02. 花
03. 愛の塊
04. WARNING!
05. 予測変換から消えても
06. ブルーベリーデイズ
07. ステレオタイプ
08. カーネーション
●muque
01. Dear, My friends
02. tape
03. 456
04. feelin'
05. jabber
06. nevermind
07. my crush
08. Inter(Solo)~Bite you
●礼賛
01. スケベなだけで金がない
02. むちっ
03. TRUMAN
04. オーバーキル
05. GOLDEN BUDDY
06. 熱帯夜
07. take it easy
●12月27日(金)【DAY1】はこちら
●12月28日(土)【DAY2】はこちら
●12月29日(日)【DAY3】はこちら
●日時:2月11日(火・祝)
14:00~深夜3:00までの3部構成!
■第1部 14:00~
DJ=樋口大喜/板東さえか
■第2部 19:55~
DJ=落合健太郎/高樹リサ
■第3部 24:00~
DJ=浅井博章/田中乃絵
[提供]
日本旅行/マクセル/サントリー ビアボール/ZONe ENERGY/TESCOM/トヨタモビリティ新大阪/JR西日本/みるく饅頭 月化粧/Mizkan/JOYSOUND
※FM802はラジオの他、スマホやPCでも聴けます。
★radikoプレミアムなら全国で聴くことができます。