『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2023』
ライブレポート
【1日目・12月27日(水)】 （2/3）

【R-STAGE】

●マルシィ

3日間にわたるロック大忘年会の火蓋を切るのは、"レディクレ、やれるか！"という吉田右京（Vo＆Ｇ）のときの声。勢いよく『プラネタリウム』で走り出すと、彼ららしく恋愛をつづって早々に観客をとりこにする。かと思えばタイトルのごとく『牙』をむいて挑発し、『ミックス』では早口のボーカルも加えてポップに。吉田の"いくよ～！"に反応してクラップもそろい、全員が笑顔だ。MCでも"（前回の出演は）Antennaステージだったんですけど、今年はメインステージに......"とうれしそう。しかも"今日、27日は（フジイ）タクミ（B）の誕生日！"となれば、お祝いムードも添えられ、"年内最後のライブということで最高の1日にできたら"と期待も高め、今度は『ラブソング』と『白雪』のバラードを二つ並べて落しにかかる。夕日のような照明を背負い、目を閉じて放つ声やメロディは100％エモーショナル。また鈴やストリングスの音もまじる悲しい冬の恋の曲は、ピアノとボーカルのシーンでグッと集中を高めてヒリッと。しかしゴールに向けては晴れやかに進み、"大丈夫だよ"の言葉とクラップを伴うビートがあと押しして"Oh、Oh、Oh"のコール&レスポンスも。『最低最悪』では吉田が"ジャンプ！"と呼びかけ、みんなでバウンド。リリックとは裏腹に今日は楽しく鳴らし、会場を目覚めさせる一番手の役割をしっかりと果たしていった。

Text by 服田昌子
Photo by ハヤシマコ

●yama

バンドが大クラップを起こすなか姿を現してスポットライトを浴びると、幕開けは『色彩』と『Downtown』でダンサブルに会場をリード。小気味いいトラックに歌声で清涼感や憂いをプラスする。早くも気分上々になった大観衆に向け、昨年の「RADIO CRAZY」出演について"コロナ禍にライブを始めたから、みなさんの声を聞いたことがなかったので、すごく感動したのを覚えています"と感慨深そうに語り、ここからは多面体の魅力を次々と。静かなピアノや感傷的なハイトーンで彩るバラード『Oz.』、スリリングなサウンドと情熱的なボーカルでまさにしびれさせる『麻痺』。キャッチーで光に満ちた『くびったけ』ではサビでファンと声を合わせる。また『春を告げる』では再び本人も揺れて人々を踊らせ跳ねさせると、激流だったという2023年を"新しい景色を見させてもらって......"と振り返り、"今年はなんか元気です（笑）！ 　あなたからもらえる熱が助けになるんです"と話してスピード感もたっぷりな『ストロボ』へ。体を折り曲げるようにして歌い、生まれる熱を観客と交換。そして沸き立つ会場に『世界は美しいはずなんだ』の伸びやかな歌が響けば、大きな手拍子とワイパーも。スケール感十分に希望が描かれ、ついにライブは幕を下ろした。充実した1年間の活動を感じさせる堂々たるアクトに、1月23日（水）発表のニューアルバム、さらに続くツアーが楽しみになるばかりだ。

Text by 服田昌子
Photo by ハヤシマコ

●羊文学

羊文学は美意識が統一された黒い衣装でメンバー3人が登場。2024年に4月には横浜アリーナ単独公演も決定するなど、この数年で大きな飛躍を遂げてきた。そんなスケールアップしたバンドの堂々たる存在感は一曲目の『光るとき』から一瞬で伝播する。サビでより壮大さが増し、ハンズアップする観客と一体となって清々しい光景が広がっていく。繊細な感情を力強く表現する塩塚モエカのボーカル、アウトロではノイジーなギターが鳴り響いて大きな歓声に包まれた。前半は『永遠のブルー』『GO!!!』と3曲続けて、MCタイムでの第一声は「帰ってきたよーー！」（塩塚）。この秋までFM802の番組『MUSIC FREAKS』のDJを務めてきたことから、「全員『MUSIC FREAKS』聴いてたと思うけど、どう調子は？」と声を掛ける。12月に最新アルバム『12hugs（like butter flies）』をリリースして、「今年はあっという間だった」とメンバー同士で2023年を振り返ると、「最後までイッキに行くからついて来いよ～」と勇ましく煽り、大きな歓声があがる。後半は疾走感が心地よい『マヨイガ』から『OOPARTS』と畳み掛けていき、アニメ『呪術廻戦』「渋谷事変」のEDテーマ曲となった推進力抜群の『more than words』で会場全体の盛り上がりも最高潮に。ラストの『1999』ではラウドなバンドサウンドの中で塩塚と河西ゆりか（Ba.）による美しいコーラスが降り注ぎ、「今年も本当にありがとう！ また来年会いましょう」と感謝の言葉を届けていた。メインストリームで活躍の場を広げつつも、軸にあるアンダーグラウンドな資質やオルタナ精神は決して失わない凄みが感じられ、これからの進化がさらに楽しみになってきた。

Text by エイミー野中
Photo by ハヤシマコ

●キタニタツヤ

紅白歌合戦出演アーティストとあって、R-STAGEをパンパンにしたのはキタニタツヤ。サポートに秋好佑紀（gt）、齋藤祥秀（ba）、平畑徹也（key）、佐藤丞（ds）を迎えた編成で、レディクレ初登場を果たした。FM802 DJの豊田穂乃花にバトンを渡され、まずはキタニのギターソロから始まる『スカー』で会場をロックに染める。そのまま佐藤のビートが鳴り響き『悪魔の踊り方』へ。キタニの歌唱力の高さはもちろんながら、前に放たれるエネルギーと纏うオーラ、表情、視線、色気あるパフォーマンスに飲み込まれる。MCでは「レディクレ初めまして、キタニタツヤといいます！」と明るく挨拶。朝イチで会場入りしたキタニは「マルシィ見て、DISH//見て、BREIMEN見て、ヨルシカでベース弾いて、マイヘア見て、ヤングスキニー見て、リョクシャカ見て、ラジオ2本録って羊文学見てたら"あっ出番だ！"となった（笑）」と充実ぶりを報告。続けて2023年の感謝を述べると、フロアから飛ぶ「武道館おめでとう！」の声に「やったー！ ありがとうー！」と両手両足を挙げて無邪気に喜びを表現する。ボカロ曲発表から10年を記念して、5月に初の武道館公演を行うキタニ。来年の決意を口にして、最新アルバム『ROUNDABOUT』から新曲の『Moonthief』を披露。ボカロやHIPHOP的要素も感じられるクールな楽曲で、リズム展開に胸が踊る。2度目のMCでは、他のステージを見ていた時、途中から入ってきた親子がノリノリで楽しむ様子を見て、自身が感じた体験と想いを話す。同日サポートをつとめたZ-STAGEでのヨルシカのライブでも「皆の楽しそうな顔を見て演奏してると、こっちもテンションが上がって、ライブが予定していたものから全然変わっていくし、演奏の温度感も変わる。結局は相互コミュニケーションだし、手紙を書いても受け取って読んでくれる人がいないと意味がないと痛感した。来年もそのことを思いながら、皆さんに言葉をかけてライブできたらと思いますので、どうかついてきてください！」と力強く叫ぶ。ラストはキタニの名をお茶の間に知らしめた『青のすみか』で締め括り、「また会えるよな！」と笑顔でステージを去った。新旧織り交ぜたセットリストで、初見の人も長年応援してきた人も楽しませつつ、さらなる活躍の予感にも満ちた、尊い時間となった。

Text by ERI KUBOTA
Photo by ハヤシマコ

●奥田民生はっとり

当日にUNICORN、マカロニえんぴつとしてレディクレに出演していた奥田民生とはっとりのふたりが、"奥田民生はっとり"名義でR-STAGEの大トリに登場。演奏はベース、ドラム、キーボードを従えたバンドセットで繰り広げられた。フロアのあちこちから飛んでくる「民生ー！」の声を受けて、冒頭から「オー！」と声を上げる貫禄十分の奥田。一方のはっとりは尊敬と憧れMAXと思われる大先輩との共演に10代に戻ったような表情でパフォーマンスしていたのが印象的だ。ふたりが向き合ってギターを弾くシーンも見られた『愛のために』。『ヤングアダルト』では観客もサビを大合唱する。そんな両者の楽曲を織り交ぜての世代を超えた共演に会場は大盛り上がり！「次の曲、僕大好きです」とはっとりが言うと、奥田は「俺も割と好き」と返して歌い出した『さすらい』。さらに、「僕の青春は一瞬でここまできた。そんな気持ちを込めて」と、青春時代から地続きの今という幸福な瞬間を噛み締めるように歌った『青春と一瞬』。曲間のMCではっとりが「来年もこのユニットの可能性はあるのでしょうか？」と問うと、「俺、来年は休む。再来年は還暦で忙しいから（笑）」といった会話が聞ける場面も。機会があればぜひ再共演を実現してほしいところだが、果たして...。そして、熱狂の時間はあっという間に過ぎてゆき、ラストチューンで披露されたのは"奥田民生はっとり"が誕生するきっかけとなった『旅をゆけ』（＊FM802とJR西日本によるプロジェクト『MUSIC TRAVELLERS』のキャンペーンソング）。ふたりの共作による同曲を力強くデュエットして大きな喝采を浴びる。場内を騒然とさせ、貴重な夢の共演を観客の脳裏に焼き付けていった。

Text by エイミー野中
Photo by ハヤシマコ

（2024年2月 6日更新）