「ちゃんとたくさんの人に当てはまるマイノリティになろうって」 主役になれない全ての人を照らす、反撃のSAKANAMONシーズン2 『GUZMANIA』引っ提げ只今絶賛ツアー中! 藤森元生(vo&g)インタビュー&動画コメント
昨年の結成10周年のアニバーサリーイヤーには、アルバムのリリースにワンマン/対バンツアーはもちろん、挙句の果てには映画『SAKANAMON THE MOVIE〜サカナモンは、なぜ売れないのか〜』の公開と盛大にブチ上げたSAKANAMON。今年に入っても『コウシン』『鬼』『アフターイメージ』の3ヵ月連続配信に、長期間花びらが色褪せず“明るい日陰で育つ”という特性を持つ観賞植物の名を冠したミニアルバム『GUZMANIA』のリリースと、途切れぬ創作意欲で次の10年に向けて早くも加速したかと思いきや、何やら水面下は紆余曲折あったご様子で。思春期に自らが焦がれたロックバンドのように、リスナーに、オーディエンスに、“このバンドは裏切らない”と思われるSAKANAMONになれているのか――? 現在は、『ミニアルバムリリースTOUR 2019 “SAKANAMON ver.11-12”』の真っ只中にいる藤森元生(vo&g)が、この1年の苦悩と気付きと決意を語るインタビュー。教室の端で、職場の隅で、主役になれない全ての人を照らす、SAKANAMONのシーズン2に迫る。
“俺ってズレてるのかな?”っていう気持ちがどんどん募ってきて
――昨年の結成10周年では、最終的には映画『SAKANAMON THE MOVIE〜サカナモンは、なぜ売れないのか〜』まで作って、本当に予期せぬ展開でしたけど。
「僕らもそんな気持ちでした(笑)。クラウドファンディングで結構大それたものが撮れることになったし、10周年ワンマンツアーもあったし、対バンツアーではみんなに祝ってもらって…とにかく振り返る暇もないぐらい忙しかったですね。で、映画を観て改めて、“あ〜だから売れないんだな”って(笑)」
――アハハハハ!(笑) 何で売れないと思った?
「例えば…まず売れようという姿勢が一番に来てないというか、“そもそもマイノリティに向けてやってるから”みたいな決め付けがあったんですよね。でも、TENGAや岩下食品の社長さんとお話しして…そうじゃないという結論に」
――言わば、同じようにマジョリティになじめず、世間が暗黙で求めるスタンダードな生き方ができなくて、悶々と過ごす人が世の中にはいっぱいいる=そこにはマーケットがある。そうなるともう、売れない言い訳ができないと。
「本当は分かってたんですよ。それを言葉にして言われちゃった(苦笑)。イヤなところには目を伏せがちというか、メンバー間でも衝突を避けるために気を使い合ってるところが良くも悪くもあるかなぁとか」
――前回の『・・・』('18)のインタビュー でも、元生くんはバンドができてるだけで嬉しいから、解散の危機が生まれるぐらいなら、とにかく軋轢を回避するスタイルだったもんね。そう考えたら、“このままでいいのかな?”と思いながらの、次の10年の始まりでもあるね。
「やっぱり課題もちゃんと出てきたというか、“この後どうしよう?”って悩んだ時期でしたね。10周年に相当頼り切ってたんで(笑)。コンスタントにいい曲を書き続ける気持ちを持った上で、何か新鮮なものを届けるためにはと考え、悩み…“俺ってズレてるのかな?”っていう気持ちがどんどん募ってきて。でも、まだ正解/不正解が分からなくてモヤモヤしてるときに、小出しに配信で曲を出してみたり、リクエストライブで今までの曲のリアクションを調査したところ…意外と受け入れてもらえてたのが分かって」
――SAKANAMONのお客さんの求めてるものと合致してたと。
「そうですそうです。だから、結果としては何も変えずに、むしろ自信を持って曲を作りをしていこうと」
――“俺ってズレてるのかな?”って今言ったけど、“ズレてるに決まってんだろ!”と個人的には思ったけど(笑)。
「アハハハハ!(笑)」
―― でも、それがSAKANAMONのよさでもあり、オリジナリティでもあり。
「そうなんですよね。ちゃんとたくさんの人たちに当てはまるマイノリティになろうっていう意識は、今までとは変わったところだと思います」
――“たくさんの人に当てはまるマイノリティ”、素晴らしいモットーですね。
お客さんにもよく言われます
“SAKANAMONの話ができる人が周りに全然いない”みたいに(笑)
――元生くんはその世間のムードみたいなものを喰らうタイプ? 最近、何か生き辛いなとか思う?
「まぁでも僕のプライベートはめちゃくちゃ狭いんで…どうだろうな? でも、作曲してるときとかは特にそうですね。そこでガッツリ疎外感をチャージする(笑)」
――元生くんの人生の軸足である疎外感ね(笑)。前回のインタビュー でも話したけど、だいたい厨二的発想って大人になっていくにつれてどうしても薄れていくのに、元生くんは本当にそこが純粋培養されたまま生きてて(笑)。『SECRET ROCK’N’ROLLER』(M-2)の世界観とかはまさにそうよね。大人になってもこれを書けるという。
「確かにそう! こっ恥ずかしさも若干あったんで、“大丈夫かな?”ってちょっと思ったんですよ。だけど、この気持ちは忘れちゃいけないなと思って(笑)。自分には厨二心があるというか、そういうのが好きなんだって認識するようにしてて。今思えば、NUMBER GIRLの“繰り返される諸行無常”とかも、かなり厨二心をくすぐられるし(笑)。それをちゃんと武器にして、みんなに“こういうの好きでしょ?”って言おうと」
――高校生の頃の自分が、“このバンドは裏切らない”と思ったような自分でいたいというのは一貫してますね。
「そうですね。一番捻くれてた時期の、あのどうしようもない自分みたいな人に聴いてほしいので」
――やっぱり学生時代に聴いたものじゃないと人格を形成されないというか、社会に出てから出会った音楽は人生を豊かにはしてくれるけど、自分を根本的に変えたりはしないなと思って。
「確かにそうですよね。学生時代に聴いてた音楽にいかに自分の人生が左右されてたか。“なるほど、そういう考え方もあるのか”とか、教科書みたいなもんですよね」
――『SECRET ROCK’N’ROLLER』はあの子と“好きなバンドが一緒だったら”ということを軸に展開していきますけど、まさにSAKANAMONってそういう存在のバンドじゃないですか。
「お客さんにもよく言われます、“SAKANAMONの話ができる人が周りに全然いない”って(笑)」
――アハハハハ!(笑) だからこそ、話ができたときに。
「知ってる人がいるだけで嬉しい、みたいな。だから…気持ちが分かるし、その人にとってSAKANAMONがそういうバンドであってほしいし」
――SAKANAMONのお客さんってめちゃくちゃ愛があるというか、そんな人たちばかりなのはなかなか珍しいなと。
「今ファンでいてくれる人たちはちょっと…特殊な気がします。握手会のときに“就職できなくて困ってるときに『クダラナインサイド』('17)を聴いて応援づけられました”とか、“小学生のときから聴いてて”とか、“私、男なんですけど”ってニューハーフの人が来たり、“大好きです!”って金髪丸坊主のヤンキーみたいな人が来たり(笑)」
――幅広い!(笑) 人種のるつぼだね。どんな人生を歩んでいても、SAKANAMONの音楽が届いてるのは嬉しいね。
「いろんな人が聴いてくれてるんだなっていう実感は、どんどん湧いてきてますね」
『GUZMANIA』では結構奇をてらったというか
バラエティに富んだとは思うんですけど、まだ富べるなぁと思ってて
――『YAMINABE』(M-4)なんかは『フリースタイルダンジョン』の影響を受けたと。ここまで生きてきて、今、素直にテレビ番組の影響を受けられるのもすごいなと思ったけど(笑)。
「確かに(笑)。でも、ラップはしてみたいなとずっと思ってて、いざやってみたら…別に僕にスタイルとかもないし、レペゼンとかもないし(笑)、メロディを付けずに歌うってめちゃくちゃ勇気がいるなと思いましたね。=リズムを意識するというか、ノリにすごく影響する。そこが新境地ではありました。トラックを大事にしてるラッパーの人たちの気持ちが分かったというか、“なるほど〜”って。昔は書きたい曲が先行してたんですけど、今は“何を書けばいいんだ!?”状態なので(笑)、いろんな勉強をして取り入れてますね」
――『BAN BAN ALIEN』(M-5)は空気の読めない人について書いた曲で。でも、元生くん自体が一見、空気を読まなさそうな人なのにっていう(笑)。
「アハハハハ!(笑) まぁブーメランかもしれないですけど、一応これでも気は使ってるつもりなので(笑)。でもね、そういう人に悪気があるのかは何とも言えないですけど、それを言ってあげられない自分もいるし。だから、“もう関わらない!”という答えがこの曲です(笑)」
――あと、今回の『矢文』(M-6)もしかり、ここ近年のSAKANAMONのミドルバラードの充実ぶりは特筆すべきところで。持ち味はギターロック×疾走感でしょうけど、この辺がもしかしたら突破口というか、世間にSAKANAMONが届くとしたら…と思うぐらいで。
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「『矢文』を投げたのは、まさにそんな感覚かもしれないです。ばっかりだとちょっと飽きるんで、小出しにするタイプなんですよ。現にSAKANAMONはミドルとかバラードが少ないんで、だからこそ映えるなとも思うし、してやったりなところもあったり。そんなに数を書いてないからこそ、今は初期衝動的にいい曲が書けてるんだと思います。今後、味をしめたらちょっと怖いですけど(笑)、『ロックバンド』(M-10)が書けたから『鬼』('19)を書いて、『鬼』が書けたから『矢文』を書いて、みたいに、ヘンな曲ばっかりじゃないように常にバランスを考えて曲を作ってるんで。でも結局、『矢文』の評判次第なところもありますけど(笑)」
――そんな『矢文』では、主人公になれない人に光を当てようと。
「“この応援ソングでは私は応援されない”みたいな人たちにも、ちゃんとスポットライトを当てられるようにって」
――『矢文』と『並行世界のすゝめ』(M-1)には、テスラは泣かない。の飯野桃子(p)さんが参加してくれています。
「最近は3人の楽器以外の新鮮な音を入れたがっちゃいます。女の人の声も好きだし、『矢文』で言うと、二胡とかも入れてよかったなと思いましたね。バイオリンとかの音も好きなんですけど、ベタだなと思って(笑)。何か違う音が欲しいなと思って、いろんな音をシンセのサンプルで聴いてみて、“二胡だ!”って」
――二胡の奏者の方は、マカロニえんぴつの長谷川大喜(key)くんから紹介してもらったとか。テスラといいマカえんといい、SAKANAMONは相変わらず事務所をフル活用してるね(笑)。
「本当にそうですね(笑)。最近、事務所に小さいレコーディングスタジオもできたんですけど、そこを作る礎になってくれたであろうsumikaとかSUPER BEAVERじゃなくて、僕らがここぞとばかりに使ってるんで(笑)。ただ今回は、“えぇ〜どんな曲書けばいいんだろう?”というところから、“どうだ!”って出すまでに1年8ヵ月かかって。デビューしてから今まで、こんなに間隔が空いたことがなくて、悩んだし、いっぱい考えさせられました。だから今は割とポジティブ。『GUZMANIA』では結構奇をてらったというか、バラエティに富んだとは思うんですけど、まだ富べるなぁと思ってて。もっと面白いことやりたいという意識のもとに、次の作品も頑張って作ろうと思ってます!」
――ツアーも始まってますけど、10周年を経た今のSAKANAMONのライブはどうです?
「何か…いい感じだと思いますね。みんなのリアクションもいい気がします、MCとかは置いといて!(笑)」
ライター奥“ボウイ”昌史さんのオススメ!
「好きなバンド名を聞いたら、何となくその人が分かりますよね。それが自分と一致したときなんて、いろんな説明をすっ飛ばして一気にソウルメイト感覚。しかもそのバンドがニッチであればあるほど、そのスパーク度はすごくて。SAKANAMONは紛れもなくその類で、“SAKANAMONを知ってるなんて、好きだなんて、あんたなかなかやるじゃない”って絶対思うヤツです(笑)。それが今をときめくあのオシャレバンドとか、大物バンドじゃダメなんですよ。SAKANAMONの安心感、信頼感。『SECRET ROCK’N’ROLLER』(M-2)なんかはまさにそんな世界ですが、相変わらず再生した途端に“キター!”って思える持ち味と、高純度の厨二イズムは『GUZMANIA』でも健在(笑)。そして、ここだけの話『矢文』は、ファンクラブイベントで某バンドの名曲をカバーしたときに元生くんが、“なるほど、こんな歌詞だったんだ。いいじゃん”とインスパイアされたとのこと(笑)。疎外感を発散するために音楽を始めた結果、それによって今は人前に立つ仕事をしている彼は、まさに人に支持されるマイノリティ。このマイノリティがこのままの状態でどこまでマジョリティになれるのか? 10周年を経て背負ってくれたSAKANAMONの今後が、また楽しみになりました。デビューした頃より今の方が、このバンドのすごさを、才能を、より切実に感じています」
(2019年11月 8日更新)
Check
Movie
バンドの売りと弱点を自ら暴露(笑) 藤森元生(vo&g)からの動画コメント
VIDEO
Release
ジャケットは絵本作家・山村浩二作 新曲にライブテイクを加えた豪華盤
Mini Album 『GUZMANIA』 発売中 1667円(税別) TALTO TLTO-015 <収録曲> 01. 並行世界のすゝめ 02. SECRET ROCK’N’ROLLER 03. 箱人間 04. YAMINABE 05. BAN BAN ALIEN 06. 矢文 07. 反照(※) 08. リーマンビートボックス(※) 09. テヲフル(※) 10. ロックバンド(※) ※…2019.04.07@マイナビBLITZ赤坂
Profile
サカナモン…写真左より、木村浩大(ds)、藤森元生(vo&g)、森野光晴(b)。上京と同時に組んでいたバンドが解散し1人で曲作りを続けていた藤森が、’07年11月に専門学校の同級生である森野と出会い結成。“聴く人の生活の肴になるような音楽を作りたい”という願いからSAKANAMONと命名する。’09年4月より木村が加入。’12年に1stフルアルバム『na』でメジャーデビュー。’17年、shibuya eggmanのレーベルであるmurffin discs内に発足した、新ロックレーベルTALTOへ移籍。’18年には結成10周年を迎え、フェイクドキュメンタリー映画『SAKANAMON THE MOVIE〜サカナモンは、なぜ売れないのか〜』の制作や、全国ワンマンツアー/対バンツアーを開催し、盛大にアニバーサリーイヤーを締めくくる。’19年1月より『コウシン』『鬼』『アフターイメージ』と三ヵ月連続配信シングルをリリース。8月7日には、通算5枚目のミニアルバム『GUZMANIA』をリリースした。“サカなもん”というマスコットキャラクターを従え、独特のライブパフォーマンスを展開している。SAKANAMON オフィシャルサイト http://sakanamon.com/
Live
リリースツアーも中盤戦に! 来年はレーベルナイトで東福阪へ
『ミニアルバムリリースTOUR 2019 “SAKANAMON ver.11-12”』【東京公演】 ▼9月29日(日)shibuya eggman【静岡公演】 ▼10月4日(金)浜松メスカリンドライブ【兵庫公演】 ▼10月5日(土)神戸 太陽と虎【香川公演】 ▼10月11日(金)TOONICE【福岡公演】 ▼10月13日(日)INSA【広島公演】 ▼10月14日(月・祝)HIROSHIMA BACK BEAT【宮城公演】 ▼10月25日(金)LIVE HOUSE enn 2nd【北海道公演】 ▼10月27日(日)札幌Crazy Monkey【愛知公演】 ▼11月9日(土)池下CLUB UPSET
Pick Up!!
【大阪公演】
チケット発売中 Pコード149-724 ▼11月10日(日)18:00 心斎橋JANUS オールスタンディング3300円 清水音泉■06(6357)3666 ※小学生以上は有料、 未就学児童は入場不可。
【新潟公演】 ▼11月23日(土) GOLDEN PIGS BLACK STAGE【東京公演】 ▼12月1日(日)渋谷CLUB QUATTRO
『TALTOナイト2020 東阪福ツアー』【東京公演】 ▼1月31日(金)TSUTAYA O-WEST【福岡公演】 ▼2月7日(金)INSA
Pick Up!!
【大阪公演】
一般発売12月12日(土) Pコード169-016 ▼2月9日(日) 心斎橋JANUS オールスタンディング4000円 [出演]東京カランコロン/SAKANAMON/マカロニえんぴつ [オープニングアクト]あり 清水音泉■06(6357)3666 ※小学生以上は有料、 未就学児童は入場不可。
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