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想像のその先へ――
結成20周年イヤーに突入したthe band apartのアザーサイドとソロ
音楽へのひたむきさが結実した2作品を携えたツアーも控えた
荒井岳史インタビュー&動画コメント

昨年暮れにアコースティック編成によるthe band apart(naked)の『2』、そして荒井岳史のソロ4作目となるアルバム『will』が同日に発売された。2017年は、前作を携えたthe band apart(naked)のツアーに始まり、母体であるthe band apartとしても傑作『Memories To Go』のリリース、さらに全国ツアーを行うなど隙間なく活動していたかに見えた彼ら。けれど、その中にあってもたゆむことなく創造は続けられていた。2018年は結成20周年を迎え、ファンからのリクエストをもとにセットリストを組む20周年記念リクエストツアーが4月からスタート。それに先駆け、3月には今回の『will』を携えた荒井のソロツアーが開催。そして間近の2月2日(金)に迫ったthe band apart(naked)の初のビルボードライブ大阪での公演、と今年も彼らの音に直接触れることのできる機会が続々と用意されている。アコースティックアレンジの範疇を超え新曲としても楽しめそうなthe band apart(naked)の『2』、そして自身の新作『will』について荒井岳史に語ってもらった。


アコースティックをやったことがバンドの意識改革につながった

 
――昨年夏に『Memories To Go』をリリースしてから半年もしないうちにthe band apart(naked)が聴けるとは思いませんでした。
 
「9月から『Memories To Go』のツアーが始まったので、ソロもthe band apart(naked)も7~8月頃にはほぼ同時進行で作ってました。だからもう、去年の夏はぐったりしてましたね(笑)。ツアーのリハもしなくちゃいけないし、nakedもリアレンジと言いながら結構曲自体が変わっているので、一から作る瞬間もあったりして。そこにソロの制作も入ってきた時はぐったりどころじゃなかったですね」
 
――荒井さんの中でソロとバンドは明確にわかれていますか?
 
「違いますね。the band apartは4人でやることであって、しかも今回みたいなnakedの場合、エレキの時とはちょっと違ってひとりで作りこむ作業でもなく、スタジオでセッションしたりディスカッションしながら曲を作り込んでいくんですね。真新しい曲だと手探りで作者の意図を汲んでいく作業になりますけど、リアレンジということで曲に対する理解度が最初からあるからでしょうね。それがバンドのやり方で、ソロはコンセプト的にも意識的にthe band apartとはわけようとしているし、今作に参加しているメンバーは前作と同じなのでその点はバンドっぽいんですが、自分の名前が冠になっているということに対する意識の差みたいなものはあって。今回制作していて思ったのは、バンドとソロを同時に作業していてもたとえばnakedの曲がソロっぽくなることもなければ、ソロがバンドっぽくなることもなく、不思議と切り替えができるようになってきていました。これまで3枚出してソロも5年近くやってきたことで、自分の中でも住み分けができるようになったんでしょうね」
 
――先にthe band apart(naked)のことから伺います。さかのぼると、『1』が発売されたのは2016年ですね。
 
「そうですね。アコースティック編成のライブ自体はもうちょっと前からやっていたんですが、CDを出そうかという話をした時に、the band apartという同じ名前でアコースティック盤を出すのはややこしいという話になって、the band apart(naked)という名義を付けて。その頃はまだ手探りだったんですけど、だんだんアコースティックなりの楽しさがわかってきましたね」
 
――前作ではアコースティックで録音された曲とリアレンジ曲が聴けましたが、『2』では既存曲のリアレンジというよりガラリと違う『12月の(Cavity Dub)』(M-5)もあればライブ会場限定で発売されていた『Paper Planes』(M-6)、さらにシュガーベイブのカバー『DOWN TOWN』(M-4)もありますね。
 
「『1』で僕らの主要曲みたいなものをほぼ全部出してしまった状態で、いちばんの剛速球をすでに投げつくした状態から今回の2枚目はスタートしたんですね(苦笑)。“今回はどういう変化球を投げるか?”となった時に、ただの変化球じゃおもしろくないし驚きのある変化球を投げないと、ということで原(昌和)が歌うシュガーベイブの『DOWN TOWN』(M-4)があったり。これは、原がやりたかったんじゃなくて僕がやってもらいたかったんですね。選曲に関しては、今回はそのまま入れるんじゃなくヒネって作ってみようという話をしていて、そうした時に化ける曲を探していった感じですね。結構試行錯誤しながらの作業で、一度作ってダメだってことでもう一度作り直したものもあったし、そうした中で最終的に残った7曲ですね」
 
――『DOWN TOWN』で原さんがボーカルをとるのは荒井さんのアイディアだったんですか。
 
「せっかくだったらnakedならではのことをやりたいし、原の歌うボーカルの感じも好きなんですね。前に□□□ feat. the band apartで『前へ』(2016年)を作った時に原が歌った曲(『神話具現feat.原昌和』)もあるぐらいなので、みんなも想像がつきつつでももうちょっと聴きたいって感じもあるんじゃないかなって。原本人は“別に歌わなくてもいいんじゃないの?”みたいな感じで決して超ノリノリだったわけじゃなくて、僕がお願いしてやってもらった感じで」
 
――nakedをやったことでthe band apartにどんなフィードバックがありました?
 
「僕個人としては歌の部分ですごくフィードバックがありました。アコースティックになるとどうしても歌の比重がエレキよりも増える気がするんですよね。それはすごく勉強になったし、アコースティックをやったからこそバンドではこういうふうに歌えばいいんだなというのがわかったところもある。バンドとしても、アコースティックをやるとごまかしがきかない分、個々の技術も向上しますよね。それぞれの音に対することとか、細かいところの意識改革みたいなものはあったかもしれません。ただ思いきり歌えばいい、思いきり弾いて思いきり叩けばいいみたいなことじゃないというのはみんなわかっていて、より演奏に対する精度、技術に対する意識みたいなところの変化ですよね」
 
――今後もthe band apartと並行して続いていきますか?
 
「やっていくと思います。アコースティック編成でやる機会も、場所も以前より増えましたよね。バンドとしてこういう活動ができることもマストだと思うし、常に準備をしておいたほうがいいのかなとも思います。バンドで8枚もアルバムを出してるんで曲数自体は100曲ぐらいあるし、それ以外にも今作の『Paper Planes』みたいに新しく作ってもいいわけですしね」
 
 
ソロは荒井岳史の意志(=will)の集合体
 
 
――そして荒井さんのソロ『will』ですが、1曲目の『リメンバー・ミー』からとても開けた印象で。一緒に聴いていたこともあって、the band apart(naked)の『2』は多少ともバンドの曲を知っているという点で想像できる部分と、それを超えてきた印象がありましたが、ソロ作は予想を全部ひっくり返されるぐらいの超え方で。もちろんすごく良いアルバムで。
 
「良かったです。いい曲を作りたいという気持ちはもちろんあるんですけど、“違うことをやりたい”という気持ちもあるので。最初にも言いましたけど前作『プリテンダー』を作った時と同じチームでもう一回やりたくて、プロデューサーの三浦(康嗣、□□□)君、ベースの村田シゲ(□□□)、ドラムの一瀬正和さん(MONOEYES、Asparagus)とレコーディングエンジニアさんも含めたメンバーでやることが『will』を作る上での最初のモチベーションで。曲も三浦康嗣に3曲、村田シゲに1曲作ってもらって、こういう言い方は誤解を生むかもしれないけど、ふざけて作っているぐらいのくだけた感じでやっていましたね。特に2人に作ってもらった曲は、彼らが俺にどんなことを歌わせたいかとか、どんな曲を歌わせたら笑えるかを考えて作っているというか(笑)。唯一、俺が彼らに投げたキーワードは、“リック・アストリーみたいな曲を作ってよ”だけですね」
 
――それは『ミステリアス・ガール』(M-6)のことでしょうか(笑)。
 
「はい(笑)。いきなり作風が変わりますよね。最後のほうは何を歌ってるのかよくわかんないっていう。僕は、歌いながらレコーディングに立ち会っている村田シゲを笑わせようとしてましたし、俺もやりながら笑いをこらえてました。その空気感も入れたかったし、三浦康嗣の曲もレコーディング中に彼が必死で笑いをこらえる感じでしたね。7曲目の『今夜も呑んでる』も三浦くんの曲なんですが、サポートメンバーも含めて全員に歌わせるっていうのをやりたくて、俺も一応歌ってはいるんですけどいちばん誰よりも目立ってないっていう(笑)」
 
――おもしろい曲でした。ドラムの一瀬さんのメンバー紹介が延々続いたり。
 
「もはや誰の曲かわかんないぐらいで、本人もやりながら笑っちゃってますよね。セリフはあとから消すはずだったものを全部入れているから“あれ?”とかもそのまま入っていて。ソロとはいえサポートメンバーやエンジニアの益子(樹)さんと築いてきた関係もあって、それがあった上での曲であり、そのつながりみたいなものを表している曲ですね。かなり異質な曲ですけどスキットとしても聴けるし、僕らの関係性を知ってる人だったらおもしろがって聴けるんじゃないかな。身内ノリといえばそうなんでしょうけど、それを見せるのも一つのやり方だし、それも自分のパーソナルな部分を見せることになるのかなって」
 
――それこそ、先ほども話に出た口口口とのシングルを聴いた時の真面目なのかふざけてやっているのかわからない意外性や衝撃、おもしろさがありました。
 
「そういうニュアンスも知っていれば楽しめるでしょうし、桑田佳祐さんがSUPER CHIMPANZEE名義で発表した『クリといつまでも』的な曲としても聴けるのかなと。あそこまでうまくできているかはわからないですけどそういう感じのノリで、僕が聴いてきた原体験的なものはフィードバックできているかなとは思いますね」
 
――リック・アストリーみたいな曲を、と発注された『ミステリアス・ガール』はソロならではの境地ですね。
 
「こういう打ち込みっぽいのはバンドではできないし、このおもしろさはソロでしかできないでしょうね」
 
――そういうおもしろさも聴きどころの一つですが、やっぱり1曲目の『リメンバー・ミー』が聴こえた時のパンと開けた感じはこれまで以上にとても新鮮でした。
 
「この曲こそ、桑田さんへの憧れみたいなものを自分なりの表現に落とし込んだものですね。この曲、実は僕の人生で最速でできた曲で、コード進行とメロと歌詞の大半を6時間ぐらいで作りました。レコーディングの前日に1曲どうしても足りないということになって、nakedと並行してやっていたこともあるしそもそも『Memories To Go』の制作自体が押してソロ用の曲をゆっくり練る時間をそっちに使っちゃったこともあって。それまで書き溜めていたものプラス一気に作っていった曲もあったんですが、『リメンバー・ミー』に関してはもう背水の陣どころじゃなかったんですが、やればできるもんなんだなと思いましたね」
 
――歌詞の詩情も素晴らしくて、“空に散った花火”とか“誰もいない海辺”とか、誰もが想像できて思い当たる風景を描きながらも、曲として新鮮さがあるんですね。
 
「歌詞の内容もバンドの時とは変えたくて、簡単に言えば恥ずかしさを捨てることと、気をてらわないということなんですよね。それと、自分がずっと聴いてきたものや90年代感。そのぐらいの時代に聴こえてきていたものを彷彿とさせる言葉選びで『リメンバー・ミー』の歌詞は書きましたね。俺の中での桑田さんっぽいアプローチをしてみたり、そういう遊びみたいなものを恥ずかしがらずにやれたり、憧れを隠さないということが音楽をやる上でとても大事な気がするんですよね。たいていの人は、“これをやるとあの人っぽくなる”みたいなのを避ける傾向があるように思うんですけど、オリジナリティを出したいという気持ちは僕もないわけじゃないけど、重要視はしていない。the band apartは他にあまりいないタイプのバンドと言ってもらえることが多いから矛盾して聞こえるかもしれないんですけど、僕ら自身は別に人と違うことをやろうとはしていないんですね。20代の頃は人がやっていないことをやりたいという気持ちがあったんですけど、最近はそれよりも自分の憧れを隠さずに、自分の好きなものや影響を受けたものをきちんと自分の作品に出す。それをこういう場でも普通に話す方が気持ちいいなと思うんですね。憧れていても、結局やる人が違えばどうしたって同じものは出来ないということがわかっているし、それを隠さないでやった方が楽しいんですよ。完全に自己満足の世界なんですけど、作っていくうちに自分の中にある好きなものや憧れにだんだん近づいていく楽しさみたいなのもあって。その楽しさって、音楽を始めた時の原体験に共通する部分なんだと思います。憧れて音楽をやり始めて、“あれっぽいのを作ろうぜ”って言いながら曲を作ったり演奏したりしてきたわけで、自分が曲を作る時には実はそれをいちばん大事にしています。オリジナリティを大事にしている人を批判するわけじゃないんですが、何を作るかじゃなく誰がやるかの問題だと思っているんですね」
 
――なるほど。
 
「さっき挙げられたフレーズは俺が思う90年代感なのかなと思う。凝った表現ではないし、言ってしまえば陳腐な表現だと思うんですけど、それぐらいのほうが感情移入はしやすいのかなって。前に『Memories To Go』の時にも感情移入について話したかもしれませんが、洗練され過ぎていたり高尚とされるものって人を選ぶというか急に入り口が狭くなるんですよね。音楽は大衆芸術の最たるものだと思っているし、ダサいぐらいのほうが感情移入しやすくて良いんじゃないかなって」
 
――ポピュラリティという意味でのポップな音楽であると思います。それとともに、『beside』(2014年)が出た時のインタビューで、“聴き流せるものであっていい”と話されていたのが印象に残っています。
 
「その通りで、今作でもその感じは同じです。正座をしてじっくり神妙に聴かないといけない音楽なんていうものは自分にとっては割とどうでもよくて、たとえば電車で通勤している時にふわっと聴いて何か別のことを考えている際のお供みたいになったたり、ドライブしながらとか洗濯物を干しながらとかでもいい。そういう感覚で音楽に接していいと思うし、そうやって聴き流せるものも、じっくり腰を据えて聴かないといけない音楽を作るのと同じぐらい難しかったりチャレンジし甲斐のあることなんですよね。僕の中では大衆的な、ポピュラリティのある誰でもすっと流して聴けるものは好きだしそれを目指してやっているし、僕自身がそういう音楽の聴き方をしてるんだと思います。暮らしのBGM的な感じで、そこで何を思うかは聴き手の自由だし、その自由さがあるから良いんですよね。歌にどんな主張が込められていても、それをどう取るかは受け手の世界なので僕から言うことはないっていう感じなんですよね」
 
――切々とした曲調の『0時過ぎのミッドナイト』(M-9)に、“ドラマの真似みたい”という歌詞が出てきますが、曲自体がとてもドラマチックで、歌の主人公が自分のとった行動や自分自身を皮肉ってそう言っているように聴こえました。
 
「これは僕の表現でしかないんですけど、男女間に限らず感情が溢れる瞬間ってただきれいなだけじゃなくて実はどろどろしているし、ちょっと離れて醒めた目で見てみると滑稽にも見える。それぐらいのニュアンスなんですよね。たとえば街中で抱き合っている人達がいたとして、全然関係ない自分からすれば“何やってんの?”みたいな感じだけど、当事者たちはガッとなって盛り上がってる。ライブもそういうところがあって、ウワーッて盛り上がったところで演者が熱い感情のままにステージから“お前ら、行くぞ!”とかって煽っている場面は多いですよね。うちのバンドはそういうことを言いませんけど(笑)、あれもちょっと引いたところから平熱の状態で眺めると、すごくダサいことをやっているように見える。そういうふうに当事者たちの間に熱い感情があることがわかりつつ、俯瞰で見てる感じを書いているんですね。それは20代の頃の自分にはなかった感覚なんでしょうね。俺も含めて、世の中のなにもかもは意外とダサいし生々しいし、人間の感情から起こることってきれいなだけのものじゃない。だからこそ良いんだし、そのエグさが良いというか」
 
――『夢から醒めない』(M-5)は、なんとなく塞いだ気持ちのまま日常を生きながら、それでもなりふり構わずに歌を歌うという心情が描かれていたり、“想像のその先へ”と歌われるあたりに駆り立てられるものを感じます。『希望』(M-3)も同様で、特に強い意志を感じる2曲だなぁと。
 
「その2曲に共通しているのは、演奏する人とそれを聴いてくれる人という二者があって書いているもので、『夢から醒めない』はまさにそういう曲なんですよね。自分の気持ちが入っているんですかね。『希望』は珍しく主観っぽく書いてみるというか、自分のことを少し書いてみていますね。今現在の、若手でもなければベテランでもない自分のこの複雑なお年頃ならではの感じというんでしょうか(笑)。世間ではそれを中堅と呼ぶんでしょうけど、そのカテゴライズしづらい感じが出ているんだと思います。“その先へ”という言葉はそんなに考えて書いたわけじゃないんですけど、20歳過ぎぐらいの頃は自分が40歳ぐらいまでバンドをやっていると思わなかったわけですよね。16歳ぐらいの時に憧れて音楽をやりたいと思って、せいぜい10年先ぐらいまでしか想像できてなかったけど、今年齢的にも当時は夢のように思っていた想像している先の未来に生きているわけで。この先への期待もあれば不安もあって、感じることは以前とは違ったりもするし、そういう気持ちなんだと思います」
 
――『Wonder Magic』(M-8)は三浦さんの曲でしょうか。とても華やかなディズニー感のある曲で。
 
「ですよね。ゴダイゴ感もあるというか、不思議な今までやってこなかった感じの曲ですね。これはもう三浦のふざけてるところで、俺にこういうことを歌わせて笑いたかったんだろうなって(笑)。俺も真剣に歌入れに臨んで、ものすごく真面目に歌いましたから」
 
――荒井さんの新しい扉が開きました?
 
「そうですね。三浦節も感じつつ、彼としても新しい扉が開いてるかもしれないですね。彼は言葉とアレンジも含めた音の繋げ方がすごくうまくて、2番の歌詞で“竜宮城さえ裸足で逃げ出すさ”っていうバカみたいな歌詞があって明らかにフザけてるんですけど(笑)、そこだけカウベルをコンコン鳴らしてコミカルな感じにさせるアレンジをしたりバックとの繋げ方がすごくうまい。そういう砕け方がさすがで、ふざけたこともやっていますけど曲自体は相当練られていて。矛盾した言い方になりますけど、真剣にやらないとふざけられないし、中途半端じゃなく真剣にふざけないといいものができない。お笑いの方が笑えるネタを真剣に考えるのに近いのかなと思ったりもしますね」
 
――最後の『夜は不思議』(M-10)はアルバムを心地よく締める1曲ですね。
 
「エンドロール的な曲で少し余韻が残るようなものが欲しかったんですね。これも三浦君の曲なんですけど、『プリテンダー』を少しなぞっているところもあって、あの時も最後の曲『ワンモアタイム』が三浦君の曲で、そのテイストで1曲作れませんかとお願いして。『0時過ぎのミッドナイト』で終わっちゃうと余韻としてはちょっとエモくて、それも僕の持っている成分なんでしょうけど、それじゃなくて爽やかな切なさで終わりたいというか。これはいちばん最後にできた曲でレコーディングもいちばん最後にやりました。自分としてもこれを最後に録音して良かったなと思いましたし、締めの1曲という感じが歌にも出ているかなと思います。最初はかなり無理やりに、強引に飛ばした飛行機だったんですけど、うまく着地したなって」
 
――『will』というタイトルは最後につけたんですか?
 
「『sparklers』(2014年)からこれまでずっとタイトルは1ワードなので、引き続きそれが良かったのと、今回はこのメンバーでもう一回やりたかったこととか『希望』でも歌っていますけど個人的な出来事を機に音楽をやることについて考え直す機会があったり、聴いてもらう人に対して真摯に向き合う、誠意を持っていこうという意志、その集合体ですよね。willってタイトル自体は世の中にめちゃめちゃありふれているタイトルですけど、そこの説明はあえてせずに荒井岳史の意志ということで、これにしました。そういう意味合いを全部持たせてるんですけど、これまででいちばんベーシックな言葉が来ましたね」
 
――3月13日(火)を皮切りにソロツアーも始まりますね。結成20周年記念のリクエストツアーもありますが、近いところでは2月2日(金)ビルボードライブ大阪でthe band apart(naked)のライブがありますね。楽しみです。
 
「僕らも楽しみなんですけど、ユルさみたいなところがnakedの特長なんでそこを大事にして、会場のおしゃれな雰囲気にのまれずにやりたいですね。結成20周年の今年も体に気を付けて頑張ります」

text by 梶原有紀子



(2018年1月24日更新)


Check

Movie Comment

Release

the band apart(naked)

Album『2』
発売中 2100円(税抜)
ASIAN GOTHIC LABEL
asg-039

《収録曲》
01. Can’t remember 2
02. stereo 2
03. from resonance 2
04. DOWN TOWN(シュガーベイブ カバー)
05. 12月の(Cavity Dub)
06. Paper Planes
07. 仇になっても 2
08. Stay Up Late 2

荒井岳史

Album『will』
発売中 3000円(税抜)
KATSUSA PLANNING
KATS-1017

《収録曲》
01. リメンバー・ミー
02. 名前
03. 希望
04. おいてけぼり
05. 夢から醒めない
06. ミステリアス・ガール
07. 夜も呑んでる
08. Wonder Magic
09. 0時過ぎのミッドナイト
10. 夜は不思議

Profile

ザ・バンド・アパート…荒井岳史(vo&g)、原昌和(b)、川崎亘一(g)、木暮栄一(ds)。’98年結成。’01年にシングル『FOOL PROOF』発売。翌年『Eric.W』、’03年に1stアルバム『K. AND HIS BIKE』リリース。オルタナティブロックやジャズ、フュージョンなどの幅広い音楽要素にヒップホップのサンプリング感覚も加味された多彩な音楽性と、高い技術、メロディアスな歌の融合は当時の音楽シーンに革新的な衝撃をもたらした。翌’04年、メンバーみずからが運営するasian gothic labelより『RECOGNIZE ep』をリリース。’06年に以前より親交のあったアメリカのバンド、MOCK ORANGEとスプリット盤『DANIELS E.P.』をリリース(’16年に第2弾スプリットシングル『Daniels e.p.2』を発売)。’12年にリリースした『2012e.p.』ではそれまでの英語詞に代わり、全曲日本語詞曲になった。ボーカルの荒井岳史は’13年にソロミニアルバム『sparlers』を発売。以降、’14年に1stアルバム『beside』、’16年に2ndアルバム『プリテンダー』発売。ソロでのライブ活動も活発に行っている。’16年にthe band apart(naked)として『coral reef』などの既存曲をアコースティックで収録した初のアコースティックアルバム『1』をリリース。同時期に、□□□feat.the band apart名義で『前へ』リリース。これはthe band apartのメンバー4人それぞれのソロ曲+the band apartの名曲『Eric.W』にいとうせいこうのラップを乗せた曲と、□□□の新曲を収録した遊び心にあふれた1枚。’17年7月に約2年半ぶりのアルバム『Memories to Go』をリリース。同年12月20日にthe band apart(naked)の『2』と、荒井武史の3rdソロ『will』が同時リリース。the band apart(naked)として初のビルボードライブ、ブルーノートを回る東名阪ワンマンツアーが2月2日(金)ビルボードライブ大阪を皮切りにスタート。また、荒井武史のソロツアーが3月13日(火)名古屋よりスタート。大阪公演は3月14日(水)CONPASS。また、投票により選ばれた楽曲でセットリストを組む20周年記念リクエストツアーは、4月1日(日)仙台より5月27日(日)東京・新木場STUDIO COASTまで全国8か所で開催。大阪公演は4月21日(土)のBIG CAT。現在、特設サイトにてリクエストを受付中。

the band apart オフィシャルサイト
http://asiangothic.org/


Live

the band apart(naked)

Pick Up!!

【大阪公演】

発売中 Pコード101-831
▼2月2日(金)18:30/21:30
ビルボードライブ大阪
自由席6500円
※本チケットに整理番号はございません。ご希望の方は発券後、お問合せ先まで要連絡。当日は整理番号順でお席へご案内しておりますが、整理番号をお持ちでないお客様は開場時間の30分後のご案内となります。カジュアルエリアの取り扱いなし。未就学児童及び高校生同士の入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。
[問]ビルボードライブ大阪■06(6342)7722

【東京公演】
発売中 Pコード102-732
▼2月9日(金)19:00/21:30
ビルボードライブ東京
自由席6500円
※未就学児童入店不可。18歳未満・高校生は成人の同伴にて入店可。チケット購入後、手元にチケットを用意の上、問合せ先まで要連絡(入場整理番号決定)。
[問]ビルボードライブ東京■03(3405)1133

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荒井岳史

フルカワユタカ
『yesterday today tomorrow TOUR extra (acoustic live)』

【鹿児島公演】
▼2月12日(月) 鹿児島 Live HEAVEN
【福島公演】
▼2月18日(日) 福島 Player's Cafe
【北海道公演】
▼2月25日(日) 札幌 musica hall cafe
【京都公演】
▼3月10日(土) 京都 SOLE CAFE
【石川公演】
▼3月11日(日) 金沢 もっきりや

『3rd full album “will” release TOUR』
【愛知公演】

▼3月13日(火) 池下 CLUB UPSET

Pick Up!!

【大阪公演】

2月17日(土)一般発売 Pコード106-453
▼3月14日(水)19:30
CONPASS
オールスタンディング3200円
※未就学児童は入場不可。
[問]GREENS■06(6882)1224
[問]CONPASS■06(6243)1666

【東京公演】
▼3月22日(木) 新代田FEVER

チケット情報はこちら

Column1

アルバム『Memories to Go』をリリースしレコ発ツアーを開催! 来年、結成20周年を迎えるthe band apartの荒井岳史(vo&g)インタビュー&動画コメント

Column2

the band apartと□□□が徹底的に遊んだ『前へ』、バンアパの歴代の名曲をアコースティックで再録した『1』、真逆で異色の盟友が2枚の最新作を語る! 三浦康嗣×川崎亘一インタビュー&動画コメント

Column3

「“あいつ、フザケてんのか?”くらいのことをやりたかった」the band apart荒井岳史がルーツと衝動に導かれた2ndソロアルバム携え、いざツアーファイナルへ! 『プリテンダー』インタビュー&動画コメント

Comment!!

ライター梶原由紀子からの
オススメコメントはコチラ!

「インタビューで荒井さんが話していたことの中で特に印象に残っているのが、「たいていの人は、“これをやるとあの人っぽくなる”みたいなのを避ける傾向がある……」のあたり。自分が鳴らす音楽は他の誰のものでもないという揺るぎなさは、the band apartが生み出す“誰にも似ていない音楽”の根幹をなすものでもある。それとともに、荒井さんのソロ『will』に収録されている『夢から醒めない』に描かれた、揺れ動く心情とそこから這い出すように先へと手を伸ばすじりじりとした攻防戦がとてもリアル。揺るぎなさに背中を押され、じりじりとした感情の揺れに内面の脆さが救われる。そういうベタで泥くさい作用とともに、音楽が導いてくれる先にある未来を感じさせてくれるところ、もろ手を挙げてハチャメチャに“カッコエエー!”と叫びたくなるところがthe band apartの良いところ」