『もうガマンでけへんわっ!』直前特別企画-前編-
【永久保存版】忘れられない、最後の記憶――
結成10周年記念セルフカバーアルバム『and10(2003~2013)』
そして、泉健太郎(b)の脱退を語る。セカイイチ全員インタビュー
(2/2)
ちょっと正気の沙汰じゃない(笑)
――今回は1曲だけ新曲『真ん中の歌』(M-11)も入ってます。この並びの中で敢えて1曲新曲入れたっていうのは?
岩﨑「やっぱりただの新曲じゃ許されない何かをヒシヒシと感じた(笑)」
――そうやね(笑)。だってやっぱこの10年の1軍というか選ばれた曲たちと、この10年で出会った強者たちが集まってるのに、最後が普通の曲じゃあね、アルバムが締まられへん。
岩﨑「何回もリテイクして、歌詞をムチャクチャ書き直して。ホントに歌入れの5分前…いや、過ぎとったな?」
(一同笑)
吉澤「だって書き直し過ぎて…」
岩﨑「…あ(笑)」
中内「歌入れしてて、“あ! コレ歌詞足らへん!”って(笑)」
(一同笑)
――そんなことある?(笑) 今までまあまあ曲作ってきたやん(笑)。
中内「まあまあやで(笑)」
岩﨑「あと20分ください!って」
吉澤「アハハハハ!(笑)」
――でもそれだけのモノが出来たんじゃないんですか?
岩﨑「最後に新曲の歌入れをしたんで、何かいい意味でプレッシャーがスゴいねぇと。こんなに書き直したのは初めてやったんやけど、だからこそ、すげぇシンプルなところに人って行き着くモンなんやなぁって思った。最初は参加してくれたこの10人への感謝、あとは10年ありがとうみたいな形に落ち着けた方がいいんかなとか、いろいろ考えてたんですよ。でもそれも何かちょっと寒いなぁって。だから、全然関係ないけど関係してること、自分と音楽との出会いを歌にしようって作った曲ですね。スゴくパーソナルな部分まで潜れた瞬間でしたね」
――この先のオリジナルアルバムも必ずつながるやろうね、この経験というのは。
岩﨑「経験は確かに持ち越しは出来ると思うけど、まあやっぱり、1人脱退するのでね(笑)」
(一同笑)
――さっきね、何を歌うかも大事やけど誰が歌うかも大事という話もしたけど、誰が叩くか誰が弾くかも一緒です。
岩﨑「もちろんです。ハイ」
――そんな中、この10周年の素晴らしい1年、アニバーサリーイヤーです。多分ね、他のバンドの歴史を振り返っても、そんなときに脱退するヤツは初めてやろうと(笑)。
岩﨑「ちょっと正気の沙汰じゃない(笑)」
――アハハハハ!(笑) そやね、ホントに。それやったらもうちょい前に脱退するか、もしくは乗り越えよう?
吉澤「アハハハハ!(笑)」
岩﨑「ホントそうなんですよ!(笑) しかもね、脱退の意向を初めて聞いたんが、クリスマス・イブですからね」
――それ、スゴい贈り物やね。
(一同爆笑)
あ、これ本気なんやって。本気な顔してるなって思った
――オフィシャルHPに声明もアップされてましたけど、今まで10年一緒にやってきた仲間にそれを伝える日をね、何故クリスマス・イブにしたの?って、健太郎サンタに問いたい(笑)。
泉「いやでもね、たまったまクリスマス・イブやったんですよ! そこは! たまったま(笑)。去年の11月12月とスゴく忙しくて」
岩﨑「まぁいろんな案件が重なりまくってね」
吉澤「バンド史上、最高に忙しかったんですよ」
泉「個人的にもいろいろやってるし、言わなって思ったのはホントに11月の末とか」
岩﨑「…早よ言えや(笑)」
(一同笑)
泉「結果的にはクリスマスなんですけど、僕の中ではもうそこしかなかった。さっき言った慧の歌詞の件もそうやけど、やっぱりみんな集中してたから。流石にレコーディングのこのタイミングで言うって…逆にバッドタイミング過ぎるやろ、とは思ってました。僕はね」
岩﨑「もう当然のように1日も休みないし、現場も毎日違ったりして、帰る時間もめちゃめちゃ深いし、もうよく分からなかった。でもやることはメチャクチャ溜まっていく」
――ありがたい話っちゃありがたい話やけどね。
岩﨑「そんな中で唯一、この日は打ち合わせが1本ぐらいしかないわっていう日が」
泉「しかもマスタリングも終わってて、作品に影響もないし」
――打ち合わせが終わって、ちょっと話あんねんみたいな?
吉澤「いやいや、それも打ち合わせ終わってすぐにね、“ちょっとこの後みんな空いてる? 喫茶店でも入らへん?”って言うんやったら分かるんですよ。その打ち合わせした場所から駅に行くまで、喫茶店も素通りして、改札の前でいきなり、“俺、辞めようと思うねん”」
(一同爆笑)
吉澤「えー!? 何ー!?って(笑)」
岩﨑「ここ!? もう改札目の前やけど…って。コイツどういう神経してんねん!(笑)」
(一同笑)
――もうそれ、“バイバイ”と同じ感覚やん(笑)。
泉「逆に改めてってなると、何かね(笑)」
――それを聞いたとき、“えっ? 何言うてるん?”って感じやった? それとも“とうとう来たか…”って感じ?
岩﨑「両方ですね。でも、あ、これ本気なんやって。本気な顔してるなって思った」
吉澤「本気なのは分かったんですけど、ホントにいろんな意味でタイミングが悪いっていうか」
中内「アハハハハ!(笑)」
吉澤「瞬間で言うと改札前、日で言うとクリスマス・イブ、時期で言うと来年10周年。全てがタイミング悪い(笑)」
岩﨑「うっちーはその後予定が入ってて。せっかくやからみんな揃った方がいいでしょって」
吉澤「だからとりあえず、帰る方向一緒やしそのまま2人で飲みに行ったんですよ。打ち合わせ終わって、夕方前からおっさんと、クリスマス・イブに(笑)」
――なるほどね(笑)。じゃあまた日を設けて、メンバー全員で話を聞こうかと。
岩﨑「なったんですけど、またその翌日からパンパンに予定が詰まってるんですよ。だから飲めるタイミングなんてそうないんですよ。結果年明けになりましたから(笑)」
――その悶々を抱えたまま年越したんか…(笑)。
吉澤「そうそう(笑)」
泉「そのクリスマス・イブに響ちゃんとは細かい話をして。あと、機材を返しに行くときに、僕が運転で慧が助手席だったことがあって、慧とはそこでちゃんと話が出来たんですけど。で、話してる最中にパッと空を見たんですよね。ほんだら、キレーイな満月やったんですよね」
岩﨑「彼は今、“慧が俺をセカイイチに誘ったとき…あのときも美しい月の下で口説き落としたよな”って言いたいと思うんですけど(笑)」
――全然足りひんかったね、言葉が(笑)。誘われたときも満月で、辞めるときも満月と。
岩﨑「ちょっとね、ロマンティックな。ってそんなんどうでもよい」
(一同爆笑)
――まぁ家族の問題でもあるから、何年か前から根底には流れてたことではあったんでしょうけど、何とも。
岩﨑「イヤやけど、仕方ないじゃないですか。もう何も言えないですよね、セカイイチは前に進むしかないって決めたバンドなんで。ここで解散するか、ってなったらいろいろ話すこともイッパイあるけど、そうじゃないから」
――健ちゃんもセカイイチが前へ進むって決めたバンドだからこそ、ここで下車せなアカンって。状況も含めて自ら離れなければいけないと思ったのかなって。
泉「それはやっぱり1番大きい。東京を離れて富山県に移住するんですけど、いろんなバンドの形、進む方向、活動の仕方があるやろうけども、やっぱり僕の中でセカイイチって、ライブを毎月みんなの前にちゃんと表現しに行って、制作してって。遠距離のバンドっていうやり方もあるんですけど」
――まあね、今の時代はそういう人も結構おるし。
岩﨑「全然いいんですよ? それで」
――アハハハハ!(笑)
泉「でもやっぱり、僕の中ではそれはままなれへんというか」
吉澤「ええと思うけどなぁ」
(一同爆笑)
泉「っていうとこですよ(笑)」
岩﨑「もうさ、めちゃめちゃこんな話イッパイしたもん」
泉&吉澤「アハハハハ!(爆笑)」
岩﨑「状況はいずれ変わるやろうから、どんな形でもいいから…オリジナルメンバーってかけがえのない存在やし、別に無理してムチャクチャ活動しようなんて言ってるわけじゃない。10周年イヤーやけど、コンスタントにやれればいいと思ってるし、そういう感じでもいいんやで?って、めちゃめちゃ提案したんですよ。でも、やっぱり頑だったんですよね。まあそれはね、やんごとない理由もあるのも分かってる。けど彼はね、別に音楽を嫌いになったわけじゃない。バンドの不仲でもないし」
泉「もちろん。去年の秋にはエフェクターとかアンプとか、機材もバンバン買ってたし。もう何してんねやろ(笑)」
岩﨑「タイミング悪いです(笑)」
――そういう意味ではやっぱり突発的でもあったんやな。健ちゃん自身にとっても。
泉「そうですね。バツを付けたのは突発的やった」
笑って帰ってこいよ、ぐらいの感じでいいと思うんですよ
――脱退に向けてのメンバーのコメントの中でもね、“戻ってこれる場所を作るためにも続けるぞ”とあって。明確にそんなことを言ってくれてる人たちも珍しい。健ちゃん、愛されてるなぁとも思ったし。
岩﨑「ウルフルズのジョン・B・チョッパーさんみたいなパターンもあるんじゃないか?っていうのも加味してね」
――そっか! ホンマや! うっちーはどう?
中内「いやぁ~何ちゅーかもう、2年前ぐらいからいろいろキツいわぁ~みたいな話を冗談まじりでは聞いてて。いざ言われたときは、ああ、今か。遂に来たか、と思いましたけどね。そこから響ちゃんが2人になる度に、(小声で)“なぁなぁベースどうしようか? うっちー弾くか?”って言われて、“それはない”って(笑)」
(一同笑)
吉澤「戻る? 戻る?(笑)」
――そうか、うっちー元々ベーシストやもんな(笑)。じゃあ慧くんがボーカル&ギター、うっちーがベース、響ちゃんがドラムの3ピース。それは考えてなかった。
中内「ないないない!」
岩﨑「遂に隅くんまで言い出しましたからね。“アイツのベースいいね”って」
(一同笑)
中内「だから健ちゃんに言われた後は、健ちゃんがホントに抜けちゃったときのことを考えるのと、健ちゃんをどう止めるかをずーっと並行して考えて…どっちもでしたよね。さっき言ったみたいに、年明けにもう1回集まったとき、健ちゃん心変わりしてくれたかな?って。まぁ…してなかったですねぇ(笑)」
――しかし、こんなに明るく話せるのも珍しいよね。
吉澤「思うんですけど、ここで深刻にしてしまうとホントに帰ってきにくいなぁって。笑って帰ってこいよ、ぐらいの感じでいいと思うんですよ」
岩﨑「悲しいけど、やっぱりそれよりも次はどうしようか?っていうところにどうしてもシフトしちゃうから。責める気には全くなれないし、とりあえず次がうまくいくようにしやんとなぁって」
――そうやね。そうじゃないと健ちゃんもね、責任感じちゃうかもしれないもんね。
吉澤「責任は感じて欲しいですけどね」
(一同爆笑)
岩﨑「もう健ちゃん板挟みよ(笑)」
中内「しょうがない。どっちからも責められる(笑)」
泉「もうだんまりや(笑)」
岩﨑「富山に行った後もベースのローン残ってるって、スゴいよなぁ(笑)」
泉「日の目の見ない5弦ベース(笑)」
――5弦買ってたんや!
岩﨑「Do As Infinityのサポートで味の素スタジアムとかがあって」
――めっちゃデカいとこでやってたもんね。なるほど。
岩﨑「だから健ちゃんは15mのシールドまで買ってる。俺らはせいぜい5mぐらいですけど(笑)」
吉澤「15m測るときは健ちゃん呼ぶわ。アレ貸してって(笑)」
(一同笑)
――でも、バンドは続いていくから。これからどうなっていくんでしょうね。
岩﨑「健太郎がいた10年に変わりはないので、これからも10周年イヤーを盛大に盛り上げていきつつ、いろんな人たちを巻き込めたら最高かな」
――最後に今回の『and10』っていうタイトルはどこから?
岩﨑「いろいろとみんなでアイディアを出し合って、VSがいいかなぁとか言ってた中で、10周年に10人が歌いに来てくれたっていうので、andを使って『and10』ってどう?って」
――これってセカイイチのスタイルの1つかもなぁと思った。やっぱりセカイイチってみんなに勝手に思い入れを持たれるバンドというか。もちろん単体で魅力あるバンドやけど、だからこそ“セカイイチと何か”っていう関係性がずっと続いていくというか。今作に取って付けた感がないのはそういうことやろうし、ただ10年音楽を続けてきたんじゃなくて、同時にちゃんと関係を築けてきたバンドやなぁと。健ちゃんが序盤に言った、点と点が線になるって常套句としてはよく言うけど、セカイイチの足跡を見てたらホンマにそうやなって。あとはとりあえず、健ちゃんはお疲れ様でしたと。
泉「ありがとうございます!」
――また次のインタビューのときに、おるかもしらへんけど(笑)。
泉「アハハハハ!(笑)」
――また会えることを信じてね。今日はありがとうございました~!
一同「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 田浦ボン
(2013年6月 6日更新)
Check
Release
豪華ボーカリストとコラボで魅せる
この10年の歴代の名曲の数々
Album
『and10(2003~2013)』
発売中 3150円
tearbridge records
NFCV-27339
<収録曲>
01. シルクハット
and 佐々木健太郎(アナログフィッシュ)
02. あかり
and 田中和将(GRAPEVINE)
03. Step On
and 恒吉豊(Over The Dogs)
04. RAIN/THAT/SOMETHING
and オカモトショウ(OKAMOTO'S)
05. 虹
and 山田将司(THE BACK HORN)
06. ニューカマー
and 宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))
07. kids are alright
and Chage(CHAGE and ASKA)
08. ぷれぜんと
and 小南泰葉
09. ふりだしの歌
and 須藤寿(髭)
10. バンドマン
and 増子直純(怒髪天)
11. 真ん中の歌 ※新曲
Profile
セカイイチ…写真左より、泉健太郎(b)(※'13年3月をもって脱退)、吉澤響(ds)、岩﨑慧(vo&g)、中内正之(g)。‘01年-、ソロ活動をしていた岩﨑が吉澤を誘い大阪にて結成。アコギボーカルとドラムという形態でのライブを経て、前ベースが加入。’02年、ベースの脱退にあたり当時ベーシストだった中内に声をかけるも、「ギターでなら入ってもいい」と返答。にも関わらず、初練習の日に初ライブを敢行し即日加入。’03年、サポートを務めていた泉を、岩﨑が美しい月の下で口説き落とし現体制に。ミニアルバム『今日あの橋の向こうまで』をリリース、初のワンマンライブを十三FANDANGOにて開催。’04年、1stシングル『ふりだしの歌』をリリースし、上京。’05年、2ndシングル『石コロブ』にてメジャーデビュー。以降、『淡い赤ときれいな青と』(‘05)『art in the EartH』(‘06)『世界で一番嫌いなこと』(‘07)『セカイイチ』(‘09)『folklore』(‘11)『The Band』(‘12)の6枚のアルバム、ミニアルバム『Another Second Hand』('11)、『虹』(‘05)『in the ART』(‘06)『RAIN/THAT/SOMETHING』(‘07)『あかり』(‘08) 『Step On』(‘10)の5枚のシングルと、配信シングル『ぷれぜんと』(‘08)、DVD『Top Of The Clips』('09)をリリース。ライブも精力的に行っており、自身のツアーやワンマンライブに加え、アナログフィッシュ、髭、LUNKHEAD、おとぎ話らとのスプリットツアーや、自主企画ライブ『光風動春』、岩﨑慧が音頭を取りセカイイチがバックバンドを務めるイベント『もうガマンできないよっ!』等を開催。さらには、岩﨑はソロ、吉澤は小南泰葉etcのライブサポート、中内はf4-highのvo&gを務めるなど、その活動は多岐にわたる。’13年2月6日には、結成10周年記念セルフカバーアルバム『and10(2003~2013)』をリリース、3月をもって泉が脱退。現在は3人にサポート加え活動中である。
セカイイチ オフィシャルサイト
http://www.sekaiichi.jp/
Live
『and10』、そしてBIGCAT再び!
J(S)W宮田らを迎えたもうガマ大阪編
『もうガマンでけへんわっ!』
チケット発売中 Pコード200-941
▼6月8日(土)18:00
心斎橋BIGCAT
オールスタンディング3500円
[共演]宮田和弥(JUN SKY WALKER(S))/山森大輔(SKA SKA CLUB / ROCK'A'TRENCH)/岩﨑愛/恒吉豊(OverTheDogs)/隅倉弘至(b)/山本健太(key)
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は入場不可。
チケットの購入はコチラ!
Special!!
【永久保存版-後編-】はコチラ!
泉健太郎(b)ラストスタンド!
結成10周年記念セルフカバー
アルバム『and10(2003~2013)』
地元大阪レコ発ワンマンを
感動のプレイバックレポート
Column
新境地と王道入り乱れる
セカイイチの2年ぶりのアルバム
『folklore』の核に迫る!
'11年のメンバー全員インタビュー
「間違いなく僕らの最高のアルバム
になるのは分かってた」
最高傑作と自負するアルバム
『セカイイチ』('09)インタビュー