汗と涙と男と女とエロと厨二と挫折と裏切りと
クソバンド忘れらんねえよが全人生を懸けぶち込んだ
衝動と感動のファーストへたれアルバム完成!
オーバー30の負け犬たちの逆転劇に迫る怒涛のインタビュー!!
昨年、『CからはじまるABC』がアニメ『逆境無頼カイジ 破戒録篇』のエンディングテーマに大抜擢。溢れる衝動とエロと現在進行形の厨二マインドを身も蓋もなく歌詞に昇華、グッドメロディと共に音楽シーンにぶちまける自称クソバンド(笑)、忘れらんねえよ。バンドのスローガンに“NO SEX NO CHILD”を掲げ、昨年8月のメジャーデビュー以来、音楽シーンに不協和音、もとい話題を提供して事欠かない彼らが、3月7日に初のアルバム『忘れらんねえよ』をリリースした。全へたれ男性が抱える思春期の無情感に必要以上に切り込む言葉のチョイスは、深く頷かざるを得ないリアリティで聴く者の胸に訴えかけてくる。だが、彼らはどうしようもないダメ人間なんかじゃない。恋や仕事、生活の中で正々堂々勝負し、負け続ける男たちを全肯定する真性ロックバンドだ。もがき続ける男たちの代弁者である現役童貞の柴田(vo&g)に、バンド結成秘話から、音楽、仕事、そして人生を問う、絶望の果てから光を見るロングインタビュー。音楽で人生は、世界は、変わる――。
メンバー3人からのクソへたれ動画コメントサンキューセックス!
――3月7日に遂にファーストへたれアルバム(笑)『忘れらんねえよ』がリリースされましたけど、今の率直な気持ちって何かあったりしますか?
「いやもう、めっちゃ不安で」
――不安(笑)。
「もう寝れないんですよ。寝れないしすっげぇ早い時間に目が覚める(笑)。アルバムを作ってるときは、ハットの音からマイキング、歌詞もメロディももう全ての要素で、俺らが一番いいと思ったものだけを積み上げて作ったから、それが受け入れられなかったらもうヤベぇんじゃねぇかって(笑)。すげぇいいなと思ったバンドの曲が売れなかった姿なんていっぱい見てきたし、そんな簡単なもんじゃないのは、もう若くないから薄々勘付いてて。だから…」
――メジャーデビュー=やったー!じゃない。
「まだ22歳とかだったら“イエ~イ! キャバクラ行こうぜ!”みたいな感じだと思うんですけど(笑)、もう恐ろしくて。刺さって欲しい、刺さると思ってるんだけど…分かんねぇよなコレばっかりはって。寝れないからビール一気して酔っ払って寝るみたいな」
――いや~でも、僕は(所属レコード会社の)バップがすげぇなと思いました。タニザワトモフミとかもそうなんですけど、他のメーカーじゃこんなに自由にやらせてもらえないんじゃないかって。
「いや~他が選ばなかったっていう(笑)。バップだけが選んでくれたんで」
――去勢されたJ-POPに整えられるんじゃなくて、ちゃんとバンドの“まんま”の部分を出してもらえてる。
「それはもう完全に僕らに主導権を持たせてもらって、歌詞に関しても一切これはダメみたいのはなかったですね」
――ここに至るまでのエピソードに、前バンドの女殺団(にょさつだん)があるんですけど、FOOL&SCISSORSの久富さん(ds)と一緒にバンドしてたんですよね?
「そうそう! ご存知なんですか!? すっごいアツい男で、高校時代にその久富くんと、今はスペースシャワーTVでディレクターやってる清家ってヤツの3人で女殺団を始めて。バンドを本格的にやり出したのはそれですね」
――それこそ僕も『ブログを覗き見る』(M-2)じゃないですけど、久富さんのブログにその時代の柴田さんが載ってましたよ。4年ぶりに会ったわ~みたいな(笑)。
「アッハッハッハ!(笑) (そのブログ)知ってる! 知ってる! 渋谷の山家(やまが)っていう便所みてぇな大好きな飲み屋があって、そこで飲んでるときですよ」
――ちょっと予想してなかった意外なつながりだったんですけど、それが最初のバンドらしいバンド?
「一応中学時代も、ミスチルとかGLAYのコピーバンドをやってたんですよ。“ブリキング”っていう、もう超ダサい、言うのも恥ずかしい名前なんですけど(笑)」
――じゃあブリキング→女殺団→忘れらんねえよ、と(笑)。
「ダッセェな~(笑)」
――じゃあそもそもバンドを、音楽を始めたのはどういういきさつだったんですか?
「中学時代ってヤンキーグループとそうじゃないグループに別れるじゃないですか? 俺が通ってた中学はヤンキーグループを“1軍”、そうじゃないグループを“2軍”と呼んでて(笑)。もう俺は完全に2軍だったんですよね。社会的地位の格差も激しくて、1軍はめっちゃモテるし授業中もガハガハ笑って、2軍は隣でエヘヘって愛想笑いみたいな(笑)。そういう自分がホントに嫌で嫌で、今だにそのコンプレックスが消えないんですけど。勉強はそれなりに出来たんですけど、中学時代に勉強が出来ても何ら“モテ”につながらないじゃないですか?」
――確かにモテにはつながらないな~。
「どうすりゃいいんだって思ってたときに、音楽室にガットギターがあって、コレじゃねぇか!?と。ミスチルとか藤井フミヤさんの『TRUE LOVE』とかが大好きだったんで、コレを歌えばいいんじゃねぇか…!?みたいな。あと、小学校の頃から音楽の授業ですっげぇ大きい声で歌うヤツいるじゃないですか? それが俺だったんですけど」
――アハハハハ!(笑)
「歌は得意だったから、“歌とギターをくっつければモテるっしょ!”って始めたんですよね。たまたま友達がアコギが弾けて…そいつもデブで2軍だったんですけど(笑)、そいつに教えてもらって。それがきっかけですね」
――今の若い世代のバンドマンって、音楽を始めるきっかけにモテの衝動っていうのが案外ないんですよね。
「そうじゃないんだ! 表現したいからとかなんですか?(笑)」
――“いかんともしがたい感情を音楽に…”みたいな感じじゃないもんなぁ。
「“気付けばふとビートが鳴ってて…”みたいな。へぇ~俺もそう言お」
――そんなヤツおらんやろ(笑)。
「アハハハハ!(笑) 鳴んねぇよっていう(笑)」
――それでまぁ音楽を始め…結局モテたんですか?
「それはね、成功したんですよ」
――そうなんや!
「ミスチルの『車の中でかくれてキスをしよう』っていうクソ名曲がアコギ1本で出来るんで、それを文化祭でやったら思った以上にウケが良くて。そりゃ名曲ですからね。あと高校生の頃の女殺団もすげぇ評判良かったんですよ。地元のローカルテレビに取材されたりとかして。けど、結局ブルーハーツのコピバンなわけで、ニセモノなんですよね。その後、大学でバンドで一発当てようってみんな進学で上京したんですけど全然ダメで。お客さんがホント0とか1とか、親が2人来てるとか(笑)。もうそんなレベルで挫折というか、つまんなくなってやめちゃったんですよね」
バンドって自分の思ったことをまんま出すのが
与えられた権利だし義務でもある。絶対にフィルターはかけない
――その後は普通に就職したんですか?
「そうです。めっちゃ忙しい会社だったから、5年間ギターも全然触んなくて」
――バンドをやるためにわざわざ東京の大学にまで行ったのに、音楽をやめられたんですね。
「そのときは気付いてなかったんですよね。ホントはバンドがやりたいし自分はそれが一番得意だと思ってることに。仕事をやり始めて“あれ…? もっと仕事出来るはずだったんだけど、おや?”みたいな(笑)。それに気付いたときに、解散したはずの女殺団がまだ続いてるのをとあるきっかけで知って、すっげぇショックを受けて。やっぱ、妬ましい…と思ったんです。裏切られたショックもあるんですけど」
――みんな就職活動でやめたと思ってたら、1人だけ外されて…。
「自分だけ差し替えられて存続してて…。そのことを知る前日の夜に、ちょうど会社の後輩に、“昔、女殺団ってバンドやっててさ~客100人とか入ってモッシュとか超起きてて”みたいな話をしてて。嘘なんですけど(笑)。後輩に説教して超いい気分で帰ったら、次の日にその後輩が“女殺団まだありましたよ…”って言われて、調べたら本当にあって。すげぇショックだったし、さっき言った妬ましさというか、結局は俺もそこに入りたいというか、“こいつらまだバンドまだ続けてたんだクッソ~”って」
――自分はひとつの夢を諦めて、社会に適応したわけでね。
「それでもやっぱ上手くいってなくて、みんなはまだ音楽をやり続けてると知ったとき、“やっぱ俺、バンドがしたいんだ”って、気付いたんですよね。そのときにたまたまチャットモンチーさんのライブ動画を見て、マジでボロッボロ泣いちゃって。あの人たちって心の底からバンドをやりたいという想いに完全に忠実に動いてるというか、そのために出来ることを全てやってる。そういう姿勢がライブの佇まいに、やっぱり出てるんですよね。ルックスももちろんかわいいんですけど、それ以上に美しいんですよ、その佇まいが。ただまっすぐ音楽のために動いてる。それを見てポロポロ泣いて、俺がなりたい姿はコレなんだって」
――そのときのチャットの曲ってどの曲だったんですか?
「『ハナノユメ』ですね。メロディがいいし、えっちゃんの声もまたハンパないじゃないですか。でも何よりも佇まいにもうやられた」
――でも、それって働き始めて結構経ってますよね?
「経ってますね。28の頃です」
――今の時代ってやっぱり音楽だけではなかなか食えなくて、実際にインタビューで話を聞いてもいろんな人がいるんですけど、“忙しいけど、でも家に帰ってギターを触ったときにすっげぇ嬉しい”みたいな。
「そうそう!」
――“それが自分のモチベーションにつながってる”みたいな人も多いし。でも、最近インタビューした人で、“いや~もうクソですね。いいことないです”みたいなヤツもいて(笑)。コレはコレでおもろいな~って(笑)。
「そう。だからもうぶっちゃけね、クソです(笑)」
(一同爆笑)
「クソだけど、そこで戦ってる人たちを俺はカッコいいと思うんです」
――やっぱり子供の頃って華やかな職業に憧れるし、サラリーマンなんかカッコ悪いみたいに思いますけど、今自分がこの歳まで生きてくると、親が子供を大学に行かせ、家を建て、仕事を続けることが、どれだけすごいことかまざまざと分かる。
「いや~すごいことだし、やっぱ戦わないと続かないから。だからまぁ、とりあえずやれることは全部やる。やれるとこまでやってやりますよ」
隠すより言った方がスッキリする
――そうやってもう一度ギターを持って、それこそ5~6年ぶりにバンドやるぞとなったのが3年前で。そこからは割とスムーズにいったんですか?
「まず、業界本とかを読んでみたら“メジャーデビューは23~24歳ぐらいまで”とか書いてあって、俺はもう28ですけどと(笑)。ライブで動員を増やしていくのはめっちゃ時間がかかるんで、それはそれでやりつつとにかくデモテープを送りまくったんですよ。これは会社で学んだ知恵でもあるすごく具体的な話なんですけど、デモテープ募集係に送っても大抵はレコード会社の新人社員のところにドカって置かれて、その人がヒーヒー言いながら聴く。けど例え彼がいいと思っても、上にプレゼンして話を通さないといけない=彼に決定権はないから、決まるまですごく先が長い。でも、
『Musicman』っていう業界誌にはレコード会社の部署名と個人名まで書いてあるんで、決定権を持っているその人宛に送れば直接届くし、いいと思えば即決まると思ったんです。バンドをやり始めて1年半ぐらい経ったときに『ロッキンオン』のオーディションでコンピにも入ったんで、もうそろそろデモテープを送るタイミングだろうと、全部で80人に送ったんですよ。そしたら今のディレクターさんから“デモテープが良かったんでライブを観に行きます”って電話がかかってきて。そのときはもう“決まった。契約だ”って(笑)」
――大学のときは今より時間があるし、あれだけバンドをやっても全然ダメだったのに、5年もギターを触ってない社会人がやり始めてそんなにすぐに結果に結び付くのって普通ないじゃないですか? 自分の中では以前とは違う何かがあったんですか?
「本気じゃなかったんですよやっぱり。今思うと大学時代はやれることを全部やってなかった。それだけの差で」
――書く曲が劇的に変わってるとかではないと。
「あ、でもね。俺、女殺団では曲を作ってなかったんですよ」
――そうなんですね。
「曲を作ったヤツが歌うルールだったから、ギターボーカルって言っても配分的には半々で歌って、だんだんベースのヤツがずっと歌うようになるみたいな(笑)。このバンドで曲を作るようになって、大学時代には絶対に思い付かなかったような…要は渋谷の飲み屋でボコボコにされたとか、あんたでオナニーしてるんだっていう価値観って、やっぱ5年間の社会人生活でボロッボロにいじめられて、仕事がしんどくて、そこで思ったことだったり気付いたことが歌詞になってるから。そういう意味ではモノが違うっていうのはあります」
――逆に言うとその社会人だけをやってた5年間がなければ、今の忘れらんねえよを形成する鬱屈した感情には…。
「絶対にならない。だからこういう曲は出来てない」
――言ったらもう、楽曲には俗に言う厨二的世界観がめちゃくちゃあるじゃないですか(笑)。
「完全にそうですね。もう30なんですけど(笑)」
――厨二的な世界観は絶対にみんな持ってるけど、誰もが今でもそれが着火剤になるほどのエネルギーがあるかと言われたら分からない。今でもそのエネルギーを曲に落とし込めてる理由には、いったい何かあるんですかね?
「いや、単純にいいことがないからですよね(笑)」
――アハハハハ!(笑)
「リアルにないんですよ(笑)。高校の頃好きだった女の子のことをず~っと引きずってたし。会社に入って好きな女の子も出来たんですけど、それもひどい目に…まぁ自分から大失敗してるだけなんですけど」
――その、ひどい目を教えてください(笑)。
「『ドストエフスキーを読んだと嘘をついた』(M-5)の歌詞なんですけど、あれって歌にするために多少話をマイルドにしてて。実際はあるときその子と呑めることになって、もうずっと好きだったからこの日が勝負だと。でも緊張して全然喋れないから、とりあえず酒をガンガンに入れたんですよ。そしたらどんどん気が大きくなって、隣で怖いオジサンたちがたまたま飲んでたんですけど、自分の社交性とかビビってないぜ感をその子にアピールしようと思って、“ちょっと飲みましょうよ~”って近付いていったら、ホントに怖い人たちで、“てめぇ”みたいなことになって。でも、好きな子の前だからカッコ付ければいいじゃないですか? けどすぐに“すいませんすいません…”って土下座して謝って…俺、酔っ払い過ぎて全然覚えてないんですけど。それでも許してくれなくて、髪の毛燃やされて…」
――それすげぇ話やな~(笑)。お腹痛いよ~(笑)。
「もう、終わってますよね?(笑) その一部始終を好きな子に見られてたっていう、ひどい目に遭ってですね(笑)」
――せっかく呑みに行けたのに…。
「ねぇ! だからそれ以来もう1回も呑んでないっすね~(笑)」
――言ってしまえば身も蓋もないことかもしれないけど、それを言っちゃう気持ちよさも含めて、忘れらんねえよにはやっぱり独特にして強烈な世界観がありますよね。でもそれは決して独りよがりじゃなくて、確かにみんなが通り過ぎてきた世界で。
「うんうん。だから、さすがにそこまで同じ経験はないにせよ(笑)、みんなどこかで心当たりがあると思うんです」
――ありますね~。
「だから“こいつらバカだな~”って1回笑って、“でも俺もそういうことあったよな…”って気付いてくれる人がだんだん増えてきた。でも、単純に“自分がこういうひどい目に遭った”って言うと、なんだかスッキリする部分もあるんですよ。隠すより言った方がスッキリする」
――やっぱり歌詞が軸となっているというか、俺はもう大好きですね。
「あぁ~嬉しいっす。ありがとうごさいます」
――そして、同じ言葉でもそれを音楽に乗せることで、届く範囲が全然変わる。
「いや~まさにそうですね。例えば“あんたでオナニーばっかしてる”って最低最悪な歌詞じゃないですか(笑)。けどそれをいいメロディに乗っけると、なぜだかちょっと切なさを帯びるというか(笑)、全然違うように聴こえてくる。それがロックンロールの魔法だと思うんです」
――歌詞の世界観やライナーノーツにも如実に出てきますけど、例えめっちゃキレイな子でも、めちゃめちゃカワイイな~っていう子でも、それこそどこかの誰かと今頃シックスナインしてる切なさね(笑)。
「そうそうそう! 結局セックスしてんじゃねぇか!って」
――そんなカワイイくせによ~みたいな。
「俺に“オナニーとか言って最低!”とか言ってるけど、お前昨日フェラチオしただろ!みたいな(笑)」
(一同爆笑)
――それが何とも悔しくもあり、でもどんなカワイイ子でも誰かにそんなことをしてる一筋の希望というか…。
「そうそう! ただ、そのフェラチオされる側に俺は立てなかったっていう…」
――世の中にはそれをされる側がいるんだというヒエラルキーが(笑)。
「いるんですよ! ビックリするもん。例えば
『忘れらんねえよ』(M-1)のPVで二階堂ふみちゃんに出てもらってるんですけど、いつか彼女にそういうことをするヤツが、この世にいるかもしれないわけでしょ!? それが信じられない。すごく不快です」
(一同爆笑)
「でも、このインタビューを二階堂さんが読んだとき、一番不快な気持ちになると思うんですけど(笑)」
――間違いなくそうだね(笑)。
うちらのバンドってロックスターもいないし、下手すりゃフロントマンもいない
だからみんなで、忘れらんねえよという神輿をかついで盛り上がってる
――でも今作は、心のどこかで確かに思っていた感情がバキバキに目覚めるアルバムというか。それも13曲中2~3曲とかじゃなくて全曲でそれが巻き起こるのがすげぇなと。男を覚醒させるアルバムですよ。
「アハハハハ!(笑) 良くない男を、モテない自分を覚醒させちゃうっていう」
――ダメな男を覚醒させる。ダメな自分を忘れてたところをね。あぁ俺こうだったわって。ホント聴いててバキ~ンってくるね。
「いや~嬉しいな~!」
「最後消えますからね(笑)」
――あとテロップね。バンドは必要以上に小さいワイプの中にしかいないのに、そこに乗っかってくるという(笑)。“いやいやそれもうちょっと下げれたやん! スペース余裕あるやん!”みたいな(笑)。忘れらんねえよ自体ももちろんなんですけど、やっぱりそれを支えるチームも、バンドのことをすごく分かってる。それをいろんな制作物からめちゃくちゃ感じましたね。
「なんか文化祭みたいな感じなんですよね。うちらのバンドってロックスターもいないし、下手すりゃフロントマンもいない。だからみんなでゲラゲラ笑いながら、“コレやったら面白ぇんじゃねぇ!?”って、みんなで忘れらんねえよという神輿をかついで盛り上がってる。それがいいのか悪いのかはまだ分からないけど、そういうバイブスでやってるからこそこういうアウトプットになるし、今の世の中がそれをちょっと面白がってくれだしてる感じなんですよ」
――それこそデモを送りまくって、それがきっかけでチームと出会って今があるわけで。
「でも一番最初は、俺と梅津くん(b)なんか、“決まった、メジャーだ。女抱きまくるぞ!”みたいな感じで(笑)、初めてライブを観に来てもらったときも、完璧なライブをやったつもりだったんすけど、“最低だね。クソだよ”って言われて(笑)。そこから何回か観てもらう内に自分たちも変わっていって、そんなときにまた『カイジ』のタイアップが決まって…いろんないい話が決まって持ち上げてもらってる間に、無理くり成長しないといけなかったというか」
――期待に応えるレベルに、バンドを到達させないといけない。
「そう。だからそういう意味でもラッキーというか。もう成長せざるを得なかったから」
――実際にメジャーデビュー決まったときってどう思ってたんですか?
「いや~僕はサラリーマン体質だからだと思うんですけど、でも次の仕事取ってこなきゃ…みたいな(笑)。今後こういうことが求められてくるから、じゃあバンドをどう成長させようか、何かやり残したことはないかとか、そういうことを考えちゃうんですよね」
――やっぱり喜びよりも不安を感じるんですね(笑)。
「でもそれが動くエネルギーになってるから。多分そういう性格ってもう変わらないんですよね。死ぬまでずっとビクビクしてると思いますよ(笑)。でも、そういう性格だし、それが本音なら、その気持ちに従って動くのがロックンロールのやらなきゃいけないことじゃないですか。だからそれはそれでいいんじゃないかなって思ってますけどね」
このアルバムには全人生を詰め込みたかった
――あと、今回のアルバムは13曲入りですけど、とにかく衝撃的だったのは、普通シングルのカップリング曲とアルバムの収録曲はかぶらせないのが定石で…だってアルバムにカップリング曲を全部入れちゃったら、シングルを買わなくなるじゃないですか? でも、今回はまさかの全入れ(笑)。これは前代未聞やなと(笑)。
「アッハッハッハ!(笑)」
――だって、ディスコグラフィー見てて、“えっ?”と思いましたもん。
「照らし合わせて“あれっ?”って(笑)」
――“え、全部?”みたいな(笑)。それはすごいなと思いましたけどね。
「やっぱこのアルバムには全人生を詰め込みたかったから、必然的にそうなったんですよね。入れない理由がない、入れた方がいいアルバムになるでしょって。それが吉と出るか凶と出るかは分からないですけど」
――その気持ちを実現出来るのが、それこそ今のチームかもしれないですね。今言った理由から“カップリング曲は外そう”っていう話は絶対に出てくるんで。それが“入れよう”に傾くのは、やっぱり同じ神輿を、同じテンションでかついでくれてるからで。
「そうそう。同じテンションでやってる感じはすげぇある。あとは単純に曲数が足りない(笑)。しかも1曲1曲がすげぇ短いから、最初はアルバムなのに計20分とかで(笑)」
――レコーディング自体のエピソードでは、ドラムが下手過ぎて予定より制作期間が1ヵ月延びたみたいで。
「もうホントクソですね、あいつは(笑)。勢いでいいテイクが録れた曲もあれば、めっちゃ苦労した曲もあって。『忘れらんねえよ』なんて3分の曲なのに32時間ドラム叩かせるハメになっちゃって(笑)。あと、結構俺が神経質というか不安な人間だから、例えば『忘れらんねえよ』は基本的にテンポがブレてはいけない、売れる音楽はきっちりしていないといけないみたいな、謎の…」
――そんなこと言わなさそうな感じやのに。
「いや、めっちゃ言ってますよ。でも、やっぱ酒田がそういうドラマーじゃないんですよね。クリックに合わせるとグルーヴが死ぬタイプだって今はもう分かったんですけど、レコーディングのときは“何で出来ねぇんだボケ! 練習が足んねぇんだろ!”みたいな。けどどうしても出来なくて仕方なくクリックを外したら、すぐに上手くいったんですよね。別にテンポが一定じゃなくてもグルーヴあるじゃん!って。要は録った音がクリックに合ってようがなかろうが、グルーヴがあればいいことに気付くのに時間がかかっちゃったんですよ。けど気付けて良かったなって。それが分からないまま中途半端にリリース…とはならなかったから」
――このアルバムが出来上がったときはどう思いました?
「いやもう一瞬で不安になりましたから(笑)」
――出たときも不安、出来上がっても不安(笑)。
「もうチェックする耳でしか聴けないんですよ。ピッチがズレてるとか、このテンションでいいのかとか、もっと違うミックスがあるんじゃないかとか、そういう耳で聴くから純粋に聴けなくなっちゃってて。でも、時間が経ってこのアルバムを改めて聴いたとき、シングルに入ってる曲とかはもう随分前に録ってるから、どこで苦戦したのかももう忘れてたんですよ(笑)。それで“あ、いい曲じゃん”みたいに、ようやく普通に聴けた。全てを注ぎ込んだんだけど、人生を詰め込み過ぎてまともに聴けなかったという(笑)」
――濃いもんね~このアルバムは、本当に。
「ありがとうございます」
――そもそも書くぞと思って曲を書くタイプ? それともさっきの“ビートが降りてくる”みたいな感覚なのか(笑)。
「最初はパッと思い付いたものとか、いつの間にか口ずさんでる鼻歌とかだけだったんですよ。内から込み上げてきた曲は理屈で作ってないから、それが一番正しいと思ってるし。ほとんどがそうなんですけど、中にはサビだけあって急遽Aメロを作らないといけないとかいうこともあって、それが
JACCSカードのキャンペーンソング『この街には君がいない』(M-10)で、締切があったんで無理やり搾り出したっていう。けどアウトプットを聴き比べたら、どっちも必然性のあるメロディになってる。要は音符をもうズラしようがないというか、誰が歌ってもコレが一番美しいメロディで、このコード進行にはこのメロディしかない」
――今の話を聞いてると、メロディにもすごくこだわりがありますね。
「メロディにはすごく自信があるんです。一発で耳に残ると思うし。まずメロディありき。その後に歌詞を乗っけていくから」
――なるほど。でもこの歌詞の世界観はネタ切れしないんですかね?
「いや、もうしてます(笑)」
――してんねや(笑)。
「してるから、早く飲み会でミスを犯さないと(笑)。まぁでも起きるんじゃないですかね(笑)」
ライブでは人生の全てを燃やし尽くす。とにかく3人の塊をそこに置いていく
――このアルバムが出てツアーもありますけど、今まで地方は廻ってたんですか?
「いや、廻れてなくて。だから、これからが初お目見えみたいな感じですね。だから、ちょっとウキウキしてるというか。音源だけじゃ伝わらないところは絶対にあるし、まずはライブ…バンドの根本がライブだから、“喰らえっ!”っていうライブを早く観せたい。たまにウンコみたいなライブするときもありますけど(笑)」
――忘れらんねえよにとって、ライブはどういう場所ですか?
「最近eastern youthのライブを観て確信したんすけど、やっぱりライブでは人生の全てを燃やし尽くす。だからカッコも付けないし、“パフォーマンス”とかいう場ではないというか。とにかく3人の塊をそこに置いていく、全部出し切る。喉の調子が悪かったらそれも全て出す。そういうスタンスでやってます」
――自分の鬱屈したエネルギーを放出するにはいろんな手段があったと思うけど、なぜ音楽だったんでしょう。
「“得意だと思ってる”からじゃないですかね。だって僕がアイドルグループをやりたくても、明らかに世の中に伝わらない(笑)。こういうバンドが一番得意だし、自分の思ってることを全部出せるっていうことなんだと思います」
――バンドの世界観からしたらどんな野生児が来るかと思ったら(笑)、柴田さんって結構ちゃんとしてますよね。俯瞰で自分を見ることもちゃんと出来る。
「だから、小っちゃいんですけど(笑)。ロックスター感が一切出ない(笑)」
――でも、だからこそ響く言葉がきっとある。圧倒的なものを見せられるスゴさもあるけど、自分と同じようなヤツが、汗水たらして一生懸命何かを叫んで歌ってる。そういう姿は音楽を聴くときにすごくパワーをもらえる要素なので。忘れらんねえよは明らかそっち側ですもんね。
「ホントはね、GLAYみたいに…この写真もGLAYを意識してるんで(笑)」
――アハハハハ!(笑) この歌詞カードで、久々に学校っていうものを見た感じがしました。
「すっごいエモいとこでしたよ」
――あとこの写真ももうアホやろっていう話ですよね(笑)。
「ジャンピング・セックスです(笑)」
――コレすごいですよね。何回ジャンプして撮れたんやろ?(笑)
「やってみたら結構すぐ出来たんですよ。“あれっ? 出来てる”って(笑)。でもこれが一番いいテイクですよ」
――もう忘れらんねえよにまつわる全てがちゃんと意思統一されてる。ジャケット、資料、初回特典、もう全て。
「あぁ~嬉しい! でも、サビでオナニーとか言ってるから親にCD渡せないんですよ(笑)」
俺、30になって“この曲のこの歌詞、こんなに良かったんだ”って
気付いたことがいっぱいあって
そういう意味では感受性ってどんどん成長していくもんじゃないかって
――バンドをやる上で、今後の目標みたいなものってあるんですか?
「今一番やらないといけないことは、次の音源を作れる状況を作る=このアルバムを売るっていうこと。あと、今一番“やってやる!”と思ってることは…俺、武道館でライブしたいんですよ。ちゃんと人気を付けて、デカいところでね。自分でもアホかと思うんですけど、やれると思わないと絶対に行けないし。あの空間でこのメロディが鳴ってても絶対におかしくないと思ってるんですよ。じゃあそのために今何が出来るのかって。あとまぁ仲いいアピールでいつも言ってるんですけど、THEラブ人間っていうバンドに僕、媚びへつらってるんです(笑)。元々渋谷屋根裏っていうライブハウスで、お客さん3人の前とかでたまに対バンしてて(笑)。まだそれぐらいの頃に
(THEラブ人間の)金田くん(vo&g)が、下北の飲み屋で有名なバンドが打ち上げしてるのを聞いて、いきなりそこに行くって言い出して。全然関係ねぇのに(笑)。偶然を装って行って“あっ、何々さんですか!? よろしくお願いします!”ってCDを渡しに行ったんですよ。彼って実はそこまでやってて、それには結構影響を受けましたね。それって別に媚びを売ってるわけじゃないじゃないですか? ただ純粋に自分たちの音楽を1人でも多くの人に広めたい。そのためには有名な人に渡して、“いいね”って言ってもらった方がいい。その人の方が発言力があるからCDを渡しに行くっていう行動力」
――今、自分がアクション起こせば、何かが変わるかもしれない。もちろん何も起きないかもしれないけど、CDを渡さない限りは絶対に何も起こらない。
「そうなんですよ。それは正しいと思ったんで、そういうことを俺もやってる。でも、気付いてるヤツはみんな同じようなことをやってるし、考えてるんじゃないかな」
――それこそ24歳までじゃないとデビューも出来ないレコード会社もしゃらくせぇっていう話なので。まずは動く。
「その業界本には、“なぜ23~24歳までなのか? それは伸びしろがあるから”って書いてあって。でも逆に言うと俺、30になって“この曲のこの歌詞、こんなに良かったんだ”って気付いたことがいっぱいあって」
――分かります。
「そういう意味では感受性ってどんどん成長していくもんじゃないかって。そういうことに感動する人間が作る曲は、23~24歳の子には作れないから。年齢なんて関係ないでしょ!って思ってますけどね」
――それはこのアルバムを聴いたら分かりますよね。まさにそういうことだと思います。
「ただね、30歳にもなると生活とか、そういう要素が出てくる(笑)」
――守らなきゃいけないものも勝手に増えてる(笑)。
「そういう意味ではしんどいっていうのもありますけどね~」
――ただね、だからこそ歌えることがある。まずは4月15日(日)福島2nd LINEのライブで、その歌が大阪のオーディエンスに響くことを楽しみにしてますよ。本日はありがとうございました!
「ありがとうございました~!」
Text by 奥“ボウイ”昌史
(2012年4月13日更新)
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