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ホーム > インタビュー&レポート > 衝撃の『くたばれJ-POP』から1年 7/15(日)をもって活動休止、世界一周旅行へと旅立つ タニザワトモフミが、アルバム『何重人格』と事の顛末を語る! アーティスト活動ラストウイーク突入インタビュー


衝撃の『くたばれJ-POP』から1年
7/15(日)をもって活動休止、世界一周旅行へと旅立つ
タニザワトモフミが、アルバム『何重人格』と事の顛末を語る!
アーティスト活動ラストウイーク突入インタビュー

 昨年リリースされた2ndアルバム『日本に落ちてきた男』に収録された衝撃の1曲『くたばれJ-POP』で、現在の音楽シーンに強烈な毒と愛をもってカウンターパンチを喰らわせたシンガーソングライター、タニザワトモフミが3rdアルバム『何重人格』を4月にリリースした。ザ・フーの名盤『四重人格』(‘73)越えの多重人格さながら、1曲ごとに劇的に変わる世界観を、スピッツを手掛けるプロデューサー竹内修のもと、石崎光(cafelon)、グレンスミス、sugarbeans、関根卓史(golf)と多彩でマッドなアレンジャーたちが徹底的に研磨するポップミュージックの波状攻撃! 変化し続けることに筋を通した今作の縦横無尽にして瑞々しいメロディの数々は、前作の衝撃を越える興奮と幸福を与えてくれる。だが、今作で現在のシーンにおいて欠くことの出来ない才能であることを証明したその矢先、彼の口から発せられたのは、まさかのアーティスト活動休止と(!)、世界一周旅行への出発…!! ’09年のメジャーデビューから、アニメ『君に届け』主題歌『きみにとどけ』でのその名とメロディセンスを世に知らしめ、『くたばれJ-POP』でそのイメージを徹底的に破壊し、『何重人格』でブレることの美学を見せつける。やりたい放題の後(笑)、世界へと旅立つタニザワトモフミに、7月10日(火)の心斎橋JANUS、そして7月15日(日)東京グローブ座でのラストライブを前に、事の顛末とその根底にある価値観、揺れる心情と葛藤をじっくりと語ってもらった。彼の音楽に心地よく裏切られるのも、当分お預け。出発前のラストインタビュー。

何かがおかしいタニザワトモフミからの動画コメント

――前作『日本に落ちてきた男』があっての今作『何重人格』だと思うんですけど、やっぱり前作はメジャー以降のタニザワくんのイメージを徹底的に破壊するアルバムで、自分なりにも充実感や手応えはあったと思うんですけど。今までのファンや周りの関係者、ミュージシャンも含めて、アレを出したことが自分にどう返って来ました?

 
「そうですね~『君に届け』ファンの人が、あんまりライブに来なくなりました(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) まぁでもそれは正しい反応だ(笑)。
 
「“え、何コレ? 『くたばれJ-POP』って何??”って思ったんだと思いますよ(笑)。それでホントにファンになってくれた人も現れましたけど、結果的には、“『君に届け』が好きな音楽ファン”は掴めて、“『君に届け』のファン”は去ったっていう感じ(笑)。もっと批判されたいな~とも思ってたんですけど結構面白がってくれる人が多くて、その絶対数はまだまだ少ないですけど、音楽ファンが興味を持つきっかけになったのが前作かなと。ただ、Twitterとかを見てても、『君に届け』のファンにとって僕の『きみにとどけ』という曲は、今でもすごく重要で聴いてくれてる人も随分いるみたいで。でも、まぁ僕は進化かどうかは知らないですけどどんどん変化はしてくんで(笑)」
 
――まぁでも、『君に届け』みたいなチャレンジをメジャーに行ったことによって出来たのは良かったよね。
 
「そんでもって完全に、『日本に落ちてきた男』も『きみにとどけ』がなかったら出来てないですね。あのときの僕は、自分にとって刺激的であれば、『君に届け』という作品への愛さえあれば、自分の音楽性なんかどうでもいいところまで突き詰めたから。まぁ愛のあるテーマソングが少な過ぎることへの憤りも含めて出来た曲だった。インディーズで3枚出して、納得のいくいい作品が出来て、もう次に何をしたらいいか分からないときにメジャーデビューの話をもらったから、それこそ“何でもやったろう!”っていう気持ちだったわけですよね。それを経ての前作『日本に落ちてきた男』であり、それを経ての今回の『何重人格』という」
 
――ホントにタイミングというか、タニザワトモフミの歴史的には、そのどれもが外れても今回の『何重人格』にはならない。
 
「はい。ならなかったと思います」
 
 
表現する人間からすれば、結局のところいい音楽を作るかどうかよりも
コレこそが自分だと言えるモノが作れるかどうか
 
 
――正直、『日本に落ちてきた男』で、タニザワくんのメジャー生活は終わると思ってました(笑)。
 
「僕も正直そういう気はありました(笑)」
 
――やりたいことをやって、しかもそれをメジャーのフィールドで出せたことにまず意味があったとは思ってたけど、まさかまさかで今回の『何重人格』も出せるということになって。あれだけやりたい放題やった後に、次の作品に向かえるのかな?と俺はちょっと思ってたんだけど。
 
「完成したときはもう自信満々で間違いなく最高やって思ってたんですけど…『日本に落ちてきた男』は俺の“部分”のアルバムというか。それゆえに振り切れたモノにもなったけど、何度も聴いてる内に“コンセプト・アルバム”みたいに感じたんですよ。雰囲気はいいけど、シンガーソングライターとして自分の声がド~ンと出るわけでもなく、歌詞も意外とぼやけた感じになっている。ただ、1枚のアルバムのコンセプトとしては秀でた作品だった。だから、もっと自分のいろんな面が際立ちに際立って、1曲1曲にパワーを持ったモノが出来ないかを妄想しつつ、次の作品のことを考えていたというか」
 
――それは俺もすごく思っていて。今回の『何重人格』って、その振り切れ方が1曲ずつの単位で起きてる。
 
「そうなんです」
 
――前作の『日本に落ちてきた男』はトータルで感じるアルバムで、『何重人格』はその爆発が1曲1曲で起きてる。
 
「ビートルズ・オマージュだとかも前作ではいっぱいやったんですけど、じゃあそれこそがホントに俺なのかって言われたらそうじゃなくて、アレはただの“遊び”なんで。その地点にいたらコアな音楽ファンは面白がるかもしれないですけど、そこ止まりはヤダっていう気持ちも強かったんですよ」
 
――『日本に落ちてきた男』で際立たせた部分って、タニザワくんの一部だったわけじゃないですか。じゃあその残りの部分って何だったと思う?
 
「『日本に落ちてきた男』に一番込もってるのは“怒り”なんですよ。自分への怒りはもちろん、身の回りのいろんなものに対しての怒りをぶちまけた作品で。でも俺って、四六時中そんなに怒ってるタイプの人間でもないから(笑)。おセンチ野郎だったり、スケベだったり、キザだったり、あっけらかんとしてたりするのが僕であって、表現する人間からすれば、結局のところいい音楽を作るかどうかよりも、コレこそが自分だと言えるモノが作れるかどうかじゃないですか。それならもう、全曲人格が違うぐらいの方がアルバムとしては面白いんじゃないかって」
 
――俺が思ったのは、『日本に落ちてきた男』は破壊の衝動で、とにかくブッ壊したらいいっていう感じがすごくした。その中にらしさがある曲もあるけど、やっぱりそもそもの目的が破壊っていうのがあって。
 
「そうなんですよ。自己破壊みたいなところというか」
 
――でも『何重人格』は、1曲1曲のフォーカスがすごく定まってる。
 
「そうなんですよ。もう全体のイメージではなく、今回はやっぱり詞ですね。詞に関して、ヘンな思い入れみたいなものが強まった。ホントにぶっちゃけた話になるんですけど、音楽なんて幾らだって出来ますよ。アレンジだって優秀なアレンジャーが付けば良くなる。でも、詞ばっかりは自分自身じゃないですか。だから僕がシンガーソングライターとして一番突き詰めなきゃいけないのは、アレンジも曲ももちろんなんだけど、重要なのは詞だなって思ったんです。それに気付けたのは『日本に落ちてきた男』を作れたからで、自分の中の無意識すら有意識にするような、そういう作業が楽しくて。僕の周りには信頼すべきアレンジャーがいて、僕が好きな音楽を分かってくれてる仲間がいて、今回はプロデューサーに竹内修さんもいて、もう音楽面ではいいものが出来るに決まってるんですよ。そこで、僕の詞がどれだけそのアレンジに負けないか。アレンジに負けた歌詞ってたくさんあると思うんですよね。ラジオとかを聴いてても、“あ、アレンジすげぇカッコいい。でも歌詞すげぇ普通”みたいな」
 
――あるある。
 
「やっぱり相乗効果というか、歌詞がアレンジをむしろ引っ張らないと弱い曲になると思うから」
 
――多分年齢もあると思うけど、やっぱり若い頃って、洋楽を好きになるのもそうだけど、サウンド志向というかメロディ志向というか、そこに惹かれて音楽を聴いていくことが多い。けど、だんだんと…特にJ-POPとかはそうなんやけど、自分の中に残るか残らないかは歌詞で決まるというか。その1行が自分を救ったり人生を変えるようなことが起きるのは、やっぱり歌詞だなって。年齢を重ねれば重ねるほど感じるというか。
 
「そうなんですよ。僕がインディーズの頃の感じに戻れない理由っていうのは、もうああいう曲が書けないからなんです。あのときは何にも考えないで、もう感覚のみで書けた。でも、僕にとってはどれだけそれが良い曲でも、好きだと言ってくれる人がいても、アレは過去の僕が作って、それでもうおしまいなんですよ。そのときに使った言葉は使いたくないとかいう、自分を縛る要素が増えることは逆にモチベーションにもつながるところもあって。それは自分がいかに音楽という場所に負けん気を持ち続けられるかの戦いでもあるんです」
 
 
僕にとって音楽は、インプットじゃなくてアウトプットなんで
 
 
――それで言うと、サウンド面/アレンジ面は信頼するチームがいるから大丈夫。あとは歌詞で決まるっていうところの、プレッシャーとか難しさはなかった?
 
「12曲バラバラにしたかったし、この曲はこの性格でこの喋り方はないとか突き詰めていくんで時間はかかったんですけど、そうするとそれぞれの人格がより際立つというか、振り切れたものになっていくんですよね。今でも最初はただ感覚的に曲を作るんですけど、3日後ぐらいにそれを聴くと、初めに一番重要だと思っていた部分とは違うポイントが光ってることに気付くようになったんです。特に歌詞がそうなんですけど、俺は結局こんなことが言いたかったのかって、作っていくことで気付くというか、後から気付く(笑)。そういう分析の作業は時間がかかるからしんどいけど、楽しかったですね」
 
――感覚で書くことには変わらないけど、今はそれを俯瞰で見て推敲出来る。
 
「そう。もう感覚だけで書くと、昔とほとんど変わんない(笑)。結局、何が言いたいんだみたいなところに行き着いちゃうし、それがいい時期もあったんですけど、今の僕がそれをやったところで僕が面白がれない。面白いか面白くないかはやっぱり重要で、そういう意味ではこの作品はもう完全に自分ですね。選択肢としてはどっちが面白いかのみで作ったアルバム。あまりにもオナニーになってたらプロデューサーに止められるでしょうけど、そんなに止められることもなく」
 
――それが最も、プロデューサーとアーティストのいい関係というか。
 
「もちろんモメることはたくさんあったんですけど(笑)」
 
――モメるのはモメるんや(笑)。
 
「僕はもうモメずにいられないタイプの人間みたいで(笑)。しかもギリギリでいろんなことを言うから、まぁ何度もモメましたよ。それまではすごくいいな~って思ってたのに、時間が経つと突然すごく嫌いなモノに変化したりして。自分でも意味分かんないけど、そこに付き合わせるのに苦労させたというか」
 
――そりゃそうだ(笑)。だったら最初から言ってくれたらやったじゃん! みたいな。
 
「最終的に完璧に納得するモノになったから僕はいいんですけど、プロデューサー的には随分腹が立ったと思います(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) まぁでもタニザワくんはプロデューサーを立てた方がいいでしょうな。
 
「そうなんですよ。俺は1人でやってても多分ダメですね。もちろんいろんな音楽を聴くのは好きですけど、どっちかって言うと僕にとって音楽は、インプットじゃなくてアウトプットなんで。世の中のどんどん進化していく音楽を僕より知ってるヤツなんて幾らでもいて、今回のプロデューサーの竹内さんなんか年間1000枚はCD買ってますから。CDを聴き始めたらどれだけ腹が立つ作品でも、絶対に最後まで聴く。それぐらいデータベースのある人の意見は、やっぱりすごく参考になるし、そういう意味でも俺は聴く専門の人間じゃないことが分かったんで。そっちの方向で今から頑張るより、漫画だったり、旅だったり、僕は僕のインプットがあるんで、そっちでいいなって」
 
――タニザワくんって音楽からインプットしないよね。
 
「ほとんどしないですね。フェスとかに行っても、楽しいというより悔しい感情になるタイプなんで。いい悪いよりは好き嫌いに関してのジャッジは結構うるさい方だし、ずっと僕は音楽ファンだと思ってましたけど、ここんとこ全然音楽好きじゃないかもって思い始めました(笑)。でも、アウトプットは漫画を描くとかじゃなくて、曲を作らないとヤなんですよ」
 
――ライブを観に行ったら、まぁいろんな層のお客さんがいて、遠征する人もいる。この情熱はすごいなって。例えば自分がこの業界にいなくて、一般人で別の仕事してて、今ライブハウスにそんなに頑張って行くかなって考えたら、行かねえなって(笑)。
 
「ホントですよね(笑)」
 
――だから、今ライブハウスにいるこの人たちの方が、よっぽど音楽好きなんじゃないかって思うときがある。
 
「そうなんですよ。そこを自分の中で納得しなければいけないと最近すごく思うんですよ。自分は音楽ファンだって言いたいんです。音楽はもちろん好きだから。でも、俺より好きなヤツなんて幾らでもいるんで。アレンジャー連中も頭おかしいぐらい音楽が好きなヤツばっかだから(笑)。だから僕は、信頼すべきアレンジャー連中から、“最近何がいいの?”と聞いて、その人たちが失敗した末にコレがいいと言った作品だけを買う(笑)」
 
――ずるい(笑)。
 
「それで十分みたいな(笑)。こんなヤツ音楽ファンなわけないじゃないですか? だから僕は音楽ファンじゃないってことが、分かりました(笑)」
 
 
勃起してるけど勃たない感情というか
安心することによって勃起する人間になりつつあるんですよ(笑)
 
 
――リード曲の『四季娘』(M-2)なんか、タニザワくんからこういう曲がまた聴けるとは思いませんでした。
 
「アハハハハ(笑)。まぁ言ったらこれはキザ野郎タイプの曲ですけど、こういうちょっと文学青年ぶった方向とか、自分の中に確かにある面に今回はちゃんと向き合えたんです。今までは例えば1つのことやろうとするのと同時に、こういう方向はやめとこうともなるじゃないですか。でも今回はそうじゃなくて、それぞれの方向をただ突き詰めようとした作品だから、そういう意味では今までに僕がだんだんと封印し始めてたモノを、もう1回出すことは出来たかもしれない」
 
――このテイストはタニザワくんが持ってる魅力の1つでは絶対にあるので。この曲が入ってるということは、それをタニザワくん自身も理解したということよね。
 
「そうなんですよ。だったらもっとそう思わせてやれみたいに開き直れたというか。怖いものがなくなったところはありますね」
 
――そしてそれが、アルバムの引き締めることにも利いてくる。今回は文学青年系の曲の割合も前作より多いし、それがあることで頭おかしい系の曲が際立つのもあるんで(笑)。
 
「ありがとうございます(笑)。そう言ってもらえて嬉しい」
 
――あと、9曲目の『人と宇宙の相互性の考察』は、昔からのタニザワくんを知る者には気になるタイトルですね。
 
「『蜃気楼と旅人の関係性の考察』(インディーズ時代の2ndミニアルバム『七色』(‘05)に収録)が出来た次の日ぐらいに、“考察”シリーズって面白いかもって変なひらめきがあって。それから今までに『人と宇宙の相互性の考察』を5~6曲は作ってきたんですけど(笑)、どうも気取った方向に行くというか、全部駄作(苦笑)。今回の曲自体は松本大洋さんの『鉄コン筋クリート』テーマ曲として僕が勝手に作った曲なんですけど(笑)、そのメロディに乗っけてみたらスラスラと歌詞が出てきた。“フザケる”っていうことが一番重要なテーマだったんだって僕の中でようやく行き当たって…だからすっごい時間がかかった曲ですね」
 
――今さら?って思ったもん(笑)。個人的には(石崎)光(cafelon)さんのアレンジがやっぱ好みだな~。
 
「光さんは前作はプロデューサーとして全曲参加してるけど、今回は光さんも一目置いてる竹内さんがプロデューサーなんで、ぶっ壊すのが俺の役割だって分かってくれてたんですよ。だから『やめちまえ!タニザワトモフミ』(M-3)みたいなクレイジーポップが出来たり。今作では4曲一緒にやってますけど、他のアレンジャーとの対比という意味でも、光さんの曲が僕の中でも相当重要で。sugarbeansが王道寄りだとしたら、グレンスミスは光さんよりも頭おかしいんですけど(笑)クレバーにまとめる感じで、golf(の関根卓史)はUSインディー的な音色の使い方とかをして遊ぶみたいな」
 
――ちゃんとタニザワくんのことを理解したチームが集まってきてますね。あとさっきの『やめちまえ!タニザワトモフミ』の、“だれかを傷つけるのも傷つくのも嫌なのさ♪”っていうくだりが、結構意外だな~と思いました。だって絶対に傷つけるのも傷つくのもイヤじゃないと思うんだよねこの人、って思ったもん(笑)。
 
「いや、何だかんだでビビリなんですよ。最近ホントに思うんですけど、勃起してるけど勃たない感情というか、安心することによって勃起する人間になりつつあるんですよ、僕」
 
(一同爆笑)
 
「だから結局心の底では、本能的には安定を求めてるのかなとか、いろんなことを思い出したら悲しくなってきて。それが今、僕が一番戦ってる場所です(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「ホントは変化が一番怖いんじゃねえの?って。これが歳をとるということなのか、何しろ昔の僕はこうじゃなかったと思うところがあって。あと、だんだん酔っ払ってるから勃たないんだみたいな…自分への言い訳感にめちゃめちゃ腹立つんですよ」
 
――それで言ったら、興奮が状況に負けるってことでしょ?ってもう何の話やねん!(笑)
 
「アハハハハ!(笑)」
 
――ソウル的に通じるところはめっちゃあるけど(笑)。
 
「いや~ホントにそうなんですよ。そういう葛藤を詰め込んだアルバムということで(笑)」
 
 
いつまで経っても無茶な人間でいなきゃいけない
 
 
――だからこそね、『世界一周ノスゝメ』(M-1)みたいな話になってきちゃう。
 
「そうなんです。7月15日(日)に東京のグローブ座でやるワンマンのタイトルが『さようならタニザワトモフミ』なんですけど、その後に世界一周に行ってくるという」
 
――だからもうこの曲が全てを語ってるよね。
 
「はい。でも、ホントは世界一周とか行きたくねぇ~って心のどこかで思ってますよ。もうコレは、自分を奮い立たせるための曲というか…世界一周に行くことを、僕ん中で義務化してるところがあるんです。だって俺、今不満も特になくて、何でそんなにムリすんの?って思いますよ。海外に行ったら、下手したらiPhoneを盗むために腕を切られるかもしれないし」
 
――こえー!
 
「何があるか分からないじゃないですか。もう何にしろ全てが怖い、行きたかないって思うんですけど、こうやって発表するのも、それによって自分を追い込んで、行くしかないようにするためなんですよ。これで行かなかったら超カッコ悪いじゃないですか(笑)。歌ってることは全て本音だし、“よっしゃ行くぞ、行きてぇ~!”って思う自分ももちろんいるんですけど、ふとした夜に“行きたくねぇ!”って思うんですよ(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 歌詞にもあるけど、やっぱり“世界一周の旅の次 何しよう♪”っていう、ここがやっぱり楽しみなところで。『日本に落ちてきた男』があって、今回の『何重人格』を作ってしまったら、もう次はこの路線の精度を高めるしかないような気もするし。だって今、何も思い付いてないよね?
 
「はい(笑)」
 
――そういう意味では、それこそ自分の人生観を変えるほどの経験をしないと。
 
「そうなんですよ。壊れてこないと」
 
――多分、『何重人格』のその先の作品にしかならない。
 
「うん。いいものは出来るとは思うんですけど…あ~なるほどね…って予想がつくのが目に見える。それは絶対にイヤだから」
 
――世界旅行に行ったら、全く考え付かないような何かが出来るかもしれない。タニザワくんと会えなくなるのは寂しいけど、帰ってきたときに何を作るのかが、すごく楽しみだなって。
 
「ホントですよね。下手したら小説家になりますとか言うかも(笑)」
 
――俺、音楽じゃなかったですと(笑)。でも、そうやってやろうと思ったことだったら、多分どんなアウトプットでも面白いものになるだろうなって。もしくは帰ってこないっていう(笑)。住んじゃって帰らない。
 
「南米が長いことは間違いないと思う。尻フェチの僕からすると天国みたいな場所なんで(笑)」
 
――まぁでも間違いなく変わるね。タニザワくんは自分がそのまま音楽になるから、自分を変えないと、音楽も変わらない。
 
「そうなんですよ。だから、僕が旅に出るのは、もうホントに次に違うことやるためでしかない。行きたいからというよりは、もう行かないとヤバイから。もう何も出てくる自信がないから、自分を変えないと。やっぱりこの歳になるとだんだん定まってくるじゃないですか。それもイヤだし、いつまで経っても無茶な人間でいなきゃいけないというか。そういう縛りは、決して間違ってないような気がする」
 
――変わり続ける自分でいなきゃいけない縛りは、大歓迎と。
 
「それがないと僕なんかもう、一気に安定に走ると思うんで(笑)。弾き語りアルバム出しますって言い出すかもしれない(笑)」
 
――また白シャツ着てね(笑)。まぁでもそれぐらい、今回の『何重人格』はタニザワトモフミの1つの到達点というか、やることをやれた作品になったね。
 
「ある意味現状の自分にとっては、もう到達点だなと思ってます。とは言え、いずれそうじゃないと思う時期がまた来るんとは思うんで、今はもうそれでいいかって諦めてます」
 
――アハハハハ(笑)。今回はアートワークも含めてもう散々遊ばしてもらってね。
 
「この作品が売れたらいいな~と思いますね。前作の『日本に落ちてきた男』で大きかったのは、何だかんだ言って『きみにとどけ』絡みの『爽風』があったから。もう『きみにとどけ』のおかげで、何とか食えてるんで(笑)」
 
――まぁでも、『何重人格』でケリをつけられてなかったら、世界に行くことも出来なかったでしょうし。
 
「そうなんですよ。だからホントに、今回は後悔することだけが怖くて。レコーディングの最後の最後までずっとウジウジ言ってたのはそのためで。だって遺作になるかもしれないじゃないですか?(笑) 僕みたいに無茶するヤツは、ホントに旅の途中に死ぬかもしれない。この作品で後悔したらもう、一生音楽に触ることが出来なくなるかもしれない。“コレが俺だ!”と言える作品にはなった。それは確かです」
 
――そう考えると、全部の作品がホントに、タニザワくんの人生というか。
 
「だからもう昔の作品から順番に聴いていくと、ホンットに泣けてくる。『まぼろし時計』(‘10)辺りとかはすげぇ泣ける。いや~でも全てを経て良かったなと」
 
――今後のタニザワトモフミどうなっていくんですかね?
 
「もうホントにどうすんでしょうね? 最終的には宮古島かな?(笑) でも宮古島に仕事なんかあるわけないから、ゲストハウスとかやろうかな」
 
――なんか胡散臭いゲストハウスのおっさんになりそうやな~(笑)。
 
「アハハハハ(笑)。でも農業には興味があって、世界一周から帰ってきたらどこかの農大に入って農業を勉強して、ひいては宇宙飛行士になろうかなと(笑)」
 
――目標遠いな~(笑)。でも、ホントになったらめっちゃおもろいけど。
 
「最近、『宇宙兄弟』っていう漫画が好きなのもあるんですけど、昔から宇宙が好きだったんでいろいろ調べてたんですけど、宇宙飛行士になるには理工系の大学を出て、そういう関係の会社で3年間勤めなきゃいけない」
 
――結構ちゃんと調べてるやん(笑)。
 
「あと、英語がペラペラじゃないといけない。協調性がなきゃいけない。それが一番不安なんですけどって今、俺一番定まってないです。もう何をしていいんだか分からん」
 
――さすが、“何重人格”(笑)。
 
「将来が不安で不安で、とりあえず旅に行くしかないっていう(笑)」
 
――音楽以外に興味あり過ぎやねん!(笑) それはさておき、7月10日(火)の心斎橋JANUSが関西ラストライブで、15日(日)東京・グローブ座でのワンマンライブでアーティスト活動を休止すると。この『何重人格』を再現するのは大変そうですけど。
 
「『世界一周ノスゝメ』の旅感を出すんだったら、アコーディオンが欲しいなと。鍵盤の西池さんが“アコーディオン50万もするんだよな~”って言ってたんで、“将来的にアコーディオンが弾ける鍵盤は重宝されると思うよ~”とか言ってね(笑)。『しよう』(M-8)なんかは超ドエロな感じになってますよ。一応チャックぐらいは開けようかとか(笑)。『人と宇宙の相互性の考察』はライブで再現するのが超しんどくて、ホントにエフェクターを何台買ったんだろうって感じで、今リハが大変です(笑)」
 
――最後のワンマンではある程度『何重人格』がメイン?
 
「いや、僕のインディーズの一番最初からの集大成になると思います。ぜひ! ホントにラストだと思うんで」
 
――それは東京まで観に行く価値はあるね~。本日はありがとうございました~!
 
「ありがとうございました~!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
 



(2012年7月 8日更新)


Check

Release

徹底的にブレまくる全方位型にして
輝けるポップミュージックの革新作!

Album
『何重人格』
発売中 2500円
バップ
VPCC-81730

<収録曲>
01. 世界一周ノスゝメ
02. 四季娘
03. やめちまえ!タニザワトモフミ
04. ラブラブ♡MP3
05. 百年も孤独
06. はらぺこモンスター
07. 夢の食堂
08. しよう
09. 人と宇宙の相互性の考察
10. 炒飯奉行
11. なんにもないふりでぼくらは
12. サマー

Profile

タニザワトモフミ…岐阜県飛騨市出身。’00年上京、都内各所でライブ活動を始める。インディーズレーベルより『陽炎』『七色』『空路』のミニアルバム3枚をリリース。’09年に1stシングル『東京ハロー』でメジャーデビュー。同年リリースした2ndシングル『きみにとどけ』は、アニメ『君に届け』のオープニングテーマに抜擢。各方面から注目を浴びる。’10年に1stフルアルバム『まぼろし時計』をリリース。’11年には自身の価値観、哲学を詰め込んだ2ndフルアルバム『日本に落ちてきた男』をリリース。収録曲『くたばれJ-POP』では多くの賛同・賞賛を集める。音楽活動以外では、へーベルハウス『空の下で』などのTV CMソングに参加、『マンガ大賞』審査員に選ばれるなど活動の幅を広げつつある。

タニザワトモフミ オフィシャルサイト
http://tanizawatomofumi.com/


Live

活動休止まで残すところあと2本!
歴史を総括するラストウイーク

【大阪公演】

『これがポップミュージックだ! Vol.5』
チケット発売中 Pコード172-851
▼7月10日(火)19:00
心斎橋JANUS
オールスタンディング2500円
[共演]カルマセーキ
[オープニングアクト]crawl
JANUS■06(6214)7255
※公演当日、高校生以下の方は学生証提示で1000円返金。

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【東京公演】

SPワンマンライヴ
『さようならタニザワトモフミ』
チケット発売中 Pコード170-100
▼7月15日(日)17:00
東京グローブ座
全席指定4000円
ディスクガレージ■050(5533)0888
※3歳以上はチケット必要。

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Column

関西ラストライブで共演する
カルマセーキが徹底解説!
タニザワトモフミの魅力