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1stアルバム『恋に似ている』とは何だったのか?
THEラブ人間の3年間、そして人間・金田康平の音楽人生を辿る
7/14(土)心斎橋JANUSよりスタートする
東名阪ワンマンツアー開幕前夜のインタビュー

 ‘09年の結成以来、日常と地続きの目線で綴られる人生劇場が刻まれた詞の世界、その人間模様が脳裏に投影されるドラマチックなメロディライン、そしてそのソングライティングを一手に手掛け、感情のダイナミズムを増幅する天性の語り部、金田康平の熱き歌魂により、ライブシーンで熱い注目を浴びるTHEラブ人間が、5月にメジャー1stフルアルバム『恋に似ている』をリリースした。同作を携えた全国ツアーも、残すは7/14(土)心斎橋JANUSを皮切りとした東名阪ワンマンのみ。そこで、フロントマン・金田康平に、リリースから2ヵ月を経た今、1stアルバム『恋に似ている』とは何だったのかを語ってもらった。それは自ずとTHEラブ人間の結成から今までの3年間、そして彼の13年間の音楽人生を振り返ることとなった。昼下がりのとある喫茶店で交わした会話は、THEラブ人間、そして人間・金田康平の現在地を明確に照らしている。この男、やはり面白い。

――金田くんの歌ってコーヒーがよく出てくるよね。

 
「いやホンット大好きなんですよ。もう俺、コーヒーと水しか飲まないです。酒飲まないんで」
 
――え!? 嘘やん!! めっちゃ意外。
 
「ホントに。辞めました。もう声が出なくなっちゃって。2年近くは経ってますね。元々はめっちゃ好きでした」
 
――しこたま飲んだ翌日、いきなり声が全然出ないみたいな?
 
「そんなのばっかだったんですよ。バンドで食っていきたいとはどこかでずっと思ってたけど、ホントのホントの覚悟がまだ持ててなくて、ようやくそれが持てた頃、“じゃあ俺はバンドで一体何がやりたいんだろう?”って考えて。俺が自分のことを“歌手”と言ってるのは、ギターは飾りというか、歌を伝えるためのフィルターとして弾いてるつもりなんですよ。結局、俺はずっと歌いたい。ギターが弾けなくなっても、この手がなくなっても、歌だけは歌い続けると思うから。そうなってくると、とりあえず」
 
――声を奪う可能性のある物を。
 
「うん。ちょっとずつなくしていきたいなぁと。ま、コーヒーも喉に悪いですけどね」
 
――その2年位前に“俺は歌でやっていくぞ”って思えたのは何なんですか?
 
「何かね、がっくりしたんですね、その声の出ない自分に。例えば2500円のチケット代を払ってもらって、プラスドリンク代の500円で3000円。それってアルバム一枚買えるじゃないですか? それをお客さんに払ってもらっておいて…その日のライブの出来が悪くても、それが雰囲気とかムードとしての“悪かった”ならこの次こそって思えるけど、“昨日飲み過ぎて今日声出なかったわ~”ってライブの後に思ったとき、“これって、普通に昨日飲まなかったらいい声出てたんだ、元からやっとけば出来たことだったんだ”って、すげぇがっくりしたんですよ。それがきっかけかもしれないです。もう自分にがっかりしたくないなぁって。俺はもう、世界とか人とか、いろんなモノにがっかりしてるから。自分位はがっかりしたくないなぁと」
 
――音楽やってる自分にがっかりしたらもう…。
 
「最後ですよね。だから、とりあえず1つずつそういうモノを潰していけたらいいなと」
 
――声が出なくなったことがただ単に酒を辞めるきっかけになったんじゃなくて、本気で音楽をやらなければと思うきっかけになった。思いっ切りドラマチックな出来事があって“俺は音楽だ”と思ったんじゃなくて、そういう自分の中での気付きというか。
 
「ドラマチックって言ったら、最初にロックを聴いて、バンド組んで世界変えるんだ!!って思った13歳の頃が一番ドラマチックです。それ以降はやっぱり歌ってることと一緒で、日常の些細な変化にしか興味がないんで。映画とかドラマみたいな人生じゃないから、そういう些細な変化の方がよっぽどドラマチックだとは思いましたね」
 
――その13歳のときに聴いた音楽って何?
 
「小4で音楽を聴き始めたんですけど、兄貴にX (JAPAN)のビデオを観せられて、“何じゃこりゃっ!?”ってなって。絶対に中学生なったらV系バンドを組もうって。で、早速小4でドラム始めたんですよ。スティック買ってもらって、ランドセルをぶっ叩きまくってた(笑)。でも、いざ中1になったとき、ブルーハーツと(セックス)ピストルズとハイスタを聴いて、気付いちゃったんですよね。俺がカッコいいと思ってたのはその人の“音楽”じゃなかったんだなって」
 
――うんうん。
 
「ホントにカッコいい音楽があるんだって。そこら辺でもう完全に“ロックバンドをやろう!!”って思いましたね。だからきらびやかな衣装も、言っちゃえば照明すらホントは要らないんですよ。原型はもうそのときですね。でも、その後にもっと俺の根底になっちゃうのが、その半月後位に聴いたeastern youth、あとはサニーデイ・サービスですね。それが相当、基礎になってます」
 
――金田くんは漫画も読むし映画も観るし本も読む。ならアウトプットが別に音楽じゃない可能性もあったんじゃないかってちょっと思ってたんだけど、話を聞いているとやっぱり圧倒的に音楽なんだね。
 
「それは全部音楽“以降”なんですよね」
 
――摂取したのが。
 
「そう。漫画、小説、映画なんてホント最近死ぬ程観に行ってるんですけど、今年からですね」
 
――めっちゃ最近やん(笑)。
 
「うん(笑)。それまで映画の良さが全く分かんなかった。今年になってマジで映画を観るようになったから、全部楽しい。今めちゃくちゃ中学生の気分なんですよね(笑)。俺はもう『ショーシャンクの空に』(‘94)で死ぬ程泣きました」
 
――おせ~!(笑)
 
「25歳になって“えー!? こんなに面白かったんだ!!”って(笑)。全部が音楽以降に好きになったものだから、アウトプットはもう音楽で定まっちゃてるんですよね。だから音楽以上に衝撃的なモノは、漫画にも小説にも映画にも、絵画とか彫刻とか美術作品にもないです」
 
――あの頃から十何年も時が経って、いろんな経験もしてきたはずだけど、音楽を超えるインパクトがないんやね。
 
「ないですね」
 
――そして今それを続けるエネルギーがまだまだある。
 
「うん。服屋に行って、カッコいいけど自分には似合わない服ってあるじゃないですか? 俺は映画が好きだけど映画を撮るイメージは湧かないし、小説は読むけどそれを書くイメージもない、漫画も好きだけどそれを描くことは、俺にはフィットしないんですよ。それよりかは漫画を読んで、そのときに思ったことを歌にする方が、自分の身体と心にピッタリで。だから続けてるだけなんですよ」
 
――じゃあ最初に摂取したエンタテインメントが、自分にホントにフィットするモノやったんやね。
 
「そうだと思うんですよ。例えば13歳で映画を好きになって、その次の年に小説を好きになって漫画を好きになって、今まで全く音楽を聴きませんでした。今年25になってようやく音楽を聴き始めたしても、多分俺、今からでもバンドやってます」
 
――おぉ~! それ位の気持ち。
 
「例えばサラリーマンやってて25になって、“アレ!? 音楽って、ロックってカッコいい!”って思っちゃったら、バンド始めてると思うし。こないだの梅田Shangri-Laで嘘つきバービーとの2マンのときにも“みんなバンド始めた方がいいよ”って確かアンコールで言ったんですよね。カッコいいと思ったら、自分にフィットするんだったら、ホントにやった方がいい。俺がみんなだったら多分そうしてるから」
 
 
世界がガラッと変わると思ってたんですけど、変わんないですね
 
 
――5月に1stアルバム『恋に似ている』を出して、もう2ヵ月くらい経ってるけど、自分の中で何か思うことはあります?
 
「いやもうね、世界がガラッと変わると思ってたんですけど、変わんないですね」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「結構、それには絶望しましたね。俺の作った曲が入った1stフルアルバムが出たら、世の中どうなっちゃうのかなって、それこそ13歳の頃から考えてたと思うんですよね。でも、世界はたやすく変わんねぇってことがまず分かった(苦笑)。(ボブ・)ディランは“生きることは騒ぎだ”とか言ってるけど、生きることは辛いし、ずっと人生たやすくねぇなって思ってたんですよ。何か再確認しました。生きることはもっと大変なことだから、何かもうやっていくしかねぇかなって。このアルバムを出したことはもちろん後悔もしてないですし、すごくかわいいアルバムで。いつかこいつが“THEラブ人間の1st、当時全然売れなかったけど聴いたことある? めっちゃ名盤なんだよ”みたいになる。それしかないっす」
 
――うんうん。
 
「あとは“お前らあんとき買わなかったな。ざまぁ見ろ!”って言う様な作品とライブを、これからやっていくしかないなって思いましたね。ちょっと浮き足立ってたのかもしれないし、調子に乗ってたのかもしれない。それはやっぱり、このアルバムを録音してる当時を思い出して“もっとやれたことある?”って自分に問うと、やっぱりあるんですよね」
 
――まぁそれはアーティストみんなが思うことでもあるしね。
 
「このアルバムに手を加えることはもう出来ないから。このツアーで生で観てもらって、伝えていくしかないかなとは思います。まだTHEラブ人間のことを知らない人が多過ぎるから。だから、もう行く先々で声を大にして“どうだ! カッコいいだろ!?”って見せつけていくことしか、今このアルバムに対してやってあげることはないとは思いますね」
 
――さっきの酒を飲み過ぎて声が出なくなって歌うことにギアが入ったり、今回のそれもそうやけど、やっぱり金田くんは窮地に立った方が。
 
「上がります」
 
――ね。逆に音楽を長く続けるためのエネルギーになるというか、そうしていかないと意味がないというかね。
 
「そうなんですよね。だから続けることは難しいんだなって」
 
――他のインタビューでもよく、今回の1stアルバムについて“13年越し”っていう言い方をしてるやんか。それはやっぱり、THEラブ人間始めて3年分のどうのだけではなく、今までの自分の音楽人生を照らし合わせて作った1stアルバムということを言おうとしてるのかなって。
 
「うん。何かその気持ちは強いですね。誰かと作った1stアルバムっていうのは。今までに自分で作って来たアルバムって、1人で家で宅録したりして作ったモノだったんで。制作感がそんなにないですよね」
 
――うんうん。なるほど。記録というか。
 
「そう。記録っていう感覚が強い。俺ん中での1stフルアルバムっていうと、やっぱりブルーハーツのあの水色と白のやつで。でも、よく考えたらあれが出た当時のことを俺は何にも知らない。あれが出てすぐに世界がガラッと変わったんじゃなくて、10何年以上経った後に俺の人生はガラッと変わった。生き急ぎ続けたいとは思ってますけど、枚数が売れるとか、誰かの世界が変わるとかっていうことに関しては、もう死んだ後でも構わないのかもなって、思いましたね。宮沢賢治とかも死んだ後に作品は売れてるし、自分がその世界が変わる様を見れていないだけで、さっき言った“ざまぁ見ろ!”っていう、もう天国からのあの感覚ですよね(笑)。天国からベロ出して“お前ら、マジでこれから紙ジャケで再販するからな~!!”って(笑)」
 
――アハハハハ(笑)。
 
「もちろん今でも枚数は売れて欲しいし、人気者になりたいとも思ったりしますけど、それ以上に俺たちがすごく納得出来るアルバムを作ったことの方のが大切かなと。結局、売れることよりももっと大切なことを、もう一度再確認したっ感じですかね。自分たちがホントにやりたくて、満足のいく音楽をちゃんと提出しましたっていう」
 
――妥協なきモノをね、うん。
 
「だから、あんまり売れたいっていう風には…思わないって言うと変だけど。売れないと困るけど。生活も出来ないし(笑)」
 
――あとは言うたらスパンやね。
 
「第一優先は変わりましたね。ヘンにね、メジャーデビューしてから誰からもらってるわけでもないプレッシャーを、自分たちが勝手に心の中で増幅させちゃってたんで」
 
――ラブ人間でもそういうのがあったんやね。
 
「去年の8月の終わり位にメジャーデビューして。デビューしてほぼ最初のライブが、『ARABAKI ROCK FEST.11』だったんですよね。そこで、すっげぇいいライブが出来て。そこから、12月31日の『COUNTDOWN JAPAN 11/12』まで、1本もいいライブしてないです」
 
――そうなん?
 
「自分たち5人で納得のいくライブは、ほぼ1本もない。今日はよかったね、悪かったねっていう言葉さえ言えなくなりましたから。で、前日の12月30日に全員でもう忘年会だ!って、洗いざらい思ってることを喋って。次の日の『COUNTDOWN JAPAN 11/12』が今までの3年間の中では一番いいライブだった。それで、ようやく今年に入れた感じですね。今はヤバいですよ。今回のツアーは全編録音してるんですけど、いや~これはいつかブート盤出したいっすねぇ。“2012年6月10日@徳島”とか(笑)、アンコールまできちんと入ってる盤を出せたりしたら面白いっすね」
 
――いいね。でもちゃんと、去年の内にケリを付けられたというか。
 
「いや、ホントよかったです。去年中に落ち着けてなかったら、結構解散ギリギリでしたね(笑)」
 
――そんなに!?
 
「そう。一見、すごくいい空気みたいな感じでしたけど、ホントは全然そうじゃなかった。思ったことも言えなかったし」
 
――じゃあこの盤の制作はいつ頃? この感じだと年が明けてからかな?
 
「いやもうその完全暗黒期の中で作ったアルバムですよ(笑)」
 
――マジか(笑)。
 
「やっぱりねぇ…要はライブでお客さんの反応をみんな気にし始めちゃってたのかも知れないですね。だから、逆に言うとレコーディングは全然関係なかったし」
 
――誰かに観られてるわけでもないし、自分たちがやるべきことをやるだけですもんね。
 
「そうそう。その点、レコーディングの方が気持ちよくなった時期はみんなにあったかもしれない」
 
――ラブ人間は今のメジャー界隈では珍しく、大阪でのレコーディングが多いっていうのも。
 
「もう大阪でしかレコーディングしてないです。いいエンジニアがいるんで、その人と録音したいっていうのもあったし、正直、岡本太郎が好きだから吹田で録ってるっていうだけで結構テンションが上がる(笑)」
 
――アハハハハ(笑)。磁波がね(笑)。
 
「そう、太陽の塔の守備範囲に。攻撃範囲かも知れないですけど(笑)。俺ん中でもう、パワースポットになってる。それも良かったっすねぇ。だから、次のレコーディングはどうしようかなっていうことも考えてる。東京で録ってみたいとも思うし。いいエンジニアがいて、その人とずっとやってても、お互いの限界が見えてきちゃうんだったら怖いし」
 
――延長線上にしかならないかもしれないですもんね。
 
「今はもう2ndアルバムの構想みたいなのもきちんと出来てるし、6曲位はアルバムに入ってない曲たちが出来ているので。それをどういう方法で録音しようかっていうのは、まだ決め兼ねてるところですね」
 
 
人と人の人生が触れ合っちゃう瞬間が一番怖い
その怖さが好きでバンドをやってる
 
 
――俺が根本的なところでそもそも聞きたかったことが2つあって。ラブ人間の音楽って、各所で“21世紀のフォークミュージック”みたいなことを言われてたけど、基本的にフォークミュージックというモノを今の時代にやろうという人って、ほとんどいない。何故そこに金田くんが惹かれたのか、そしてそれを表現する形態が何故バンドだったのかを教えて欲しいなと。
 
「前にやっていたバンドがディスコ・ハードコアみたいなバンドで、歌詞の内容がもうちょっと文学的だったんですよね。今も文学的って言われることも多いけど、出来るだけ熱くならないようにというか、もうメタファー(隠喩)のメタファーのメタファーのメタファーみたいな(笑)。とにかく直接的な表現から遠ざけていって、これ意味あるの?みたいな。何の意味もない、何の肥やしにもならない。それがロックだと思ってたんですよ。そういうモノを俺もずっとやってきたんだけど、“自分の人生とは何ぞや?”というところに行き着いちゃうと、やっぱり意味のあることというか、自分の言葉で話したい。自分が結婚しなかったら子供は出来ないし、もちろん子孫も残らない。そうなったら、“21世紀初頭に生きていた金田康平ってどういう人だったんですか?”っていうことが一体誰に残せるのかと思うと、もうCDにしか残らないなって。そのときにすごく分かりやすく伝えていけたらと思ったんです。俺の言うところのフォークっていうのは“生き方”だから。生活であり暮らしであり営みであったりする。そういうことをやっぱり自分の言葉で伝えていかないと怖いなって思ったんですよね。いろんな捉え方をされちゃうよりは、コレというものをポンと置いておく。そういう歌い方を、そういう歌作りをしたいなと思ったんですよ」
 
――そして、それをバンドで表現するという?
 
「それは正直ね、俺が選んでないです。このバンドはキーボードのツネ(・モリサワ)が俺を誘ったところから始まってるから。前のバンドが解散して“さぁフォークを歌うか”と思っていたときに、ツネのバンドも丁度解散して、“一緒にバンドやろうよ”って。“じゃあ、バックバンドをやってくれ”っていうことで、カネダコウヘイ & I LOVE YOU!!を組んだんですよ。それが’09年1月で、バイオリンの谷崎とかもその頃からいたんですけど。レコーディングをして4月に音源を出すってなったときに、ノルマも払ってもらってるしスタジオ代も出してもらってバックバンドはねぇよなって思って(笑)」
 
――そやね(笑)。
 
「バンド名、THEラブ人間にするわって、ホント行きずりでバンドを組んだ感じはあります(笑)。元々は高田渡の『ごあいさつ』(‘71)のバックがはっぴいえんどとか、前野健太 とDAVID BOWIEたち、前野健太 with おとぎ話、みたいな感じでやっていけたらなぁ位の感覚だったんですけど」
 
――でも、今はそれとは違うよね。
 
「そうですね。いや~でも、今みたいな気持ちになるまでには時間がかかりましたけどね。最初の1年位はバックバンド意識が強かったし。『大人と子供-17才と22才-』(‘10年1月)っていうミニアルバムを出す位までは、アレンジとかも口出ししかしなかったですけどね(笑)。でも、ちょっとずつしなくなりました」
 
――それだけ5人でやる意義みたいなものが出来てきたという。
 
「そうですね~。やっぱり気持ちがいいのは、100点満点の曲だけを持っていって、メンバーのアレンジによって120点にされて返された瞬間が一番気持ちいい。それがまた良かったりもするし、畜生!って思うから。俺はもう80点にさせたい位の気持ちで持っていく(笑)」
 
――なんでやねん(笑)。しかし、それが“バンド”たる所以ですよね。
 
「120点にされたときに、なるほどなって。バンドのマジックみたいなモノはホントにあるんだなぁって思うんですよね」
 
――今回のアルバムもそうやってみんなで作り上げて。出来上がったときに、自分の中での達成感みたいなものはあったんですか?
 
「このアルバムに関しては、3年間かけてやってきた曲たちが9割方入ってて、書き下ろしが2曲。これでギリギリ今のラブ人間まで持って来れたかなぁと。達成感というよりかは、2ndアルバムで今のラブ人間が自分たちに問うモノを作っていくために、一回終わらせなきゃいけなかったというか。別に、今までライブに来てくれて、楽曲をCDで聴きたいと思ってくれたお客さんたちのことを気にしなかったら、全然作らなくても良かった1枚だと思うんです。けど、俺がこの3年間で一番変わったことは、お客さんとか、知ってる人がもう…だって今、大阪で取材受けてるんですよ! こんなこと、3年前の自分が知ったら気絶すると思う」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「ね(笑)。で、メジャーデビューもしてるし」
 
――うん。すごいよね。
 
「福岡や札幌とかでライブをやったときに、“ずっと待ってました!”って言ってくれる人がいることに対して、“ありがとう”と思えるようになった3年間なんで。今でも全然、優しい人間でも誰かのことを考えるような人間でもないですけど、何でこのアルバムを出せたのか、この収録曲で出したのかっていうと、そこに尽きるかもしれないなぁと。“ありがとう”って、思ってる作品ではありますよね、すごく」
 
――それこそラブ人間って関西の人間からすごく愛されてるというか、コミット感がすごいなと思うねんけど、金田くん的にはその辺どうなんかな。関西のシーンと自分との距離感とか。
 
「関西のオーディエンスとの距離はすごく近いと思ってます。東京よりも近いです。近い=いいことかは分かんないですけど。友達みたいに俺たちのことを扱ってくれる人もいるし、まるで神格化してるような男の子もいるし。女の子はいないすけど(笑)」
 
――アハハハハ(笑)。
 
「いいか悪いかは置いといても、何て言うんですかね…一番背中を押される場所ではありますね。初めてラジオで流れたのも東京じゃなくて大阪だし、初めて関東圏以外でライブをしたのも大阪の地下一階だし。だから第二の故郷的なところはあります。東京のバンドマンで、俺ほどまんだらけ心斎橋店にお金を落としてるヤツはいないし(笑)。俺かタカハシヒョウリ(オワリカラ)かっていう(笑)。大阪でカッコいいバンドと対バンしてみたいですね。オーディエンスはもう最高ですよ。俺がオーディエンスのことを最高って思うことは実は少ないですから。何故ならオーディエンスと音楽は、関係がすごく強いようで関係がない、と思ってるから。もっとそれぞれが孤絶されている。ライブハウスに500人入っていようと、1人×500の孤絶があって、それが何故だか強烈に引き付け合うのがライブの恐ろしさ、怖さですよね。人と人の人生が触れ合っちゃう瞬間が一番怖いから。その怖さが好きでバンドをやってる。大阪はね、その導き合いみたいなモノが異常に強い。だから1曲歌っちゃうでも、手拍子しちゃうでも、呆然としちゃうでも、極端にそれを俺たちに見せつけてくる感じがいいですね。大阪は返ってくるモノがすごいです」
 
――じゃあ今回の東名阪ワンマンで、また大阪の恐ろしさを体験しに来ると(笑)。
 
「怖いっすよ~(笑)。初ワンマンですからね。どんな状況になるか楽しみですね」
 
――それでは、7月14日(土)心斎橋JANUSで会いましょう。
 
「ぜひ! ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2012年7月13日更新)


Check

Release

10篇の人生劇場が込められた
感動のメジャー1stフルアルバム

Album
『恋に似ている』
発売中 2800円
SPEEDSTAR RECORDS
VICL-63880

<収録曲>
01. おとなになんかならなくていいのに
02. 悪党になれたなら
03. わたしは小鳥
04. 西武鉄道999
05. 八月生まれのきみの結婚式
06. わかってくれない
07. りんごに火をつけて(Light My Apple)
08. 砂男
09. 大人と子供(初夏のテーマ)
10. 愛ってかなしいね

Profile

ザ・ラブニンゲン…写真左より、服部ケンジ(ds)、谷崎航大(vl)、金田康平(歌手)、ツネ・モリサワ(key)、おかもとえみ(b)。’09年1月、ソングライターの金田を中心に結成され、同年4月に自主制作音源『恋街のすたるじい』を発売。’10年8月、『SUMMER SONIC』への出演権を賭けたオーディション企画『出れんの!? サマソニ!?』を勝ち抜き、同イベントの幕張公演に出演。同年9月にツアーファイナルとして下北沢のライブハウス3会場を貸し切り『THEラブ人間決起集会「下北沢にて」』を実施し、成功を収める。’11年5月、インディーズで初の全国流通シングル『砂男・東京』をリリース。オリコン総合チャート50位台にランクイン。7月、初のワンマンライブ『THEラブ人間の単独演奏会~はじめてのラブレター~』@渋谷クラブクアトロを開催し、650人を動員。8月にミニアルバム『これはもう青春じゃないか』でメジャーへ移籍。11月にメジャー1stシングル『大人と子供(初夏のテーマ)』を発売し、2度目の自主イベント『下北沢にて』をライブハウス5会場に拡大して開催した。

THEラブ人間 オフィシャルサイト
http://loveningen.jp/


Live

新作に伴う東名阪ツアーがスタート
記念すべき初ワンマンは初日の大阪!

『THEラブ人間 リリースツアー2012
「恋に似ている」』

『単独演奏会 大阪編
【「夜」に似ている】』

チケット発売中 Pコード167-441
▼7月14日(土)19:00
心斎橋JANUS
スタンディング2500円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は入場不可。

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『単独演奏会 名古屋編
【「鳥」に似ている】』

チケット発売中 Pコード167-239
▼7月16日(月・祝)18:30
池下CLUB UPSET
前売2800円
ジェイルハウス■052(936)6041

『単独演奏会 東京編
【「ぼく」に似ている】』

チケット発売中 Pコード165-800
▼7月22日(日)18:30
LIQUIDROOM
オールスタンディング3000円
ソーゴー東京■03(3405)9999

関西夏の風物詩、野外ロックイベント
『OTODAMA~音泉魂~』初日に登場

『OTODAMA'11-'12~音泉魂~』
チケット発売中 Pコード167-957
▼9月8日(土)11:00
泉大津フェニックス
1日券6300円
[出演]奥田民生/木村カエラ/クリープハイプ/子供ばんど/佐野元春&THE COYOTE BAND/THEラブ人間/SCOOBIE DO/DOES/怒髪天/トモフスキー/ねごと/フラワーカンパニーズ/星野源/真心ブラザーズ/レキシ/KING BROTHERS/レイザーラモンRG(入浴宣言)
清水音泉■06(6357)3666
※雨天決行・荒天中止。小学生以下は無料(入場券をお持ちの保護者の同伴が必要)。出演者変更に伴う払戻し不可。

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