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次世代の日本映画界を引っ張っていく未来の巨匠との呼び声も
《濱口竜介プロスペクティヴ in Kansai》
大注目の監督、濱口竜介 超ロングインタビュー
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──その初めてという部分でも、「これから」を指し示すプロスペクティヴでの上映にふさわしい作品となったかもしれませんね。

 

「『不気味なものの肌に触れる』はいずれ撮ろうと思っている長編の前日譚というか、エピソードゼロとして撮られています。まあエピソードワンがまだないんですが(笑)、何か続きがあるだろうなという形で終わる。人によっては54分の壮大な予告編と言いかねないものを一本の映画として作りました。どれだけ先になるか分からないし、話の続きも何年先のことになっても構わないような終わり方になっています。ただ、決まっているのは今回出てくれた役者さんたちといつかまた映画を作ろうと。言ってみれば今回の作品でオファーをすることが、何年か先のオファーでもあるということですね。そういうことができたのは、とても幸せでした」

 

──まさに「プロスペクティヴな」作品、そんな予感がします。今日は長い時間ありがとうございました。最後にひとつお願いを。今回のプロスペクティヴではフレデリック・ワイズマン監督の『最後の手紙』(2001)の特別上映があったり、『親密さ』でも手紙を効果的な小道具に使っていたりと、濱口監督には「手紙の人」というイメージがあります。このインタビューを読んで下さった方に手紙を書いていただけますか?

 

 

 

手紙ばかり書いているリリカルな人と思われるのも残念な感じですが、自分のやっていることを考えるとそれも致し方なし、という気もします。それこそ「最後の手紙」のような気持ちで書いてみたいと思います。

が、しかし手紙って、初めての人にはあんまり書かないですよね。それこそ今回みたいな特集上映の宣伝の時期だと「拙作のDVDをご覧いただきたく…」と手紙を書いて送ったりします。「ずっとあなたの著作を読んで来まして云々…」みたいなことを書くたびに何だか嘘くさいなあ、と思いつつ、その嘘くささに耐えながら、ぶしつけな手紙を書いたりします。

これを読んでくれている人のほとんどは会ったこともないわけで、「僕の映画を見てください」と言うには嘘くささ以上に「何でもなさ」がありますね。「なぜ自分の貴重な時間とお金を使って、お前の映画を観なくてはならないのか」ということの理由のなさに呆然とします。宣伝のときにいつも思うんですが、僕が「面白いですよ」とか言っても何の意味もないわけですね。信用するにまったく足らない。だからいろんな人のコメントとか推薦をいただいて来たりするわけですが、そのこと自体は大変ありがたいと思いつつ、やはり何か足らない気がする。この世界には面白いものがとても沢山あるわけで、その中で自作を選んでもらう理由って何かあるかしら、とはいつも思います。ただ、一つ言えるのは僕が今まで撮ったあらゆる映画があなたに向けられた手紙のようなものだということです。あなたによって封切られ、観られることだけをただ待っている、そういう手紙だということですね。もしそういう手紙を待つような気持ちが少しでもあるなら、郵便局の私書箱にでも行くようなつもりで劇場を訪ねてもらえたらとても嬉しいです。で、実際に来てみたら、その手紙が着払いなもんですから、大変申し訳ない、とは思いつつ。

でも,僕は自分がとても魅力があると思っているものをそこには入れているから、それを受け取って欲しいとも思っています。気に入らなかった場合も、返信をいただけたら、次はもっといいものが送られてくるかもしれませんよ。だとしたら、損のない話ではないですか…というのもまた嘘くさいですね。劇場で、映画と一緒にお待ちしたいと思いますので、そのときにまた。                          

濱口竜介

 

 

                      (取材・文/ラジオ関西『シネマキネマ』)




(2013年6月24日更新)


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濱口竜介 監督 監督プロフィール(公式より)
はまぐち・りゅうすけ●1978年、神奈川県生。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。その後も日韓共同製作『THE DEPTHS』(2010)、東日本大震災の被災者へのインタビューから成る映画『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(2011~2013/共同監督:酒井耕)、4時間を越える長編『親密さ』(2012)を監督。精力的

Movie Data




《濱口竜介プロスペクティヴ》

●6/29(土)~7/12(金)、第七藝術劇場
※連日20:40~レイトショー、
6/29のみ23:15~オールナイト
6/30(日)、7/10(水)、12(金)イベントあり
●6/29(土)~7/8(月)、神戸映画資料館
※6/29(土)、7/7(日)イベントあり
●7/8(月)~19(金)、
元・立誠小学校 特設シアター
※7/9(火)、19(金)イベントあり
●7/13(土)~19(金)、京都シネマ
※連日19:00~、
7/13(土)、18(木)イベントあり
●7/13(土)、京都みなみ会館
※23:15~オールナイト

【《濱口竜介プロスペクティヴ》】
http://prospective.fictive.jp/

【濱口竜介即興演技ワークショップ in Kobe 】
http://kiito.jp/schedule/workshop/article/3526/

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