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お芝居と音楽が一緒になった一夜限りの公演
大宮エリー作・演出「LIVE×LIVE SING IN THE STORY」
『家族の風景』ライブレポート

お芝居と音楽が一緒になった一夜限りの公演『FM COCOLO×ステージぴあ 関西版 presents 大宮エリー作・演出 LIVE×LIVE SING IN THE STORY』。大宮エリーが本公演の為に書き下ろし、本人演出による2公演が、それぞれ一夜限りで上演された。
 
ミュージシャンが生演奏を行い役者が芝居をするという音楽と演劇を融合させた新しい形の作品。サンケイホールブリーゼで12月11日・12日と行われたが、初日は鈴木杏×ハナレグミによる『家族の風景』。

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鈴木演じる絵の修復の仕事をする山田美影が主役。ピカチュウの人形型ポシェットを首からぶら下げているのが印象的な美影を、鈴木が堂々とひとり芝居で演じていき、観客は初っ端から惹きこまれていく。永積もピカチュウの擬人化や絵の話で出てくる天使などのキャラをピンポイントで演じる。また、美影がクライアントから与えられた仕事で、唯一手がかりを掴めない絵『ギターを弾く男』も永積が演じていく。鈴木の芝居に、永積がギターを爪弾きながら生で音楽を合わせていくのは誠に贅沢であった。1曲目として『祝福』が歌われたが、確かに芝居と音楽が融合しているし、どのような場面で次は歌われるかがワクワクしてしまう。

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2曲目として歌われた『オアシス』では、「リズムにのって まわれ まわれ まわれ 両手ひろげ まわれ まわれ まわれ」と歌詞の箇所で、鈴木がシンクロするかの様に両手を広げて回って踊る。鈴木は観客への手拍子も煽り、芝居と音楽だけで無く客席とも融合していく。それで言うと、鈴木がステージから客席へと降りていき、客席を修復現場に見立てたり、観客を絵に見立てる演出も醍醐味があった。物語的には、絵『ギターを弾く男』からギターを弾く男が飛び出してきて、美影と対話をしていく事で進んでいく。「きみは、なにをみつめているのか」という美影の問いに、ギターを弾く男が「家族」と答えた事で、美影は自身の壊れてしまった家族の風景について考えていくようになる。

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美影が考える事から逃げていた家族について向き合っていく過程で、彼女の心象を表現するかの様に、『家族の風景』や『光と影』や『サヨナラCOLOR』が歌われていく。絵も家族も長い年月が経過すれば、自然に劣化するものであり、だからこそ修復していけばよいというラストメッセージには、観ている全ての人が肯定された気分になったであろう。「今日、ここからみえる風景が、わたしたちの新しい、家族の風景」という鈴木の締め台詞から、永積が歌う『PEOPLE GET READY』で締められた。

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鈴木の芝居と永積の計9曲の歌の融合が、一夜限りなのは本当に勿体無いと思えたし、だからこそ、その一夜を観る事が出来たのは本当に幸せである。また、この座組で新しい芝居と音楽の融合を観てみたい。

取材・文:鈴木淳史
撮影・田浦ボン



(2021年12月13日更新)


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Set List

「LIVE×LIVE SING IN THE STORY」
『家族の風景』
2021.12.11 Sat at サンケイホールブリーゼ
[作・演出]大宮エリー
[出演]鈴木杏
[演奏]ハナレグミ

M1. 祝福
M2. オアシス
M3. jamaica song
M4. 家族の風景
M5. 愛にメロディー
M6. 光と影
M7. きみはぼくのともだち
M8. サヨナラCOLOR
M9. PEOPLE GET READY

Live Report

「LIVE×LIVE SING IN THE STORY」Day2

『消えない絵』
2021.12.12 Sun at サンケイホールブリーゼ
[作・演出]大宮エリー
[出演]片桐仁/板尾創路
[演奏]真心ブラザーズ