ホーム > インタビュー&レポート > 『上方落語若手噺家グランプリ2017』 決勝進出者インタビュー、笑福亭喬介編
--去年に続いての決勝進出ですね。去年は準優勝でした。
去年は悔しかったですね。今年で終わらしたいという思いがありますけど(笑)。ちょうど真ん中なんです、僕が。先輩が4人、後輩が4人ですね。
--予選の時の手ごたえはいかがでしたか?
予選は怖かったです。予選会が4回あって。この組が一番なりたくなかった組で。実際、決勝に出る三四郎さんは同じ組やから、上位2名に選ばれててもおかしくないでしょ?
--そうですね。激戦でしたからね。三四郎さんは3位の中から次点枠で勝ち上がりましたし。
呂好とかもおもしろかったしね。予選を通って、ちょっとほっとしましたね。この組で通れたっていうのも嬉しいかな。
--予選では「寄合酒」でしたが、どうしてこのネタを選んだんですか?
その時、「寄合酒」が好きやったんですよ(笑)。ところが、日がたっていくうちに、いったいこの噺のどこがおもろいんやろうってなってきて。予選の当日は先輩の噺家が審査する。お客さんが笑うのももちろんなんですけど、どうしようと。ただただ短くしてもダメやと思うんです。噺家が審査するってことは、噺を短くする以上に自分らしさっていうのを出さなあかんなって。自分らしさと、自分しかできないギャグというか構成といいますか。ただ、その噺には邪魔にならないようにね。
--決勝は審査員が放送局の方ですから、予選とは違いますよね?
はい。タイプが違いますね。おんなじ風にやってはいけないっていうのもあると思います。決勝は「牛ほめ」にしたんです。「牛ほめ」の方がやりやすいかと思って。
--決勝に向けて、戦略を立ててるんですね?
やっぱり、そうですね。ただただ出るんやったら、出ない方がいいと思いますね。出ると、やっぱり、何かしら考えさせていただくことがあります。それがありがたいんちゃいますかね。
--それはどういう?
うーん、雀太兄さんも会見で言うてたんですけど、勉強になると。確かにそうですね。予選は10分以内であるとか、決勝は11~13分であるとか。その噺を短く、楽しくするというのは、別にこの「若手グランプリ」やからやらなあかんというのやないと思います。これから自分の会であるとか、先輩らの会に出た時に、先輩らの邪魔にならない噺の変え方であるとか、このネタ持ってきたけど、この時間ならこうしよというのは、トレーニングしてなかったら無理やと思いますね。その作業をしてなかった人がいざやろうとなったら、ただただ早口になるか、重要なところを削ってしまうおそれがある。だからこの機会はありがたいです。本当に勉強になりますね。
--決勝では、喬介さんのどういうところを出していきたいですか?
そうですね。基本的にはあほが好きなんですね。大師匠の松喬の教えですけども、もちろん松喬から三喬、僕に来てるわけです。で、松喬師匠は師匠の六代目笑福亭松鶴師匠から教わってるわけで。ちょっと話がずれますけど、松鶴師匠の落語って、今、聞いたらすごさがすごくわかりますね。
--どういうすごさなんですか?
とてつもない自然体なんですよ。本来、みんなあほをやったら、あほらしさを出そうとする違和感が出るんですけれど、松鶴師匠はそれがまったくないんですよね。ごく自然の登場人物を演じている。それがめちゃくちゃおもしろいんですよ。とにかく自然で演じなさいっていうのは三喬からずっと口酸っぱく言われました。「お前あほか」と、「お前はあほやな」は全然違うと。上方の落語は特に「あほやな」っていう「あほ」が仰山出てくる。かわいらしい「あほ」が登場する。だからそれに合わす演じ方もします。それを自然体に見えるような感じでやりたいなと。桂文三兄さんに「ほんまに自然体のあほを演じれる噺家って実は少ないんや。相当の武器になるから」って何年か前のお稽古の時に言うていただきました。ここを伸ばしていこうかなと。
--その方向を目指していくということですね?
いろんな噺家さんがいてますじゃないですか。で、すべての落語をすべて完璧にするっちゅうのは、まぁ無理やと思います、ほんとに。だから僕があほが好きやったら、それを特化したものをとにかくやっていこうと。それで後からついてくるやろうと。ほかの落語がって思って、今はとにかくそういうのを勉強していこうかなと思ってやってますね。
--決勝では喬介さんは6番目のご出演ですね。
怖いですわ。でも、まぁ、一番じゃないので(笑)。
--みんな言いますね(笑) 喬介さんはほかの人を気にするタイプですか? それぞれですよね? 気にしない人もいるし。
気にしますわー。
--6番目は会場の雰囲気も落ち着いてきてるし、いいと思いますよ。
いいですよ(笑)。で、ほんとうに普通にやろうかなと。普通にというか、自分らしい「牛ほめ」ね。
--ほかのメンバーはどうですか? 会見の時には「先輩にも後輩にも負けたくないです」っておっしゃってましたが?
負けたくないのは確かですけど、楽しくやりたいかなと。いつも通りの精神状態でやれたらいいかなと。
--去年が悔しい思いをしたので、今年こそはリベンジですね。
でも、去年がどうのこうのということではなくて、師匠の三喬が今年の10月8日、松喬の名を襲名するじゃないですか。その弟子が今年の6月20日、賞を取ったみたいやでというのがあってもいいんじゃないかなと。
--師匠の襲名に華をそえる感じですね?
むしろ自分のためでしょうけどね、こういう賞というのは。でもせっかく襲名する年なので、それは考えてますね。あんまりうちの師匠には言われへんー。言いたくないですけどね。ハハハ(笑)。
--一門的に気合も変わってきますよね。襲名前もあって。
そうなんですよ。今回、決勝では笑福亭が一人しかおれへんし。
--ほんまですね(笑)。決勝に向けて、願掛けとか、トレーニングとかしてるんですか?
してないですね。練習するのは3日前か1週間前。今からやったら、ほかが手につかないです。力を蓄えて。今から緊張したら大変です(笑)。
--リラックスする方法とか、趣味とかありますか?
ありますよ(笑)! リラックスはね、掃除ですよ!
--リラックスが掃除ですか!
掃除機したら気分よくなりますよね。窓あけて、風通すんですよ。で、ゆっくり落ち着いた後に『スターウォーズ』を見るんです! 最高ですよ。
--『スターウォーズ』が好きなんですか!
小さい時から好きです。まぁ、いろんな映画見ますけどね。映画を見るの好きですからね。
--喬介さんはみなさんから頼まれて、いろんな映像を作ってはりますが、お上手ですよね? 映画を見ていることがそこに生きているのかも?
それは言えてますよ、本当に。それに映像やってて、落語にも生かしてますね。映像ってほんまに、1秒で世界がばんって変わるんですよね。1秒が長いんですよ。とにかくいらんのを全部そぎ落さないと面白くないですわ。そういう作業は落語を短くする作業にすごく役立ってますね。
--プロ級ですよね。大学では映像を学んでいたとか?
いっさいしなかったですね。宗教学を学んでいました。ハハハ(笑)。落研の時に、いろんな屋号があるんですけど、うちの一門はビデオカメラで映像を撮って編集して。遊びでずっとしてました。
--それがこんなに落語にも生かされて!
そうですね。こうなると思ってなかったですね(笑)。ほんとに。
--人生何があるかわからないですね。無駄なことがない。
ないです! はい、ほんとに楽しくやってますね(笑)。
--喬介さんはこれから落語家として、どういうふうに進んでいこうと思っていますか?
とにかく20年目くらいまでは、それから以降ももちろんなんですけど、とにかくがむしゃらにやっていこうかなと、落語を。それもただただ覚えてやるのではなく、ほんまに考えて、考えてお客さんに提供する。今。繁昌亭の近くの「ツギハギ荘」でやってる自分の勉強会がそうなんですけどね。実験的に噺を変えても、あかんかったらやめたらいいですし。この間も「つる」をやった時に、こんなん誰もやってないなというのを一つ思いついたのがあって。
--新しい開拓、改良を続けているんですね!
はい、誰もやってないものを。こういうのを見つけるのが好きですね。落語を初めて聞くお客さんにも違和感がなく、笑える。そういうのを、一生考えていくかもしれませんね。
取材・文/日高美恵
(2017年6月20日更新)
▼6月20日(火) 18:30
天満天神繁昌亭
当日-2500円
[出演]桂華紋/桂小鯛/桂三四郎/桂雀五郎/桂雀太/桂二乗/桂米輝/笑福亭喬介/林家染吉
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭
[TEL]06-6352-4874
※前売り券完売ため、当日券若干枚数あり。
天満天神繁昌亭
http://www.hanjotei.jp/
【会見レポート】ファイナリストが意気込みを語る!
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2017-05/1705-whgp2017.html
1981年7月22日生まれ
大阪府堺市出身
2005年6月、笑福亭三喬に入門