「一緒にこの重厚なテーマを考えて頂けたら」
クリス役を演じる田島優成が作品への思いを語る
(2/2)
―― そうなんですね。田島さんは映画やドラマとたくさん出られていますが、舞台の魅力はどう感じられていますか?
田島「僕は作品に恵まれてきて、とにかく優れた戯曲と出合ってきたので、台本の魅力はすごく感じています。『みんな我が子』もそうです。ドラマにはドラマのよさがありますが、演劇の場合は何回も上演されてきたものや語り継ぐべきものに自分たちが真摯に向き合えること、何百年も前から人間が行ってきた芸術という行為に神聖さを感じるというか…。それが逆の人もいると思うんです。そういう考え方もわかるんですけど、僕は、古典的な作品を『今、2011年に上演するにはどうすればいいのか』ということを考えます」
―― 台本と聞いてお伺いしますが、プロフィールを拝見しましたら漫才の経験もおありで。漫才台本も書かれていたんですか?
田島「書いてました」
―― 漫才台本を書くという経験は、何か舞台でも生かされていますか?
田島「そうですね、お笑いの経験は生きていると思います。なんばグランド花月で漫才をしたとき(※1)、オール巨人師匠が審査員だったんですけど、忠臣蔵のネタの討ち入りのシーンで、僕は扉を手前に引いてドアのように開けたんですね。そしたら、巨人師匠が『その時代は引き戸で、横に開けるだろう。そういうことをしっかりしなきゃ』とおっしゃっていただいて。『そうか! ディティールが大事なんだな!』と、今でも生かされていると思います。例えばヤンキーだったらこう座らないだろうとか。漫才って万人がわからなくちゃいけないから、万人が見て『こういう人だな』ってわかるようなディティール作りをするんですね。そういうところは勉強になっていると思います」※1.2005年、『高校生漫才甲子園』で関東地区代表に選ばれ、全国大会にてNGKで漫才を披露した。
―― なるほど。では共演者についてお伺いします。長塚京三さん、麻実れいさん、朝海ひかるさん、柄本佑さんらと、早々たる顔ぶれですね。
田島「長塚さんはすごくかっこいい。かっこよすぎて『こういうお父さんだったら、ちょっとコンプレックスになるかな』って思いますね」
―― 田島さんにとってお父さんという存在は、超えられない壁という感じなんでしょうか?
田島「そうですね。実際、僕は父に対してそういう思いはありますね。でも、『みんな我が子』のジョーとクリスという親子はよく話すので、それは楽しみにしています。僕ももっと父とくだけた話をしたいなって思っているので、その希望が作品の中で叶うかなと思ってます。僕、吉田鋼太郎さんがすごい好きなんですけど、以前、『役者はとにかく話を聞いてほしいと思っているヤツがなるんだよ』っておっしゃっていて。『日常でもっとこうしたいのにって思ってるヤツが、芝居でできるから楽しいんだ』と。クリスはお父さんのこともお母さんのこともすごく愛していて、その愛をとてもストレートに表現する人なんです。僕はあんまりストレートに表現できないので、そういうところはクリスを借りて表現したいなと思います」
―― 役柄と性格が正反対のときは、どんな気持ちなんですか?
田島「楽しいですね。蜷川さんはよく『あり得たかもしれない自分になることが演技だ』っておっしゃるんです。何かのきっかけがあったら自分もストレートに愛を表現したかもしれないし、もし70年前に生まれていたら戦争に行っていたかもしれないし…」
―― 実際にその役をやって、考え方が変わったとか、性格が変わったということはありますか?
田島「ありますね。毎回そうです。役からすごいもらっていると思います」
―― この舞台も終わる頃には…。
田島「そうですね。クリスは『戦争で辛いことがあったんだから、生き残った人間はそれを感じて、少しはマシな人間にならなきゃいけない』って語るんですけど、この役を通して少しはマシな人間になれればいいなと思います」
―― そんなクリスを演じられる田島さんを楽しみに、幕開けを待ちたいと思います。では、最後に大阪のお客様にメッセージをいただけますか。
田島「大阪は明るくて好きです(笑)。カーテンコールが温かいんですよね。今回の『みんな我が子』はゲラゲラ笑う作品ではないですけど、正論がすごく詰まっている作品なので、少しの間、お時間をいただいて、ぜひ一緒にこの重厚なテーマを考えていただけたらと思います」
―― ありがとうございました。
『みんな我が子』は、12月20日(火)・12月21日(水)、サンケイホールブリーゼにて上演。名優たちが繰り広げる不朽の名作をぜひ、この機会に堪能してほしい。10月1日(土)より前売りチケット発売。
(2011年9月29日更新)
Check