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「一緒にこの重厚なテーマを考えて頂けたら」
クリス役を演じる田島優成が作品への思いを語る (1/2)

12月20日(火)・12月21日(水)、サンケイホールブリーゼで上演される『みんな我が子』。アーサー・ミラーが1947年に発表し、トニー賞を受賞。以来、多くの舞台で演じられている作品だ。物語の舞台は第二次世界大戦後のアメリカ。一見、円満に見える家庭の、裏庭での1日の出来事が描かれている。戦争中に飛行機の部品工場を経営していた主人公ジョー(長塚京三)は、当時、ビジネス・パートナーが収監されるという事件に遭う。事件後、ジョーは隠された真実が明るみに出ることに怯えつつも、強い父親、夫としての日々を送っていた。そんなある日、ジョー一家のもとにさきのパートナーの娘であり、ジョーの息子・ラリーの恋人でもあるアン(朝海ひかる)が訪問する。しかしラリーは戦争に行ったまま行方不明で、アンはいつしか兄のクリス(田島優成)と惹かれあう。ラリーがまだ生きていると信じている母親ケイト(麻実れい)は、二人の仲を認めようとしない。そんな状況に置かれつつも子どもたちは一歩、踏み出そうとする。しかしその先には悲しい真実が隠されていた…。個人の精神や心のあり方を社会次元的に発展させたミラーならではの作品を日本を代表する名優たちが描いてゆく本作。兄のクリスを演じる田島優成に、その魅力について話を聞いた。

田島優成の動画コメントはこちら!

―― こんにちは。ぴあ関西版WEBです。今日はよろしくお願いします。ちょっと早いタイミングですが、お話を聞かせていただきたいと思います。稽古はこれからだそうですね。

田島優成(以下、田島)「割と長い期間、40日ぐらい稽古をする予定と聞いています。演出家のダニエル・カトナーさんは、本読みを大事にするという感じでした。最初の1週間は本を読んで、立ち稽古に入っても自分の好きなタイミングまで本を持っていていいとおっしゃっていました」

―― それは今まで出演された舞台の演出家の方法とは、また異なりますか?

田島「初舞台の『いさかい』を演出された熊林弘高さんもそういう方でしたね」

―― そうなんですね。舞台にも多数、出られていますが、どういう稽古がご自分には合うと思われますか?

田島「そんなにたくさん出させて頂いているわけじゃないのでまだ分からないですが、蜷川(幸雄)さんの現場は、すごく好きです。いい意味で任せてくれるというか、役者に委ねてくれるので」

―― 以前、中島朋子さんが「蜷川さんに野放しにされる役者と、厳しく演出をつけていただく役者の2つに分かれる」とおっしゃっていたんですが、田島さんは野放しにされる方ですか?

田島「いえ、めちゃくちゃ厳しいです(笑)」

―― そうなんですね(笑)。では、話を戻しまして、12月に上演される『みんな我が子』ですが、役柄はお兄さんのクリス役で。このお役についてどう思われますか?

田島「台本を読んで最初に思ったのは、クリスはすごく魅力的な人物で、この役を演じられたらもう、役者冥利に尽きるなと思いました。クリスという人物は僕が普段、抱いている理想に近い生き方をしている人なんです。社会や世間を知っているけれど、純粋で、誠実。清らかな部分を捨てずに持ち続けている。もし現代の日本に生きていたら、この震災のことでもめちゃくちゃ心を痛めていると思いますし。そういうところが好きです」

―― 今の田島さんよりちょっと年上の32歳の設定なんですよね?

田島「そうなんです」

―― そういう32歳の男性として、純粋さを失ってないところがいいなと思われる。

田島「はい。純粋さと正論を持っている人ってかっこいいなって思うんですけど、クリスはまさにそうで、会話をする中で話の内容がきちんと構成されているんですよね。賢いんです。でも、その一方で、そんな純粋だと傷つくぜというような、頭でっかちな純粋さもあって。そういう人は好きですね」

―― ご自身で、クリスとの距離をどう感じられますか?

田島「例えばクリスは喧嘩をしたときでも、感情的にはならない。なぜ相手が悪いのか、なぜ自分が腹を立てているのかを客観的に見て、理由がはっきりしないと怒らない。その感情をどうやって説明するかということを考えている人です。僕にも多少、そういう面はありますね。この作品では、そんなクリスが次第に崩れていくから、人間ってどんな生き方をしても結局は破滅に向かうのかなと思うと、ちょっと切なくなります」

―― なるほど。田島さんは普段、役との距離感はどのようにお持ちなんですか?

田島「理想は普段の自分と役の間に自分がいることです。でも毎回、一生懸命やって、作品ごとに一番いい距離を見つける努力をしていますね。『みんな我が子』は、本を読んでいてもすごく心が締め付けられる作品なので、最初は『僕がお客さんとして観たら、最後は辛すぎて下を向いているかもしれない』と思いました。だから、舞台ではどうするか。辛さをそのまま表現するのが正しいのか、少し希望を持たせるのか、今から考えています。役に入りきったままだとただ辛い人になっちゃうのかなとか、どこかでちゃんと客観的な部分が必要なのかなとか、思ったりしていますね」

―― 役柄にぐっと入り込んでしまうタイプですか?

田島「それはないです。ただ、役と自分の人生が一致するときはあります」

―― 人生が一致するときの感覚ってどんな感じなんですか?

田島「何だろうな、時が止まったみたいな。その時間、空間で生きている実感がすごくあるんです」

―― それは稽古中に訪れるんですか?

田島「そうですね。稽古中が多いです。やっぱり舞台は幕が開けるとお客さんのものなので。お芝居を観てもらって、お客さんが感じてなんぼっていうか。でも稽古で人物を作っていく段階では、そういう瞬間がありますね」




(2011年9月29日更新)


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●公演情報

「みんな我が子」

10月1日(土)一般発売
Pコード:412-237
※発売初日はチケットぴあ店頭での直接販売および特別電話[TEL]0570(02)9510(10:00~18:00)、通常電話[TEL]0570(02)9999にて予約受付。

●12月20日(火)19:00・21日(水)14:00/19:00
サンケイホールブリーゼ
S席8500円
A席6000円
B席-3000円
[劇作・脚本]アーサー・ミラー
[演出]ダニエル・カトナー
[出演]長塚京三/麻実れい/田島優成/朝海ひかる/柄本佑/他
※公演終了後、トークイベントあり(〔出演〕麻実れい、朝海ひかる)。
※12/20(火)19:00公演終了後、トークイベントあり。未就学児童は入場不可。
[問]梅田芸術劇場[TEL]06-6377-3888

10月1日(土)チケット発売!
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●プロフィール

田島優成

たじまゆうせい/1987年生まれ、神奈川県出身。テレビ、映画、舞台と幅広く活躍。'09年には白井晃演出『中国の不思議な役人』に出演。また、『ヘンリー6世』『じゃじゃ馬馴らし』(いずれも'10年上演)、『血の婚礼』('11年)と蜷川幸雄作品に出演。『血の婚礼』では、土砂降りの雨の中での“トランシーバーで交信する少年”を好演した。趣味、特技は漫才、テニス、野球、バスケット。

公式サイト
http://www.topcoat.co.jp/profile/index.php?a=16