「ODDL PARTY in TOKYO」連続インタビュー(全3回)
第3回 マハラージャン
今年8月に大阪で産声を上げたイベント『ODDL PARTY』が、10月27日(水)、『ODDL PARTY in TOKYO』として東京に上陸。“ODD”で”踊れる”摩訶不思議な夜というテーマのもと、ジャンルレスに集められたダンサブルで中毒性のある3組が秋の渋谷を熱くする。そこで今回は、同イベントに出演する全アーティストにインタビューを実施し、その素顔にクローズアップ。第2回目は“スパイス+ダンスミュージック”という謎めいたスタイルで、今年3月にメジャーデビューしたばかりのマハラージャンを深掘り。音楽遍歴や異色の経歴について話を聞いた。
――マハラージャンさんはデビュー前までは会社勤めをしていたという経歴をお持ちですね。
「(自分が)納得してこれですっていう曲ができないと(世に)出られないなって思っていたので……」
――音楽活動との両立はどのように?
「常に音楽のことを考えながらすべてのことをやってました。それで、(納得いく曲が)できないなって悩んでる状態がずっと続いていたという感じです。休みとかも全部曲作りに捧げてて、遊びにも行かないで家でずっと作ってるみたいな感じでした」
――大学時代はどうでしたか?
「コピーバンドをやっていて、音楽だけではなくて絵や映像もやりたいっていうのがあったから、なるべくバイトしないで……っていうのはありました。バンドはUKロックが中心で、後半になってからファンクが多くなりました」
――好きな音楽の変遷はどんな感じですか?
「中学の時はL'Arc〜en〜Cielが大好きで……。その頃、洋楽がカッコいいんだ!っていうのを吹き込んでくる友達が何人かいたんで、そこからビートルズを聴いたり、ボン・ジョヴィを聴いたり。高校生になってからはトランペットをやってたんでジャズをいっぱい聴いてて、ジャズのコードの積み方がカッコいいなと思ったので、その匂いがするジャミロクワイが大好きになって……。高校の時も洋楽好きのヤツと仲よくなったんで、そこからレディオヘッドとか、UKのバンドも好きになっていって、ジャンル問わず名曲をいっぱい聴いてました。大学ではジャズ研に入りたかったんですけど、なかったのでUKロックをやっているサークルでコピーをやってたって感じです」
――では、社会人経験を経たことでプラスになったと思う点は?
「人間関係の築き方や人との距離の取り方、自分の立ち位置が自然と身についたのが一点と、あとCM制作の仕事をしていたので、すごいクリエイターと一緒にいられて、そういう人達の仕事の様を見られた点。クオリティ的にどこまでいけばいいのかとか……。プロの現場で下積みできたことはかなり大きいと思います」
――そんな経験豊富なマハラージャンさんが、もし今、音楽を志す人たちにアドバイスするとしたら?
「……そうですね、やっぱり自分にしかできないモノを掘り下げるというか。自分は(制作をするうえで)リスナーとして(音楽を)聴いてることがあるんです。これって〇〇っぽいなとか、これ聴いたことあるなみたいなことを思っちゃったりするんですけど、そうならないように……。自分しか作れないモノにすごく価値があると思うんで、売れる売れないとかじゃなく、まずそういうモノができるかどうか?から。そのうえで人に愛されるモノかどうか?っていうことなのかなっていう気がします。自分しか出せないモノ、ほかにはないモノ、そういうモノを作るっていうのをまず目標にした方がいいのかなって。社会人になるか、音楽を続けるか?みたいなこととか、いろいろ悩みはあると思うんですけど、でもやっぱり悩みとか大変さとかって絶対につきまとうものなんで。音楽をやるにしても、もがいてもがいて作るしかないなって思うんですよ。だから社会人になって音楽を続けるにしろ、音楽だけやるにしろ、どちらでもいいので、やりたいモノにちゃんと向き合うことが大事だと思います」
――ありがとうございます。ところでマハラージャンさんは“スパイス+ダンスミュージック”というとても個性的なスタイルですが、CM制作の仕事をされていたということで、自身のブランディングもかなり考えられたのでは?
「ブランディングの本とかっていっぱい出てるじゃないですか? でもいっさいそんなの読んでなくて。そういうのは音楽に持ってきちゃうとつまんないかもって思います。料理でもそうなんですけど、すごいシェフって変態だと思うんですよ。すごいシェフっておいしい料理を作るのに、え、そんなことするの?っていうことをする……すごい手間を掛けたり。それって自分の都合というか、自分がこれがいい!と思っていることを突き詰めた結果でおいしい料理ができると思うんです。僕は音楽もそうかなと思っていて、ブランディングとかより、おもしろいとか、いいかもっていうことを集めてやっているという……そういうことですね。もちろん仕事もしてきたんで、多少の広告的な知識は入っているとは思いますけど、純粋にどうやったら自分がおもしろいと思えるか?みたいなところが大きいと思います」
――さて、メジャーデビューして約7か月、メジャー1stアルバム「僕のスピな☆ムン太郎」の発表から約3か月が経過。同作については前回のインタビューでお聞きしているので、ほかの話も。マハラージャンさんがゲスト出演したポッドキャストの番組「GOTOWN Podcast Club」を拝聴しましたが、1stアルバムを出したあとの悩みを話していらっしゃいましたね。
「そういう悩み(作品を出したあとに枯渇する感じ)ってどの音楽を作っている人もつきものだなと思って……なのでもがくしかないなって思っています」
――また、番組内ではどこまで書いていいのか?というような詞にまつわる発言もありました。マハラージャンさんの詞は鋭い視点からのブラックユーモアがあっておもしろいですよね。
「あたりさわりない歌詞にはちょっとグッとこないというか、グッとくる歌詞が入っていてほしいと思っちゃうので、これからもきっと自分なりの切り口でまた攻めることもあるだろうと思います」
――「僕のスピな☆ムン太郎」にも収められた「行列」、「示談」、「地獄 Part2」、「適材適所」などの曲には働く人がクスッとなる世界が描かれていますよね。
「社会人のエッセンスは入っているけど、あるあるになるのはすごく嫌だったんです。例えば、定時であがりたい!とか、本当に社会人丸出しの歌詞みたいなのは好きじゃないんですよ。人によってとらえ方が違うモノにしたいんです。で、なんとなく社会人を感じるくらいの程度にしている歌詞が多いはずなんです。僕、社会人の経験うんぬんというより、自分の切り口でおもしろいと思えるものを作りたいんだなって思って。これからも何かを感じたり、何かを作りたいと思った時には、自分の視点でどうか(おもしろいか)?っていうのを見極めていきたいなって思います」
――ではライブの話も。出演された8月5日の『ODDL PARTY』がメジャー初有観客ライブとのことですが。
「コロナ禍前はキャパが20~30人という小さい所でやっていて、初めて規模が10倍以上の所でやったんで、ちょっとびっくりしたところもありましたね。なんかお客さんのすごい熱量を感じたというか、マハラージャンを観たいと思ってくれている人たちの熱を感じて感動しちゃいました」
――そもそもライブに対するスタンスは?
「まだ(マハラージャンとしての活動が)始まったばかりなので、そういう印象がないかもしれないですけど、自分としてはライブバンドのようになっていきたいですね。コロナ禍で(ライブが)なかなかできなかったし、メジャーデビューしたのも今年なんで、本当にこれからだなっていう感じです」
――こんなライブをしたい!というのはありますか?
「目標というか、すごいなと思うのは山下達郎さんのライブ。名曲だらけなうえにグルーヴがすごくて、見てるだけでどんどん高揚していくっていう。そういうところまでいきたいですし、やっぱり名曲がないといけないなって思うので、そこを目指して頑張りたいなと思います」
――そして10月27日(水)には『ODDL PARTY in TOKYO』が! ほかの出演者はMega ShinnosukeさんとFNCYさんです。
「FNCYさんは僕が一方的に知っていて、特にやり取りしたことはないんですけど、ずっとカッコいいなと思ってます。で、Mega ShinnosukeさんとはSNSやLINEでやり取りしてて、今回一緒にやれてうれしいです」
――ご自身のライブは?
「命がけでライブしようと思っているので、生き様をとくと見てほしいです」
――実はダンスも得意とお聞きしましたが、ライブでは?
「最近、ダンスはもう見てる方が好きです(笑)。だから(観客に)踊っていただければと思います」
Text by 服田昌子
(2021年10月24日更新)
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