「とにかく音源を飛び越えてパッションをお伝えしたい!
会場でしか感じられないグルーヴ感を全身で浴びてほしい!」
メジャーデビューアルバム『僕のスピな☆ムン太郎』を引っさげて
8/5(木)に心斎橋JANUSで開催される『ODDL PARTY』に出演!
マハラージャン インタビュー&動画コメント
今年3月に3rd EP『セーラ☆ムン太郎』でメジャーデビューを果たしたマハラージャン。5月にTV初出演となったNHK『シブヤノオト』での生パフォーマンスや6月に初登場したYouTubeの大人気音楽チャンネル『THE FIRST TAKE』での歌唱が話題を呼ぶ中、メジャーデビューアルバム『僕のスピな☆ムン太郎』が7月21日にリリース!“スパイス×ダンスミュージック”と称され、一度耳にすれば離れられなくなる中毒性を秘めたファンキーで痛快なナンバー満載。全力を尽くしているのに報われない時、理不尽な出来事に遭遇しストレスフルな日々が続いている時、もう一度体の芯から熱くなって、思わず体が踊りだすポップかつマニアックな趣向も凝らされた超強力盤となっている。そんな彼がデビュー後初出演するイベント『ODDL PARY』を前にオンラインインタビューを敢行! マハラージャンとは一体何者なのか? 彼が今、世間に最も訴えたいこととは? 謎のターバンに隠された頭の中の思考と胸の内に沸る熱い想いに迫る!
現実のことをそのまま伝えるより
なるべく可愛くした方が面白い
――メジャーデビューおめでとうございます!
「ありがとうございます!」
――まずは、デビューに至る経緯をお聞きしたいのですが、マハラージャンさんは以前、会社員をしながら音楽活動をされていたそうですね。マスコミとかメディアに関わるようなお仕事だったのでしょうか?
「そうですね。まずCM制作会社に就職、その後転職して、WEBの広告代理店で働いてました。元々映画がすごく好きで映画のことも勉強していたので、自分はメディアに近いところに行った方が向いてるんじゃないかなと思って、最初にCM制作会社に就職したんです」
――音楽でプロを目指そうという思いはいつ頃から芽生えたのですか?
「中学生の時に自分は音楽が得意なんじゃないかと思って、その頃からプロになりたいと思っていました。だから就職する前も、なんとか音楽でプロになれないかと頑張ってたんですけどね…。当時はとにかく歌詞が書けなかったんです。でも音楽は続けたいと思って、音楽を作るためには機材も必要だから、とりあえず働いてお金貯めて良い機材買おうと思って会社員になることにしました」
――そうだったんですね。映画が好きで就職して会社員もされていたマハラージャンさんですが、ついに音楽でプロになるという夢を叶えたんですね。
「そうですね。もう根っからそれはやりたくて。でもそれだけでは、食えないんじゃないかという思い込みがあったので、なかなかトライできなかったんです。それと、自分がプロでやっていけると納得できるクオリティの曲ができなかったというのが一番大きいですね。いろんな音楽を聴いてきて、すごいカッコイイものもたくさん知ってるつもりなんですけど。だからこそ、同じ土俵で勝負できる曲ができない限りは、プロではやれないなと思っていたんです」
――ストイックですね! ご自分で納得できる曲というのはいつできたのですか?
「『いいことがしたい』という曲ができたとき、プロとして音楽活動がしていけそうだなって思いました。この曲ができたのは2017年だったと思います…」
――自信を持てるまではかなり時間がかかったのですね?
「そうですね。実は僕、最初はL’Arc~en~Cielが好きだったんですけど…」
――えっ、唐突にすごいロックバンドの名前が出てきましたね…、ちょっと意外です!
「はい、そうなんですよ。だから、日本語の歌詞を書くなら自分もラルクのような歌詞を書かなきゃいけないのかなと思って書いてたら、難しくて…。どうしようかと悩んでた時に頭を切り替えるきっかけとなったのが映画なんです。映画の場合は監督の個人的な体験が色濃く反映されてる作品の方が良い作品になるということを学びました。それで曲を書く時も、自分の社会人としての経験を歌詞に反映させた方が良いものができるんじゃないかなって思って作ったのが『いいことがしたい』なんです。『いいことがしたい』ができた時に、自分はこの感じでいくんだなっていう方向性が見えました」
――『いいことがしたい』という曲は人間の隠された欲望を刺激されるようで一度聴くと耳から離れなくなります。ちなみに、曲を作る時に何かテーマにしていることはあるのですか?
「僕の中では“可愛く“っていうのが歌詞のテーマなんです。歌の内容自体は単純なようで、よく読むとすごくキツイものだったりするんですが、現実の世の中は結構キツイことが多いじゃないですか? だけど、それをそのまま伝えるよりも僕はなるべく可愛くした方が面白いと思うし、その方が人に届きやすいと思うので可愛くしてますね」
――歌詞の中に、社会や人間の闇を感じさせるような、ちょっとブラックな要素もあるように思います。なんでこんな目に合わされるんだ?っていう苛立ちや悔しさを味わうことって誰でもあると思いますが、そういう理不尽な体験を音楽で昇華させているようにも感じますが、その辺りはいかがですか?
「そうですね。さっき言い忘れたんですけど、テーマとして一個、“セラピー”っていうのがあります。自分へのセラピーです。作品を作ることによって自分が癒やされるっていう。癒やされてるっていう実感はないんですけど、そこで吐き出すことによって納得するというか。そういう感覚はあると思います」
大学の頃にやっていたロックダンスが
自分に変化をもたらした
――音楽的なルーツやバックボーンについてお聞きしたいのですが、結構ジャンルレスにいろんな音楽を聴いてこられたのでしょうか?
「そうですね。音大に行ってる先輩から、“とにかくいろんな音楽を聴け! 民族音楽も最新のポップスもクラシックもなんでもいいからいっぱい聴け”と言われまして。図書館とかTSUTAYAとかに入り浸って、とにかくあらゆるジャンルの音楽をいっぱい聴きました」
――なるほど。今のマハラージャンさんの楽曲からはファンクなどのブラックミュージックの要素が強く感じられます。
「いろいろ聴いてるうちに自分の好みが分かってきて、自分はベースがかっこいい曲が好きなんだなと。なるべくそういうものを作りたいと思うとファンク色が強い曲が多くなりますね。大学の頃にダンスもちょっとやってまして。それが結構、自分に変化をもたらしたかもしれないですね。ロックダンスっていうジャンルのダンスで、James Brownとかファンク系の人たちの曲を流しながら踊ってたんです。やっぱり踊るようになってから音楽の聴き方も変わってきて、クラブも好きになりました」
――へー、ライブでもダンスをしたりするんですか?
「いや、もう体が鈍っちゃってるし(笑)。ギターも弾いてるのでダンスはしないんですけど。リズムの感じ方とかはダンスしてたのが大きいなと今でも思いますね」
『セーラ☆ムン太郎』がいつまで生き残るのか
わからないけど、できれば長生きしてほしい
――ではここからメジャーデビューアルバム『僕のスピな☆ムン太郎』についてお聞きします。今作の収録曲はいつ頃作られたのですか?
「曲作りは結構バラバラです。『僕のスピな人』(M-2)は今年の4月で、そのほかは2~3月頃です。『いうぞ』(M-6)が一番古くて元々は2017年くらいに作ってた曲です。そのときのデモよりも随分ブラッシュアップしています」
――『いうぞ』は、ちょっと電気グルーヴを思わせるようなスピード感のあるナンバーです。
「そうですね。電気グルーヴ大好きなんでその感じもあります」
――『僕のスピな人』の“スピ”っていうのは何を表しているんでしょうか?
「これは人によって解釈が違って良いのかなって。僕的には“スピリチュアル”ってことなんですけどね。夏ってスピリチュアルな季節かなと思いまして。夏って怖い話とかするじゃないですか? そういう連想から、スピリチュアルっていうことが頭に浮かんだので、そこにたどり着いたという」
――この曲は1980年代のサウンド(80's)を思い出すようなシンセの音が入ってますが、このスピード感は2021年だなと感じますし、『空ノムコウ』(M-4)はタイトルから、あの大ヒット曲を思い出す人もいると思うんですけれど。曲調は全く違いますが、何か思うことがあって?
「いや、僕はそんなつもり全然なくて、単純に本当に曲に合うタイトルをつけただけなので、全く関係ないです。ここは強く言っときたいと思います」
――そうなのですね。タイトルが気になるといえば、やはり『セーラ☆ムン太郎』(M-5)です。
「これは去年の4月くらいに、僕がお風呂場に行こうとしたときにふと、“セーラ☆ムン太郎…”って、聞こえてきたので曲にしました」
――(笑)“セーラ☆ムン太郎”って誰のことなんだろうって思うんですけれど…。
「それも聴く人が歌詞の中を自由に解釈してもらえればいいなと思っているですが、自分的には正義とか希望とかをテーマに作っています。去年の4月くらいの時期は(緊急事態宣言が初めて出たり)世の中にいろんな問題が噴出してて、それに対してみんなが怒ったり、悲しんだりしてて、すごく感情が揺さぶられたと思うんです。そこで、“ふざけんな!”って怒りを露わにして攻撃的に歌う人もいるかもしれないけど、僕はやっぱり可愛くしたいっていうのがあるんで、それを『セーラ☆ムン太郎』に託したという感じです」
――楽曲の世界観にマハラージャンならではのユーモアのセンスを感じます。確かに可愛いかも(笑)。刺々しいものじゃなくて、聴き手をクスッとさせる笑いの要素が入ることで張り詰めた空気が和らぎますよね。
「そうですね。世の中の辛い出来事はテレビのニュース番組とかで伝えてると思うので、音楽までそんなことやらなくて良いなっていうのは思いますね。僕的に音楽はかっこいいかどうかなんで。それが一番大事だと思ってます。できればそれをみんなで共有しやすくするっていうところまでいけたら嬉しいですね」
――それこそがエンターテイメントの力ですよね!
「まあそうですね。“こんな曲で踊っちゃった!”くらいの方が面白いと思ってるので」
――確かにそうですよね~。コロナもなかなか収束しなくて、みんなずっとマスクしてて、息苦しくて、なんだかギスギスした世の中に足りなかったものはマハラージャンさんのような存在なのかもしれないですね。
「そこまで言っていただいて(笑)。良いんですか?ありがとうございます(笑)」
――その時は分からなくても、後になって分かることってあって、“あー、あのタイミングで出会って良かったんだ!”って思うことってあるじゃないですか。
「それはそうかもしれないですね。『セーラ☆ムン太郎』って言葉がいつの時代まで生き残るか分かんないですけど、あんまり限定しすぎてない曲なので、できれば長生きしてほしい曲だなって思います。ちなみに、どれが一番良かったですか?」
――リリックの語感やファンキーなグルーヴがとても気持ちよかったのは『適材適所』(M-10)です!
「あー!良かった! あれはすごい気に入ってます」
――『いうぞ』の嫌なことも全てを忘れさせるくらいのあのスピード感と高揚感も好きです。ここで訴えたいことは何だろう?って考えだすと、またちょっと引っかかりますけどね。
「全部の曲がメッセージ性に溢れてなくても良いのかなと思ってます。『いうぞ』って曲に関してはこれもセラピーだと思ってて。実は子供の頃に受けたトラウマみたいなものが原点だったりしますね。音の野蛮な感じとか、言葉のモチーフは幼稚なものだったりするんですけど、なんかちょっと怖い感じとか、子供の頃にしか感じられないよく分からない恐怖とか、そういうのを呪いのように込めてダンスミュージックにしてます」
――それこそ理不尽な体験をしたり、人間関係でストレスが溜まっているときにも聴きたくなります(笑)。
「(笑)ありがとうございます!」
世の中地獄なんだけど、そこでしたたかに生きる
それをできるだけクールな音楽にしたい
――『地獄 Part2』(M-9)の“地獄!地獄!地獄!”っていうリフレインもすごく気持ち良くて、気がつけばハマっています。
「ありがとうございます。歌詞の中に、“リスクだって味方にする”とか、“歌うように裏を描いて”とかあるんですけど、そういう、地獄なんだけど、そこでしたたかに生きるということだなって思って。地獄だから死ぬしかないのかって追い詰められても仕方ないというか。地獄だけど、そこはそういうもんですよねってうまくやっていくっていうスタンスです」
――そういうマハラージャンさんの思想は『次いくよ』(M-1)にも感じられます。
「そうですね。『次いくよ』は自分にとってブーメランみたいな曲で。なにか失敗したことがあって、“やっちゃった!”って思っても、そこでやめずに、次に行かないとしょうがないでしょっていう曲ですね」
――生きていく上での処世術にも感じられます。
「ちょっと説教くさいかもしれないですけど(笑)」
――いや、それが音楽によって説教くささが無くなってるんですよね! 知らないうちに前を向ける、ポジティブ思考が体に身についてる、みたいな感じがあって。
「そうであれば良いなと思います」
――CDでは最後にC-C-Bのカバー曲『Romantic(ロマンティック)が止まらない』が入ってますよね。なぜこの曲を選曲したのでしょうか?
「電子ミュージック的なシンセの音が好きなんです。80年代の音楽は面白いし、そういう中の一つにC-C-Bもあるんじゃないかと思って、今回カバーしました。この曲はCDを買ってくれた人しか聴けないので、本当にマハラージャンが好きな人しか聴けないというのも面白いところだと思ってます。ミックスとかマスタリングとかもちょっと違うので、CDを買ってくれる方にはその違いも楽しんでもらいたいと思います」
――今作のレコーディングメンバーの中にはハマ・オカモトさん(OKAMOTO’S)もいますね。ハマさんのベースはいかがでしたか?
「めちゃくちゃ上手いですよ本当に! 恐ろしいぐらいです! ハマさんは今回7曲くらい弾いてもらってるんですけど、エンジニアの方にも“こんなにうまい人はなかなかいないからね”って言われました。今回参加していただいたミュージシャンはみなさん素晴らしいです! ドラムの石若(駿)さんもすごくアイデアが豊富で面白いんですよ。特に『地獄 Part2』はリズムの揺れがすごい良くて、それが曲に良い影響を与えてますね。『示談』(M-7)も石若さんの緩急の付け方というか音の詰め方が最高に楽しくて、とても良い音楽にしてくれてます!」
“一発芸の人でしょ”って思われるのは心外
なんとか誤解されないように変えていきたい
――一見コミカルな要素も感じられますが、一発芸的にやっているんではなくて、音楽をストイックに追求して、独自の音楽性と楽曲スタイルを獲得されたのですね。
「そうですね。今お話聞いてて思ったんですけど、やっぱり多くの人に誤解されてるなって印象がありますね。“一発芸の奴なんだ”って、“どうせ笑かしの人でしょ”って多分思われてるのかなって。それだけはなんとか誤解されないように変えていきたいですね。とにかく音楽を聴いてほしいですね。真摯に音楽を作ってるし、死ぬ気でやってるので。それはちゃんと聴いてほしい!…ちょっと今熱が入りすぎちゃいましたかね?(笑)」
――いや、それはぜひ太文字で伝えたいと思います!
「普通の文字でいいです!(笑)でも、会社も辞めて、何もかも全て音楽に捧げてるんで」
――そうなんですね。ちなみに、ライブではどういうようなスタイルで行われるのですか?
「今のところはバンドで、ギター、ベース、ドラム、キーボードがいて、自分は歌うか、またはギターボーカルです。今後はもしかしたら、変わっていくかもしれないですけど、新しいことも思いついたらやりたいですね」
――8月5日(木)に心斎橋JANUSで開催される『ODDL PARTY』が関西では待望の初ライブになるそうですが、大阪はどんな印象ですか?
「実は僕、大学のとき大阪に4年間住んでたので大阪は好きです」
――そうなんですね!
「でも大阪にいるときはずっと“東京もん”って言われてて、最初は“なんなんだ?”って思ってましたけど、4年もいるとみんなと仲良くなっていって。関西に居たからこそ培われた発想があるし、また大阪に戻ってきてライブできるのはすごい感慨深いことですね」
――大学生時代は大阪のお笑い文化には触れられましたか?
「本当にバンドばっかりやってたんですけど、友達がみんな面白くて、大阪ってやっぱり笑いがチームプレーですよね。東京にはない面白さがありましたね。ずっと笑ってましたもん!」
――(笑)!大阪に来たことで得たものが今の作品やパフォーマンスにも反映されているのでしょうか?
「絶対あると思いますね! 東京にずっといたらマハラージャンになってなかったかもしれないです」
――それは嬉しいです! コロナ禍が続いていて制限されていることもありますが、今回はどんなライブにしたいですか?
「ライブはその場の空気とかメンバーの雰囲気によってかなり変わってくるし、ライブでしか出せない凄いものをバンドで出して、観た人が絶対に忘れられないようなライブにしたいなと。とにかく音源を飛び越えてパッションをお伝えしたいですね。会場でしか感じられないグルーヴ感を全身で浴びて帰ってほしいなと思います」
――ライブもそうだし、今後の展開がさらに楽しみです。今日はありがとうございました!
「こちらこそありがとうございました!」
Text by エイミー野中
(2021年7月21日更新)
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