「アートとして音楽を作ってるところが、今回は強く出たなと」 孤独を引き金にしたデイドリーミングでマッドなポップミュージック おいしくるメロンパンが送る圧倒的5分間と’21年への展望を語る! 『架空船』全員インタビュー&動画コメント
未曽有のコロナ禍において、窮地に立たされたミュージックシーン。そんな閉塞感の中で全てのアーティストがその音楽の価値をはかられるような日々に、スリーピースロックバンドおいしくるメロンパンが投げかけた、5分間の至高の白昼夢とも言うべき『架空船』は、エッジィなギター×タイトなビート×変幻自在のグルーヴの総攻撃とも言うべき音の洪水に、心地よく身を委ねる圧倒的没入感、自粛期間が引き金を引いた逃れられない孤独感、ポップミュージックに忍ばせた狂気という名の違和感が最高のスパイスとなり、バンドをネクストフェイズへと引き上げている。おいしくるメロンパンのバンドとしてのスタンス、可能性、そして底知れぬ才能の全てをぶち込んだそんな1曲に高揚する間もなく、年明けの’21年1月20日(水)には、同曲を含む5thミニアルバム『theory』のリリースもアナウンスされるなど、彼らの歩みがとどまることはない。恐るべき進化を遂げ続ける3人に、『架空船』で手に入れた新たな視野から、今後の展望までを語ってもらった。
生きてても何も起きない、つまらない時間ってすごく長いなと思ってて
――今年はコロナ禍により、思い通りにいかないことも多かったのはどのアーティストにも共通してることですけど、ここ半年ぐらいのその辺のムードは、『架空船』に反映されたりしました?
峯岸(b) 「ペースだったり考え方だったり、やることも特別減るわけではなかったんですけど、ライブができなかったから、曲作りにそれだけ心は向けられてたのかなと」
ナカシマ(vo&g) 「それはあったかもね。業界の流れがすごく早くてせわしないなとずっと思ってたんですよ。コロナが始まる前からどんどん曲を作っては出して…まぁ僕らのペースはそれでもすごく遅い方なんですけど(笑)」
――リリースが決まればツアーがあって、こういうキャンペーンの合間にイベントとかフェスに出て、ツアーファイナルのアンコールで何か発表しなきゃいけないから、またリリースを決めて、みたいなね(笑)。
ナカシマ 「で、気付いたら1年後の予定まで決まってて…。でも、それが今回のコロナで1回リセットされたので、心持ちとしては気が楽になったというか(笑)、それで今までは気付かなかったようなことにも目が向けられて…この自粛期間に思ったのは、すごく孤独感があるなと。普段からそんなに人と会ったりしてるわけじゃないですけど、それが浮き彫りになった気がして。そういうところからインスピレーションを受けて、この曲の種ができたと思います」
――『架空船』は間奏を長くしたり、構成を歪にしたいという意図があったということでしたけど、そういう発想で曲を作るバンドは、なかなかいないのかなと。
ナカシマ 「確かにそうだと思います。生きてても何も起きない、つまらない時間ってすごく長いなと思ってて。今回のコロナの件があって、よりリアルに体感したそれをそのまま表現したくて、何も起きない間奏をずっと延ばしてみたら、僕が感じたようなことを表現できるのかなと思って」
――音楽的なチャレンジだけど、その発想は完全に生活から来てる。時間軸という概念を曲に導入したときにどうなるか…その狙いはめちゃくちゃ面白いですね。
ナカシマ 「長い時間何も起きないと、何かが起きたときにフラストレーションがハジけるレベルが上がるというか。そういう意図もこの曲にはあって、そこはチャレンジしていい結果が出たと思いますね」
自分がすごく出た曲だなと思いました
――世界観を絶妙に捉えたMVも本当に素晴らしくて、この楽曲のムードはおいしくるメロンパンが元々持ってるものではあったと思いますけど、今回は一番アートな部分が出たというか。
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峯岸 「自分もアートとして音楽を作ってるところが、今回は強く出たなと思いますね。さっきナカシマが言った間奏を長くする意味合いにしてもそうですけど、カッコいい音楽を作ろうというのはまずあるけど、それだけじゃない音楽を作っているつもりなので。らしさと言うよりも、何だろうな? 真髄でもなくて…中心にある本性?(笑)」
――言葉選びにしても、今まではハッとさせることが目的で特に意味はなかったりもしたと思うんですけど、今回は人が滲み出てるというか…アートな部分と人間的な部分がいいバランスで成立した試金石みたいな曲じゃないかと。
ナカシマ 「作り始めたときはあんまり意識してなかったんですけど、出来上がったものを改めて聴いて、自分がすごく出た曲だなと思いました。何でなんだろう…? やっぱり自分と向き合う時間が長かったのはあると思いますね」
――あと、最初は“嗚呼孤独そのもののような海を漂流して”だった歌詞が、最後には“嗚呼孤独そのもののような海をゆけ”になり。2文字でこんなにもガラリと景色が変わって、力をもらえるもんだなと。おいしくるメロンパンは音楽で存分に語ってるバンドだとは思いますけど、言葉と一体化したときにさらに凄まじい力を発揮するような。
ナカシマ 「そこは確かに考えてますね。言葉が乗ったとき、掛け算でもっとよくなるように」
いろんな仕掛けの数を少なくした代わりに、その1つの仕掛けが緻密になった
――『架空船』はプレイヤーとしても、いつもと少々違う角度の演奏が求められたのかなと思ったんですけど。
峯岸 「ベースのサビはずーっとルート弾きなんですけど、最初はもっと動きたかったんですよ。でも、ナカシマから“サビは単調にいくのがオツなんだ”と言われ(笑)、その言葉が結構印象に残ってて。で、あの間奏ですよね。間奏もずーっと同じことをやってるんですけど、今までとは全く違うアプローチで動かない場所を作ってみたら、それはそれですごく楽しくて。ちょっと考え方が変わったというか、いいきっかけになった曲なんですよね」
――ライブでは弾きまくりの動きまくりでベースヒーロー感がありますけど、そういう人の抑えた演奏の妙という。
峯岸 「そうなんですよ。ライブでも動かない方が今は楽しいんですよね。感情が乗せられるというか」
――原(ds)さんは、4月に配信された『透明造花』(’20)で、バンドとして境界を越えた感覚がすでにあったと。
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原 「そうですね。『透明造花』からいろんな仕掛けの数を少なくした代わりに、その1つの仕掛けが緻密になった感覚がありますね。『架空船』は意外とシンプルで、前よりもちょっと分かりやすさがあるというか」
――今まではドラマチックの連続だったのが、山場を作るというか、破壊力を増すためにあえて退く。ギターに関しても、リズムギターやリードギターがいないので、1人でアンサンブルを構成するために変わったアプローチになりがちだと。今回もそこがいい意味で表れてるなと思いました。
ナカシマ 「曲として成立させなきゃいけない。でも、ギターは1本しかない(笑)。逆にそれによってどうしても僕が作った感じになるから、スリーピースはいいなと思いますね」
――この3人で、この音楽だからこそ、という部分が『架空船』では形になってますね。
ナカシマ 「最近は曲の作り方も変わった気がするし、歌詞にもちょっと意味を求めるようになったというか…今までも一応、意味を考えてはいたんですけど、曲のデザイン性に重きを置いていたので。今は半々ぐらいの感覚で、別に歌詞の意味が伝わらなくてもいいやとも思いつつ、同時に納得させようという意思も強くなってきたというか。そこのあんばいはちょっと変わったかもしれないです」
――曲のデザインを最優先事項として意識してた人が、それでも伝えたいことってやっぱり刺さると思うし、押し付けがましくないと思う。『架空船』は今後のバンドの展開が大いに期待できる1曲になりましたね。
新しい曲をライブでできるのが、今は一番楽しみですね
――今年は配信ライブも何本かやってましたけど、3人で演奏する喜びを改めて感じたんじゃないですか?
峯岸 「オンラインライブは純粋に楽しかったです。それがまず大きくて、いいか悪いかは分からないですけど、僕らのライブはお客さんに向けてやるというよりも、自分らに向けてやってるのが漏れ出すのをお客さんが見る、みたいな感覚なので、言ってしまえば、よりやりやすかったというか、本来の自分たちが見えるライブになったのかなと」
――それを求めてくれるファンが多くいるのは幸福ですよね。ヘンな言い方ですけど、年明けのツアーの規模が思いのほか大きくて、こんなに好き放題やってる音楽でこんなに人気があるのズルいなって、正直思いましたもん(笑)。
(一同爆笑)
峯岸 「言われますそれ〜! 先輩にも言われました(笑)」
――年明けのツアーに向けてはどうでしょう?
原 「『架空船』だったり『透明造花』だったり、新曲をどうライブで見せようかと考えるのも楽しみだし、ツアーでいろんなところに行けるのもとにかく嬉しくて。ワクワクしかないですね!」
ナカシマ 「最近できた曲はライブで演奏したいものばっかりで、すごくヘンな曲とかめっちゃシンプルな曲もあって。それをやることで多分、昔の曲も引き立ったりするので、セトリを組むのも面白そうだし。やっぱり新しい曲をライブでできるのが、今は一番楽しみですね」
Text by 奥“ボウイ”昌史
ライター奥“ボウイ”昌史さんからのオススメ!
「僕はポップで違和感のある音楽が好きなんですけど、去年、彼らが『GLICO LIVE NEXT』に出たときに
ライブレポート を担当して。『架空船』を初めて聴いたとき、あのときに感じた得体の知れなさは本物だったなと、嬉しくなってしまいました。この曲で初取材できてよかったな~。『架空船』の溜めて溜めて溜めてドカーンといくカタルシスは、理屈で説明できない人間の根幹的な気持ちよさと、スリーピースロックバンドという総合芸術の極みだなと思いました。そして、前述した違和感=狂気でもあると思うんですけど、それって実は我々も含めて誰もが持っていて、それがどれだけの配分で人前に出てくるかだと思うんです。それをみんな持ってるんだよ/持ってていいんだよとこの曲が教えてくれたような気もしますし、MVも楽曲の世界観をとても理解しているというか、後付けじゃなく一体となって音楽を伝えてくる感じが本当にすごい。『架空船』は今年を象徴&代表する1曲になったと思います。来年リリースされる新譜も楽しみだ!」
(2020年12月 4日更新)
Check
Movie
関西での秘蔵エピソードも!(笑) おいしくるメロンパンの動画コメント
VIDEO
Release
才気溢れる驚異の新曲に続いて '21年には注目のミニアルバムを発表!
Digital Single 『架空船』 配信中 RO JAPAN RECORDS <収録曲> 01. 架空船
Mini Album New! 『theory』 1月20日(水)発売 1500円 RO JAPAN RECORDS XNRJ-10015 <収録曲> 01. 獣 02. 透明造花 03. 亡き王女のための水域 04. 架空船 05. 斜陽
Profile
おいしくるメロンパン…写真左より、峯岸翔雪(b)、ナカシマ(vo&g)、原駿太郎(ds)。’15年9月、峯岸が大学の同級生であるナカシマと、高校の同級生だった原を誘い結成。活動開始から1年も経たないうちに『RO69JACK 2016 for ROCK IN JAPAN FESTIVAL』で優勝し、これまでに『thirsty』(’16)『indoor』(’17)『hameln』(’18)『flask』(’19)と4枚のミニアルバムをリリースしている。'19年12月には、ワンマンツアーを全国12カ所で開催。自身ワンマン最大キャパであったEX THEATER ROPPONGI公演をソールドアウトさせた。’20年には配信シングル『透明造花』を4月に、『架空船』を9月にリリース。同月には、オンラインライブ『配信 邁進 カプサイシン、売り込み熱心 母感心。』を開催した。’21年1月20日(水)には、5thミニアルバム『theory』をリリース、同31日(日)より自身最大規模のワンマンツアーを全国17カ所で開催予定。ファイナルには初のZepp DiverCity(TOKYO)公演が控えている。おいしくるメロンパン オフィシャルサイト http://oisiclemelonpan.com/
Live
有観客×配信のミナホ関連イベントに 年明け以降はツアーで神戸&大阪へ!
【大阪公演】 『Eggs presents FM802 MINAMI WHEEL 2020 NEO EDITION vol.2』 チケット発売中 Pコード781-406 ※チケットは、インターネットでのみ販売。 ▼12月5日(土)17:00 アメリカ村DROP オンライン視聴券2200円 オンライン視聴券+マフラータオル付4280円(配送料880円含) [出演]アイビーカラー/おいしくるメロンパン/ナードマグネット/FABLED NUMBER/CAT ATE HOTDOGS(EGGSレコメンド)/ 高樹リサ(MC) FM802リスナーセンター■info@funky802.com ※現地観覧チケットは完売。マフラータオルは12月19日(土)前後にお届け予定となります。 【アーカイブ配信】~12月6日(日)23:59
『theoryレコ発ワンマンツアー2021 ときめき★セロリアル ~育ってきた環境が違えども~』【神奈川公演】 ▼1月31日(日)F.A.D YOKOHAMA【宮崎公演】 ▼2月7日(日)仙台Rensa
Pick Up!!
【兵庫公演】
一般発売1月9日(土) Pコード187-854 ▼2月11日(木・祝)18:00 チキンジョージ 全自由4000円 キョードーインフォメーション■0570(200)888 ※未就学児入場不可。
【山口公演】 ▼2月13日(土)周南LIVE rise【石川公演】 ▼2月26日(金)金沢vanvanV4【長野公演】 ▼2月28日(日)松本ALECX【静岡公演】 ▼3月13日(土)Live House 浜松 窓枠 【群馬公演】 ▼3月20日(土・祝)高崎 club FLEEZ【新潟公演】 ▼3月26日(金)GOLDEN PIGS RED STAGE【北海道公演】 ▼3月28日(日)mole【沖縄公演】 ▼4月10日(土)output
Pick Up!!
【大阪公演】
一般発売2月27日(土) Pコード187-856 ▼4月16日(金)19:00 BIGCAT 全自由4000円 キョードーインフォメーション■0570(200)888 ※未就学児入場不可。
【香川公演】 ▼4月17日(土)DIME【福岡公演】 ▼4月24日(土)DRUM LOGOS【熊本公演】 ▼4月25日(日)熊本B.9 V2【愛知公演】 ▼5月8日(土)ボトムライン【東京公演】 ▼5月13日(木)Zepp DiverCity(TOKYO)
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