リミッター解除! “全部やった”ミニアルバムをリリース!! おいしくるメロンパンインタビュー
結成から間もなく3年。おいしくるメロンパンが、7月25日、3rdミニアルバム『hameln』をリリースした。1st、2ndを経てより色濃くなった3人の世界が感じられる今作は、聴けば妄想が止まらなくなること間違いなしだが、そんな今作を生み出した3人の実態とは? 意外と“健やか”な一面も見られるインタビューをご覧あれ。
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――まずは最新作『hameln』のことから……。今作は一筋縄ではいかない仕上がりですね。
原 「そこは1作目から意識してますね」
峯岸 「ただ一種、聴き難くなったと思うんです、今回。僕らがやりたいことを、よりやったというか、そもそもやりたいことが増えたというか。もちろん、やりたいことは今までもやっていたんですけど、(やりたいことの)絶対値が増えたので、それを詰め込んだがゆえに……」
原 「より複雑になった……と」
ナカシマ 「前の2作に比べると“大衆ウケ”という面では、より離れたものになったかなと思います。僕らこれまでは、いわゆる“邦ロックファン”が好きな、16ビートの速い感じの曲が割りと主流だったんですけど、今回は変拍子とかダウナーな曲とかが入っていて、そこが前作2つに比べると渋くなったかなっていうのがありますね」
――聴く人を意識することより、やりたいことを優先させるようになった理由とは?
ナカシマ 「もともと自分たちが好きなもの、かっこいいと思うものをやろうっていうのはポリシーとしてあったんですけど、今回はたがが外れたというか……。それは、2つ作品を作って、ちゃんと認めてもらえて聴いてくれる人がいるっていう安心感を感じられたのと、あと単純に僕ら自身が技術を得て、やりたいことが広がったっていうこと(の結果)だと思います」
――以前は少し隠していた部分があったんですか?
ナカシマ 「……と言うよりは、自然にリミッターがかかっていたかなって思いますね。やりたいことは一貫してあるので。だから今回初めて“全部できた!”っていう感じがあります」
――そんな風に以前と違いを見せた今作の楽曲。それは、その世界観自体にも変化があったということでしょうか?
ナカシマ 「そこは変わってはないんですけど、自覚してきたっていうのが近いと思いますね。モヤッてしていたものが今回ハッキリとしてきた。これかなっていうのが見つけられたところがあります」
――ずばり見つけたものとは?
ナカシマ 「やっぱり、僕らの音楽はメッセージを伝えるっていうわけじゃないなって思って。世界観を忠実に情景として歌詞に落とし込んで、メロディやサウンドでって……あ、でも、わかんないっす(笑)」
――みなさんの音楽は聴く側が考える余白があるから、すべてを説明するのは無粋ですよね(笑)。それはさっき話されたように“聴き難い”のかもしれませんが、わかりやす過ぎるものより楽しみが多いです。
ナカシマ 「ま、そこはジャンルというか、目指すところが違うっていうのもあるとは思うんですよね。例えばパンクロックとかそういう音楽だと、歌詞がそのままメッセージになって、伝えるためにエネルギーとして音楽が肉付けされると思うんですけど、僕らの場合は世界観があって、それを歌詞やメロディやサウンドを使って表現するという……。もう土台から違うっていう気がするし、今回その違いに気づけたかなって思います」
――個人的には、直接的なメッセージが強い音楽より、物語や妄想が広がるものの方がなじみいいので、みなさんにはこれからもずっと“だまし”続けてほしいです(笑)。
峯岸 「ありがたいです」
ナカシマ 「そうですね。僕の曲は全部フィクションなんで」
――今言った“だます”っていう感じが伝わります(笑)?
ナカシマ 「翔雪(峯岸)は、適当に答えてるから(笑)」
峯岸 「いや。だいぶ近いなとは思う(笑)。俺的には、ぶっちゃけ“そんなこと考えようとしてないけど、言ってるだけでしょ?”っていう音楽が世の中に結構あると思うんですよ。むりやり意味合いを作ってるっていうか……」
原 「うんうん」
――後だしジャンケンでメッセージをくっつけている感じですかね。だったらメッセージは不要ですね。
原 「そのとおりですね」
峯岸 「詞も、思ってないけど一応、作んなきゃいけないから書いてる……みたいな」
――それならいっそ意味を持たず、聴く側の妄想が広がって勝手に意味を感じられる、つまり“だまされている”ような方が全然いいと思います。
峯岸 「だから“絶対音楽”(音楽本位)でいいと思うんですよね。BLANKEY JET CITYが好きなんですけど、意味もないような詞でも単純にかっこいい音楽だなって思うから」
――まさに……。今作に話を戻しますが、さっき言ったように一筋縄ではいかない楽曲ですが、決してイヤな感じはしませんでした。この理由ってなんでしょうか?
峯岸 「変なこともやってはいるけど、僕らのなかではシンプルにやってるよね。だから、計算してないから(イヤな感じがしないの)かなと、思わなくはないですね。単純にかっこいいからやろうぜ!って、思いつきでやってるから、僕ら」
ナカシマ 「うん、シンプルだと思うよ。あと、描こうとしているイメージが一貫してるから、(楽曲が複雑に)変わっていったとしても、なんとなくつながりは見えるというか……ワザとらしくならないんだと思います」
――確固たるイメージがあるから詞も細部まで描けるんですか? 色や香りといった五感を刺激する描写が多いですよね。
ナカシマ 「陶酔させる……没入感みたいなものがあってほしくて。聴いてる人が主人公とかの目線に立つために、何を見ているか?とか、何を聴いてるか?とか、どんな匂いがするか?とか、そういうものは確かに大切にしてますね。そこをうまく表現できたら没入感が出るんじゃないかなと思うので。だから割と感情とかより、実際に(感じて)受けるものを大事にしています」
――なるほど。ではさらに、ここからはいくつか収録曲の気になった点を……。まずはプールが舞台の『水葬』。突然終わるアウトロが気になります。
ナカシマ 「あれは、僕、編曲だったりとかを“場面と関連付けて”みたいなところがあるんです。だからこの曲もどうやって終わるか迷ったんですけど、最後、水がスーッて渦になって、サッて……」
――あ、最後、排水口でポコッっていうやつ?
ナカシマ 「そうです。だから、渦が巻いてる感じのギターのアルペジオから“ドゥーン ダスッ”ていう終わりにしました」
――納得。次は『dry flower』ですが、“寂しくなったら きっとそれすらはしたない”のサビが強烈でいいですね。
原 「結構、言われますね」
峯岸 「あれ、いいです」
――なかなか日常にはない感情。聴く人は同じようなことを思ったことがあるのでしょうか?
峯岸 「あ、“寂しくなったらはしたない”って……?」
ナカシマ 「思ってないと思う」
峯岸 「そう思う人はいないんじゃないですか? ナカシマ自身はそう思ってたの??」
ナカシマ 「いや、思ってない」
峯岸 「ポッと出てきたんだ?」
ナカシマ 「ポッというか……“これ”(今繰り広げられているようなこと)をしてほしかったというか。そういう考察があれば、成功ってだけです」
――聴いた人にいろいろ考えさせたかったと……。じゃ、まんまと術中にはまったんですね(笑)。
ナカシマ 「そうです。僕ら、割とハッとするような言葉とかアレンジとか、何気なく聴いてても“ん?”みたいな……そういう瞬間があるように作りたがる習性があるから、その一つなんじゃないかな」
峯岸 「でも俺も、この一節だけは引っかかったんだよね。別にそういう経験があってとかじゃなくて、単純に言葉の並びに感じるものがあって “何だこれ?”って1時間ぐらい……いや、1時間も考えてないな、とりあえず5分ぐらい考えて……」
ナカシマ 「盛り過ぎだ(笑)!」
峯岸 「ま、5分考えて(笑)、“ま、いいや”って考えるのはやめました。僕は結構、彼(ナカシマ)の歌詞を曲としてメロディとして聴いているし、彼が歌詞を聴く人に委ねることも知ってるので……」
――原さんはどうでしたか?
原 「僕は、“どういう感情なんだろう? ん……?? わかんないやっ!”って諦めちゃいました。1分ぐらいですね(笑)」
――ま、答えを出したところで……ということですね(笑)。そして『蜂蜜』ですが、感触がほかと違います。
原 「柔らかい」
峯岸 「箱庭感がある」
ナカシマ 「小休止的なものになったね」
原 「そうだね。一息つくみたいなね」
ナカシマ 「この曲は、当初は全然違うもので、バンドでやることを考えなくて、弾き語りで作った曲だったんです。作ったのも結構前で、もうどういう心持ちで作ったのかも覚えてないですね」
――優しい曲調なのに詞は人のダメなところが全開です(笑)。
ナカシマ 「でもわりと僕っぽいというか、ダメだけど開き直っているみたいなところもありますね」
――で、次の曲が『蜂蜜』と対極に、スケール感ある『nazca』。詞の世界は“辛い”感じですが……。
ナカシマ 「救いようのない感じ……でも、僕らの曲はそっち寄りだよね」
峯岸 「うんっ!」
ナカシマ 「最終的に救われないよね!みたいな」
原 「どうしようもない!っていうね」
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――「うんっ!」「救われないよね!」「どうしようもない!」っていう口調は明るい(笑)。
ナカシマ 「ま、フィクションだからね。幸せに生きてるしね」
峯岸 「そうなんですよ」
原 「現実の世界で諦めてるわけじゃない」
――健やかですね!
原 「そういうことですね」
――では最後にリリースツアーのことを。音源は妄想たっぷりで楽しみましたが、ライブはどんな感じで楽しめるでしょうか?
峯岸 「僕らのライブは、楽しみ方、それぞれなので……。単純にいい曲を持ってるじゃないですか、僕らは。それをライブでやる。“だから曲が楽しく聴けるよ”ってしか言えないです。手を上げろでもないし、暴れろでもないし、好きにやってくれるのが一番です。ま、ワンマンなので、最高のライブをする気でいることは確かなんですけどね」
――作品同様に聴く側の自由と……。そして、ツアー初日は大阪公演ですね!
原 「不安……なのかな? わかんないな(笑)」
峯岸 「前回のツアーも大阪が初日で緊張したんです。で、その初日があって、そこから7か所回って、初日も含めそのなかで得るものが大きかったから、前回の大阪とは全然違うライブができるようになってると思いますね。そこはマジで楽しみにしててほしいです」
原 「絶対進化していると思う」
峯岸 「超かっこよくなってる! 超かっこよくなってる!!」
――2回言うほどですね(笑)。
峯岸 「ホント、ヤバイですよ、ヤバイ!!」
text by 服田昌子
(2018年8月27日更新)
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