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「自分の人生を大事にしてる人にはきっと響くはず」
1億2000万人じゃなくて、70億人に届く音楽を――
ROTH BART BARONが移りゆく時代に揺るぎなき意志を刻んだ
『けものたちの名前』インタビュー&動画コメント

 イエスかノーか、右から左か。あなたは何人? 私とは違う。いつの間にか白か黒しか許さなくなった分断の2010年代を終えて、あっけなく始まった2020年代。その狭間に生み落とされたROTH BART BARON(ロットバルトバロン)の最新アルバム『けものたちの名前』は、多くの称賛の声が贈られた前作『HEX』(’18)でその名と音楽を響かせた彼らが、移りゆく時代に性別も年齢も国境も超えていく音楽の揺るぎなき可能性と、曖昧な感情を抱えてそれでも生きていく人間の美しさを、祈りにも似た気高き歌声とともに刻み付けた1枚だ。音楽家として充実期にあることを感じさせる今作についてはもちろん、今やセルフマネージメントの活動を支えるまでに成長し、オンラインとオフラインを行き来するコミュニティ“PALACE”の実態、クラウドファンディングにサブスクリプション、YouTubeなど多岐にわたるプラットフォームへのスタンスなど、たくましくシーンをサヴァイブするバンドのフロントマン三船雅也(vo&g)が、独自の視野と価値観を語るインタビュー。そして、年をまたいで開催中のリリースツアーは、ファイナルとなる5月30日(土)東京・めぐろパーシモン 大ホールへと続いていく。人と会うこと、形に残すこと。根源的な歓びに導かれた『けものたちの名前』は、何者にも線を引くことなく、最高純度の輝きを放っている。

 
 
人と出会った結果、『けものたちの名前』を作ることになった
 
 
――前作『HEX』('18)がもたらしてくれた1年は、今までのキャリアの中でも、ちょっと違いましたよね。
 
「本当に。P A L A C Eもそうだけど、いろんな人に助けてもらったというか、捨てる神あれば拾う神ありじゃないけど(笑)。『HEX』は人に会うのがテーマだったし、ツアーを通してまたいろんな人に出会えて…何かね、言うとクサくなるというかテンプレっぽくなっちゃうんだけど、人と出会った結果、『けものたちの名前』を作ることになった。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのGotch(vo&g)さんがフックアップしてくれて、なんばHatchでオープニングアクトをさせてもらったり、Zepp Tokyoに立たせてもらったり、いいイベントにもたくさん出させてもらったし、支えてくれるお客さんとか、P A L A C Eのみんなに救われた、盛りだくさんな1年だったなぁって。そういう『HEX』のムードが継続しながら『けものたちの名前』の制作が始まったから、今でもずっとVer.2みたいな気持ちにはなってるんだけど、アルバムの内容はガラッと違うから面白いなと」
 
――あと、好きなアーティストの認知度が上がっていくことって、ある種の寂しさもつきまとうものだけど、ロットの場合はみんなが“行け行け!”って後押ししてくれるというか。それはロットの音楽性のみならず人間性も含めて、P A L A C Eが成立してる1つの要因でもあるのかなと。みんなが“この音楽を世に広めたい”と思っちゃう(笑)。
 
「アハハ!(笑) そうですね。みんなすごくいろいろ考えてくれて、本当に」
 
――前代未聞の機関じゃないですか、P A L A C Eは。ファン以上マネージメント未満みたいな感じで。シーンの新たな動向とか海外のトレンドには敏感なのに、それを既存のシステム上でやることに対しては何の疑いも持たないアーティストも多い中で、そこに乗っからず新しいシステム自体を持ち込もうというのはロットならではだなと。
 
「P A L A C Eのクラウドファンディングの企画から東京でプラネタリウムのイベントをやったんですけど、それは彼らが場所を選んで、セットリストを決めて、グッズのデザインもして。フライヤーもポスターも、当日のお客さんの動線とかも全部手掛けて…あとはもう僕らはただ演奏するだけ。そうやってみんなで作り上げるお祭りを1つ形に残せて、そのチケットが即完して…みたいなところまでやれたのは、また絆を強める理由になったというか」
 
――ただ、ライブのコンセプトも、グッズも、それが=アーティストの発信になるわけで。簡単に言うと、ダサいことはできない。そんな中で、そこを預けられるロットの度量も、それに見事に応えたP A L A C Eのポテンシャルもすごいなと。そういう未知なるクリエイターに出会えるのは有意義だね。
 
「ロットのお客さんというかP A L A C Eに入る人は、デザインができたり絵が描けたり、そういう技を隠し持ってる人が多くて(笑)。皆さん素敵に生きてらっしゃるんですよね。だから、そのアイデアに触発されちゃう自分もいて。(着ていたスウェットを指し)これも元のデザインは僕が作ったんだけど、文字の構成とか、実際にプリントするところまでP A L A C Eのみんながやってくれたんで。そういうキャッチボールが今はすごく楽しくて、僕も素直に感動しちゃうというか、才能を持った素敵な人はいっぱいいるんだなって」
 
――P A L A C Eを見てるとそれをすごく感じる。もう会社ができるな(笑)。あとはやっぱりROTH BART BARONの音楽という踏み絵があるというか(笑)、ロットをいいと思って集まってくれる人は信頼できるなっていうのも。
 
「確かに。オンラインサロン的なコミュニケーションなんだけど、実際にイベントやグッズを作ったり、“次のクラウドファンディングはどうする?”みたいなチャットが始まってたり、いろいろやることも多いんですよ」
 
――だからロットにこうやってインタビューするときはね、事前に下調べしなきゃいけないことが多過ぎる(笑)。まぁそれだけ動いてるってことだもんね。
 
「“ちょっと情報が多過ぎて追えません”ってファンの人も言いますから(笑)。実は水面下でいろいろ起きてるし、自分たちが生き残れる生存圏を、自分たちで作るようにはしてるんで。要は、自分たちは極めて真っ当な音楽をやってると思ってたけど、どうやら世間の人からはすごく変わってると思われてる(笑)。アルバムを4枚出してそのギャップにやっと気付く、みたいな。自分たちがやりたい音楽をやった方が喜ぶ人が多い気がして。作りたくないものを作っちゃうのは誰にとってもよくないというか、嘘をついて作り笑いみたいな音楽を人に渡すのはイヤだなと思って。そこに左右されてると自分の音楽人生がもったいないし、いいものを作れる環境を、やりたいようにやれる居場所をちゃんと作っていく。そうすると自分の生活=軸が保ててるから、少しずついろんな場所に行けるようになって」
 
――クラウドファンディングでも過去最高の400万円を超える資金が集まって。メジャーだってアルバム1枚作るのにこんな予算はないんじゃないかと。今までにクラウドファンディングを3回やってきて、毎回プラットフォームを変えてきてるけど、やっぱりそれぞれ違うもの?
 
「全然違う。でも、全社に共通してるのは基本的に世界には開いてなくて、国内でお金を集めることに終始してますね。僕らの音楽でそこをブレイクスルーしたいんだけど…」
 
――逆に海外のクラウドファンディングには日本からでも参加できるよね?
 
「クレジットカードさえあれば全然いける。だから、そういうところも日本は早く変えないと。音楽もそうだけど」
 
――海外からも気軽に参加できたら、ロットに関してはかなり意味のある変化になりそう。ロットはこういった資金繰りも含めて、言わばセルフマネージメントで活動してるわけだけど。
 
「肌感覚があるし、自分はすごく楽しいですね。最近ふと思ったんだけど、1stアルバムから自分の好きな音を作る人が海の向こうにいて、契約も何も決まってないうちからアメリカにメールを送って文通みたいなことをしてたじゃないですか。そこから実際に会いに行って録ってきた。音楽ってそういうものだと思ってるというか、“15時間飛行機に乗って会いに行けるのか?”みたいな(笑)。やっぱり会ったか会ってないかってすごく差があって。例えば、マネージメントを通してお願いしてやってくれはしたけど、影響力が強い人の仕事をOKしちゃうとか、そういう選択を自分じゃ見えないところで行われてたりすると、それによって逆に会えない人が出てくるわけでしょ? 音楽をやる以上、やっぱりライブミュージックだから、実際に会わなきゃいけないというか同じ空間を共有する必要があって。そこでしかないというか、最初からそうだったよなって今なら思うんですよ」
 
――何度もぴあ関西版WEBのインタビューで取り上げ続けた、三船くんの実体験至上主義ね(笑)。
 
「そうです!(笑) ちょっとした日常にしたって、“アメリカ人って身長が大きいんだろうなぁ”と思って実際に向こうに行ってみたら、“お前デカいな”って逆に言われるとか(笑)。噂で“この人は悪い人だ”って聞いてても、実際に会ってみないと分かんないじゃないですか。インターネットが普及した世界で、親指をちょこっと動かすだけでいろんなことを知ることはできるけど、ずっと体験したことがないまま妄想だけが膨らんで、もやもやしたまま“自分には才能がないんだ”とか勝手に判断しちゃう誤解みたいなもの…それは音楽業界もそうかもしれない。新しいシステムを作りたいのは、ぶっちゃけ1回紐解いて、自分でやってみて、“なるほど”って言いたいだけなのかもしれない」
 
――ここまでアルバムの内容については全然話してないんだけど(笑)、ロットの今の多岐にわたる活動について語っていくと、自ずとそうなってくるよね。
 
「それでいいんですよ。だって、アルバムを出すのはバンド活動のほんの一部分だから。ライブがあって、P A L A C Eがあって、こうやって話して…全部がバンド活動だから。レコード屋さんに2週間ぐらい面陳されて、また次の作品が出たらバッと下げられちゃうスケジュールのためだけに音楽をやってたら、アルバムがかわいそうじゃないですか。せっかく作ったんだから長く生き残ってほしいし、5月には一大イベント(=ツアーファイナルの東京・めぐろパーシモン 大ホール公演)があるわけだからね」
 
 
世界の動向がうんぬんじゃなくて自分が元から持ってるものに素直に
ちょっと達観した気持ちで作ることにしたんですよね
 
 
――『HEX』では新しいことをやろうと明確にギアを入れてそれが功を奏したわけだけど、『けものたちの名前』は『化け物山と合唱団』(’12)とか『ロットバルトバロンの氷河期』(’14)の延長線上というか…個人的には“これぞロット!”という感覚が久々にある盤だったなと。今回は得意なことをやるというのも1つのテーマだったみたいだけど。
 
「何て言うんだろう? 『ドラゴンボール』でかめはめ波を打たない回が続いてたというか、スペシウム光線を打たないウルトラマンというか…(笑)」
 
――この至高の音楽をかめはめ波とかスペシウム光線に例える?(笑)
 
「ウルトラマンが変身しない哲学的な回も、たまにあると響くじゃないですか?(笑) 『HEX』ができるまでに3年間で120曲作っても納得いかない僕がいて。でも、そこで開けた蛇口からバーッと水が出てるから勢いがあるというか、新しい曲もできるし、古い曲も新鮮に輝いてくる。『HEX』でギアを入れたおかげで慣性のブースターがまだ働いてて、どうやら’19年のうちに1枚出せそうだぞという感じになって。2010年代も最後だしとか思いながら、ギアはもう入っちゃってるからそのスピードに任せて、世界の動向がうんぬんじゃなくて自分が元から持ってるものに素直に、ちょっと達観した気持ちで作ることにしたんですよね。だから『けものたちの名前』は、自分にとっては自然な流れでできたなと思いました」
 
――そんなアルバムなのに、再生してからしばらくは三船くんの声が聴こえてこなくて(笑)。女性ボーカル陣の参加も今作のトピックだと思うけど、『けもののなまえ feat.HANA』(M-1)のHANAとはどういう経緯で出会ったの?
 


「共同プロデュースしてくれてる林口(砂里)さんが彼女のお母さんと友達で、『HEX』のツアーファイナルの渋谷WWWに彼女を連れて来てくれて。事前に動画とかも見せてもらったんだけど、それも実際に会ってみないと分からないじゃないですか? そこで、“今度ライブがあるんで来てください”って言われて観に行ったら、音感もすごくいいし、いい声だなと思って。インターナショナルスクールに通ってて外国の音楽もめちゃめちゃ知ってるし、一般的な日本人が通るであろう音楽観じゃないこういう感覚を持ってる人はなかなかいないなと思って、試しに“今ちょうど新しいアルバムを作ってるから歌ってみない?”ってスタジオに来てもらって。ただ、Maika Loubtéとかermhoiとか優河ちゃんは、ライブも観てたし声も曲に合うから絶対に歌ってもらおうと思ってましたけど、彼女は突然現れたし、『けもののなまえ feat.HANA』は自分で決着する系列の曲だったから、最初は歌ってもらおうとはあんまり思ってなかったんですよ。でも、ポーンとすっとんきょうに歌う、あの世から歌ってる感じの歌い方が、何だか面白いなと。あと、逆に今しかこうは歌えないかもなとも思ったんで。結果、『けもののなまえ feat.HANA』がここまでいい作品になるとは僕も思ってなかったです」
 
――幸福な出会いですね。そもそも三船くんの声が何者か分からない神秘的な感じがするから、そこにまた違う声の要素が入ってくるのも面白いよね。
 
「参加してくれた4人の声が自分の声と混ざって、どっちがどっちか分かんない感じになって、ジェンダーレスになったら楽しいなと思ったんですよね。日本でもやっとLGBTQがどうとか言われるようになったけど、台湾が先に同性婚率でアジアNo.1になって。日本はかつてアジアで先頭を切ってた時代があったわけじゃないですか。今は経済的にも落ちちゃったけど、そういう価値観ではトップになれる可能性が唯一あったのに、台湾に先を越された。僕ら以降の世代は別に車も欲しくないし、高級な家に住みたいわけじゃなくて、むしろ、お金じゃ幸せになれないから、生きてる実感とか存在理由を大事にする。そういう新しい価値観を信じてアップデートしていくことはすごく可能性があることなのに、いまだに夫婦別姓でもめてる日本、みたいな(苦笑)。でも、音楽ならそれを超えられると思ったし、だったら先に超えちゃった世界を見せて、男性のためとか女性のためとか、ゲイのためとかレズビアンのため、トランスジェンダーのため、じゃなくて、もう当たり前にそこにいる音楽を作った方が一番今っぽいなって」
 
――最近の三船くんのインタビューにそういう社会的な話が増えていくのも納得だね。今を歌えば、それがやっぱり音楽とも関係してくるもんね。
 
「そういうちょっとシリアスにならざるを得ないことが、この1年は身の周りでたくさんあったなと思って。でも、単純に音楽を聴いて楽しい気持ちになりたいのに、音楽に社会的な意味を持たせ過ぎて、新聞みたいなことばかりが曲の中で起きてるとちょっと凹むじゃないですか。だから、そこをモチーフにファンタジーを作るじゃないけど」
 
――確かに、無視しても違うし、その話に終始しても違う。やっぱりバランスというかさじ加減のセンスよね。あと、今作の制作においては、さっき名前が挙がった林口さんの役割も大きく感じましたけど。
 
「僕らのレーベルの先輩の高木正勝さんのマネージメントもされてた富山県在住の方で、ライブ後に話して意気投合しちゃって。彼女は富山ですごく有名な、とんでもなく大きいお寺(=勝興寺、1471年建立)でフェスをやってるんですけど、富山を中心としたコミュニティでお祭りの場を作り上げる、みたいな感じで、僕らと立ち位置がすごく似ていて。偶然の出会いだったんですけど、『HEX』が連れてきてくれたんですよね、あの人を。相談できる人がメンバー以外で初めてできたかもしれない」
 
――そこが三船くんの不思議でもあって、全部自分でやればいいじゃなくて、人とやることにロマンを感じてる。
 
「うんうん。人はそんなに好きじゃないけど(笑)、ちょっと信じてみたいし、それが面白いんですよね」
 
 
形に残していくことには誠実でありたい
 
 
――ロットはリリース前にサブスクとかYouTubeで全曲解禁したり、フィジカルにはハイレゾのダウンロードコードが付いてたり、セールスのための出し惜しみをせず、チャンネルをみんなに開いて、どこから摂取するのかは委ねてるのが潔いなと。それは作品に対する自信とリスナーへの信頼とも言えるかもしれないけど。
 


「みんなが聴く環境ってそれぞれ違うじゃないですか。食べ物の好みも違えば聴き方も違うから、みんなのペースに合わせられるように全部出しておくのはいいなと思って。再生してもらうことも、音源自体を買ってくれることも、どっちにしろ聴いてもらえることがバンドにとって支えになるから。まぁでもモノで残せるのは楽しいですよね」
 
――お金も手間も余計にかかるのに、人間が形に残そうとする衝動って何なんだろうね。
 
「ね。自分じゃないものに託す感じというか。たまにテレビとかのドキュメンタリーでフィルム映像を観るけど、あれって100何年残った歴史があって。ハードディスクはまだ100年経ってないから分からないし、アプリも流行りって言ったら流行りかもしれない。昨日は聴けてたのに一瞬でサービス終了とかもあるし。だからこそ、こだわりのあるジャケットと紙触りとか、ブックレットとか、そういうふうに形に残していくことには誠実でありたいなぁと思って。それと世界中を回ってライブをやりたいだけなんです、二大欲求は(笑)」
 
――でも、その二大欲求が満たされたら最高の音楽人生だな。
 
「そしたらもっと調子に乗っていい曲ができるかもしれない(笑)。あと、違法サイトで聴くなら僕らのオフィシャルYouTubeで聴いてよ、という」
 
――小さな市場を囲い込むんじゃなくて、むしろ解放することで取りに行く。
 
「人の聴き方まで制限するのはイヤだなと思って。音楽を聴いてるときは自由になれるし、海の向こうの音楽を聴いて楽しいとか思うことには純粋な可能性がある。人間の侵されてはいけない領域がそこにはあるじゃないですか。だから、聴かれ方/聴き方、伝え方/伝わり方は気になっちゃう。ルールとかもいちいち“何で?”って気になる(笑)」
 
――“何で?”=子供心というか、ピュアネスで素朴な知的欲求でもある。今作のタイトルにも反映されてるけど、子供とかピュアなものとか、“けもの”というキーワードにはそういう想いも込められていると。
 
「自分のやりたいことに素直であることに純度が高くなると、自分の中にある子供心みたいなところと向き合うことになるというか、初めてコーラを飲んだときの“ヤバい!”みたいな感覚に近いというか(笑)。いまだにそうだと思うんですけど、音楽を聴いて“あ、何かいい!”っていうのって、それに近くないですか?」
 
――それで言うとロットの音楽は、これだけ世に音楽が出尽くした後に、“あ、何かいい!”って思えた音楽かも。その衝撃とか“発見した”みたいな感覚は、ロットの音楽がもたらしてくれるファーストインパクトと一緒だね。
 
「人間、同じことを繰り返し始めたら破滅が始まるというか、進化できない動物はだいたい滅ぶじゃないですか。螺旋のように同じところを周回しないで、自分の音楽が作れたらいいなって。だから、新しいことには積極的だし、発見がすごく好きだから。でも、それはみんなのもっと深くにも最初からあって、“歩けた!”みたいなさ」
 
――逆上がりが初めてできたときの“何だこの景色!”とか、自転車に乗れたときの“何だこの浮遊感”みたいな。
 
「“うぉ〜補助輪なしヤバい!”みたいな感じ(笑)。慣れって怖いなとも思うし、実際はまだ見たことがないものの方が世の中には多いじゃないですか。そういうものにたくさんタッチできる感覚…言葉とか理屈より、そっちでつながっちゃった方が世界を簡単に飛び越えられるし。音楽のいいところは、人間の根源的なところで太鼓がドンドン鳴って、歌があって、“いいな”と感じるみたいな、コミュニケーションの最初の形だから、そこに回帰するのは自分にとって自然なことだったんですよね」
 
――ロットの音楽が元来持っているスケール感というか生命力…今作は本当に“けもの”だね。
 
「“けもの”がこんなにいろんな意味を集約する言葉になるとは、正直思わなかったですね。だからみんなも、野生の勘で聴いてほしいです(笑)」
 
 
元々鳴るべき場所で鳴らすだけな気がしてる
 
 
――今作には、『裏HEX』(=『HEX』リリース時のクラウドファンディングのリターンアイテム)の楽曲も何曲か入ってるみたいな話があったけど。
 
「結果4曲ぐら入ったんじゃないかな? 『MΣ』(M-5)と『焔』(M-6)、あとは『HERO』(M-7)、『Skiffle Song』(M-2)も一応入ってたかな? 歌は全部録り直しました」
 
――『Skiffle Song』なんかはそれこそ7~8年前の曲らしいけど、聴いたら全然今の曲で。
 


「そう、今っぽいと思って逆に復活したというか。『HEX』を作ってるときは昔の自分を見るのがイヤで。“今までもそれをずっとやってきたじゃん”と思って、自分に飽きちゃった。そこにさっき言ったみたいな“発見”ができなかったんですよね。だからわざとコンピューター上で編集して、人間味を消すみたいな哲学だったんですけど、それを乗り越えたら目線がまたすごく変わって、同じことやっても違うふうに自分の中で捉えることができて」
 
――まさにそうだと思う。この作品の持つ空気感としては『ロットバルトバロンの氷河期』の後に出てもおかしくないアルバムだけど、結局、『ATOM』('15)と『HEX』を経由したからこそこうなったという。それこそ、『HERO』とかは“キター! これがロットだ!!”みたいな感覚(笑)。ロットの異質な部分がちゃんと出てるなと思うし。
 
「そうなんですよね。『HERO』みたいな曲はできてたんだけど、それに全然ときめけない3年間だった(笑)。最近、『HERO』をやるとお客さんが泣いちゃうんですよ。この曲は空白が多いでしょ? だから、みんなのすすり泣く声が聴こえるようになりました。すごく嬉しいですね」
 
――そして、『ウォーデンクリフのささやき feat.優河』(M-9)は、今作のリリースツアーファイナルの会場でもある、東京・めぐろパーシモン 大ホールをイメージして書いた曲だそうで。ライブ当日にそれを思って新曲を初披露することはあっても、それがもうパッケージされた状態でツアーに出ることって、案外ない気がします。
 
「“何か足りないな、このアルバム。何だろう? あ、これだ!”と思って。本当にパッと作れました」
 
――それも5分くらいで出来上がったと。もしかしてパーシモンホールが、三船くんとまっちゃん(=中原・ds)が初めて人前で演奏した場所になるのかな?
 
「人前で歌ったのはそこが初めてですね。当日はすごく感動するんじゃないかと思ってるんですけど、ロットの音楽は小さいライブハウスじゃなくて、デッカいステージで鳴らすことを想定してデザインされた曲が多いし、元々鳴るべき場所で鳴らすだけな気がしてるから。ようやく羽根が伸ばせる、大きいお風呂で嬉しい、みたいな(笑)。本来の姿が観せられる気がするんですよね、本当に」
 
――それにしてもまぁ、ロットは毎回すごいアルバムを作るよね。
 
「嬉しいな。でもね、2010年代も終わったし、未来が明るいのか暗いのかちょっと分からないけど、“お先真っ暗です”ってHANAたちみたいな世代に言いたくないし、大人にも言いたくない。一応、生きてるうちは音楽を作りたいなと思うしね。少なくとも僕らのライブを観に来るみんなは“生きててよかったな”とか、“ちょっと生きる気力ができたな”とか思ってもらえたらすごく嬉しい。ある北海道の人とかは、“吹雪の中を夜、ヘッドライトを点けて爆走しながらロットを聴くといいんだよね”って(笑)」
 
――すごい、極地でも響く音楽(笑)。
 
「そうやって、“こういう音楽が日本にもあるんだ”って楽しんでもらえたらいいし、それでちょっとでも日本の音楽の世界が変わったら。レッチリとこのアルバムが普通に並んだら面白いじゃないですか?(笑) 人間としての根源的な喜びから音楽を作れば、どの国でもどんな年齢でも楽しめるはずだっていう気持ちがあって、言ったら“自転車に乗って楽しかった”と同じだから。大人になるといろんな理由を付けてカッコつけ始めるけど、“そうじゃないんだ”って素直になったときに楽しんでもらえるように作ったアルバムだし、そこを含めて“けもの”っていうタイトルに含まれてるのかなって今、話しててちょっと思った。だから、自分の人生を大事にしてる人にはきっと響くはずです」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
 




(2020年1月28日更新)


Check

Movie

新譜とライブとファイナルへの想い
三船雅也(vo&g)からの動画コメント

Release

4人の女性voを迎えた美しき叙事詩
1年ぶり充実の4thアルバム!

Album
『けものたちの名前』
発売中 2500円(税別)
felicity
PECF-1163

<収録曲>
01. けもののなまえ feat.HANA
02. Skiffle Song
03. 屋上と花束
04. TAICO SONG
05. MΣ
06. 焔
07. HERO
08. 春の嵐
09. ウォーデンクリフのささやき feat.優河
10. iki

Profile

ロット・バルト・バロン…写真左より、三船雅也(vo&g)、中原鉄也(ds)。東京を拠点に活動する2人組フォークロックバンド。『ROTH BART BARON』(‘10)、『化け物山と合唱団』(‘12)という2作のEPを経て、’14 年にはアメリカ・フィラデルフィアにて制作した1stアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』を、’15年にはカナダ・モントリオールで現地ミュージシャンとセッションを重ねレコーディングした2ndアルバム『ATOM』をリリース。『SUMMER SONIC』『FUJI ROCK FESTIVAL』など大型フェスにも出演し、’17年には『RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO』にて、地元ミュージシャンとともに11人編成で圧巻のパフォーマンスを披露。同年、イギリス・ロンドンの現地プロダクションからのオファーをきっかけに制作したEP盤『dying for』をリリース。’18年には3年ぶりとなる3rdアルバム『HEX』をリリースし、バンドとリスナーがつながる新しいコミュニティ“P A L A C E ”を立ち上げるなど精力的に活動。’19年11月20日には4thアルバム『けものたちの名前』をリリース、多くの音楽メディアにて賞賛を得る。活動は日本国内のみならずアメリカ、アジアにも及ぶ一方、国の重要文化財である山形・文翔館での公演も成功させるなど、独創的な活動内容とフォークロックをルーツにした音楽性で、世代を超えた多くの音楽ファンを魅了している。

ROTH BART BARON オフィシャルサイト
http://rothbartbaron.com/

Live

2月よりリリースツアーが再開!
関西は大阪&京都でワンマンライブ

 
『ROTH BART BARON Tour 2019-2020
「けものたちの名前」』

【東京公演】
▼11月27日(水)WWW X
【宮城公演】
▼11月29日(金)仙台 darwin
【台湾公演】
『東京夜曲』
▼12月21日(土)台北 The Wall


【富山公演】
『雑SQUARE』
▼2月1日(土)飛鳥山善興寺 本堂
[共演]Robin's egg blue/
河上朋弘 A.K.A. DJK/HANA
【石川公演】
『Magical Colors Night』
▼2月2日(日)金沢アートグミ
[共演]noid/HANA
【福岡公演】
▼2月7日(金)The Voodoo Lounge
[オープニングアクト]hoppe
【鹿児島公演】
▼2月8日(土)鹿児島SRホール
[共演]GLARE SOUND PROJECTION
【熊本公演】
『ROTH BART BARON × KO NAKASHIMA
 -2MAN LIVE in KUMAMOTO-』
▼2月9日(日)NAVARO
[共演]KO NAKASHIMA
【山口公演】
『kono hoshi no uta』-単独尺-
▼2月10日(月)岩国Rock Country
[オープニングアクト]なみやん/百々明宏
 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード164-819
▼2月11日(火・祝)18:00
Shangri-La
一般/スタンディング3500円
学生/スタンディング2500円
(中学生以上の学生)
SMASH WEST■06(6535)5569
※小学生以下は保護者同伴に限り
 2名まで無料。学生チケットでの
 入場は要学生証提示。

チケット情報はこちら


【愛知公演】
~LIVERARY presents~
▼2月22日(土)愛知芸術文化センター
中リハーサル室
[共演]Maika Loubté
【広島公演】
『T-STUDIO Hello Hello vol.1』-単独尺-
▼2月23日(日)福山・Cable
[共演]Oz/屑星/DJ soejima
【北海道公演】
▼2月28日(金)mole
【山形公演】
『肘折国際音楽祭 2020』
▼3月7日(土)肘折温泉 肘折いでゆ館
ゆきんこホール
[出演]Dr A.SEVEN/KUDANZ/
サンドロ・ペリ/寺尾紗穂/Phew/
betcover!!/ROTH BART BARON
【青森公演】
▼3月8日(日)パワーステーションA7
[共演]SAD ORCHESTRA(ケンゴマツモト)/三浦隆一(空想委員会)/KZN UNITED
【静岡公演】
『MINDJIVE』
▼3月14日(土)舘山寺
[共演]優河
 

Pick Up!!

【京都公演】

チケット発売中 Pコード164-819
▼3月22日(日)18:00
磔磔
一般/スタンディング3500円
学生/スタンディング2500円
(中学生以上の学生)
[オープニングアクト]松尾湧佑
SMASH WEST■06(6535)5569
※小学生以下は保護者同伴に限り
 2名まで無料。学生チケットでの
 入場は要学生証提示。

チケット情報はこちら


【東京公演】
『ROTH BART BARON Tour
〜けものたちの名前〜
 Final at めぐろパーシモン大ホール 』
一般発売2月1日(土)
Pコード176-749
▼5月30日(土)17:30
めぐろパーシモン 大ホール
S席5500円 A席4500円
B席3500円 学生席1500円(要学生証)
[共演]西池達也(key,b)/岡田拓郎(g)/
竹内悠馬(tp,key,perc)/
須賀裕之(tp,key,perc)/
大田垣正信(tb,key,perc)/工藤明(ds,perc)/
ermhoi(vo,key)/HANA(vo)/優河(vo)/
徳澤青弦 弦楽カルテット[梶谷裕子(vl)/
吉田篤貴(vl)/須原杏(va)/徳澤青弦(vc)]
ディスクガレージ■050(5533)0888
※未就学児童は保護者膝上に限り無料。

~1/30(木)11:00まで先行予約受付中!
チケット情報はこちら


Column1

「このアルバムに出会ってくれる
 “誰か”を喜ばせたい」
これがROTH BART BARONの
新たなシグネチャー・サウンド!
渾身の『HEX』に至るまでの
3年間の闘争の記憶を巡る('19)

Column2

「こういうバンドが日本に1組
 いてもいいじゃないかって」
音楽への執念も表現者のプライドも
インディペンデントなスピリットも
時代の空気と共に刻んだ
異端の新作『ATOM』を語る('16)

Column3

雪解けは、近い――
ROTH BART BARON全国侵攻中!
話題の2人組がシーンに提示する
美しきレベル・ミュージック
『ロットバルトバロンの氷河期』と
バンドのストーリーを紐解く('14)

Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんの
オススメコメントはコチラ!

「前作『HEX』は、“ようやく分かったかこの野郎!”じゃないですけど(笑)、ロットの存在にみんなが気付き始めてくれたぞ、という喜びがあった作品で。そこから僅か1年で届いた『けものたちの名前』は、トレンドに左右されないロット本筋の魅力である、得体の知れなさとスケールがちゃんとあって、“この感じに俺は惹かれたんだな”と改めて思いましたね。そして、相変わらず音楽のみならず人間的にも魅力的で、三船くんと話してるとイーブンに意見を交わし合う刺激と発見がいつもあって。今回はそんな取材の模様が、ロットのYouTube番組『BIZARRE TV』#97~#100にて4回にわたって観られるようになってます(記念すべき100回目!)。取材直前にこの抱き合わせ企画を知らされたので(笑)、あまり画面を意識せず=サービスもできませんでしたが、逆に普段のインタビューに近い形で撮影されてるとも言えるので、“テキストだとこんなふうに再構成するのか…!”という違いもお楽しみいただけるかもしれません。再生回数増にぜひご協力ください(笑)。そんなこんなで機が熟しつつあるロット。ライブもかなり強化されてるので、音源以上のあの衝撃と感動をもらいに足を運んでください~!」