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「音楽はやっぱりラブソングだと思っているので」
斉藤和義、太田裕美、Charら豪華ゲスト陣も参加!
熟成と挑戦のデビュー45周年に捧ぐ『Dear My Generation』
南佳孝インタビュー&動画コメント

 松本隆のプロデュースによる名作『摩天楼のヒロイン』で’73年にデビュー。『モンロー・ウォーク』(‘79)『スローなブギにしてくれ(I Want You)』(‘81)といったヒット曲を数多く世に送り出し、今年でデビュー45周年を迎えた南佳孝。オリジナルフルアルバムとしては7年ぶりとなった最新作『Dear My Generation』は、ロック、AOR、ジャズ、ブラジル音楽などを消化しながら上質なシティポップを奏でてきた南ならではのカラフルな仕上がりに。斉藤和義、太田裕美、Charといった豪華ゲスト陣に、4曲を書き下ろした作詞家・来生えつことの20数年ぶりのコラボなど、多彩なソングライティングの才を改めて発揮した新作と、そのリリースに続くツアーについて語ってもらった。

 
 
何かひと巡りしちゃった感じはあるかもしれないですね
 
 
――新作『Dear My Generation』は、ボサノバやジャズ色が強かった近年の作品と比べると、全く違うモードで作られたようなカラフルさで、70年代に出されていた初期のアルバムに通じるような雰囲気もありました。
 
「何かひと巡りしちゃった感じはあるかもしれないですね。やっぱり、一番最初に好きになったビートルズだとかローリング・ストーンズといった、原点になったロックも面白いなと思うようになったし。基本的にはストックしていた曲がたくさんあったのでそれを使ったんですけど、自分1人でやっているとマンネリ化するので、ある程度の距離感を持った音楽業界以外の2人の友達をプロデューサーに迎えたんです。とりあえず全部がキッチリできているわけではなくて、“こんなニュアンス”みたいな段階の仮のモノも含めて、去年の5月に50曲くらい聴いてもらって、そこから曲を絞っていった感じですね。オリジナル曲でのアルバムは、ある部分で“アレもやりたい、コレもやりたい”というノリが大事だったりするんだけど、アイデアがどんどん広がったときに手綱を締めて、どういった作品になるかをイメージできる存在が必要で、そういう役割を2人にお願いしました。あと、もう1つ大きかったのが、小原礼(b)と屋敷豪太(ds)のユニット、The Renaissanceの存在で(※今作では3曲で編曲も担当)。彼らが使っているいい機材が揃った京都のスタジオで録音できたのは、今回の大収穫でした」
 
――The Renaissanceが参加した3曲はとりわけロック色が強い仕上がりで、うち2曲では南さんの代表曲をカバーもしている斉藤和義さんがゲスト参加しているのにも驚かされました。そんなロックな曲もあれば、より深みを増したダンディなAOR路線や、アコースティック・スウィング調にブルース、シティポップなど…結果的にこれまでに取り組まれてきた様々なエッセンスが1枚に集約されたようなアルバムに仕上がっています。
 
「曲を書くことが習慣になっていて、常に“次のアルバムに使えるかな?”と思いながら曲を貯めているわけですよ。そこからセレクションをして、流行廃りや時代にも敏感に考えるけれど、やっぱり動かない綺麗なメロディや、自分なりに“こっちじゃない”とか“もっとよくなるよな”とか自己判断する部分があって。松尾芭蕉が言った“不易流行”っていう言葉じゃないけど、今一番ヒットしていて新鮮なモノを取り入れつつ、動かない部分もある。それは昔々デビューしたての頃に松本隆とも話していたから、あまり変わっていないのかもしれない(笑)」
 
――今回のアルバムを作る上で南さんが意識されていた、今の時代らしいモードというのは何だったんでしょうか?
 
「“言葉”です。それはこの2~3年前から感じていたことで、綺麗なメロディやリズム云々よりも、今の時代は言葉に一番力があると思いますね。かと言ってプロテストソングみたいなものでもなくて。今の時代にそういうことを歌われてもウザいと思われるだけだろうし」
 
――そういう意味では、9曲目の『ブンブン-Not Too Late』にはメッセージ性を感じさせるところがありました。
 
「実は、政治色が強くて今回のアルバムには入れなかった曲が他にもあったんだけど、なかなか難しいですよね。そういうところで、斉藤和義の“ずっとウソだったんだぜ”というのはすごくいいアプローチで(※『ずっと好きだった』(‘10)を、’11年の東日本大震災を受け斉藤が替え歌でセルフカバー)。あんな形で歌われると納得してしまうよね。彼がアルバムに参加してくれたのは励みになったし、勢いも付きましたね」
 
 
もっと先へ進んでいくためにライブごとにいろいろと試していければ
 
 
――ただ、結果的に今回のアルバムに収録されたのは、どの曲もラブソングになっています。同じくオリジナル曲が中心だった『ROMANTICO』(‘04)と比べても、今回はよりストレートなラブソングが多いようにも思いました。『恋するAngelina』(M-8)などは、かなり初々しい恋愛模様が歌われていたりして。
 
「『ROMANTICO』のときもそうでしたけど、音楽はやっぱりラブソングだと思っているので。『恋するAngelina』は特に大変で、オレも“こんな曲ができちゃった”とビックリしたんですよ(笑)。基本的にはポップな曲だし、こういうワクワクするような歌詞も大事かなと思って何度も書き直して。ホントに苦労しましたね、面白かったけど」
 
――歌詞に関しては、最近の日本人ミュージシャンで刺激になる存在などはいました?
 
「僕はあまり日本の音楽を聴かないから知らないんだけど、最近の短歌は面白いですよ。穂村弘とか、“これって短歌なの?”という感じなんですけど、すごく好きでよく読んでいます。それが歌詞に反映されているかは分からないけれど、そういう人たちの言葉選びの感覚は面白いなと思っています」
 
――太田裕美さんが参加した『トキメイテ』(M-5)も、最近の南さんにはなかった曲調だと思いました。
 
「歌謡曲を書こうと思ったんですよ。FM COCOLOで毎週やらせてもらっている番組『NIGHT AND DAY』(水曜21:00~)の、他人の曲をカバーする“レディオソロイズム”のコーナーで、歌謡曲を取り上げるうちに自分の中でブームになっちゃって。ずっとそこを避けながら今まではやってきたんだけど、昭和の歌謡曲ってやっぱりプロの作家が書いたものだから歌詞もメロディも確信犯というか、ヒットさせるためにあえて下世話にしているんですよ。要するに、オレみたいに気取って都会がどうとかじゃなくて(笑)、どんな人にも受け入れられるようにちゃんと計算されている。今になってそんなことに気付いたら、この曲のメロディが出てきて。彼女に歌ってもらえてよかったです」
 
――これまでのキャリアの集大成的とも言えるそんな新作のリリースを経て、11月15日(木)には太田裕美さんもゲストに迎えたライブがビルボードライブ大阪で行われます。
 
「10月にビルボードライブ東京でやったときは、新しいアルバムの曲と今までの曲を半々くらいで取り上げて、おおむね好評でした。次のビルボードライブ大阪と名古屋ブルーノートはそれと同じメンバーでやって、12月のライブは(関西では12月15日(土)和歌山・SHELTER公演)また違う編成でやろうと思っています。気心の知れたメンバーで続けていく方が歌に集中できるし楽しいんだけど、若いミュージシャンとやることは刺激になるし、もっと先へ進んでいくためにライブごとにいろいろと試していければなと」
 
 
Text by 吉本秀純
 




ライター吉本秀純さんのオススメ!
 
「近年のボサノバ~ジャズ路線による深みを増したアルバムもよかったですが、久々のオリジナルフルアルバム『Dear My Generation』は、“こんな南佳孝を待っていた!”という新旧のファンも多いだろう痛快な仕上がり。斉藤和義や来生えつこが作詞を手がけた楽曲も聴きどころですが、それらと並行して南さん自身が作詞も手がけたナンバーにおいて、シンガーソングライター的な個性が際立っている点もまた大きなポイント。多彩なアプローチのサウンドでこれまでのキャリアを1枚に凝縮しつつ、今ならではの南さんのメロディと言葉、歌声が堪能できる会心作となっています」

(2018年11月 8日更新)


Check

Movie Comment

新譜にライブ、ラジオまで
南佳孝からの貴重な動画コメント!

Release

南佳孝の魅力を再発見する充実作!
7年ぶりのオリジナルアルバム

Album
『Dear My Generation』
発売中 3000円(税別)
CAPITAL VILLAGE
CVOV-10049

<収録曲>
01. Mystery Train feat.斉藤和義
02. 柔らかな雨
03. 泣かない
04. Jazzy Night
05. トキメイテ feat.太田裕美
06. 熱い風
07. はないちもんめ feat.斉藤和義&Char
08. 恋するAngelina
09. ブンブン-Not Too Late
10. 寒い日に
11. 心の地図
12. ニュアンス

Profile

みなみ・よしたか…’73年に松本隆プロデュースのアルバム『摩天楼のヒロイン』でデビュー。その後はジャズやラテンなどの要素も洒脱に取り入れたAOR~シティポップ的な好作品を次々と発表しながら、『モンロー・ウォーク』(‘79)『スローなブギにしてくれ(I Want You)』(‘81)などをヒットさせ、その人気と評価を不動のものとした。’03年にはCMソングに起用された『遥かなディスタンス』がロングセラーとなり、近年はブラジル録音によるボサノバ色の強い作品や、FM COCOLOにてパーソナリティを務める番組『NIGHT AND DAY』のコーナーから生まれたカバーアルバムなども発表。9月26日にはオリジナルフルアルバムとしては7年ぶりとなる『Dear My Generation』をリリースした。

南佳孝 オフィシャルサイト
http://www.minamiyoshitaka.com/

Live

ソロにバンドにデュオにと様々な形態
で名盤携えリリースツアーを開催中!

 
『南佳孝 45th Anniversary Live
~Dear My Generation~』

【東京公演】
▼10月9日(火)・10日(水)
ビルボードライブ東京
【福島公演】
▼10月28日(日)Live House THE QUEEN
▼10月29日(月)THE LAST WALTZ

【愛知公演】
▼11月14日(水)名古屋ブルーノート

Pick Up!!

【大阪公演】

Thank you, Sold Out!!
▼11月15日(木)18:30/21:30
ビルボードライブ大阪
自由席8500円
[メンバー]松本圭司(p)/バカボン鈴木(b)/鶴谷智生(ds)/住友紀人(Sax)
[ゲスト]太田裕美
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※未就学児童及び高校生同士の入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。

【宮城公演】
▼11月30日(金)石巻N's–SQUARE
▼12月1日(土)仙台びすたーり
【和歌山公演】
▼12月15日(土)和歌山・SHELTER

【福岡公演】
チケット発売中 Pコード129-930
▼12月18日(火)19:30
Gate's7
前売5500円
[メンバー]竹田元(p)
Gate's7■092(283)0577

チケット情報はこちら

 
【大分公演】
▼12月19日(水)BRICK BLOCK
【東京公演】
▼12月30日(日)
eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
 

Pick Up!!

【神戸公演】

『南佳孝バレンタイン
 ディナー&ライブ2019』
チケット発売中 Pコード130-640
▼2019年2月2日(土)16:30/19:30
神戸ポートピアホテル レインボーの間
S席(ディナー付)12000円(当日指定)
A席(ライブのみ)7500円(当日指定)
神戸ポートピアホテル イベント係■078(302)1117
(1部)受付16:00、開場・ディナー16:30~、ライブ17:30~。(2部)受付19:00、開場・ディナー19:30~、ライブ20:30~。未就学児童は入場不可。

チケット情報はこちら


Column

往年のヒット曲や洋楽スタンダード
&ボサノバカバーを新録音!
デビュー40周年を飾るアルバム
『スケッチブック』を語る('13)