日本のアーバンポップスの第一人者・南佳孝が
『モンロー・ウォーク』『スローなブギにしてくれ』など
往年のヒット曲や洋楽スタンダード&ボサノバカバーを新録音!
デビュー40周年を飾るアルバム『スケッチブック』インタビュー
70年代からジャズやラテンなどの要素も独自に消化した日本のAOR~アーバンポップの先駆といえる名曲を数多く残し、今年でデビュー40周年を迎えた南佳孝。ブラジル録音による最新作『スケッチブック』では、現地の実力派ピアノトリオをバックに起用し、ボサノバや洋楽の名曲カバーから自身の代表曲のセルフリメイクやオリジナル曲まで、心地良くもより深い南流のジャジー・ボッサを聴かせている。9月19日(木)にビルボードライブ大阪での公演を控える彼に話を聞いた。
――ブラジル録音は今回で3作目になりますけど、これまでとはまた違ったタッチの作品になりましたね。
「そうなんですよ。今回はブラジルのピアノトリオとの録音で、『スケッチブック』というタイトルが示す通りに、あまり色を塗りたくったりしないでサッサッサッと描いたような作り方をしましたね」
――ある意味でセッション的というか、事前にあまり決め込んだりせずに。
「何にも知らされていなかったんですよ、僕は」
――何も知らされていなかった?(笑)
「そう。もちろん曲は自分で選んだんだけど、スタジオに入ったらちゃんと譜面があって“オレ、ギターも弾くの?”って(笑)。細かい話だけど、ブラジルとアメリカと日本ではそれぞれにコードの書き方も違うんです。それをコレってどうだったかな?と思いながら初日から10曲やったりして大変だったけど、楽しかったな。いつも思うんだけど、日本にいるより全然面白いんですよ。メシも酒もうまいし、レコーディングに行ったのが3月で向こうは初秋か晩夏かといった時期だったから、空気感もちょうど良かったですね」
――フェルナンド・メルリーノのピアノトリオを起用したのは、どういう経緯からだったんですか?
「前回の’10年にブラジルに行ったときに、いつもはレコーディングだけなのでたくさんライブも観たいということで、いろんな場所に行ったんですよ。その中でフェルナンドのトリオを観て気に入って。今回は彼らに頼んで大正解でしたね。日本ではあまり知られていないかもしれないけど、ブラジル音楽に詳しい人に聞くとすごく有名な奴らだよと言ってました」
――南さんは70年代の作品からボサノバ/サンバ的な要素を取り入れられていましたが、やはりとりわけ相性がいいところがあるんでしょうか?
「と言うかね、僕はジャズもラテンもボサノバもポップスも好きなんだけど、一度足を踏み入れた音楽は最後までちゃんとやりたいというか。自分のスタイルのボサノバをどこまで出来るか。やっぱり、ボサノバはブラジルの人がやったものが一番サマになるんだけど、(本場の人たちに)“いいじゃん!”と言わせることは出来るというか。それはNYのジャズでもハバナのラテンでも同じなんだけど、自分のスタイルで最後まで突き詰めたい」
――なるほど。そういう意味では、今回のアルバムでもう一歩踏み込めた点とは?
「CDの中の曲解説にも少し書きましたけど“16分食い”(※16分音符分、前につんのめるようにシンコペーションでリズムを取ること)ですね。ジャズは逆にダウンビートで少しねばるんだけど、ブラジル音楽はハイハットなどがカッカッカッカッとリズムを食っていて。その細かい違いがあのスピード感を生むんですよ」
――楽曲面では、ボサノバの有名曲に10CC、ドン・マクリーン『ヴィンセント』といったカバー曲も聴きどころですが、南さんの代表曲『スローなブギにしてくれ』『モンロー・ウォーク』の、フェルナンドならではと言える独自解釈のアレンジもまた印象的でした。
「僕もこれには結構グッときましたね。キューバのジャズピアニストのライブを聴きに行ったときにブルーノートスケールをあまり使わなくて不思議だなと思っていたんだけど、フェルナンドも同じで。『スローなブギにしてくれ』はいくらでもブルーノートスケールを使えばサマになっちゃう曲なんだけど、彼もそれは使わないのにリリカルでね。きっと彼の中に何かルールがあるんだろうけど」
――単にジャジーにしているとかとは違う感覚というか。
「うん。ボサノバもちゃんと入っているしね。ボサノバもキューバ音楽も、インフルエンスド・ジャズな音楽なんだけど、やっぱり彼らなりの解釈による音楽になっているところが面白いですね」
――9月19日(木)には、ビルボードライブ大阪で今回のリリースとデビュー40周年を兼ねたライブが行われます。
「今回のライブは佐山雅弘(p)、バカボン鈴木(b)、鶴谷智生(ds)、もう半世紀以上の付き合いになる土屋潔(g)に、佐野聡(tb&fl)と。この最高にシュアなメンバーで、楽しいライブになると思います。内容的には“夏の南が帰ってくる。ボサノバを引っ提げて”という感じで。モヒートでも飲みながら楽しんで欲しいですね」
Text by 吉本秀純

(2013年9月14日更新)
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