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パズルのラストピースは聴く人の手に……。
Ryu Matsuyamaインタビュー&動画コメント

大阪の人気イベント『not forget pleasure』が、6月5日(火)ライブハウス・CLAPPERで第8回目を迎える。CLAPPERと関西のイベンター・夢番地によりえりすぐられたアーティストのみがステージに立つことができる同イベントだが、昨年5月の第5回以来、2度目の出演を果たすのが、ピアノ3ピースバンド・Ryu Matsuyamaだ。しかも彼らは5月16日リリースのアルバム『Between Night and Day』でメジャーに進出したばかり。そこで、バンドのフロントマン・Ryuにインタビュー! まさに今、飛ぶ鳥を落とす彼らの“変わらないもの、変わったもの”とは?

――メジャーデビューおめでとうございます。環境、心境、変化はありますか?
 
「忙しくなりましたね(笑)。心境は、音楽でもっと楽しみたいなって思うようになりましたね」
 
――そのアルバム『Between Night and Day』が5月16日にリリース。今作は以前に比べ、パーソナルな部分が描いてあるのかなと感じました。
 
「前作の時から言ってたんですけど、次は感情論を書きたいなって……。もともと個人的な感情をオブラートで隠していたんですけど、“ストレートに自分の心というのを出して!”って、言われていたんですよね。そうしないと書いている人の人物像が見えないから、共感しづらいと。ただ、今までは(個人像が薄いことで)美化され、それを風景の音楽としてとらえてもらってたというのが、Ryu Matsuyamaのいいところでもあったんですけどね。なので今回は、それにプラス自分の人間像っていうのが出たら共感性が生まれるかもっていうので、試しに自分の感情を詞にしてみようって。もう、一方通行なんですけどね。“○○です!”って感情を書いてみようかなと思ったんです」

ryu1.jpg
 
――その作業は楽しかったですか? 辛かったですか??
 
「時系列はバラバラですけど、日本に来てから僕が思っていたことを思い出して過去を綴っているので、辛さはあまりなかったですね。単純に思い出して書くっていう……。今感じているものを書くのができないんですよ。一回フィルターを通して“○○だったよな”っていう風にしかできないんです。でも、いつ聴いても伝わるメッセージを書いているつもりです。自分が“○○でありたい”っていう風な書き方をしましたね」
 
――さらに今作は曲自体もアルバム一枚としても抑揚がありますよね。
 
「感情のなかにも起承転結ってあると思うんですよ。そこらへんをできるだけ曲に、そしてアルバムを通して出してみたいというか……。曲を並べてみて、感情論でも音楽論でも、メンバー3人で“こうじゃない、ああじゃない”ってやりましたね。でも、最終的には理論じゃなく感覚というか、音が鳴ってるのを感じて“うん、これだな!”とかっていう感じです」
 
――メンバー3人は、それぞれ異なる個性だから大変そう(笑)。
 
「そうなんですよ。だからそこで理論性だけを求めちゃうと、言語が違うのと一緒でまったく通じ合わないんですよね(笑)。なので、“これどう?”って、まず僕の感情を何個か提案していって、“音楽的にはこう”とかいう話し方ができました。だいぶ3人とも性格が丸くなってきて(笑)、お互いのペースに合わせつつ、お互いのスペースも大事にしつつ、話し合える関係性になってきたかなと思います」
 
――夫婦みたいになってきた?
 
「うん。倦怠期ですけど(笑)。でも、家族ではあるんですよね」
 
――でもそう思える人に出会えるから音楽っていいですね。普通の生活だけなら難しいかも。
 
「あ、あの2人、普通なら出会わない! バンドやってなかったら絶対に出会ってないです(笑)」
 

 
――奇跡の出会い(笑)。さて、いくつか曲の話を……。1曲目の『Window』でそっと幕開けてからの2曲目『Footsteps』のキャッチーさに“おっ!”ってなりました。
 
「これは意識的にそう持っていったかもしんないですね。キャッチーさというか、サビ感とかいうか……それを作っていかないといけないなって思ったんです。それを否定するのは簡単なんですけど、やらずに否定するのはカッコ悪いじゃないですか。僕らがまだできてないことだったので、試したいっていう気持ちがあったんですよ。そこで、改めてサビ感を意識したいって、サビから始めたんです」
 
――なるほど。もっと細かいところだと、鼓動の音とかも入っていておもしろいなと思いました。
 
「『Footsteps』は、プロデューサーさんにアレンジを全部お願いしてたんです。ベーシックなところは変わってないんですけど、プラスαのストリングスとか心音とか扉の開く音とか、そういうところ……。僕はそういう音とかを敢えて避けてきたんですよ。“答え”を出すような音だと、あまりおもしろくないんじゃないかな?って疑問があったから。でも、僕、音楽って作っている人たちの対話だと思っているので、プロデューサーさんに入ってもらって何かが生まれたなら、そこが正解だと思うんです。だからそこは否定しなかったし、実際に“おお、なるほど!”っていうすごくいいものができたし……。僕にはない見方を提示していただいたので、それを取り入れられてうれしい限りですね。成功の一つです」
 
――Ryuさん、一緒に働きたくなる人ですね。そう言われたら頑張りたくなる。
 
「本当ですか? 良かった。でも作戦かもしれないですよ(笑)。気づいたら崖からポーン!って……ウソです、ウソです(笑)」
 
――やめてください(笑)。あと細かい部分の話のついでですが、ずっと4000枚以上のカウントが続く、『Footsteps』のMV上の手書き数字とか、5曲目の『Istante』の無音部とか、動物として思わず気になってしまいました。
 
「あ、MV。あれは意図的じゃないですね。あれはもう仕方ないです(笑)。だって、あれ超アナログなんです。一枚一枚、映像をプリントアウトして色をにじませて、それをまた一枚一枚スキャンしてって感じで作ってあるので、数字を書かないとわかんないんです(笑)」
 
――途中、数字を間違えて、書き直していましたね(笑)。
 
「あれね、バイトの子が“あ、もうわかんなくなっちゃった!”って……(笑)。書き間違えて“1○○○-B”ってなってましたよね。でもあれはあれで残したいなって思って」
 
――そういう事情だったんですね(笑)。
 
「さすがにそこまで(意図的には)できなかったです。というか、だとしたらギミックがすごいですよね(笑)。あ、でも『Istante』の無音部とか、音のすき間が多いところとかは意識しています。これも敢えてやりたくないと思ってたストップを敢えてやりました。80年代、“ストップ”って言ったら音が止まってる曲ってよくあったと思うんですけど、それってダサいと思ってやってなかったんです。あ、それは“俺がやると”恥ずかしいと思ってたという……。でも今回、そういうことをどんどんやっていこうって……。取り入れてみたら楽しいこともあるし、アウトプットしてみないとわかんないと思ったんですよね」
 
――ほかにも今回はダンスミュージックのテイストやブラスの音などいろいろドキッとさせられます。
 
「ま、元からってところもあるけど、いろいろなジャンルを聴いてきたつもりだし、メンバー3人のバッククランドがそれぞれ違うので、それ(多様性)をやっぱり押し出していきたいというか……“ジャンルも決まってないんだぜ!”っていう。あと、この音っていうのは、今しか作れないんですよね。アルバムは去年から今年にかけて作ったんですけど、その間に僕らが何を聴いて何を吸収したかによるから、今現状でかっこいいと思うものを入れたいなって……。なので、もしかしたら来年には全然違うアルバムができてるかもしれないし。でもそれがアルバムの在り方だと思う。来年、僕が『Istante』を聴いて自分で恥ずかしいと思ってるかもしれない。あのストップを“マジ、それをストップ”っていう(笑)」
 
――その時の空気を詰めているんですね。さて、今作には日本語がある曲が『City』と『Istante』の2曲。日本語の使いどころが絶妙です。
 
「“Do what you want”が日本語だと“好きなことをやれ”だからダサいですよね(笑)。それをオブラートで包むバランス。英語で言ったらカッコいいよねっていうのをやりたくて……。実はそれって昔から追い求めてきたもので、『Taiyo』という曲があるんですけど、あの時のバランスが今まで越えられなかったんです。“どうしたらいいかな?”って思ってたんですけど、今回ふとした時に書いたらできて……実はあまり考えなくていいんだなって」
 
――考え過ぎてできなかった?
 
「はい。日本人の歌詞を読んだりして研究してたんですけど、結局“あれ、何も(研究を)反映してないや!”みたいな(笑)。自分がやりたいことをやればいいんだって……。例えば『Istante』は、フォーリングしつつ、それに抗いたいっていうのを書いてあるんですけど、そこは英語で書くことで僕が求めていたオブラート感を……見えるけど包まれている……生春巻きみたいな。おいしいのはわかるけど敢えて包むんかい!みたいな(笑)。そこができたと思いますね」
 
――ちなみにRyuさんはイタリア語を話すから、母国語が日本語1つの私たちよりも多くの音を聴き分けられるんでしょうね。ゆえに、より日本語と英語のバランスがより気になるとか?
 
「それはありますね。だから敢えて自分を変な制限に入れるんですよ。日本語も英語も韻を踏んでないとダメとか。音的に感じちゃうんですよね。母音より、一つの言葉にある韻を気にしちゃうんですよ。1行目と2行目の音の感覚がきれいかきれいじゃないかとかで決めます。ま、それは感覚なんですけどね。だからバーッて歌詞を書くんですけど、時々、倒置法にして入れ替えたり、言葉を変えたりしますね」
 

 
――なるほど。そして、アルバムは最後の『Landscapes(A letter from me to me)』で朝に向かうような感触で終わります。また1曲目にリピートするような感じですね。
 
「そこは人次第ですね。僕のなかにも(見解が)あるんですけど、できればそこは伝えたくないですね。タイトルのように“Night and Day”かもしれないですけど、別の人にとっては“Day and Night”かもしれないし、『Landscapes』も(風景は)夜になってるかもしれなくて、向かってる方向も光ってわけでもないじゃないですか。“走れ”“走り抜け”とは言ってますが、その先は夜かもしれないし、夜の方が彼にとってはいいのかもしれない。なので、向かっている方向は人それぞれであってほしい。自分の感覚を持って自分に対して書いてはいますけど、いつものように最後のパズルのピースは聴く人に与えたいっていう気持ちですね」
 
――さて、この10月からはツアーが! 初日は大阪です。しかも間もなくある『not forget pleasure 8』にも出演。ともに会場はCLAPPER。
 
「福原さん(CLAPPER店長)、大好きでいてくれているので超ありがたいです! ライブも人とのつながりでできると思っているので……。ありがたいことに“好き”と言ってくれる人たちが呼んでくれる。今回の『not forget pleasure 8』も即答で“ぜひ、行きますっ!”って感じでした」
 
――さらにツアーの大阪公演は、対バンがavengers in sci-fi!
 
「今回(タワーレコードの購入者特典『Istante』で)リミックスを頼んだんです。もう、僕が求めているモノが来過ぎちゃって、怖かったです(笑)。(avengers in sci-fiが考える)僕が好きな音楽はこういうのなんだろうなっていうのが……(ぴったり)。ご本人とはちょっとしかお話してないんですけど、話をしても“あ、それです!”みたいな感じ。avengers in sci-fiさんはすごく高機能なもの(機材)を使っているじゃないですか。でも“踏みまくって”なうえでの、ものすごいアナログなんですよね。そういうのを聴いて、感覚が近いかもなって……というか、単純に音楽がカッコいいので、ライブを見て“もう、誘おう! お願いします!!”って(笑)。ようやく同じステージに立てるので、すごく楽しみですね。しかも、どちらも東京(出身)なのに大阪のステージ。大阪でやるたびに、やっぱ大阪いいなって思うんですよ。MINAMI WHEELの時も、ワーッて沸いてて“これだ!”って思って、つい“大阪最高!”って叫んじゃってました。僕、褒めて伸びる子なんで……(笑)」
 
――お互いに褒めて伸ばしましょう(笑)。まずは約1ぶりの登場となる、6月5日(火)の『not forget pleasure 8』でお待ちしています。
 
「前回から音的にも進化しているし、3人のグルーヴ感も……(進化)。昔はさぐってたところもあったけど、最近は(メンバーの)“あ、こいつ揺れるな”っていうのがわかってきたんですよね。そんな変化、進化をぜひ見に来ていただきたいです!」

text by 服田昌子



(2018年6月 4日更新)


Check

Movie Comment

Release

Album『Between Night and Day』
発売中 2250円(税別)
VPCC-86168

01. Window
02. Footsteps
03. City
04. That Mad Rad Tale
05. Istante
06. Take a Piece
07. Simply, Something
08. Return to Dust
09. Landscapes

Profile

ジャンルも国籍も超えた、ピアノ3ピースバンド。イタリア生まれイタリア育ちのRyu(pf&vo)が、2012年に “Ryu Matsuyama”としてバンド活動をスタート。2014年、結成当初からのメンバーであるTsuru(b)に Jackson(ds)を加え、現体制となる。これまでに限定デモ音源1作、シングルとミニアルバムそれぞれ3作を発表し、昨年は情熱大陸ライブの大阪・東京公演に出演。また、新代田FEVERにて自主企画ライブ“and”も成功に収めた。そして今年5月16日には、フルアルバム『Between Night and Day』で待望のメジャーデビュー!

Ryu Matsuyama オフィシャルサイト
http://ryumatsuyama.com/


Live

Pick Up!!

『not forget pleasure 8』

チケット発売中 Pコード:114-653
▼6月5日(火) 18:30
アメリカ村 CLAPPER
オールスタンディング-2500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]Ryu Matsuyama/MOP of HEAD/INNOSENT in FORMAL
[オープニングアクト]WOMAN
※未就学児童は入場不可。
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]夢番地■06-6341-3525

Pick Up!!

【大阪公演】

「Ryu Matsuyama/avengers in sci-fi」
7月7日(土)一般発売 Pコード:118-381
▼10月13日(土) 18:30
アメリカ村 CLAPPER
オールスタンディング-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]夢番地■06-6341-3525

【東京公演】
▼10月27日(土)duo MUSIC EXCHANGE
【宮城公演】
▼11月18日(日)retro Back Page
【東京公演】
▼12月7日(金)TSUTAYA O-WEST

チケット情報はこちら

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『not forget pleasure 8』に
出演するINNOSENT in FORMAL
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オープニングアクトとして出演する
WOMANのKoh Utsunomiya
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出演するMOP of HEAD
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