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「35周年の締めくくりにふさわしい内容になったかなと」
アーティストとして、ソングライターとして
数々のヒット曲と時代を描いた名曲を刻んだ記念碑を語る
『大澤誉志幸 Song Book』インタビュー&動画コメント

 今でもカバーされ続ける名曲『そして僕は途方に暮れる』(‘84)を筆頭に、80年代の故プリンスなどの影響も独自に消化した先鋭的な音作りと巧みなソングライティングで、数多くのヒット曲を世に送り出してきた大澤誉志幸。2月にリリースされたデビュー35周年記念アルバム『大澤誉志幸 Song Book』は、沢田研二、鈴木雅之、中森明菜などに提供してきた楽曲のセルフカバーとオリジナル音源をまとめた2枚組で、その足跡の偉大さを再認識させる大作となっている。さらに、3月25日(土)ビルボードライブ大阪をはじめ、今作のリリース伴うツアーでは80年代中盤に発表された2大傑作アルバムの完全再現も行うという彼に、新作とその貴重な公演について語ってもらった。

 
 
今回の作品は、自分のヒストリーみたいなものですね
 
 
――35周年記念のアルバム『大澤誉志幸 Song Book』は、これまでに数多くのシンガーに提供してきた楽曲のセルフカバーベスト的な選曲に、新録1曲と新曲2曲を加えたDISC-1と、それらの提供曲のオリジナルバージョンを集めたDISC-2による2枚組で、単なるベストとはまた違った形で、これまでの足跡をまとめた作品となっていますね。
 
「他の方の歌声も入っているので珍しい形のアルバムにはなっていると思いますけど、ちょうど35周年の締めくくりなので、今までに提供してきた作品を、改めて思い返す作業でもありましたね」
 
――提供した曲は、やはりご自身で歌って世に出た曲と感覚が違うものですか?
 
「ちょっと違いますね。やっぱり、提供した方のイメージとか、女性の場合なら女性的な歌詞やメロディになっていたりするので。ただ、自分で歌い直してみても意外としっくりくるなと以前から思っていたので、こういう形で発表できてよかったかなと思いますね。他の男性シンガーが歌った曲も、ちょっと自分風に変えて歌ったりもしているので、その辺も楽しんでもらえるといいかなと」
 
――アレンジ面でもかなり多彩なアプローチを取っていて、これまでに様々な音楽的変遷を経てきた大澤さんの集大成的なカラフルさです。
 
「例えば、吉川晃司の『LA VIE EN ROSE(ラ・ヴィアンローズ』(‘84)はサンババージョンでやってみたりとか、八代亜紀さんの『AKI’S HOLY NIGHT』(‘13)はちょっとジャジーな感じで作ってくださいという依頼が当時あって、ジャズバラード的な曲に挑戦したモノだったし。『永遠の1/2』(‘85)は石川セリさんへの提供曲で、ちょっと女性的なメロディのポップな曲なんですが、個人的にはとても気に入っていたりしたので、そういうものが一堂に介して1枚のアルバムになった今回の作品は、自分のヒストリーみたいなものですね」
 
 
今でも歌ってくれるのはありがたいことで
ホントに感謝してますね
 
 
――ご自身では、この作品群を聴いてみて改めて思われたことはありましたか?
 
「やっぱり70年代、80年代と音楽的な変遷があって。僕の前には山下達郎さんやはっぴいえんどがいましたけど、日本の音楽のメインストリームはまだ歌謡曲で、そこにどう僕らみたいな洋楽世代が入り込んでいくか、みたいなテーマがあったと思うんです。今はもうポップスとかロックが主流になっていますけど、ちょうどその中間の世代なのかな? 僕がデビューした頃のメインはまだ歌謡曲で、時代の流れでニューミュージックとかロックが出てきた時期でしたからね。その中でも1つ、自分の切り口みたいなものができたのかなという気がします」
 
――今回のアルバムに収められている楽曲の多くは、その時代が変わっていく80年代に歌謡曲として広くヒットしながらも、当時の洋楽のエッセンスが盛り込まれたものですよね。
 
「達郎さんがCM曲をやったり、松本隆さんが歌謡曲の詞を書くようになったりという流れを感じていたし、僕もちょうどバンドが解散して、裏方としてCMやコーラスの仕事をしながら、2年ほどソロの準備をしていた時期で。そのときに僕が提供した『おまえにチェックイン』(‘82)(沢田研二)や『1/2の神話』(‘83)(中森明菜)がヒットしたんですけど、その頃から歌謡曲もロック~ポップス寄りに変容していったのかなと思いますね。そんなことを感じながら、僕も“時代”に参加できたのかなと」
 
――大澤さんは、達郎さんたちよりもひと回り若い世代だと思いますが、感覚的な違いみたいなものはありました?
 
「もうちょっと80年代の空気を感じながら作っているところはあったと思いますね。ちょうどテクノロジーも変化して、コンピューター・ミュージックとかが出てきた時期だったし、とは言え、歌謡曲然としたものも残っていたので、そこのミクスチャーされた部分が自分の楽曲センスだったのかなという気がします」
 
――その辺りの音が、近年にはDJたちによって再評価されている流れも今はあります。
 
「そうですね。昔に作った12インチを、DJの人が持ってますよと言ってくれたりするし。『そして僕は途方に暮れる』も、新しいところでは柴崎コウとか30人近くの人が歌ってくれて。もう33年前に書いた曲なんですけど、今でも歌ってくれるのはありがたいことで、ホントに感謝してますね」
 
 
僕は今年に還暦になるんですけど、20代の頃の声がまだ出るので
 
 
――そんな大澤さんの歩みを網羅しつつ、セルフカバー集(DISC-1)の終盤では、今回のアルバムのために新録された『1/2の神話』と新曲2曲を収めて、近年の大澤さんにもしっかりつながっています。
 
「その3曲には、今の自分の趣味が反映されてますね。『1/2の神話』はジャズっぽくやってみたいなということで、スタジオに入って一発で録ったもので。新曲の『GET DOWN』はアグレッシブなファンクチューンですけど、最近はブルーノ・マーズとかでファンクの流れが出てきたので久しぶりにやろうかなと書いた曲で、もう一方の新曲『Over the Centuries~君のために生きる~』は、最初はオープンチューニングでハワイアンのスラックキーギターの練習をしていたときに思い付いた押さえ方から、偶然生まれた曲というか。バラードですけどコードが変わっているのはそのためで、歌詞も今の世の中から殺伐とした空気を感じていたので、思いっ切り大上段に、“君のために生きる”という言葉を言い切って歌おうという想いからできた曲ですね。現在進行形の自分らしいニュアンスも出せたので、35周年の締めくくりにふさわしい内容になったかなと」
 
――そして、3月25日(土)ビルボードライブ大阪ほか、各地で35周年記念ライブが行われますが、こちらは1stセットで『CONFUSION』(‘84)、2ndセットで『in・fin・ity』(‘85)という2大傑作を再現するという点でも、見逃せないライブとなりそうです。
 
「そうですね。しかも今回は、アルバムの曲順通りに完全再現するんですよ。昔の(機材の)音色で今では手に入らないものがあったりするので、似たような音色でやる楽曲もありますけど、ほとんどは原曲と同じ味わいに仕立てて。あと、僕は今年に還暦になるんですけど、20代の頃の声がまだ出るので、譜面の書き直しとかもしないでやれるんですよね。東京ではもうライブをやったんですけど、来た人たちはまさかアルバムの曲順通りに、20代の頃と同じキーで全曲やるとは思ってなかったみたいで(笑)、その当時の想いに立ち返る人も多かったみたいですね。父親や親戚を通して聴いていた若い世代も新鮮な意見を聞かせてくれて、ありがたかったです。当時の制作時のエピソードなどもMCで話しながら展開していくので、また違った楽しみ方もできると思います」
 
 
Text by 吉本秀純
 




ライター吉本秀純さんからのオススメ!
 
「80年代には多忙なワークスをこなす一方、昨年に急逝したプリンスの代名詞的ヒット作『パープル・レイン』(‘84)の日本盤解説なども書かれていた大澤さん。インタビュー中でも話されている通り、当時の最先端のサウンドを日本のポップスに持ち込んだ音は今また改めて刺激的で、後に台頭する久保田利伸や岡村靖幸らに連なる道を切り開いた点でも、その影響力の大きさは計り知れません。そんな時代を代表する2大傑作『CONFUSION』(‘84)『in・fin・ity』(‘85)を完全再現するライブは、単に過去を振り返るだけでは終わらない刺激的なセットとなるはず」

(2017年3月17日更新)


Check

Release

名曲、ヒット曲のセルフカバーと
提供曲の才気溢れる2枚組ベスト!

Album
『大澤誉志幸 Song Book』
発売中 3500円
テイチクエンタテインメント/
CONTINENTAL STAR
TECG-35117~8

<DISC-1収録曲>
~Performed by Yoshiyuki Ohsawa
01. そして僕は途方に暮れる
02. ゴーゴーヘブン
03. 1/2の神話
04. ガラス越しに消えた夏
05. AKI’S HOLY NIGHT
06. 真夏の夜にタンゴ
07. LA VIE EN ROSE(ラ・ヴィアンローズ)
08. 永遠の1/2
09. 明日はきっとハレルヤ
10. 晴れのちBLUE BOY
11. クロール
12. それからの君は
13. 1/2の神話(2017 Ver.)
14. GET DOWN
15. Over the Centuries
 ~君のために生きる~

<DISC-2収録曲>
~Composed by Yoshiyuki Ohsawa
01. ガラス越しに消えた夏
02. AKI’S HOLY NIGHT
03. 真夏の夜にタンゴ
04. LA VIE EN ROSE(ラ・ヴィアンローズ)
05. 永遠の1/2
06. おまえにチェックイン
07. 時代遅れの恋心
08. 明日はきっとハレルヤ
09. 雨のコニー・アイランド
10. プラスチック・マン・ライフ
11. 薔薇の奇蹟
12. No No サーキュレーション
13. こっちをお向きよソフィア
14. ハード・レインで愛はズブヌレ
15. 1/2の神話
16. 愛の迷い
 ~you gotta feel me,keep on dancing~
17. 時代遅れの恋心
18. 蕾

Profile

おおさわ・よしゆき…’81年にクラウディー・スカイのフロントマンとしてデビュー。解散後は沢田研二、中森明菜、山下久美子、吉川晃司らへの楽曲提供でソングライターとしての非凡な才を発揮し、’83年にソロデビュー。『そして僕は途方に暮れる』(‘84)などの大ヒットで自らもシンガーとしての地位を不動のものとする傍ら、鈴木雅之、本木雅弘らのプロデュースや楽曲提供も行い、近年も山下久美子や元hide with Spread Beaverのキーボード奏者として知られるDIEとのコラボなども行いながら、精力的な活動を続けている。2月22日にはデビュー35周年記念アルバム『大澤誉志幸 Song Book』をリリースした。

大澤誉志幸 オフィシャルサイト
http://ohsawayoshiyuki.com/

Live

『CONFUSION』と『in・fin・ity』
2大傑作を再現&名曲カバーのツアー!

 
『大澤誉志幸 35th Special Live
「CONFUSION、in-Fin-ity &
 Self Covers 」』

【愛知公演】
チケット発売中
▼3月24日(金)18:00/21:15
名古屋ブルーノート
ミュージックチャージ7500円
[共演]奥田健介(g)/大山泰輝(key)/
千ヶ崎学(b)/椎野恭一(ds)
[ゲスト]いまみちともたか(g)/
矢口博康(sax)
名古屋ブルーノート■052(961)6311

Pick Up!!

【大阪公演】

Thank you, Sold Out!!
▼3月25日(土)16:30/19:30
ビルボードライブ大阪
自由席7900円
[共演]奥田健介(g)/大山泰輝(key)/
千ヶ崎学(b)/椎野恭一(ds)
[ゲスト]いまみちともたか(g)/
矢口博康(sax)
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※本チケットに整理番号はございません。ご希望の方は発券後、お問合せ先まで要連絡。当日は整理番号順でお席へご案内しておりますが、整理番号をお持ちでないお客様は開場時間の30分後のご案内となります。カジュアルエリアの取り扱いなし。未就学児童及び高校生同士の入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。

【東京公演】
チケット発売中 Pコード323-427
▼4月15日(土)18:00
Mt.RAINIER HALL SHIBUYA
PLEASURE PLEASURE
全席指定9000円
[共演]奥田健介(g)/大山泰輝(key)/
千ヶ崎学(b)/椎野恭一(ds)
[ゲスト]いまみちともたか(g)/
矢口博康(sax)/ZOOCO/
藤原美穂/山下久美子
Mt.RAINIER HALL SHIBUYA
PLEASURE PLEASURE■03(5459)5050

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