山下久美子 & 大澤誉志幸による大人のデュエットアルバム
『& Friends』を30年来の旧友2人が語るあたたかな時間
J-AORの極致とも言える同作から80sヒットナンバーまで披露する
4/19(金)ビルボードライブ大阪目前インタビュー&動画コメント
共に30年を越えるキャリアを持つアーティストの山下久美子と大澤誉志幸。それぞれが精力的に活動し旧知の仲でもある彼らが、デュエットアルバム『& Friends』をリリースした。コンポーザーとしても評価の高い大澤がかつて山下に提供した楽曲を中心に、J-AORの極致とも言える珠玉の作品集に仕上がっている今作。4月19日(金)にはこのアルバムをフィーチャーしたビルボードライブ大阪でのライブも控えている2人に、お互いのこと、アルバム制作について、そしてライブへの思い入れを訊いた。
山下&大澤の粋なやりとり、イイです! 2人からの動画コメント
――今回のコラボアルバムを作ったキッカケは?
大澤「そもそも知り合ったのはもう30年くらい前ですかね。お互いアマチュア時代に出会っていて。その頃は特に仲は良くなかったんですけれども(笑)、同じプロダクションだったので曲を提供する中で仲良くなっていって。そういう関わりが増える中で、彼女のプロジェクトに僕が乗っかって、逆に僕のプロジェクトに彼女が乗っかるっていう…。去年も僕のライブに来てもらって、かつて僕が提供した曲を歌ってもらったら、スゴくよかったんですよね。それがアルバムを作る直接のキッカケですね」
山下「今回のアルバムを作るって声をかけてもらったときも、お友達だから“楽しければいいよ”って(笑)。30年くらいの付き合いですから、彼のことも“大澤”って呼び捨てですし(笑)」
大澤「僕も彼女のことは“久美子”って呼んでますが(笑)」
――ちなみに、それぞれお互いのどういうところをリスペクトしていますか?
大澤「まず、久美子は唯一無二の“キャンディ・ボイス”っていうかね。ポップスとかロックを越えて、女性シンガーとしてのイノベーター(=開拓者)というところですよね」
山下「改めて思うのは、アーティストとしても、作詞作曲者としても、高い能力を持ち合わせている人なんだなって。そこはよく頭が働くなって、リスペクトしているところかな」
――2人が完成させた今回のアルバムのタイトルが、ただの“Friends”ではなく、『& Friends』となっていますね。
大澤「最初は“Friends”で考えてたんですが、同時に“&”というタイトル案もあったんです。考えてみたら、“&”も受け取り方によっては深いなと。山下久美子と大澤誉志幸の“&”でもあるし。じゃあ、くっ付けちゃおうってことで(笑)。お互いアーティストとして山を越えてきて、30年付き合ってきたこともあるし」
山下「昨日今日のお友達じゃないしね。お互いにトンがってた時期もあれば(笑)、こうして仲良くなってという長い時間を経てきたので、私も“Friends”という言葉だけじゃ伝わらないなって思ったし、いいなって思いましたよ」
何年経っても、何十年経っても歌えるように
――ちなみにアルバム自体のコンセプトは?
大澤「お互いデビューした当時の80年代から90年代に久美子に提供した曲が軸になってるんですが、何年経っても、何十年経っても歌えるようにって、普遍的なものを当時から意識してたんですね。デビューやブレイク自体は久美子の方が先なんですが、その久美子をギャフンと言わせようと意識して曲を作ってたんで(笑)。彼女も山を越えてきて、今だから歌える歌詞もあるんじゃないかと。それを作品化しようということですね」
――選曲はどういうポイントで?
大澤「去年久美子とライブをやったときの曲はファンの皆さんの反応もスゴくよくて、その流れはこのアルバムにもありますね。あと、新曲も入れようと思ったんで、昔録音していたカセットとかを引っ張り出して聴き直したんですね。その中で自分の4thアルバム『in・Fin・ity』(‘85)に収録しようと作って結局は入らなかった曲が、今改めて聴いてみたらいい(笑)。だったら2人でやるアルバムに入れたらオモシロいなって。このアルバムの中では、贅沢に久美子にコーラスをやってもらってます」
山下「その曲を含め選曲に関しては、大澤が作った人なんで思い入れが深いんだろうなって思いながら歌ったりしてたんですが、ホントにいい曲ばかりだし、珠玉の選曲だと思います」
――宣伝コピーには“カッコいい大人によるカッコいい大人のための…”という表現が使われています。大人のため…というのはやはり意識しましたか?
大澤「普遍的なポップスを…ということでしょうね。当時の久美子のアルバムにもそういう雰囲気があったし、その中で僕も曲を書かせもらって、今回再構築したら極上のモノになって。それはやはり大人が聴けるもの、聴いて耐え得るものになったということだと思いますよ。まあ、それも思い通りというか、結果的にうまくいったなと」
山下「大人って言っても、40代、50代の人はもちろん20歳過ぎたらもう大人でもあるし、幅広いとは思うんですけれども、“普遍的”という意味で私たちも思いを伝えたかったし、それは=“大人のための…”っていうフレーズになるんだと思います」
出来上がったときの喜びが、ソロとはまた違って
“2人で作った”っていうのが、スゴくありますね
――レコーディング作業自体は振り返って頂いて、どうでしたか?
大澤「だいたい1ヵ月くらい期間をかけて作ったんですが、久美子も子供がいていろいろ大変だから、彼女にとって一番理想的な時間にスタジオに来てもらって、僕がボーカル録りをして、セレクションして…。あとはダビングなり、バンドでの音録りのディレクションという感じで、久美子にあまり負担をかけないように取り組んでましたね。久美子の作業があって、その後の自分の作業でずっと寝られないくらいでしたけど(笑)。その分、出来上がったときの喜びが、ソロとはまた違って。“2人で作った”っていうのが、スゴくありますね」
山下「彼は大変だったと思うんですよ。自分のペースだけじゃできないんだもんね。私の時間に合わせてもらって。だからね、ホント感謝してます(笑)」
――そういう状況の中、山下さんは歌入れに関してどうでしたか?
山下「大澤と会話しながらレコーディングっていうのは、実は初めてで」
大澤「曲を提供したといっても、今までは別にディレクターがいましたからね。今回は僕が引き出すということなんで。お互いボーカリスト同士ですから、いろいろケンケンガクガク話し合ってっていうのがありました」
山下「そうだよね。“いい曲をもう一度歌う”っていうのが基本なんで、真っ直ぐ向き合えたっていうことでしょうね。でも、一生懸命気持ちを込めて歌ったのに“もう1回”なんて言われると、“ええ何で!? いやだ…!!”みたいな、やり取りはありましたけど(笑)」
大澤「ただ、年齢を重ねて主張するところは主張する、引くところは引くっていう。その駆け引きはお互いうまくなりましたよ(笑)」
――大澤さんは、山下さんの声に合わせていく作業はいかがでしたか?
大澤「『Somewhere Over The Rainbow』(M-10)なんかは、久美子が歌ったときに自分がどう反応するかイメージしていたものがあったんですけど、それが合う場合と合わない場合があって。久美子がこう歌ったからこっちはこう歌うって、その瞬間で生まれたものがあったんで。それはよかったですね」
山下「私も後で感じたんですけど、大澤が私の歌に歩み寄ってくれてる瞬間があったんじゃないかなって。大澤ってすごく独特のスタイルがあるボーカリストじゃないですか。彼のニュアンスを大事にしてコーラスを入れるのが、結構大変だったりする部分もあるんです。でも、そういうのを含めて刺激的でオモシロいなって感じましたね」
2人がまず存分に楽しみますので
観に来てくれた方も微笑ましく、ハッピーに帰って頂ければ
――そうやって出来上がったアルバムですが、改めてお互いどういう作品になったなと思いますか?
大澤「やっぱりすばらしい名曲、粒揃いの名曲ばかりだなと(笑)。キャッチーなメロディだし、そこに2人のすばらしい歌唱が乗っているし、それがこの作品の醍醐味だなと思ってます」
山下「うん、すごくいいアルバムだなって。あと、この作品を皆さんがどう聴いてくれるのか、意見を聞いてみたいですね。もう友達にも“買ってね!”って言ってますから(笑)」
――アルバムのリリースに伴い、お2人のライブが4月19日(金)ビルボードライブ大阪で決まりました。どんなステージになりそうですか?
大澤「もちろん今回のアルバムを中心にしつつ、プラスアルファで、レコーディングのときは久美子が1人で歌っていた曲を僕がハモったり、その逆だったり、ライブならではの、言わば瞬間芸みたいなことは考えてます」
山下「私はみんながニコっと笑ってくれるようなライブにしたいですね。大澤も笑っちゃうような…今回のライブは、大澤が微笑むようなステージっていうのが私の目標、かな(笑)。それに、何と言っても1人じゃないっていうのが違いますよね」
大澤「2人だから、MCもまるで掛け合い漫才のようになるかも…(笑)。バラードでは聴かせて、ノせるところはノせて。普段の僕と久美子の会話も合わせてね。聴かせて、笑わせる…みたいなライブにはなると思います」
山下「呼吸がね、合ってきたよね(笑)」
――最後にライブに向けメッセージをお願いします。
大澤「久美子とのデュエットアルバムを出した直後のライブですし、2人がまず存分に楽しみますので、観に来てくれた方も微笑ましく、ハッピーに帰って頂ければ。そういうライブにしたいなと思ってますので、ぜひ会場でお会いしましょう」
山下「80年代、一番記憶に残っているあの時代のいい曲を今もう一度…大澤が作ってくれた曲を歌うってことなんで、見逃さないで欲しいですね。何より、大澤の笑顔が満載のライブです。普段はそんなに笑わないですから(笑)。もうそれは大変なことですから、ぜひ見に来て!(笑)」
Text by 金本真一
(2013年4月12日更新)
Check