インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > HYとBIGMAMAが「意味のある偶然の一致」から 産み出したアルバム『Synchronicity』 音楽の素晴らしさと温かさ、そして夢のような時間 偶然を必然に変えた大阪の夜をライブレポート!!


HYとBIGMAMAが「意味のある偶然の一致」から
産み出したアルバム『Synchronicity』
音楽の素晴らしさと温かさ、そして夢のような時間
偶然を必然に変えた大阪の夜をライブレポート!!

 2006年にBIGMAMAが最初のミニアルバム『short films』をリリースしてから今年で10年。デビュー10周年を迎えた今年、彼らは、『BIGMAMAnniversary2016~2017』と題して各地で毎月対バンライブを行ったり、競演バンドもお客さんも全員10代限定のライブを行ったり、期間限定でカフェ&バーをオープンしたりと、アニバーサリーにふさわしいスペシャルな企画で次々に楽しませてくれている。そのクライマックスともいえるHYとのコラボレーションが最初にアナウンスされた時、季節はまだ春だった。男性4人+女性1人の5人組。パッと見て共通しているのはそれだけで、音楽性も鳴らしている楽曲のタイプも、まったく違う2つのバンドがどんなふうに化学反応を起こすのか。その問いに対する答えは、先に届いたアルバム『Synchronicity』にほとんど詰まっていた。このアルバムで彼らが聴かせてくれたのは、両バンドが一緒に作り上げた、今回のコラボレーションのテーマともいえるタイトル曲とともに、それぞれのバンドの新曲、さらにHYの曲にBIGMAMAが、BIGMAMAの曲にHYが参加し、新たな命を吹き込んだ既発曲の新録音や、お互いがリスペクトする楽曲。1、2曲を共演するよくあるコラボレートとは違い、2つのバンドが1枚の作品を作り上げる過程までも見せてくれたようなその大充実のアルバムを経て、いよいよ2組でのツアーが実現。 アルバムでは見事に混ざり合っていた両バンドが、ライブの場で果たしてどのようにステージを見せてくれるのか。この目で見て、耳で聴くまで、両バンドが起こす化学反応の全貌は分からないと思っていた。そのHY+BIGMAMAの「Synchronicity」ツアー。結論から言えば、これまでどんなライブでもフェスでも体験したことのない音楽の持つ素晴らしさや温かさ、そしてライブという現実でありながら夢のようなまばゆさ、その他にもたくさんのものを味わうことのできたステージだった。

ss2_630.jpgss3_630.jpg

 大阪公演のオープニングアクトを務めたのはSPiCYSOL。5人の登場とともに大きな歓声が起こり、曲に合わせ手拍子が鳴り響く中、のびやかに広がる歌声で『Around The World』、スカ調の軽快な『PABUK』、そして最後は、「愛を込めて贈ります」と『Coral』を。深い愛情を歌った穏やかなラブソングの余韻を残しながら、ピースフルなムードで会場を充たしてくれた。

hy4_630.jpghy_kumi_630.jpg
 最初に登場したのはHY。「さぁ、みなさん、はじめますよ!」という新里英之の声をかき消してしまうぐらいの拍手と歓声が沸き起こる。今日という日にぴったりの、明るくハジけた『Good Day』からスタートすると、大きな手拍子が鳴り、その手拍子のテンポに合わせるかのように照明もまたたく。

hy3_630.jpghy2_630.jpg『NIJIKAN TRIP-MAMA TRIP-』では、BIGMAMAからギターの柿沼広也とバイオリンの東出真緒が加わる。会場を埋めたファン全員に両手でハートを作って曲に参加できるよう、新里が声をかけると、それを受けて柿沼が「人前でラブを作るなんて思ってもみなかったけど、これができるのもあと2回だと思うとすごく悲しい」と。確かに、ツアーは今日とファイナルの沖縄を残すのみ。柿沼のコメントに、「カッキー、煽りもイケるね!」と新里が陽気に返す。そのやりとりは、2つのバンドが共演したという枠を超えた、微笑ましい親密さに溢れていた。

hy5_630.jpg
MCで仲宗根泉が「大阪は声が大きいね」と笑っていたが、一緒に歌う声も、ステージに呼びかける歓声も、どうもほかの地域よりも大阪は大きいらしい。それだけ誰もがこの日を待っていたということだろう。その仲宗根がステージ中央に移動し、BIGMAMAの金井政人を迎え入れて『愛し合って許し合って貴方と共に』を聴かせる。亡き人への感謝と愛情と、胸に募る想いを切々と歌いつづったHYのこの曲に、アルバムでも金井がボーカルで参加していた。従来のBIGMAMAの曲とのカラーの違いをもっとも感じさせた曲であり、金井の歌唱も日ごろBIGMAMAで聴けるものとは明らかに違っていた。この日も、アルバム同様に新里と宮里と金井のボーカルからスタート。時にささやくように、時に思いのたけをすべて歌に込めるような金井の繊細な歌声は、まっすぐに心に向かってくる。彼の歌声を時に支え、さらに引き出すような仲宗根のボーカルとの表情の違い、その2つの声が織り成す歌に宿った世界は、大きく深くとても温かいものだった。

hy6_630.jpg「次の曲は、みんなで一緒に歌ったら絶対に楽しい!」という新里の呼びかけに、『AM11:00』のイントロが鳴った瞬間、まるで「わかった」というかのように客席が大きな歓声で応える。その場内を見渡し、「うれしいね」と顔をほころばせる。ミラーボールが回り、ステージにはもう一度金井が登場し、先ほどとはガラリと雰囲気の違うカラフルな楽曲にさらに色を添える。「次の曲で最後になっちゃいます」と紹介したのは『ホワイトビーチ』。力強さと大らかさを併せ持ち、仲宗根と新里のボーカル、さらにラップも交えた独特のスタイルのこの曲で、15年前にHYの存在を知った人も多いに違いない。「一緒にこの曲を歌ってひとつになるよ」と新里が呼びかけ、歌詞が分からない人には、「ん~ん~って歌えばいいよ」と。ステージから、そして場内から沸き起こった歌声は、会場をすっぽりと包み込んでしまうぐらい大きな大きな声だった。

hy7_630.jpgステージを去りゆく5人に拍手をしながら、誰かが言った「HY、泣けるー」。それはとても嬉しそうな、弾んだ声だった。
 

bm_630.jpg

bm_kumi_630.jpg

続いて登場したBIGMAMAは『No.9』、『神様も言う通りに』を、まるでいつものワンマンライブのようなたたずまいで、当たり前のようにいつものステージをはるかに上回る熱量で鳴らす。「会いたかったよ、大阪!」という金井の声に応える歓声も熱い。わくわくするような威勢のいいノリと、バイオリンの柔らかさが混ざり合った『Weekend Magic』を歌い終えた金井は、「めちゃめちゃ楽しんでます」と。バイオリンの東出真緒が以前、ラジオ番組で「対バンしてみたいアーティストは誰ですか?」と聞かれ、「HY」と答えたこと。かつてCDショップでバイトしていた金井は、HYのアルバムが何枚も何枚も人の手に渡る瞬間を目撃していたこと。

bm4_630.jpgそのエピソードとともに、「BIGMAMAのこの曲を彼女に歌ってもらったらどんなに素晴らしいかと。歌ってもらったら本当に素晴らしかった」と、仲宗根泉をステージに迎え入れ、『アカイト・イズ・ト』を披露。HYとBIGMAMAを結び付けたのも運命の赤い糸と言えるだろうか。偶然のような2バンドの出会いを、まるでこうなることが運命だったような必然の出会いに変えた彼らを前に、“偶然は無い すべては自分次第”というこの曲の歌詞の一節を心底実感した。

bm6_630.jpg
「今日は“BIGMAMA”じゃなく、HY+BIGMAMAのBIGMAMAです」と金井が挨拶し、「みんなにHY+BIGMAMAの音楽は届いていますか?」と呼びかけると大きな声が返ってくる。男性ファンの声がひときわ目立つのが彼ららしい。あやふやなボーカルをごまかしもせず「楽しくて歌詞が飛んでます!」と告白した『alongside』。『Lovers in a Suitcase』では、「ここにいるみんなと一緒に作り上げる曲。大阪の熱いところを見せて」という声に応え、響き渡ったお客さんたちのコーラスが歌を荘厳に縁取っていた。HYの新里と名嘉俊を迎えた『Sweet Dreams((bittersweet)) 』から『MUTOPIA in Okinawa』へと続く流れに感じたカタルシスは何と言い表せばいいのか。自分の中に、ちょうど当てはまる言葉が見つからないぐらいの高揚感。『MUTOPIA in Okinawa』で金井と仲宗根新里の歌声がぴったりと重なった瞬間、鮮やかな閃光がステージに降り注いだようだった。目の前で起こっているライブは夢ではなくて現実。だけれど、このまま終わってほしくないと誰もが思ったに違いない。すべての人に歌を届けるべく、ステージを右に左に前後に動きつづける金井の気持ちが分かる気がする。聴いているこちらも、居ても立ってもいられないぐらいの抑えがたい喜びや感激でいっぱいだ。

bm3_630.jpgbm8_630.jpg最後は、「大阪に愛を込めて」との言葉を添えて『until the blouse is buttoned up』。コーラスパートをお客さんにまかせ、その声をどこまでも連れて行くように歌に引き込んでいく。BIGMAMAのアルバムを聴いている時、楽しい中にもかすかに切なさを感じることがある。一筋縄ではいかない感情が渦巻いているのは彼らの音楽の持つ大きな魅力でもあり、そこに惹かれてもいる。けれど、この日のステージが始まってからずっと、彼らの放つ音楽にはひとかけらの感傷もなかった。切なさとか、痛みとか、そういったものを突き破るように溢れ出る歓喜だけがあった。
 
bmhy2_630.jpg

両バンドのステージが終わり、ステージ後方のスクリーンには今回のコラボレーションを追いかけたドキュメンタリー映像が映し出される。会議室のような場所で2バンドがそろい、「自己紹介しようか」と声をかける場面から、曲作りの風景、お互いのバンドへの想いを語る場面も。真っ青な沖縄の空の下で、今年この2バンドが起こした奇跡のような出来事の一つ一つを追体験しているよう。その中で、「ちゃんとひとつのバンドに、ひとつの塊になれた」と言っていたのは金井。「ここでしかできないパフォーマンスとか言葉、瞬間を見逃さないでほしい」と話したのは新里。そしてアンコールでは、2バンド10人が勢ぞろいしフロアに向かって「一緒に!」と呼びかけ、会場中が一つになって『シンクロニシティ』を歌った。

bmhy1_630.jpg鳥肌が立つような、熱いものがこみ上げてくるような、ステージもフロアもその場にいる人みんながシンクロした瞬間だった。アルバム『Synchronicity』でも彼らは十分に混ざり合っていたけれど、たとえば、運命の赤い糸と空に浮かぶkyte((カイト=凧))をダブらせた曲『A KYTE』のような物語をつづるように歌世界を描くBIGMAMAと、“君と出会えてよかった”、“君を愛してよかった”と想いをまっすぐに伝えるHYの歌は、果たして生のステージでも混ざり合うのだろうかと思っていた。が、アルバムを聴いているだけではわからないことが、生の現場では起きていた。メンバーそれぞれの生まれ育った環境も、年齢も違う。けれど、湧き上がってくる想いをすべて言葉やメロディー、演奏に溶かし込むようにして音楽を奏でようという気持ちの純粋さ、迷いのなさは、10人に共通してあるものだった。それをまざまざと実感するステージをこの夜、彼らは見せてくれた。

bmhy630.jpg
音楽を通じて彼らは1つになれて、単純に5((人))+5((人))の足し算や掛け算をする以上に素晴らしいものを一緒に生み出した。間違いなく、他のバンド、他の音楽では代わりがきかない、この10人にしか鳴らせない曲。それに触れることができた私たちにも、もしかしたら彼らと同じような奇跡が起こせる可能性があるんじゃないか。力強い音と歌声で、そんな温かなメッセージをくれたように思う。だって、そうだ。3秒あれば未来を変えていけるし、虹が出るのは雨が降った後の空だ。彼らはそう歌っている。

bmhy3_630.jpg
HYもBIGMAMAも、「今日、みんなに出会えてよかった」と何度も何度もMCで話していた。それだけ出会いが生み出すもの、出会いが自分たちに与えてくれるもののかけがえのなさをわかっているからだろう。2つのバンドの邂逅に感謝。そしてライブはバンドだけでは完成できるものではなくて、会場を埋め尽くしたHY+BIGMAMAファンの一人一人の存在も欠かせなかった。BIGMAMAの10周年おめでとう!MCで金井は「10周年のご褒美みたいな日だと思ってます」と言ったけれど、それは聴き手にとっても同じ。この2バンドだからこそ作り上げることのできた最高のプレゼントを受け取ったことに感謝。HY+BIGMAMAが誕生した2016年に生きていることにも感謝。今日と同じ夜は二度と来ない。だから、今日のことはずっと忘れない。

bmhy4_630.jpg

Text by 梶原有紀子
Photo by 田浦ボン
 



(2016年10月14日更新)


Check

Set List

HY×BIGMAMA
『Synchronicity Tour 2016』
9/23(金) at Zepp Namba
w/SPiCYSOL


SPiCYSOL
01.V.A.CATION
02.Around The World
03.PABUK
04.Coral

HY
01.Good Day
02.キヅイタ
03.NIJIKAN TRIP-MAMA TRIP-
04.僕空
05.愛しあって許しあって貴方と共に
06.AM11:00
07.ガジュマルビート
08.ホワイトビーチ

BIGMAMA
01.NO.9
02.神様も言う通りに
03.Weekend Magic
04.アカイト・イズ・ト
05.天国の花は枯れない
06.Alongside
07.Lovers in suitcase
08.Sweet Dreams
09.MUTOPIA in Okinawa
10.Until the blouse is buttoned up

HY×BIGMAMA
EN.シンクロニシティ

SPiCYSOL オフィシャルHP
http://spicysol.com/

HY オフィシャルHP
https://hy-road.net/

BIGMAMA オフィシャルHP
http://bigmama-web.com/

HY×BIGMAMA 特設サイト
http://sp.universal-music.co.jp/hybigmama/


Live

BIGMAMA

BIGMAMA/Brian the Sun

FM802 ROCK KIDS 802 学園祭 SPECIAL LIVE 祭!祭!祭! 第51回大薬祭アーティストライブ ~Reborn!!~/大阪薬科大学

10月15日(土)10:00一般発売
Pコード633-961
▼10月29日(土)16:30
大阪薬科大学 体育館
全席指定2000円
[司会]落合健太郎
大阪薬科大学大薬祭実行委員会
■072(690)1096

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


SPiCYSOL

Sleepyhead Jaimie×knave presents
『Groovy Afternoon vol.3』
-MIMAMI WHEEL EDITION-

チケット発売中 Pコード304-598
▼11月19日(土)14:30
南堀江knave
自由3000円
ペアチケット2500円(1名分)
[共演]金木和也/SPiCYSOL [司会]板東さえか
GREENS■06(6882)1224

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Column1

BIGMAMAここに在り! シーンに高らかと掲げる闘争宣言にしてドラマティックな最高傑作『君想う、故に我在り』 未来へと続く新作に至る葛藤と覚悟を語る金井政人(vo&g)インタビュー&動画コメント

Column2

多様なジャンルの音を昇華させた7曲入りのアルバム『Tropical Girl』をリリース!! バンドの成り立ちから、新作の聴きどころまで語ってくれたSPiCYSOLメンバー全員インタビュー&動画コメント