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森のホールが誘う山頂の絶景と木のぬくもり
今村モータースが挑む
神戸を舞台に情景を切り取るライブシリーズ第3弾
『この街のハーブ園と空中散歩』レポート

 神戸発のシンガーソングライターとして、『COMIN'KOBE』『トアロード・アコースティック・フェスティバル』『MINAMI WHEEL』など関西の様々なイベントでも、飄々とした佇まいを心地よく裏切る少年性を湛えた歌声と、いつか見た情景を描き出すグッドメロディを礎に、その人を食った名前と存在感をじわじわ浸透させてきた今村モータースの“挑戦”。旧小学校となる北野工房のまち 講堂でのワンマン『この街の夕暮れと僕の散歩道』、歴史的な異人館・北野サッスーン邸でのアコースティック/アンプラグドな昼夜2回公演『この街の異人館とふたつの灯り』と、シチュエーションの妙で魅せてきた彼のコンセプトライブ、“この街”シリーズ第3弾の舞台は、神戸の街を見下ろす山頂へ――! 『この街のハーブ園と空中散歩』と題された、神戸布引ハーブ園 森のホールでのライブをレポート。

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 ロープウェーに乗り神戸市内を見下ろす束の間の空中散歩を経て、頂上にたどり着くまでがすでにライブへのプレリュード。会場に一歩足を踏み入れたときに我々を待っていたのは、木のぬくもりと教会のような荘厳さを兼ね備えた、大きなドーム状の空間。ライブが始まる前にもう今日がいい日になるに違いないと確信させるそんな場所に、まるでこの家の住人が客人を迎えるようなラフさで、今村モータース御一行がふらりとステージに登場。

imamuramotorsreport2_zenkei.jpg 「すいません、遠いところまで。頑張って白シャツ着てきたんやけど、コーヒーこぼした(笑)」なんて気取らないMCから始まったのは『タワー』。天然リバーブの独特の鳴りに包まれながら、続く『メロディ』でも美しいコーラスワークとお客さんの手拍子が会場中に広がっていく。ノリで始まった(!?)セッションからの流れで突入した『ユリイカ』でも、軽快なリズムに身を委ねながら、各々が気持ちよさそうに肩を揺らす光景が何ともほっこりする。
 

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「始まりましたね~。ホントに素敵なところで。でも、平地でやってよって感じ?(笑) ここは散歩コースの1つなんで、その雰囲気をちょっとでも楽しんでもらえたらなと。…え? みんな基本ニヤニヤしてるんやけど何なん? チャック開いてる?(笑)」
 

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 と、何だか照れくさい表情を浮かべる彼だったが、ニヤニヤの原因はチャックではなく(笑)、ここまで重ねてきた歌声が、何とも心地よいから。『白い手紙』といい、続く『レインダンス』といい、どんな切ない風景を切り取ってもどこかにぬくもりが残る彼の歌は、会場の森のホールにもベストマッチ。「眠たくなってくると思うんで、全然寝てくださいね(笑)」なんてMCも、なきにしもあらず!?(笑)
 

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 『雨宿り』では「ここは声が響きますので、コーラスやってみますか」と、お客さんも巻き込んでの今村合唱団が急遽結成。「この街シリーズも3回目を迎えることになりました~こんな高いところまで来てくれてありがとう~♪」と即興の歌詞で感謝を述べながら、会場全体にラララ♪のあたたかい歌声とムードがじっくりじわじわ染み渡っていく。躍動感溢れるビートに乗って『HAPPY』を披露しつつ、「(この会場は)“声が上から降ってくる”と言われてますけど、そんな感じします? 今日はカーテンも開けてるから、眺めもすごくよくて」と、今日の舞台についてアテンド。そして、“この街”シリーズ初回の特典音源だった『空想クラッシュ』は、「ちょっとCDとは違う感じに」と、2本のアコギとカホンが絶妙に絡み合う、アコースティックにフルチューンナップしたアレンジでお届け。

imamuramotorsreport2_rightyori.jpg 続いて披露した切なき名曲『プリン』、『帰り道』のミドルチューン2連発は、ウッディで優しい空間ゆえ、そのギターの一音一音が、その鼻にかかった甘い歌声が、より胸に迫りくるよう。そして、『BGM』での集中力と求心力は目を見張るものがあり、まるで寓話の世界にいるような錯覚すら起こさせる、これぞ楽曲×会場のシチュエーションの妙。彼がなぜ“この街”シリーズを続けるのか、この場所を選んだか、1つのアンサーとなるハイライトだった。
 

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 あまりの心地よさに子連れのお客さんの子供たちもすやすやと眠る中(笑)、「じゃあ子守唄代わりに」と披露した『home waltz』は“まさに”なタイトルで、少しずつ陽が陰っていく光景と共に、パフォーマンスと会場がグイグイと加速度を増して親和性を高めていくのが分かる。ここで、会場のムードに合わせいつもよりシュッとした衣装をまとったサポートのケンヤ(g)をいじりつつ(笑)、「前回(のパッケージ)が“残念だった”と、そんなおしかりの声を受けたかどうかは分かりませんが(笑)、夜中にこそこそ作りました」と語ったのは、装丁もバッチリキメた、この日の来場者特典音源となる『あこがれ』。
 

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「皆さんは何かに憧れたりしますか? 僕はあんまり“憧れ”がなくて、“誰かみたいになりたい”というのはなかったんです。でも最近、自分が最初に決めたことを続けてるのは、一種のずっと憧れの中にいるような…。ラジオで曲をかけてもらったり、ワンマンライブにこうやってお客さんが来てくれたりするのは、僕が音楽を始めた頃に思った憧れの中にいると思って。そういう日々がこれからも続いていったらいいな、自分がその憧れの中にずっといれたらいいなと思って作った曲です」
 

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 ここに新たなグッドメロディの誕生を感じると共に、このシリーズが今村モータースというシンガーソングライターに良曲を書かせる大きな装置として機能していることをまざまざと感じながら、お次は彼の音楽人生のテーマソングとも言える『点と点』を。楽曲の力もさることながら、時間の経過が樹木が年輪を重ねていくように好転反応を示す会場との相乗効果がたまらない。音に包み込まれるような体感が、聴く者を楽曲の世界観に没頭させてくれる。
 

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「残すところあと2曲です。(沈黙)ここで“えー!”とか言って欲しかったな。これ家に帰って絶対泣くやつやん(笑)」なんてMCが飛び出すのも、歌にどっぷり入り込んだお客さんだからこそ?(笑) 
 

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「僕の完全なるわがままにお付き合いいただきありがとうございます、本当に楽しかったです。次は、平地で(笑)」

 そして、ラストは『thank you for the musicfan』と「“この街”シリーズのテーマソングとも言える」『この街の夕暮れと僕の散歩道』でエンディングへ。美しいハーモニーと手拍子の共演で聴かせたアンコールの『feel』まで、終始グッドヴァイブな空気が会場を満たしながら駆け抜けた2時間だった。
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by はやしまこ(maco-j)

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(2016年7月29日更新)


Check

Set List

ロープウェーに乗って非日常へ
“この街”シリーズ第3弾!

 
『今村モーターワンマンショー
「この街のハーブ園と空中散歩」』
12月20日(日)
at 神戸布引ハーブ園 森のホール

01. タワー
02. メロディ
03. ユリイカ
04. 白い手紙
05. レインダンス
06. 雨宿り
07. HAPPY
08. 空想クラッシュ
09. プリン
10. 帰り道
11. BGM
12. home waltz
13. あこがれ
14. 点と点
15. thank you for the musicfan
16. この街の夕暮れと僕の散歩道
ENCORE
17. feel

Profile

いまむら・モータース…地元神戸を中心に活動。ライブハウス、カフェ等、幅広い場所で歌いつつも、『COMIN'KOBE』等関西主要イベントにも毎年出演。’13年にリリースした1st アルバム『夢見gachi商店街』が、新人でありながら各地CDショップにてオススメアーティストとして展開され、好調なセールスを記録。これを受け、’14年9月3日には2ndアルバム『おかわりのかわり』を発売。恋人に限らず、友達、親、子etc遠くに住む大切な人に向けたという同作収録の『点と点』が、地元Kiss FM KOBEの同月の推薦曲“HOTRAXX ”に選ばれ、さらには9月26日付ウィークリーチャートでは1位を獲得するなど、今注目のシンガーソングライターである。

今村モータース オフィシャルサイト
http://i-motors.info/
 

Live

お次は舞子公園の洋館を舞台に
入場無料の2回公演で!

 
『今村モーターワンマンショー
「この街に架かる橋と僕の帰り道」』
▼7月30日(土)14:30/16:00
舞子公園 旧武藤邸 テラス
入場無料(1ドリンクオーダー)


Column1

北野サッスーン邸が
昼夜で劇的に景色を変えた
今村モータースの大いなる挑戦
神戸を舞台に情景を切り取る
ライブシリーズ第2弾
『この街の異人館とふたつの灯り』
をレポート!

Column2

変わらないでいるために、
変わり続ける。ルーツ、震災
ギター職人の道、dozens
そして神戸――ひらめきという
羅針盤を手に点と点を線にする
今村モータースの流浪の音楽人生
を語る撮り下ろしインタビュー