インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「これは、はじまりのアルバムだと思っているので」 EDMという劇薬を大胆注入した新感覚ロックアルバム 『しるぶぷれっ!!!』を、戦い続けるThe Mirrazが語る! 畠山承平(vo&g)インタビュー&動画コメント


「これは、はじまりのアルバムだと思っているので」
EDMという劇薬を大胆注入した新感覚ロックアルバム
『しるぶぷれっ!!!』を、戦い続けるThe Mirrazが語る!
畠山承平(vo&g)インタビュー&動画コメント

 メジャーレーベルを離れ、昨年10月に自主レーベルDEATH PYRAMID RECORDSより第一弾ミニアルバム『マジか。と つーか、E.P.』を発表。EDMサウンドにヒントを得て新しいスタイルを打ち出したThe Mirraz。続いて、今年2月にはメジャー在籍時以来となる約1年4ヵ月ぶりのフルアルバム『しるぶぷれっ!!!』を発表したが、何故EDMサウンドに踏み切ったのか、そして今、音楽シーンに対して何を思うのかを、4月15日(金)心斎橋JANUSでのリリースツアー大阪公演を前に、畠山承平(vo&g)に率直に語ってもらった。



EDMってギャルとかギャル男が聴いているイメージの
チャラいカルチャーだから、取り入れやすくはなかったけど(笑)
 
 
――『しるぶぷれっ!!!』は、去年10月発表のミニアルバム『マジか。と つーか、E.P.』の流れを汲む作品になっていますよね。サウンドに全編的にEDMが取り入れられていて、このアイデアは雑誌『ROCKIN'ON JAPAN』の山崎洋一郎編集長の提案と聞いたんですが。
 



「去年の2~3月くらいに山崎さんからEDMを薦められて実際に作り出して、『マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。』(M-1)が出来たときに、何かいけそうだなと。その後、30曲くらい作って分かりやすいものだけを残した感じかな。EDMってギャルとかギャル男が聴いているイメージのチャラいカルチャーだから、取り入れやすくはなかったけど(笑)。でも、初期のEDMにはゴリゴリのサウンドもあったので、そういうEDMを取り入れたかった。発想的にはバンドサウンドにヒップホップを取り入れたミクスチャーが流行った感じに近いというか。当時だって最初は“ロックにヒップホップ? ミクスチャーって何!?”という感じだったと思うんです。まぁこのアルバムも7曲目辺りからは別にEDMじゃなくなるんだけど(笑)」
 
――確かにEDM云々じゃなくバンドサウンドにシンセが新たに導入され、単純にカッコいいと思いました。『葬式をしよう』(M-8)『いつでも死ねる』(M-11)とかは、テンポもゆるやかで沁みる曲ですしね。
 
「ゴリゴリのシンセのサウンドが入るのはカッコいいと思ったけど、中身がすっからかんの盛り上がる曲を作りたいと思ったわけじゃないから(笑)。意識的にEDMを取り入れるバンドもいなかったしね。シンセを楽に取り入れられるようになって、先に作ったトラックに引っ張られるように歌詞も出来るようになって。特に『葬式をしよう』は適当な歌詞を乗せたくなかったんで悩んだし、ただのラブソングにはしたくなかったんで。歌詞に関しては常に“ミイラズらしさ”を考えているんだけど、4thアルバム『言いたいことはなくなった』(‘12)から状況がガラッと変わって、ラジオやテレビで流しにくいと周りから言われて。それだったら意味がないし、次のアルバムからメジャーに行って、より歌詞を考えるようになったけど、“ミイラズらしく歌詞を書いて”と言われて、書いたら書いたで“テレビやラジオで流せません”と言われる。“ミイラズらしさ”と“自分らしさ”の差も、そのときに感じるようになったかな。お客さんがミイラズに求めるものもあるし。そうやってメジャーの頃に“ミイラズらしさ”がよく分からなくなって、ここで戦うのは難しいなと思った。だから、『葬式をしよう』や『いつでも死ねる』は、もう“ミイラズらしさ”を考えていない。自分でもこの2曲はすごく好きで、特に『いつでも死ねる』のサウンドは一番やりたかったことだから。シンセは18歳くらいからいじってるけど、ダサくないサウンドを出すのが難しかったし、ずっとシンセサウンドへのこだわりはあったんで。歌詞は自分らしいと思うけど、掘り過ぎちゃったかなとも思う」
 
――僕もこの2曲が本当に好きで、いわゆる業界やメインストリームは求めていないかもしれないけど、伝えたら必ず届く楽曲だと思うんですよ。
 
「俺も推し曲にしたかったんだけど、今流行のフェスブームに乗っかった盛り上がる曲はこのアルバムにはあんまりないから、反対側に向かっているのかなとは思う。結局、アルバムを作ってもシングル曲や推し曲だけがYouTubeに上がって、みんなそれしか聴かないから。前はもっとアルバムの統一性を考えていたんだけど、アルバム全体を通して聴いてくれる時代ではもうないだろうし。まぁ年齢もあるのかな。30歳を越えてないと、『葬式をしよう』とかは分かりにくいのかな…『パンドラの箱、ツンデレっすね』(M-5)や『マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。』がミーハーで分かりやすいのも、分かるんだけど…」
 



――ミーハーと今言いましたけど、『葬式をしよう』や『いつでも死ねる』と比べたら分かりやすいというだけで、ちゃんと深い楽曲だしね。
 
「いいバンドは推し曲でちゃんとよさが垣間見えるけど、日本のバンドは今はどれも同じに聴こえるから。正直、うちやthe telephones、THE BAWDIESとかが出てきたときに、日本の音楽シーンは変わっていくと思った。でも、結局全然変わらなくて、もういなくなったバンドもいるし、そういうもんだったのかな…音楽性は高いけど売り上げは低いの繰り返しで、うちやthe telephonesとかもフェスでは盛り上がるんだけど、表面的な部分だけが目立っちゃったというか。でも、あの時代がなかったら今のシーンはないと思うから」
 
 
とにかく今は音楽=フェスだし、そうなると若い人しか聴いていない
だからと言って、コアなファンしか聴かない音楽でも意味がない
 
 
――ここまで表面的な盛り上がりでしか音楽が受け入れられない状況になるとは、僕も思っていなくて…。
 
「90年代ってエンタテインメントがテレビとラジオしかなくて、CDを買って、カラオケで楽しむ、そんな感じだったと思うんです。でも、今はTwitterがあって、LINEがあって、そんな中で音楽に何を求められているのかなと…。音楽で小難しいことを考えたり思ったりするのはやめにしようと、もう無意識になっているというか。例えば、政治的なテーマを取り扱った音楽とかを聴きたくないんだろうね。考えたくないというか」
 
――音楽をきっかけに何かを考えることって、普通にあると思うんです。今はラブソングに自分を投影することすらなくなって、ただ騒ぎたいだけというか…。
 
「ロックバンドのグサッと刺さるラブソングでの大ヒットも、RADWIMPS以降ないだろうしね。今はCDもろくに出していないのにライブには1000人来るバンドとかが増えていて、何で?と思うけど。時代の変化についていけていない…本当はライブせずに、音源だけ作っていたいぐらいだから、困ったな~と(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) でも、ミイラズのライブは盛り上がる上に、ちゃんとグッとくるじゃないですか。
 
「ライブでは全ての言葉を伝えることを常に考えているし、ライブのクオリティはずっと気にしていますね。ギターを持って歌うのはカッコいいけど、衣装にこだわってるからギターを持ちたくないなとも思うけど(笑)」
 
――個人的には次のモードが楽しみで、ミイラズのまっすぐなメロディ、まっすぐな言葉、シンプルでストレートなラブソングが聴きたいです。
 
「気持ち的には生楽器でやりたいから、もうEDMには飽きていて(笑)。でも、このモードであと2年ぐらいは続けないと、多くの人に伝わらない。日本ではアルバムとそのツアーだけで終わっちゃうので。とにかく今は音楽=フェスだし、そうなると若い人しか聴いていない。だからと言って、コアなファンしか聴かない音楽でも意味がない。でも、まずは同世代の人にも音楽を、ミイラズを聴いてほしい」
 
――畠山くんがちゃんと前向きに伝え、届け、広げる気持ちを持って戦いに挑みつつも、ちゃんとシーンにムカついているのも分かって、今日は嬉しかったです(笑)。
 
「ムカついてるよ、そりゃ(笑)。でも、戦えるだけいいよね。戦い続けられるなら。これは、はじまりのアルバムだと思っているので」
 
 
Text by 鈴木敦史
 




ライター鈴木淳史さんからのオススメコメントはこちら!

「彼らに初めて会ったのが’10年で、もう付き合いは6年になる。陳腐な言葉で言うと“ビッグマウス”になるが、畠山くんのインタビューは真実を突いた上での野望をしっかり語るので、読み手としても本当に魅力的な人であった。実際、自分がインタビュアーになってみて、より彼の言葉に惹かれて好きになってしまった。ただ、1つ言えるのは驚くくらいに不器用な人だ。というか、彼だけでなく、この世代、つまり’10年代前半の人たち、The Mirraz、the telephones、THE BAWDIES、毛皮のマリーズ、andymori、神聖かまってちゃんといったバンドも、そうなのかもしれない。彼らが出てきたとき、明らかに’90年代のバンドの意思を引き継いだ上で、自分たちの音楽を鳴らしてくれると確信した。ちょうどフェス文化も定着して、ようやく日本の音楽シーンが次の段階に行くと本気で思っていた。確かに日本のフェスシーンは定着して盛り上がっているが、馬鹿騒ぎをするだけで胸騒ぎまではつながらなかったように思う。フェスの観客の中心となっているキッズたちからしたら、音楽に込められた想いよりも、只々騒ぎたい暴れたいだけなのかもしれない。先程挙げたバンドたちは時代の仇花となったとしか思えない。ただ、礎を築いたのは彼らであるし、彼らのフォーマットに基づいた上で、今の若手バンドたちはキッズを只々騒がせて暴れさせているようにも思う。個人的には憂いしかないのだが、畠山くんと話していると、いつも現状を理解した上で、何とかひっくり返そうとしていることが伝わってくる。彼はふてくされていないし、諦めていない。ムカつきを持ったままで、前へ前へ上へ上へと強く進もうとしている。この移り変わりが早い音楽シーンで戦えていることに感謝しつつ、『しるぶぷれ!!!』を“はじまりのアルバム”だと言い切ってくれたことが本当に嬉しかった。是非とも、このインタビュー読んで、畠山承平という男を体感してください。もちろん、楽曲も聴いてください。『いつでも死ねる』は、すごく思想的な曲です。こういう曲が普通に聴かれたら、もっともっと日本の音楽シーンはエキサイティングになるし、僕も伝える届ける広げる努力を、裏方として全力でしたいと思っています」

(2016年4月13日更新)


Check

Movie Comment

新作への想いと京都のラーメン話(笑)
畠山承平(vo&g)からの動画コメント!

Release

バッキバキのシンセが全編で機能!
6曲のリミックスを含む濃厚な全18曲

Album
『しるぶぷれっ!!!』
発売中 3000円
DEATH PYRAMID RECORDS
DQC-1514

<収録曲>
01. マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。
02. まざーふぁっかー!!!
03. え?それはアレですか?
04. イヤーワームラブソング
05. パンドラの箱、ツンデレっすね
06. つーか、っつーか
07. いきなり告白とか
しないほうがいいと思う
08. 葬式をしよう
09. なぁ?なぁ?なぁ?
10. 土曜日の原宿マジでクソ
11. いつでも死ねる
12. もしも過去に行けたなら
13. MA・ZI・CA!(IKINARI Remix)
14. TUuuuuuuKA!(DOOPE Remix)
15. PA・N・DO・LA!(SUPER Remix)
16. SO・U・SHI・ KI!(BLACK Remix)
17. SHI・NE・LU!(HOUSE Remix)
18. MO・SHI・CA・CO!(MAIAMI Remix)

Profile

ザ・ミイラズ…写真左より中島ケイゾー(b)、畠山承平(vo&g)、新谷元輝(ds)、佐藤真彦(g)からなるロックバンド。’06年9月に畠山が中心となって結成。’08年12月に1stアルバム『OUI! OUI! OUI!』を発表し、洋邦ロックファンから一躍注目を集める。’12年7月にはメジャー移籍を発表。シングル収録曲『気持ち悪りぃ』は、畠山も多いに影響を受けたサザンオールスターズ桑田佳祐氏が選ぶ今年のベスト20に6位でランクインするなど話題に。’15年10月には自主レーベルDEATH PYRAMID RECORDSより第1弾ミニアルバム『マジか。と つーか、E.P.』を発表、EDMにヒントを得て新しいミイラズのスタイルを打ち出した。最新作は、’16年2月10日にリリースされた7thアルバム『しるぶぷれ!!!』。

The Mirraz オフィシャルサイト
http://the-mirraz.com/

Live

ツアーも終盤戦で間もなく大阪へ!
その後は東京で自主企画も開催

 
『The Mirraz 2016SS TOUR
「汁不符列!!!」』

【千葉公演】
▼2月24日(水)千葉LOOK
【長崎公演】
▼3月04日(金)スタジオDO
【福岡公演】
▼3月05日(土)LIVE HOUSE CB
【香川公演】
▼3月11日(金)DIME
【岡山公演】
▼3月12日(土)岡山ペパーランド
【宮城公演】
▼3月25日(金)仙台CLUB JUNK BOX
【北海道公演】
▼3月27日(日)BESSIE HALL
【石川公演】
▼4月01日(金)金沢vanvanV4
【新潟公演】
▼4月02日(土)GOLDEN PIGS RED STAGE
【愛知公演】
▼4月09日(土)エレクトリック・レディ・ランド


【広島公演】
チケット発売中 Pコード283-249
▼4月14日(木)19:00
広島・4.14
オールスタンディング3500円
夢番地広島■082(249)3571
※未就学児童は入場不可。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード283-173
▼4月15日(金)19:00
心斎橋JANUS
オールスタンディング3500円
GREENS■06(6882)1224

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


【東京公演】
チケット発売中 Pコード283-081
▼4月17日(日)18:00
LIQUIDROOM
オールスタンディング3500円
VINTAGE ROCK■03(3770)6900

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


【東京公演】
『PYRAMID de 427 part9』
チケット発売中 Pコード293-047
▼4月27日(水)19:00
新宿MARZ
オールスタンディング4270円
[共演]四星球/Su凸ko D凹koi
VINTAGE ROCK■03(3770)6900

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 

Column1

不安や迷いを乗り越えて
今バンドとして理想の姿へ――
追加公演@なんばHacthを前に語る
『OPPORTUNITY』インタビュー

Column2

『選ばれてここに来たんじゃなく、
 選んでここに来たんだ』
'10年代のロックシーンを刺激する
The Mirraz畠山承平(vo&g)の
“ものづくり”のプライド
とスタンスに迫るインタビュー