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ラブレター・フロム・馬場俊英 
今の気分をナチュラルに投影した
最新作を携えツアー終盤戦で大阪・神戸へ! 
『LOVE SONGS』インタビュー&動画コメント

 昨年、キャリア初の2枚組であり、様々なアイデアやチャレンジ精神を取り入れたバラエティに富んだアルバムを発売した馬場俊英。そんな大作から一転、「毎年1枚ぐらいリリースできればと思いながら今年で通算12枚目(笑)」と語るように、長いキャリアを誇る彼が今、ポップスとしては王道と呼べるテーマであるその名も『LOVE SONGS』をリリースした心境とは? 同作を携えてのツアー終盤戦を控えている彼が、心が穏やかになるような温かな最新作やライブについて自然体で語ってくれた。 

「馬場俊英だからこうなんだ」というのを敢えて盛り込まなかった

シンプルといっても何かは違うし、そこがきっと自分の味だから

 
 
――まずは今回の作品に関して。今作のタイトルはずばり『LOVE SONGS』。王道でありながらも、一見避けられがちなタイトルのようにも思えますが、キャリアを積み重ねた今、どうしてこのタイトルの作品をリリースしようと思われましたか?
 

「タイトルは一番最後に考えたんですが、前作にアルバム2枚組の『馬場俊英 LP1~キャンディー工場』というアルバムをリリースしたんです。たくさん曲が入っていて、実験的なことや冒険やチャレンジを色々としたバラエティに富んだ内容で、あーしよう、こうしようってアイデアをジャケットにも盛り込んで作った作品だったんです。だからそこでやりたいことをやったなという気持ちもあって。その後しばらくして穏やかな時間が戻ってきた中で、自然に好きなように曲を作り、出来上がったらまとめて作品にしようという思いで今回の曲作りをスタートさせていきました。何かを無理に意図することもなく、レコーディングもナチュラルに進んでいって、アレンジにしてもオーソドックスな感じで、全ての物事が自然体で進んでいるなと思ったんですよ。だからタイトルもそういう流れに沿って付けようと思いました。ジャケットも本当に普通な感じで制作全体が自然の流れに乗ってという空気がありましたね」

 

――確かに耳なじみの良い楽曲ばかりで聴き手も自然体でいられるような作品でしたね。

 

「そうですね。それに『LOVE SONGS』というと、バラードがいっぱい入っているようなイメージを持たれると思いますが、必ずしもそうでもなくて、大きな意味でタイトルをつけましたね」

 

――大きな意味でとは?

 

「曲の内容が家族や恋人、友達など身の回りの人への思いと距離感を歌ったものが多かったので、大きなくくりで『LOVE SONGS』です」

 

――なるほど。詞もそうですが、爽やかな楽曲があったり普遍的で耳なじみの良い楽曲など『LOVE SONGS』といっても様々なサウンドの楽曲が入っていて。凝った音楽というよりは誰もが楽しめる音楽が満載ですね。

 

「毎年1枚ぐらいリリースできればいいなと思いながら作品を作っていたら、今回で通算12枚目になりました。毎年のものですが、今年はこんな感じっていうのかな。作り続けていくと作品に対しても考え方がだんだん変わっていくんですよ。前はね、自分なりのテーマがあってそこに到達したらリリースする、しなければ出さないという考え方もあったんです。それも一つのやり方だと思うんですけど、今はその都度その都度、その時のベストっていうのかな、気分とかを反映させた作品をリリースしたい。ライブでは、なんでもやるじゃないですか」

 

――なんでもやるっていうのは?

 

「コンディションが整わなければやらないっていうものでもなくて、その時の自分が出来る曲で、コンサートを観て頂くっていうね。だからアルバムも、その時感じたことや気持ちをストレートにまとめて出していく。なんとなく抽象的で申し訳ないのですが、そういう風に作品に対する考え方もこれまでとは変わってきましたね」

 

――なるほど。それでは今回のとこれまでの曲というのも作り方とか感じられ方が違うかったということですよね。

 

「そうですね。今回は、あまり説明のような注釈をつけませんでした。そのままストンとリリースして、後は聴いてくださる方にお任せする感じで。「馬場俊英だからこうなんだ」というのを盛り込まなかったというかね。本当にシンプルな言葉やメロディで、アレンジも凝るというよりはオーソドックスにまとめて。人によってね、シンプルといっても何かは違うはずで、そこがきっと自分の味のような部分として出ると思いましたので、とにかくシンプルな作品を作ろうという気持ちはありましたね」

 

 

その都度その人を包む空気感が反映されている楽曲も好き

それがシンガーソングライターの醍醐味でもあるしね

 

 

――そうした思いを形にされて完成した作品が『LOVE SONGS』なんですね。聴いていて、すごく温かな気持ちになりますね。心境の変化もあったりしたんですか?

 

「自然な変化はあったかと思うんですが…大きな変化はなくて。でも実は何か変化があったのかもしれませんが、そんなに意図はしなかったので気づいてないですね(笑)」

 

――あくまで自然な流れなんですね。

 

「はい。あくまで自然に作っていったという感じ。こうやったらうまくいくだろうというような事は考えなくて、今の自分にしっくりくる形や思いで進めていきました」

 

――いつまでに作らなきゃいけないという焦りもなく。

 

「そうですね。CDの存在価値も変わってきた今、僕は地に足がついたものをやってくのがいいと思うんですよね。無理に戦略を立ててコンセプチュアルにした方が有効的だった時期もあったかと思いますが、もっとミュージシャンの時々の気分のようなものを伝えていく…手紙のようなものっていうと分かりやすいのかな。今年こんなことを考え、今、こんな感じでいますというのを写真などでもバッと伝えられたらなと。あとは…歌詞とか、あくまで今はなんですが、あまり難しい言い方をせず、本当に日常で使っている言葉を使いながら曲を作っていく気持ちでいました。違った角度から物事をみてやろう、変わった表現をみつけようという感じではなく、生きていく中で使用しているような言葉で作って。音楽なんでね、色々な音のマジックがありますから、「ありがとう」という言葉ひとつでも、“いつ誰がどんなときにどういう風に言ったか”、そういうところをうまく音楽で滲み出せたらシンプルなものでいいんじゃないかってね。例えば…若い子がバルサミコソースとかで凝って作った料理と、家族のご飯を30年作ってきましたっていうお母さんの料理とではちょっと違うみたいな(笑)。当たり前の中で感じる感動もあると思うし、そういう気分を表現したかったんですよね。「なんか普通だね。でもいいね」っていう、ほっとする感じ。でも、来年また気持ちや考えが変わるかもしれないですし先の事は分からないけどね(笑)。仕事や生活とか色々な環境が変わったり必要となるものの変化って誰にでも起こりうることですから、新しいことが自分なりにしっくりくる時にはまた考えが変わるかもしれないですね」

 

――なるほど。

 

「道を歩いてて、草花がきれいで風が気持ち良くってと言える時もあれば、そんな場合じゃないよって時もありますよね。色々忙しいから草とか知らないよって時(笑)。でも朝起きて季節がちょっと変わったなと何気に感じられる時もあって、ありがたいと思える季節もあってね。きっと僕らも日々変わっているんですよね。そんな感じでアルバム作りも進んでいきました」

 

――なんか充実している感じがしますね。

 

「そうですね。コンサートもたくさんさせてもらって、作品も毎年リリース出来ますしね。一時期はもっと多く、もっと高くというのを目指すことを目標としていましたが、今やっていることを充実させる事を考えるようになってきて。一つ一ついいものにしていこうという、心境の変化はあったかもしれないですね」

 

――そういった気持ちも作品からにじみ出ているような。気持ちが温かくなるような楽曲ばかりでしたからね。

 

「先はわかんないですけどね(笑)」

 

――確かに(笑)。前作のような、実験的な作品を作りたいという気持ちの時がきたらまたそれはそれでね。

 

「そうですね。実はもっと暗い感じのインナーな楽曲も作ってみたいというのもあるんですよ。僕も音楽ファンで、色々なシンガーソングライターの作品を洋邦問わず聴きますが、やっぱり人それぞれの個性で作られていても、"時代”を感じることはすごくあるじゃないですか。60年代の、70年代のもの。2,000年以降のもの…って時代やその人達のキャリアの中のタイミングとかがあって。ファンになっちゃうとどの表情も愛おしいんですよね。元気なキャラクターだからずっとそういう風に進んでいくというのも、仕事としては良いと思いますが、その都度その人を包む空気感が反映されている楽曲も僕はけっこう好きなので、自分の作品にも反映させていきたいなと思いますね。それがシンガーソングライターの醍醐味でもあると思いますし」

 

 

力のある楽曲は特別な空気になってきちんと残っていく

お客さんや場がいつも答えを教えてくれます

 
 

――楽曲を通じて、色々な馬場さんの表情だったり表現だったりを知りたいと思われている方も多いと思いますが、今回はより自然体で今の馬場さん素の感じが表現されている作品ですね。

 

「はい。これからの時間や今後起きる事柄に対して前向きな思いを歌っていきたいという気持ちがベースにある上で、「こうありたいね。こういう風になったらいいね」という自分の音楽活動への語り掛けは常にやっていきたいと思っています」

 

――そんな作品を携えてのライブのお話になりますが、すでにツアーは始まっていますね。アコースティック編成の公演を経て、関西でいうと京都劇場でのバンド編成のライブもされてますが、始まってみてどんな感じでしょうか?

 

「今回、ほとんどニューアルバムの曲でツアーを構成していますので、これまでの楽曲ってほとんどしていないんですよ。ちょっと思い切って選曲したんですが、定番曲をしていないので、お客さんはどう感じているのかなと思っていたんです。でも意外と受け入れて、楽しんでくれているので良かったなというのがひとつ。後はレコーディングをしただけでは分からない、楽曲のことがライブをすることで色々分かってきました」

 

――ダイレクトに伝わってきますものね。

 

「そうですね。やっぱり意味のあるというか、そこにあるべき曲というのはそういう空気になるんですよね。自分たちが良いと思っていても聴き手の思いとすれ違っていたら「ああ、そうなんだ…」っていう反応が返ってくる(笑)。力のある楽曲というのは特別な空気になってきちんと残っていくし、独りよがりでは駄目なんだということを認識させてくれるんですよね。お客さんというか場がいつも答えを教えてくれます。今回もね、アルバムの曲を全部やって「この曲はこうだな」っていうのがすごくよく分かってきた。すごく面白いですね」

 

――気付いたことがライブを重ねていくごとにすぐに反映されていくものなんですか?

 

「自然とね。スタッフもふくめて僕たちが「これはよかったな」というのが、次のアルバムが出ても演奏したりする楽曲になりますね。少し難しいなと思えた曲はいったん寝かせて、また僕が年を重ね状況が変わってから演奏してみると、リリースした時よりも今だったんだと思えるほどかみ合ってきたりね。不思議なんですけど、パフォーマンスする歌手としての自分と、作り手としての自分が必ずしも一致していないんですよね。歌いにくい曲を作っちゃったりや、今の自分に合っていない楽曲を作ったりとか、現状の活動の流れに添ってない曲が出来てきたりとか。もちろん、今の自分とバッチリ合っている曲もありますし、それを何年後かにまた取り上げてもハマったりすることもある。歌い手さんでも自分で作る曲よりも他の方の曲の方が上手く歌える方もいるじゃないですか。だからきっとそこは別なんですよね。作るっていうのと、どういう心境でそこに立っているのかっていうのがね」

 

――楽曲によってお客さんの反応も違うかったともおっしゃられていましたが、今回の作品全体の手ごたえは?

 

「特に女性は「今回のアルバムは一番よかった」と言ってくださいますし、すごくしっくりきている方が多いみたいですね。でも同世代ぐらいの男性方は「もっと乱暴にやってくれよ」「次はもっと熱く汚れた感じで」みたいな(笑)。様々ですが、皆さんの言ってくださることは分かる気がします」

 

――アコースティック編成とバンドでの編成でのライブの気持ちの違いもありますか?

 

「アコースティックは歌の原点のようなものというか、歌の核心のところでやるというテーマはあって。そこでも色々な発見があるんですけど、歌中心に、言葉中心にゆっくり聴いて頂くというコンサートになっています。バンドは、もちろん人も多いですし、音も大きいし照明の効果とかもありますので、その辺りも意識しながら楽しんで頂くような内容になっていますね」

 

――京都劇場の時の印象は?

 

バンド編成では初日だったこともあり、僕たちも少し緊張感がありました。お客さんはすごく楽しんでくれて盛り上がりましたね。さらにこれからのライブに向けてこうしようとか新たに気づけることもできました」

 

――関西で言うと、あとフェスティバルホールと神戸国際会館での公演がありますね。馬場さんのフェスティバルホールの印象は?

 

「フェスティバルホールはね、すごく縁があって。やはり歴史がありますし、ミュージシャンの方たちにとっては特別だって言われますよね。一番初めにワンマンで立たせていただいたのが2006年ぐらいですが、まあ感動しましたよ。それからしばらくツアーの時はフェスティバルホールでさせてもらって。改装期間が4年ぐらいありましたから、正直、4年後に帰ってこれるか微妙だなって思ってたんですよね(笑)。でもオープニングシリーズでまた参加できて嬉しかったですね。その後もツアーの時は必ず」

 

――そんな縁ある会場と、さらには年末の神戸公演もバンドセットでライブをして下さいます。ライブを重ねるごとによりいっそう違った表情を見せてくださいそうですから、京都劇場に観に来られたお客さんもまた楽しめる内容になっていそうですね。

 

「そうですね。もちろん観え方も違いますし、ツアーも終盤なのでますます楽しんでもらえるようにしたいと思います。“次の方がイイ!”と思ってもらえるようにやっていますので、ファイナルの神戸公演まで最高のライブができるように頑張ります」




(2014年12月15日更新)


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Movie Comment

穏やかな人柄が滲み出てます
馬場俊英からの動画コメント!

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Release

Album
『LOVE SONGS』
DVD付き初回限定盤
発売中 4167円(税抜)
WP2L-30940/1
通常盤
発売中 3000円(税抜)
ワーナーミュージックジャパン
WPCL-11998

<収録曲>
01.さがしもの
02.アイルビーバック
03.思い出のレストラン
04.最後まで - Album version -
05.ラストフライト
06.ラストショー
07.はなればなれ
08.金曜日の天使たち
09.風になれ
10.風の中の I LOVE YOU
11.一番星
12.今夜

<初回限定盤特典DVDの収録曲>
BABA TOSHIHIDE CLIMAX BAND LIVE 2014 Tour FINAL
大阪城野外音楽堂でのライブを収録!

<DVD収録曲>
01.風になれ
02.思い出のレストラン
03.ラストフライト
04.青空
05.ラーメンの歌
06.最後まで
07.ひとつだけ
08.一番星

馬場俊英 オフィシャルサイト
http://www.babatoshihide.com/


Live

Pick Up!!

BABA TOSHIHIDE LIVE TOUR 2014 ~ 12 LOVE SONGS

チケット発売中 Pコード560-839
▼12月19日(金)18:30
フェスティバルホール

▼12月27日(土)17:30
神戸国際会館こくさいホール

指定席5700円
※6歳未満は入場不可。
キョードーインフォメーション■06(7732)8888

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Column

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