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奇天烈エモーショナルポップ、ここにあり
「僕らのニュー・スタンダード」『ARIKANASHIKA』を引っ提げ
全国ツアー中のSAKANAMONが吼える!
藤森元生(vo&g)インタビュー&動画コメント

 一聴しただけなのに耳の奥に居座り続けるほどの威力を持ったメロディながら、いつもどこかちょっぴりヘンな感触を残すSAKANAMONのロックナンバー。けど、その奇妙なキャッチーさに、スタンダードと成り得る確かな芯が合わさったら、もう怖いものはないんじゃないだろうか? 2ndアルバム『INSUROCK』('14)から僅か8ヵ月で届いたミニアルバム『ARIKANASHIKA』は、そんな会心の一撃と言える仕上がりだ。“前例が有れば安心か? 需要が有れば名作か? 肯定されれば正解か?”。タイトル曲『アリカナシカ』の中で、軽快なテンポに乗せて藤森元生(vo&g)が真顔で投げかけるこのクエスチョンに、あなたならどう答えるだろう? 自らを“負け犬”とさらしながらも、開き直りや強がりではなく、本気で“いい曲”を作ることに取り組んだSAKANAMONの堂々たるファイティングポーズ。藤森元生が意欲作を語ってくれた。

 
 
自分たちも安心したかったし、聴く人たちを安心させたかった
 
 
――2ndアルバムから半年しか経っていませんが、いい曲が出来てしょうがないという状況なんじゃないですか?
 
「いやいや。いつも“うへぇぇぇぇ~っ(泣)”ってなりながら頑張って作ってます。“今の内に、CDを出せる内に出しとこう!”っていう勢いで(笑)」
 
――『幼気な少女(イタイケナショウジョ)』(M-1)はライブのオープニングにもハマりそうな、とても気持ちのいい曲で。ライブで盛り上がることを想定してこういう曲を作られたんですか?
 
「『INSUROCK』のときは、いわゆる“疾走系ギターロック”とはちょっと違うヘンな曲を作りたくて、そういう曲をたくさん集めたアルバムだったんですね。けど、それで自分を見失いかねない状況になっちゃって、今回はちょっと初心に戻ったというか、僕らのニュー・スタンダードな1曲を作ろうと思って作ったのがその曲だったんです」
 
――それはこの1曲目に限らず、アルバム全体に言えることでもあるように思います。
 
「確かに。アルバムのテーマとしてもあったかもしれない。新しさとか、この1枚から聴いてもSAKANAMONがどういうバンドなのか分かるようなアルバムにしたかったし、インディーズ時代に最初に出したアルバム『浮遊ギミック』(‘11)の現代版のようなものになればいいなと思って作ってました」
 
――その後にメジャーデビューもあり、いろんな経験もして、今回は改めて自分たちの原点を見つめ直して?
 
「そうですね。もうちょっと分かりやすいというか、ヒネり過ぎないようにしようとは考えました。自分たちも安心したかったし、聴く人たちを安心させたかったというか、“自分たちの軸はここなんだぞ”と表明しつつ、“そこからさらにもっと進化してるんだぞ”感を出したかったんですね」
 
 
とにかく誰もやってなさそうなことをしたくて
 
 
――SAKANAMONの曲って、メロディの良さや藤森さんのファルセットにもすごく惹きつけられますが、それを台無しにするような歌詞が乗っている曲がたまにありますよね?(笑) 前作の『爆弾魔のアクション~願い~』はリズムは取りにくいけどカッコいい曲ですし、『エロス』のボッサやギターロックを行ったり来たり転調を繰り返すオシャレっぽい曲に乗る歌詞が“彼女が出来ない”だったり。
 
「はい(笑)」
 
――ただ、今作において『幼気な少女』の最後の一節の“痛い世の症状まで”で声を枯らすほど歌い上げる辺りや、『君の○○を××したい(キミノアレヲナニシタイ)』(M-6)の“言えない事までしたい気持ち ギターで弾けたらいいのにな”の次の瞬間からギターが炸裂していくその一瞬一瞬が、聴き手としてSAKANAMONをすごく信じられるところなんですよね。だからどんなフザけた曲をやっていても、真意は決してそこにあるんじゃなくて、楽曲全体や行間に潜んでいたりするのかなと。
 
「なるほど。それでいいと思います(笑)。僕は常に、おもしろい楽曲を作ることを心がけていて、それは発想とかギャグ的なものも含めて意識してるんです。だから、いい感じの曲なのに“なんじゃこれ!?”っていうアホみたいな歌詞を乗っけたり、そういうギャップでみんなを楽しませたくて。素直じゃないんでしょうね。ストレートな歌詞もそれはそれでいいと思うし、何を言っているのかが分かる歌詞も大好きなんですけど、全く意味がない歌詞とか抽象的なものも大好きで。僕自身、多分高校生ぐらいまでは聴いている音楽の歌詞の意味とかも特に考えてなかったと思う。とにかく誰もやってなさそうなことをしたくて、今回の『マザーラインナップ』(M-3)と『害虫』(M-5)はテーマが先にあったんで、いかに俺の気持ちを伝えるかに特化して歌詞を書いていきました」
 
――“お母さんはいつも納豆を買ってくるけど、本当は納豆が好きだから食べてるんじゃないんだぜ”という『マザーラインナップ』と、ゴキブリのことを歌った『害虫』ですね。そういえば『害虫』(‘02)という映画がありましたね。
 
「そことリンクさせたんです。その映画の主題歌をナンバーガールが歌ってたんですけど、僕はナンバーガールが大好きで、『害虫』っていうタイトルがカッコよくて大好きだったんですよ」
 
――さっきも言いましたが、『君の○○を××したい』もいい曲ですね。
 
「この曲はスペースシャワーTVで僕も出演させてもらったドラマ『スリーピース~とあるクソバンドが自然消滅するまで~』のために書き下ろしたんですけど、他の曲は、今年書き始めたものの中の選りすぐりを集めました。前作(『INSUROCK』)を発売する頃にはもう今回の曲を作り始めていて、『害虫』とか『幼気な少女』は1コーラス目ぐらいまでは出来てましたね。今年初めの頃は僕の才能が結構冴えてまして、その2曲は自分の中でもめちゃくちゃ強い2トップです。それ以降の楽曲のクソさと言ったらないですよ(笑)。次のアルバムのときにもこの2曲に戻ってきて欲しいぐらい」
 
 
僕らはまだ一石すら投じてないので
小石をガンガン投げてみたい
 
 
――レコーディング中にメンバー3人がもめたりする場面はあるんですか?
 
「基本的に3人とも仲がいいんですよ。『AGEINST』(M-4)はベースの森野(光晴)さんが作曲してくれて、普段僕が思い付かないべースラインやリフを作ってくれて、今までにないほどの盛り上がりでしたね。基本的には僕が曲を作ることが多くて、結構こだわりも強いのでいろいろ言っちゃうんですけど、今回は今までの中では一番3人で意見を出し合ったんじゃないかなぁ」
 
――タイトル曲の『アリカナシカ』(M-2)は四つ打ちですが、SAKANAMONがやるとその曲調にも“これが流行りなんだろ? 流行りのダンスミュージックをやってやるぜ”的な皮肉めいたものを感じてしまう。とは言え、ただヒネくれてたり、毒づいているんじゃなくて、歌詞にあるような狭いものの見方はしないし、当たり前だと思われている世の中のシステムに騙されないぞ、という意志表示のように感じられるんですね。
 
「僕は卑屈な精神でここまでの人生やってきてるんで、歌詞にもそれが出ちゃうんですよね。例えば、僕が今日着てるこの服、首の回りが破れたようなデザインのこのTシャツも、モデルさんみたいな人が着たらすごくオシャレに見えると思うんですよ。でも、僕の場合はそうじゃないですよね? 同じ服なのに(笑)。この曲で言ってることもそうで、着てるものとか上っ面で判断するんじゃなく、僕そのもので判断して欲しいんですよね。『幼気な少女』でも同じようなことを言ってるんですけど、人はいかに本質や核を捉えていない生き物であるかは、僕が子供の頃からずっと考えてたことなんですね。子供の頃からずっと、“お前はおかしい”って他人から否定されてきた人間だったんですけど、音楽の面でももちろんずっとそう思いながらやってきたし、“何でみんなはSAKANAMONの曲を聴かないんだ?”とか“何でこんな曲が1位になってるんだ?”ってずっと考えてましたね」
 
――SAKANAMONが1位になるまで考え続けるんでしょうか?
 
「でも、もし僕らが1位になるような世の中だったらちょっとおかしい気がするんですよ(笑)。そう思いませんか?」
 
――(笑)。メインストリームを食っちゃうぐらいの偉業を見てみたいです。
 
「僕らの曲はマイノリティに向けた楽曲が中心的とは言え、別にマイノリティの人が聴かなくても全然いいし、たくさんの人に楽しんで頂けたら…。ただ、これまでもロック界の多くの先輩方が頑張って一石を投じてますけども、やっぱりメインストリームは強い。僕らはまだ一石すら投じてないので、小石をガンガン投げてみたいですね」
 
 
ステージからお客さんを見ていていつも思うのは
音楽に対してこんなにも笑顔になれて、楽しそうに出来るってすごいなって
 
 
――歌いたいこと、表現したいことは以前と今では変わってきていますか?
 
「どうなんだろう? 僕、行き当たりばったりなところがあるんですよね。どういった曲を作ったらお客さんが面白いと思ってくれるだろう? というのは常に考えてるけど、曲作りは常にゼロの状態から考えていくから…“何を歌おう?”とか、“何かネタがないかな?”とかはいつも考えてます(笑)」
 
――“何時だって反骨を内に秘め”と『幼気な少女』で歌われてますけど、その反骨精神をパンキッシュに歌うことも出来ると思いますが、SAKANAMONはそうしないんですね。
 
「僕、やっぱりキャッチーなものが好きなんです。やいのやいのいう曲もやってみたいんですけど、僕の育ちではまだ無理かな(笑)」
 
――アルバムのツアーも始まっていますね。
 
「今回のアルバムはみんなと歌える系の曲もあるので、ぜひ楽しみに来て欲しいですね。ステージからお客さんを見ていていつも思うのは、音楽に対してこんなにも笑顔になれて、楽しそうに出来るってすごいなって。“CDの発売が楽しみです!”とか、買って聴いてくれて“すごくいい!”みたいな声を聞いたり見たりすると、そんな感受性豊かな若者がこんなにもいるんだ、っていうことに感動します。だって僕は、そういうタイプじゃないから(笑)」
 
――と言うと?
 
「どんなに好きなバンドのライブでも、我を忘れるぐらい“ワァ~ッ!”ってなったりはしないですね。それは、人前で踊れないとか、恥ずかしいとか、人混みが嫌だからいつも後ろで見ちゃうとか、僕の性格的なものでもあるんですけどね。だから、ライブに来る人ってすごいなって思うんですよ。あんなにたくさんの人の中で、わちゃわちゃしながらずっと立って待ってて、何であんな笑顔になれるんだろう?って。“そんなに俺たちの音楽いい?”って思いながら(照笑)。だから、感心します。音楽好きの若者たちに」
 
――人前で踊れない藤森さんが作る曲が、聴く人を躍らせるのも面白いですね。
 
「だったらよかったです(笑)。僕ら、最初に火が点いたのが大阪だったんですけど、大阪のお客さんはいつもあたたかくて、僕らがまだもっとペーぺーだった頃、ライブイベント『見放題』に出させてもらったときに、僕らに対する期待値がすごいのを肌で感じて。それが嬉しかったですね。そのおかげで成長させてもらったし、大阪でやるライブで僕ら自身が勇気づけられていた気がします」
 
 
Text by 梶原有紀子



(2014年11月17日更新)


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Movie Comment

大阪の夜について言及する(笑)
ふわっふわ動画コメント!

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Release

ハイエナジーに攻め立てる
全力ポップなミニアルバム!

Mini Album
『ARIKANASHIKA』
発売中 1500円(税別)
Getting Better
VICL-64203

<収録曲>
01. 幼気な少女
02. アリカナシカ
03. マザーラインナップ
04. AGEINST
05. 害虫
06. 君の○○を××したい

Profile

サカナモン…写真左より、木村浩大(ds)、藤森元生(vo&g)、森野光晴 (b)。’09年より現在のメンバーで都内を中心に活動を開始。ユニークなバンド名の由来は、「聴く人の生活の“肴”になるような音楽を作りたい」という願いを込めて付けられた。’11年にリリースした1stミニアルバム『浮遊ギミック』は、藤森の独特のテンポや美的センスが発揮されたユニークな歌詞と、疾走するギターサウンドが相乗効果を生みスマッシュヒット。翌’12年の2ndミニアルバム『泡沫ノンフィクション』ともども中毒性の高いシュールなポップ&ロックナンバーが詰まったアルバムとしてロングセラーに。同年12月には初のフルアルバム『na』でメジャーデビュー。藤森は今年6月よりスペースシャワーTVで放送されていたドラマ『スリーピース~とあるくそバンドが消滅するまで』に出演し、主題歌『君の○○を××したい』をSAKANAMONが手掛けるなど多彩に活躍中。10月1日には1stミニアルバム『ARIKANASHIKA』をリリース、11月4日の仙台を皮切りに対バンツアー『SAKANAMONのアリが対バンツアー2014』がスタート。

SAKANAMON オフィシャルサイト
http://sakanamon.com/


Live

残すは東名阪のみ! リリースに伴い
対バンツアーで全国行脚

 
『SAKANAMONの
 アリが対バンツアー2014』

【仙台公演】
▼11月4日(火)仙台MACANA
[共演]GOOD ON THE REEL
【札幌公演】
▼11月6日(木)mole
[共演]GOOD ON THE REEL
【広島公演】
▼11月10日(月)CAVE-BE
[共演]THE ORAL CIGARETTES
【福岡公演】
▼11月11日(火)DRUM SON
[共演]THE ORAL CIGARETTES
【高松公演】
▼11月13日(木)DIME
[共演]ねごと

Pick Up!!

【大阪公演】

Thank you, Sold Out!!
▼11月18日(火)19:00
心斎橋JANUS
オールスタンディング3000円
[共演]cinema staff
清水音泉■06(6357)3666
※未就学児童は入場不可。

 
【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード241-337
▼11月19日(水)19:00
池下CLUB UPSET
前売3000円
[共演]cinema staff
ジェイルハウス■052(936)6041
※未就学児童は入場不可。

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【東京公演】
チケット発売中 Pコード241-595
▼12月1日(月)19:00
LIQUIDROOM
オールスタンディング3000円
[共演]a flood of circle
スーパーキャスト■03(5573)2299
※未就学児童は入場不可。

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Column

幸福な中毒者続出!?
音楽との出会い、結成のいきさつ
メジャー1stアルバム『na』
要注目新人のヒストリーと
楽曲の成分を解析する入門編
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