空中ループ渾身のライブシリーズ『LOOP ECHO』第3弾!
老舗キャバレー跡の異空間・味園に、Polaris、アナログフィッシュ、
bonobos、ハルカトミユキ、People In The Boxが集った!!
“夏フェス編 -LOOP ECHO FES.-”再現レポート
京都発の音響ギターポップバンド・空中ループが、’14年に春夏秋冬を通して大阪で開催する自主企画イベント『空中ループ 4Seasons Concert 2014 [LOOP ECHO]』。2月には南港サンセットホールで、日の入の共に目の前に広がる景色が劇的に姿を変えるドラマチックなライブを展開した『LOOP ECHO 冬編 -夕日と海と弦楽四重奏-』、4月には守口ムーブ21内のプラネタリウムで、2億5千万もの星空をバックに闇と光を巧みにコントロールした新感覚ライブ『LOOP ECHO 春編 -星空を巡る音-』と、通常とは異なるシチュエーションの妙で、新たなライブの形とバンドの現在を見せてくれた空中ループ。そんな彼らの次なる挑戦は、自ら主催する『夏フェス編 -LOOP ECHO FES.-』! 舞台となるなんば味園ユニバースに足を一歩踏み入れるや否や、そこは異空間。一気に“昭和”へとトリップする老舗キャバレー跡だけあって、ライブハウスでもコンサートホールでもない、えも言われぬ雰囲気を醸し出す。この日は一連の冬編、春編のワンマンとは打って変わって、全6組のグッドチョイスなアーティストが集結。空中ループpresentsの夏祭り的な様相もあって、フードにレクリエーション(怪談話も!)にとオープン時から賑わいを見せた、『夏フェス編 -LOOP ECHO FES.-』をレポート!

この日のトップを飾ったのは、鍵盤とアコースティックギターのミニマムな編成で挑んだ、
ハルカトミユキ。ベルベットのような紅、彼女たちの世界観にも通じる群青、華やかな装いのピンク、そして闇の中で煌くミラーボール…ライブが進むにつれて次々にその様相を変える照明も、2人のライブを演出。そして、「もしもあのとき違う道を選んでいたら、もっといい生き方があったかもしれない。そうやっていつも行く先を間違えて、バッドエンドになった今を生きている」、「もしもっとなりふり構わず生きられたら、恥ずかしく生きられたら、大事なものを失わないで済んだかもしれない。もっとカッコ悪く生きられたら」…と、各楽曲の前に枕詞のように綴られるMCも、楽曲の世界へと引きずり込むのにこれ以上ない誘いとなってオーディエンスを魅了していた。
一転、「歌詞が飛びましたね、珍しい」(key・ミユキ)「フォローの仕方(笑)」(vo&g・ハルカ)「自分のことで精一杯だから(笑)」(ミユキ)なんて微笑ましい掛け合いもありながら、「今日は全て未発表曲、新曲で挑んでいきたいと思います。負けたくありませんので」(ミユキ)と、この日が実験的かつ挑戦的なステージであることを告げたのも印象的だった。「自分が誰なのかが分からなくなる。どんな人間で、何を信じてきて、何がしたくて、何がしたくなくて、今ここにいるのか。自分っていうものを辞められたらどんなに楽だろうと思う」と語り最後に披露された『リタイア』まで、クールな歌声の奥に潜む情熱、特異な存在感と物語性を存分に見せ付けたハルカトミユキが、『LOOP ECHO FES.』の幕開けを見事に飾ってくれた。

続いて、大きな拍手をもって迎えられたのは、
アナログフィッシュの3人。日常とステージとの狭間を何も感じさせないくらいに自然な佇まいで披露した、震災以降の今を切り取ったプロテストソング『抱きしめて』からライブはスタート。のびのびとステージ上で息をする3人は、リラックスした表情とは裏腹のごんぶとのバンドサウンドを放出。続いて強烈なビートと真紅の照明の相乗効果を見せた『はなさない』といい、斉藤(ds)の叩き出すマッシブなビートが扇動した『My Way』といい、不協和音の中にきっちりとメッセージを刻んだ『平行』といい、脂肪分ゼロのジャストなサウンド、ジャストな言葉が、フロアへとどんどん放り込まれていく。
ここで、「空中ループ、素敵なイベントに誘ってくれてありがとう!」(vo&g・下岡)との挨拶を挟んで、最近ではソロとしても活躍する佐々木(vo&b)にボーカルをスイッチ。優しき名曲『Good bye Girlfriend』のグッドメロディとコーラスワークの美しさには、オーディエンスの身体も自ずと揺れる。「じゃあ『Nightfever』という新曲を」と、ボーカルは再び下岡にスイッチ。この3日前に公開されたばかりのヒップホップ・フレーバー溢れる新曲をフロアに投下し、ラストは「メンツが最高だし楽しめると思うけど、今の倍くらい楽しんで帰って行ってください、ヨロシク(笑)」とのエールを残し、シニカルで力強いメッセージが突き刺さる『公平なWorld』でシメ。全7曲40分、今のバンドの充実度を見事に証明したステージだった。いや~いいバンド!

いきなりのクラップが巻き起こるのも、そりゃ当然。いきなりの代表曲にして名曲『THANK YOU FOR THE MUSIC』から幕を開けた
bonobosのライブ。一瞬にして祝祭空間となったユニバースに、腰にクル重量級のビートがズシズシ響き渡っていく。“アフリカの谷から武蔵野まで”、“吉祥寺から銀河まで”というリリックさながら非日常へと一気にトリップさせる強烈ダブにノックアウト必至の『リレー』、“ありがとうさよなら 更に言うと愛してる”と綴るポップソング『GOLD』と、リリックをオーディエンスに貫通させる歌声とそれを支えるバンドサウンドは、感動的なまでに黄金配合、素晴らしき絶景。
「とても素晴らしいイベントに、全身全霊で応えたいと思います。最後までよろしく!」(vo&g・蔡)と後半戦が始まるや否やの、生きる力に満ちた『グッドモーニング・マイ・ユニコーン』『三月のプリズム』の2連発はもう圧巻! パーカッシヴなビートに心躍る『光のブルース』では、オーディエンスも思わず手を振る盛り上がり。最後は蔡がギターを置きハンドマイクで、『うつくしいなまえ』を。ユニバースをダンスフロアに変えるハッピーなエンディングで、あっという間に全7曲を駆け抜けた、大満足のステージだった。

時計の針を刻むSEを背にステージに登場した
People In The Boxは、しょっぱなの神秘的で荘厳な『さようなら、こんにちは』から、自分たちがいったいどんなバンドであるかを一発で音で明示。いや、このバンドが持つオリジナリティが、一気に空気を変えたと言った方が正しいかもしれない。続く『親愛なるニュートン街の』といい、現代の寓話とも言うような世界観、3ピースで全ての物語を表現し切るトライアングルとしての機能は圧巻。そして、続けざまにニューアルバムから『翻訳機』、ニューシングルの『聖者たち』と、最新型のピープルも披露。ファンタジックな白昼夢×ユニバースという異空間に、オーディエンスもグイグイ引き込まれていく。
「どーもー! People In The Boxでーす!(エコーすごい(笑)) たくさんの方が白い目で僕を見てますね、そういうの僕大好きです(笑)。空中ループ、呼んでくれてホントありがとうございます!」(ds・山口)
「フェスに呼ばれることがまずないからね」(vo&g・波多野)
「野外が似合わないからかな?」(b・福井)
「残りの時間も全力でブッ殺しにいくからヨロシク!」(山口)
緊張感溢れるプレイとのギャップ萌えMCを経て(笑)、後半戦も『ニムロッド』『球体』と、バキバキのベースラインと躍動のリズム、サイレンのように咽び泣くギターを掻い潜る神々しい歌声と、その異端ぶりと中毒性を存分に発揮。美しき狂気を振りまき突入したラストの『気球』まで、徹底して唯一無二、アヴァンギャルドでポップなPeople In The Boxだったが、3人が向き合って演奏する様は、まさにバンド。貴重なフェスでのステージだった。

いよいよ『夏フェス編 -LOOP ECHO FES.-』も終盤に。ここで登場するのは空中ループの敬愛するバンドであり、プロデュースを手がけたオオヤユウスケ(vo&g)擁する
Polaris。アンビエントな電子音に導かれライブの冒頭を飾ったのは、浮遊感漂うあの歌声と、エッジィなギターが心地よく脳を刺激する『12時間』、救難信号のようなギター音とうねりまくるへヴィなベースラインがカオティックな『とける』と、どっしりしたグルーヴにいきなり持っていかれるこの感覚、いや~さすがです!
「大阪久しぶりに来ました。呼んでいただいてありがとうございます、最高ですねユニバース」(b・柏原)
「いいですね、(柏原)譲さん主導のMC(笑)」(オオヤ)
なんてアットホームなMCを交えつつ、この日は元来ベーシストであるクラムボンのミトがギター&鍵盤、同じく伊藤大助がドラムという豪華編成についてもご紹介。そして後半戦は、鐘の音のように響き合う美しいギターが導く『光る音』で、ユニバースを一気に感動で包み込む。
「この後、今日主催の空中ループがライブなんだけど、すごく準備が大変で、寝てないみたいで。だから早くやってあげないと…って、何でこんなMCをしてるかと言えば、あと1曲なんですよね(笑)。4曲しかやらないのに時間は結構経ってる(笑)。空中ループ、こんなフェスをやるなんてすごいな、なんて今日は親のような視点で(笑)。じゃあ最後に『深呼吸』を」(オオヤ)
軽やかなグッドメロディとそれを支える強力なグルーヴに愛情を添えて、しっかりと空中ループにバトンを託したPolaris。そしていよいよ、『夏フェス編 -LOOP ECHO FES.-』を締め括る真打、空中ループが登場!

ユニバースの後方まで埋まった会場を、感慨深げに見つめる松井(vo&g)。彼らがこの1年、音楽人生を懸けて取り組むプロジェクト『LOOP ECHO』シリーズの中でも、最大キャパの会場、自らの一歩二歩先を行く多くのバンドを迎えてのフェスは、大きなプレッシャーもあったことだろう。そんな満場のオーディエンスを前にかき鳴らした、
空中ループの第一声は『光年ループ』。ドラマチックなサウンドスケープと切ないメロディは、続く『BIRTHDAY』でも加速していく。森(b)のリズミックなベースラインが主導権を握る『言葉では』は、自然発生的にクラップが巻き起こる、いい光景。
「『LOOP ECHO FES.』に来てくれてホンマにありがとう! めちゃくちゃ濃厚な時間を過ごしてきはったと思いますが、もうひと声だけお付き合いください。新曲やります!」(松井)

持ち味のポップセンスをギュッと凝縮したような夏ピッタリの新曲、そして、会場限定盤として毎回音源をリリースする『LOOP ECHO』の、夏編のテーマ曲となるのが、エレクトロな人力ダンスナンバー『STAND ALONE』! どこかオリエンタルなフレーバーがクセになる同曲や、続くボイスエフェクトを駆使した新曲は、これからの空中のループのライブのスパイスとなるべくダンスチューンと言えるだろう。それにしても、√thummのlio(vo&key)を鍵盤に迎えた5人編成で立て続けに新曲3連発と、主催フェスと言えども挑戦を止めない姿勢は彼ららしい。

「去年からずっと今日のことを考えてきました。初めてユニバースに来たときから、絶対にここでフェスをやりたい、今日出てくれたバンドとやりたいと思ってきましたが、ホントに自分たちにそんなことが出来るやろかって疑い続ける日々で。支えてくれたスタッフ、今日出てくれたバンドさん、そして、想像していた以上の景色をみんながくれました。楽しんでくれていたら嬉しいです。今日ここにいる1人1人に心を込めて歌います」(松井)
“心を込めて”…この日披露した『小さな光』はまさにそれで、誠実な想いと感謝がしっかりと伝わってくる感動的な光景は、『LOOP ECHO FES.』にふさわしいエンディングだった。

ここで、あたたかい拍手に送り出され、再びメンバーがステージへ。さらには、Polarisのオオヤユウスケも「16年ぐらい前の曲なんですけど大丈夫ですか?(笑)」と登場し、オオヤがLab LIFe時代に残した名曲『ステレオ』を一緒にカバーするという贅沢なシーンも! そして、最後の最後は、ユニバース中を巻き込む空中ループ的カーニバルソング『imago』で大団円へ。空中ループが待ち望んだ夢のような1日は現実となり、こうして幕を閉じた。
そして、次回『LOOP ECHO 秋編-劇場のキャンドルコンサート-』は11月22日(土)、石炭倉庫を改装した小劇場、大阪・弁天町 世界館にて開催。冬、春、夏編を終え、遂に『LOOP ECHO』シリーズのファイナルとなるこの日は、いったいどんなドラマが待っているのか!? 必見です!
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by ハブ(夜色きかんしゃ)

(2014年11月19日更新)
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