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諦める勇気を捨てて、弱さもコンプレックスもかき鳴らせ!
儚きシンガーソングライター見田村千晴の
素晴らしきメジャー1stミニアルバム『ビギナーズ・ラック』
はじまりのインタビュー&動画コメントが到着

 昨年リリースされたアルバム『I handle my handle』のインタビューで、初めて彼女と出会った。多くのミュージシャンがそうであるように、人見知りであろう彼女は1つ1つ不器用に、だがまっすぐな言葉でその作品を語ってくれた。あれから1年、変わりたくてもなかなかそうはいかない自分と状況に翻弄されながら、懸命に自らの歌を届けようとギターをかき鳴らしていた見田村千晴から、遂にメジャー1stミニアルバム『ビギナーズ・ラック』が届いた。「どんなに醜くて情けなくて逃げたくても、自分の人生は自分で引き受けなきゃいけないんだって、多分これはそういう作品です」。彼女は自身のブログにてこう語っているが、まさに、である。“一緒に暮らそう、なんて言わないでよ/平凡な私に きっとすぐに飽きてしまうよ”(『秘密』)、“すごく好きなのに 憎らしくなって/すごく楽しいのに 帰りたくなるよ”(『普通』)なんてかよわきカウンターを日常ちょい脇の視点でチョイスする言葉の温度は、出会ってしまったが最後、あなたの胸の奥底に、深く優しく突き刺さる。一方、リード曲の『悲しくなることばかりだ』で見せる“シンガーソングライターあるある”が如く光景を(笑)、“ステージでは今日も自己と事故を履き違えたライブ”、“居酒屋では饒舌に面白くもない自慢話が続く”と一刀両断する強さと覚悟もまた、彼女である。この1年の日々が、いや1人の女性でありシンガーソングライターの人生が、もつれあってもがいてたどり着いた『ビギナーズ・ラック』インタビュー。儚きメロディメーカーの出発点に、抱きしめたくなるような7曲が今、鳴り響いている。

ちーさまからのアルバム解説&関西話を動画コメントで!

――昨年末の『I handle my handle』のインタビュー時にはデビュー云々の話はなかったわけで。今年2月の東京ワンマン直前に今回のメジャーデビューの話が決まったみたいですけど、率直にどうです?
 
「信じられないというか、もちろん嬉しい気持ちはあるんですけど実際どうなるかも分かんないし、ハイなくなりましたって終わるかもしれない。今もそうですけど、あんまり浮き足立たないようにどこかで自制しながら、あの…疑いながら(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) でも、それって何か曲の世界観とか生き方にも通じてますね(笑)。
 
「そうですね(笑)。結構ビビりながら。よく言えば時間掛けてちょっとずつ積み上げてきたみたいな感じですけど、まぁここまでかかってしまった、ここまで来てしまったというのもあるので。そこに対する敗北感というか劣等感というか、コンプレックス的なところはすごくありますね。もし他の選択肢を選んでたら、今頃めちゃくちゃ稼いでたかもしれないし、分かんないけど(笑)。もう1つの人生みたいなものって、そんなの誰も分かんないじゃないですか。今自分がこうやって音楽を選択していることはもちろん幸せだと思ってるけど、それが全てではないというか。後から振り返ったときに後悔しないように、ちゃんと踏みしめて、ホントに一歩一歩進んで行かないとなって感じです」
 
――前回話を聞いたときも言ってましたけど、環境に対しても表現に対しても現状を変えていこうっていう想いがあったここ1年ですよね。
 
「何とか打開したいところはずっとありましたね。出来るだけシンプルに、ゴチャゴチャしてても綺麗にし過ぎない、みたいなところも、曲作りにおいてもサウンド的にもどうしたらそれが実現出来るか分からなかったところが、今回のプロデューサーの松岡モトキさんをはじめスタッフの方のおかげで、今回はだいぶ具現化出来たかなと。それはすごくよかったなと思ってます。結構もがいてはいたんで」
 
――そもそも、よりシンプルに、凸凹したものをっていう発想が明確になっていったのは何なんでしょう?
 
「何でしょうね…やっぱり自分が好きなのが、そういうシンプルなものだったり、時に痛々しいぐらいのリアリティだったりするので。『I handle my handle』を作る前ぐらいから、そんなことを思っていた感じですね」
 
 
綺麗にし過ぎない、着飾らない、お化粧し過ぎない
ホントにアコギと歌っていうアルバム
 
 
――このチームで作品を作っていこうとなって、ビジョンはありました?
 
「さっきの綺麗にし過ぎない、着飾らない、お化粧し過ぎない、それを口に出して言わなくてもちゃんと汲み取ってくださって。出来るだけシンプルに、音数も少なく、ホントにアコギと歌っていうアルバム」
 
――逆に言うと、アコギと歌に特化してシンプルにしていけばいくほどに、その歌だったり、言葉だったり、メロディが問われますよね?
 
「そう…ですね」
 
――アレンジでは誤魔化せないですから。そこに対する気負いみたいなものは?
 
「あんまり…気付いてなかった(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 何やったら今気付いたぐらい?
 
「今気付いたぐらいですね(笑)」
 
――それってレコーディング時に気付いてたら、めっちゃ重く感じてたかも。
 
「がんじがらめになってたかも(笑)。でも、結果そこはホントに自由に」
 
――あと、以前も割とストックがないというか、出し切り型って言ってましたけど…。
 
「同じくです(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 
 
「継続中です(笑)。崖っぷち(笑)」
 
――でも、『ラブソング』(M-1)は’08年頃に出来た曲なんですよね?
 
「はい。これだけだいぶお蔵に入ってました。ここ何年かはライブでも全然歌ってなかったですね。すごくストレートなので、何だか恥ずかしくって。でも、ホントにサウンドがめちゃくちゃカッコよくなったので、自分の中でもまた生まれ変わったというか」
 
――5年前の自分、恥ずかしくて歌えなかった曲と5年ぶりに向き合って、改めてどう思いました?
 
「うーん…感謝、書いててよかったなぁっていう。今またそうやっていいねって言ってくれる人がいることで、自分の曲に対する見方も変わっていって…逆に今だったら多分書けないなと思うので」
 
――うんうん。あと、『悲しくなることばかりだ』(M-2)なんかは歌詞が痛烈で。俺、もう知り合いのミュージシャンがライブ終わりに鳥貴族にいる絵が目に浮かぶわ~(笑)。
 
「鳥貴族!(笑)」
 
――だって、ここまで言っちゃうことって今までなかったですよね。この曲では、同じ道を歩んでる人だったり自分の感じるところを、明確に分かりやすい言葉で描いてますけど、俺はこの視点を見付けたこと自体すごいなと思いました。俺の取材メモには、“シンガーソングライターあるある”って書いてある(笑)。
 
「アハハハハ!(笑)  書いたときは、自分の中で今までと全く違うタイプの曲だとは思ってなくて。いろんな方の反応で、“あ、そういう風に、そんなにキツく取られるんだ”って結構意外でした」
 
――そっかそっか。結構みんな“よく言えたね~”みたいな。
 
「勇気いったでしょ? 怖くなかったですか? とか。でも、すごく前向きなメッセージだと思うので。まぁどうしても、Aメロの部分がインパクトとして残るんだろうなって」
 
――さっき挙げた一節はこの曲の一部でありこのアルバムの一部ですけど、それを歌えたのが去年からの進歩というか、責任を負っていく覚悟みたいなものも感じられたなと。
 
「そうですね。自分がどういうことを歌いたいのかは、よりハッキリしてきたのかなって思いますね」
 
――そして、この曲の後半では、そうは思っていても実際には言えない自分がちゃんと存在してる。そこがすごく見田村千晴だなって。あとこの曲の群抜きのメジャー感すごい(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) そこはもうホントに。ありがとうございます、もう皆様のお陰ですって感じです」
 
――あらきゆうこ(ds)、キタダマキ(b)、小林建樹(key)って、めっちゃ豪華やもんな~この参加メンバーは。
 
「もう、口開けて見てました(笑)」
 
――プロデューサーの松岡モトキさんと二人三脚の作業だったとは思いますけど、第一印象はどうでした?
 
「ん~と、地元が近くて(笑)。そういう部分でいろいろコミュニケーションも出来たし、すごく話も聞いてくださって。プロデューサーをガッツリ立てるのも初めてだし、最初は若干警戒心もあったんですけど(笑)、“カッコいいもの作りたいよね、それが一番だよ”って最初に言ってくれて、すごく安心出来たというか」
 
――それこそ、『悲しくなることばかりだ』は今回のチームだからこそ生まれた曲かも。
 
「そうですね、ホントに。それが一番新しい曲でリード曲になったのが嬉しいなって」
 
――最も古い『ラブソング』の次に最も新しい『悲しくなることばかりだ』が並んで、おもしろいもんですね。
 
 
結構曲に言ってもらってる感はありますね
 
 
――『秘密』(M-3)とかも、サビ後半の歌い方とかに特に“らしさ”があるし、曲としてのクセも含めて、ホントに歌とメロディでちゃんといい曲を書くっていう行為が具現化されていて。
 
「ありがとうございます(照笑)。これは今年の頭くらいに出来て、よくある“あの子たち一緒に住んでるんだって”みたいな、同棲のきっかけというかそういう話になる瞬間ってどんな感じなんだろう?って想像して。何かいいなぁ、曲にしたらおもしろいかもと、だいぶあたためていた曲ですね」
 
――住んでからの話を描くことはあるかもしれないですけど、このはじまりの瞬間にスポットを当てるというのは。
 
「確かに。何かそういう隙間産業みたいな視点に気付いた瞬間ってめっちゃ上がりますね(笑)」
 
――それにしても、冒頭から濃厚な曲が続くなぁって感じですね。
 
「(取材メモを見付けて)“かわいい”って書いてる(笑)」
 
――あ。『私の良いとこ』(M-5)ね(笑)
 
「アハハハ!(笑) かわいい(笑)。ザックリ(笑)。嬉しいです」
 
――この曲はすごく素直な感じがしましたけど。
 
「これはそうですね、かわいいと思います(笑)。こういう女子ってかわいいなって思いながら書いてました」
 
――実際言われたらもう超面倒くさいですけどね(笑)。
 
「アハハ!(笑) ですよね」
 
――フィクション/ノンフィクション入り乱れて、やっぱり曲にすることで言葉に出来ることってありますよね。
 
「ありますね。結構曲に言ってもらってる感はありますね」
 
――前回の取材では、こんなことよく言ったねとか、恥ずかしくないの?みたいなことまでは思わなかったですから。今回ってそういうことが頭をよぎる。シンガーソングライターとして前進した感じがすごくしました。
 
「いろいろ自分が分かってきたり、周りが分かってきたりしてるのかなぁって。それによって自分がどういう歌を歌いたいかが、分かってきたのもあるかもしれない」
 
――より剥き出しなもの、飾りのないもの。でもその怖さには気付いていなかったっていう(笑)。
 
「そうそう。まぁ『ビギナーズ・ラック』ということで(笑)」
 
 
やっぱり“見田村千晴はライブが武器だ”って言ってもらいたいですし
もっと自分でも自信を持ちたい
 
 
――あと、『普通』(M-7)に関して言えば、それこそライナーノーツを読む前に曲を聴いて、“普通という議題に日本一執着しているシンガーソングライター”ってメモったんですけど(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) 面倒くさい(笑)」
 
――普通ということに対して強烈な感情がやっぱありますよね。
 
「悩みが一番相対化しているような言葉ですね。何でしょうね…つらいですね(笑)」
 
――普通って言われたくないんですかね? 何なんですかね?
 
「何でしょ? でも、普通でありたいんですよ。別に人と違うとかも思ってないし。でも、“普通は違うんだよ”とか言われると、イラってするし(笑)」
 
――それこそ“らしい”曲というか、『秘密』もそうですけど、ここにフォーカスして歌ってる人はいない。でも、書くことで自分が出てしまうというよりは、むしろ吐き出せる気持ちの方が強いですよね。
 
「どこかでやっぱり“理解して欲しい”みたいなところはあると思うんですよね。曖昧だからこそ捕われるし、考えちゃうんで」
 
――あと、現場での何か印象深いエピソードとかはあります?
 
「今までは言葉を選ぶときに、メロディよりも詞を優先させてたんですよ。でも、それは出来れば避けた方がいいっていうアドバイスの元、言葉を変えたりは結構しましたね。だから『普通』もめっちゃ時間がかかりました。大変でしたね。詞先は珍しいんだって、今回初めて知りましたし(笑)」
 
――詞を先に書く割に、後から付けるメロディがすごくしっかりしてますよね。
 
「ドJ-POPで育ったからですかね?(笑) 今作は全然違う7曲ですけど、サウンドの方向性は同じなのでまとまりがあるし、自分はこういうことがやりたいんだって、分かりやすく、明確になってることが、こんなにも気持ちいいんだって思いました。でも、やっぱり聴いてもらわないと。人の目を意外と気にするので(笑)」
 
――そう考えたら出会う人も増え、リアクションをくれる人も今まで以上に増え、やり甲斐がありますね。
 
「表現して、曲にして、それで満足することはなくて。人に聴いてもらって、出来れば褒めてもらって(笑)、気に入って欲しくて、好きになって欲しくて。そこまであって、完結。ホントにここからだなぁと思いますけどね」
 
――ライブはどうですか? 何か変わりました?
 
「ライブはそんなに変わんない(笑)。でも、ドンドン変わっていきたいなって思いました。ライブへのアプローチとか、いろんなやり方を。やっぱり“見田村千晴はライブが武器だ”って言ってもらいたいですし、もっと自分でも自信を持ちたい。もちろんまだまだですけど、その気持ちは一生続くと思うんで」
 
――見田村千晴がいつか自信満々になるときがくるんですかね?
 
「アハハハハ!(笑) イヤ、ないと思いますよ(笑)」
 
――最後に。今後どういうシンガーソングライターになっていきたいですか?
 
「やっぱり一番は長く続けていくことなんですよ。派手じゃなくて申し訳ないんですけど、すごく大変なことだと思ってるし。一歩一歩、ホントにライブで出会うことを大切にして、その上で広がっていったらいいなと思ってます」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2013年12月26日更新)


Check

Release

覚醒の兆しを存分に感じさせる珠玉の
言葉とメロディを収めたデビュー作

Mini Album
『ビギナーズ・ラック』
発売中 1890円
ビクターエンタテインメント
VICL-64043

<収録曲>
01. ラブソング
02. 悲しくなることばかりだ
03. 秘密
04. 妄想と現実とチョコレート
05. 私の良いとこ
06. 明日天気になりますように
07. 普通

Profile

みたむら・ちはる…'86年5月15日生まれ、岐阜県出身。2歳からピアノ、3歳からヴァイオリンを始め、高校では音楽部にて合唱コンクール全国大会1位に。’05年、早稲田大学進学と共に上京。バンドサークルに入りギターと曲作りを始める。’07年春よりギター弾き語りでのライブ活動を始め、’09年の大学卒業以後本格的に活動開始。年間100本以上のライブを行うほか、3枚の自主制作CDを発表、自主企画ライブ『ヨコロビ』やワンマンライブの開催等、精力的に活動。’11年、タワーレコード主催のオーディション『Knockin’on TOWER’s Door』にて準グランプリを獲得し、同年6月に1st アルバム『いつかのように』をリリース。ユニクロ『ヒートテック』CM出演、イベントでは2000人の前でオープニングアクトを務めるなど、着実に活動の幅を広げる。’12年、2nd アルバム『I handle my handle』をリリース。前年に引き続き世界最大規模の気象情報会社ウェザーニューズが季節ごとに無料配信する『ソラウタ』に起用され、累計100万ダウンロードを達成した『雨と空言』や、TBS系TV『みのもんたの朝ズバッ!』エンディングテーマ『愛がそこに無くても』、中島みゆきのカバー『ヘッドライト・テールライト』等が収録され、更なる飛躍を遂げるきっかけとなる。’13年2月、渋谷duo MUSIC EXCHANGEにてワンマンライブを成功させ、9月25日にミニアルバム『ビギナーズ・ラック』でメジャーデビュー。

見田村千晴 オフィシャルサイト
http://mitamurachiharu.com/


Live

今年最後の関西ライブ!
自主企画イベント大阪編が間もなく

『見田村千晴 presents
「音がく探訪 vol.2」』
チケット発売中 Pコード216-642
▼12月27日(金)19:00
心斎橋JANUS
前売2800円
[共演]空中ループ/齊藤ジョニー
JANUS■06(6214)7255

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2014年の大阪ライブが決定!
話題のヒグチアイのレコ発に参戦

『ヒグチアイ「三十万人」 New!!
リリースパーティー~大都会~大阪』
チケット発売中 Pコード219-960
▼2月22日(日)18:30
minami horie ZERO
オールスタンディング2800円
[出演]ヒグチアイ/見田村千晴/ヒトリルーム
[オープニングアクト]葉山久留実
minami horie ZERO■06(6541)3808
※4歳以下は無料。

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Column

叶わない願い、届かない想いの先に
シンガーソングライターとしての
成長過程と決意表明を宿した
『I handle my handle』!
昨年のインタビュー&動画コメント