24時間×7日、365日、移り変わる日々に
初期衝動を超える新しい自分を探し、見付け出せ!
生きるヒントが詰まったDef Techの2年ぶりのアルバム『24/7』
ツアー開幕前夜に捧げるインタビュー&動画コメント
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インタビューの中でShenが語っているDef Techにとってのテーマ、“前に前に前に”は彼らの名を知らしめたご存知、最初の大ヒット曲『My Way』の一節。前作『UP』(‘11)以来約2年ぶりとなるDef Techのニューアルバム『24/7』(トゥウェンティ フォー・セブン)は、24時間×7日、365日、いつどこで誰と聴いても楽しめる大自信作だと2人が胸を張る。このアルバムでDef Techはまた1つ、進化という新しい希望を提示している。伝統的なハワイ音楽にヒップホップを掛け合わせた『He'eia~Jawaiian Mix~ feat. Makana』(M-7)もあれば、アメリカを拠点に活躍するシンガー、エミ・マイヤーを迎えた『The Key feat,Emi Meyer』(M-4)では、キャロル・キングなど60~70年代のシンガーソングライターがまとっていた穏やかな空気を表出。タヒチ80のグザヴィエ・ボワイエとの、ゆるりとハッピーな初共演曲『Just A Little Longer ft. Xavier Boyer of Tahiti 80』(M-5)に、Shenの自己最高となる超高速ラップがレーザービームのように放たれる『Marathon』(M-6)。そして、盟友の金子ノブアキ(RIZE)が参加した日本赤十字社のCM曲にもなった『Bolero』(M-10)…。HIとLOWが混在し、時間によって季節によって様々に移り変わる気持ちの連続で日々が、人生が形作られている。そんな瞬間瞬間に寄り添うサウンドトラックとも言えるニューアルバムについて、ShenとMicroにじっくりと話を聞いた。
Def Teckの2人からのグッドヴァイブな動画コメント!
――今回のアルバムを作る上で、“こんな人と共演したい”とか、“こういうメッセージを込めた作品にしよう”というような青写真はあったんですか?
Shen「時間的には結構前からこのアルバムを作っていて、2年ぐらいになるのかな?」
Micro「『Be The One』(M-3)は僕らが解散してる間にShenがソロで作ってた曲だったので、そこからカウントすると’09~’10年ぐらいから始まって、締切いっぱいギリギリまで(笑)。9曲目の『Uchiaketekure』は最後までディレクターとモメて、当初アルバムには入れない話になってたんです。この曲はイントロの部分にShenの子供の声が入ってて、聴くたびにShenは目をウルウルさせてて僕も胸キュンするんですけど(笑)、ディレクターはずっと納得してなくて。でも、結局2人で“入れるでしょ!”って押し切って。iTunesでこのアルバムを公開してみたら、プレビューの時点で“9曲目が最高!”みたいなコメントがすごくあったんですね。で、ディレクターに“どうなの? 反響多くね?”って言ったら“すみませんでした。アルバムに入れてくれてありがとうございました”って(笑)」
――アハハハハ!(笑)
Micro「そんなこともありつつDef Techチームとしてはいい感じで、僕にとっては最初のアルバムをShenと作った、あの初期衝動を超えてくるワクワク感とゾクゾク感、アルバムが始まって4曲目に『The Key feat,Emi Meyer』がバン!と来たときの無敵感は、たまらないものがありますね。相容れないタイプの楽曲たちが並んで1つの作品として成立しちゃうのがDef Techなのかなって。大好きな曲を詰め込んだ、プレイリストを作ったような感じでアルバムが出来ちゃった。そんな感じですね」
Shen「僕らにとってこのアルバムは、新しい自分たちを探しに行って、そして、見付けることが出来た作品だと思う。例えば『He’eia~Jawaiian Mix~ feat.Makana』のような今まで出来なかったトラディショナルなハワイの曲も出来て、自分たちのルーツに戻りつつ、すごく前に進むことも出来た。僕らには“前に前に前に”っていうテーマがあって、常に新しいものを作りたい気持ちがあるし、今回のアルバムでそれを見付けることが出来て本当によかったなと思う。まだまだこの先に新しい自分があると思うし、これからも見付けにいくことは変わらないですね。この『24/7』はいつでもどこでも、誰とでも聴けるアルバムになっているし、2人とも“このアルバム、ヤバいぜ!”って言える自信があります。最高です。ちょっと自慢になるけど(笑)」
Micro「自画自賛だけど(笑)」
売れる前から自分たちが本当にやりたいことをやってないと
ヒットして有名になってからは、そのヒット曲を
生涯歌い続けなければならない現実を誰も見てないし、知らない
――『Uchiaketekure』はDef Techの真骨頂とも言える曲じゃないでしょうか。2013年版『My Way』という印象もあり、自分1人で聴いて噛み締めたい良さもありながら、人と人を結び付ける“僕たちの歌”でもあり、新たなアンセムが誕生したように思います。さっきのディレクターさんの話のように、もしもこの曲がアルバムに入ってなかったら、また印象が違ったでしょうね(笑)。
Micro「これは僕の問題なんですけど、自分の歌の表現として、『Uchiaketekure』はちょっと押し付けがましかったんですよね。『My Way』を作ったとき、僕はまだ大学生で、あの曲は卒業のときの贈る言葉として作ったんですね。“これからみんなとサヨナラしていくし、いつまでもそばにいられないけど、自分の信じた道を突き進んでいこうな”っていう仲間の歌で。あのときの気持ちは今もなくなってはいないけど、さすがに21歳のときと30代になった今、そのまんま同じことがやれるか?って考えると、同じ手法で曲を作ることはちょっと恥ずかしかったりもして。さっきShenが“新しい自分を探す”って言っていましたが本当にその通りで、例えばジャズをやってないからジャズの曲をやろうっていう風に、単純に今までやってないことを探して音楽をやるのって、どんどん狭まっていく一方だなってことにも気付いたんですね。そんなこともあって、前作の『UP』のときぐらいに、“同じことをするのは決して恥ずかしいことじゃないんだ”って、自分の考えとして思えた。そう思えるまでに、『My Way』から『Golden Age』(『UP』収録曲)まで10年かかりましたね。その間、『My Way』みたいな曲は徹底してやりたくなかったし。“(『My Way』が)売れたから同じ路線で行く”みたいなことは絶対にやりたくなくて」
――なるほど。
Micro「よく、若いアーティストの子たちはこう言いますよね、“売れたら好きなことをやる”って。でも、そういうことを言ってる子たちで、好きなことをやれてるアーティストはまず1人もいないんですよね。売れる前から自分たちが本当にやりたいことをやってないと、ヒットして有名になってからは、そのヒット曲を生涯歌い続けなければならないっていう現実を誰も見てないし、知らない。ヒットしたところでやりたいことを一生やれないで、結局自分たちが一番つまんないライブをして、ファンたちの交流もなく…そういうアーティストたちをたくさん見てきて、僕らはそこで気付かなきゃいけないなって思ったんですね」
Shen「そうだね」
Micro「だけど、同じことを何度やったとしても毎回フレッシュな気持ちで臨むことだって出来るし、実際に何千回、何万回と『My Way』を歌っていても、僕の中では飽きたことが一度もないし、飽きない努力もしてる。例えば僕らはお互い、プライベートな時間は全く違うコミュニティがあって、それぞれ多くの友達と過ごしてます。そうしていることが、僕らと音楽とのマンネリしない恋愛関係を続けられていられることにつながっているのかな、とも思うんですね」
Shen「(『24/7』のジャケットを指しながら)この写真の通りで、僕ら2人が見てる向きは違うけど、一緒にいて、同じところを目指してる。そんな感じだね」
Micro「昨日もFacebookで、“友達承認ありがとうございます! これから初めてアルバム買います。初めて聴きます”っていう人もいて、『My Way』を知らないリスナーも増えているんですよね。ただ、その一方で“懐かしい”って言われるのって、嬉しいのと同じぐらい傷付くんですよね。“今日のライブ、すごく良かったし、とっても懐かしかった”って言われると、“いやいやいやいや、僕たち今もずっと挑戦し続けてるんですよ”って思うけど、それが伝わらないってことは、彼&彼女の中のDef Techを超えてないってことだから、そこに僕は挑戦していきたい。自分の挑戦だけじゃなく、みんなの周りの声がどう変わっていくかっていうことに挑戦したいんですよね」
Shenと僕とで、毎日スタジオで
WBC(World Baseball Classic)をやってるようなものなのかな(笑)
――『Just A Little Longer ft. Xavier Boyer of Tahiti 80』ではタヒチ80のグザヴィエ・ボワイエと共演されていますが、これもDef Techにとって1つの挑戦、1つの進化と言えますか?
Micro「ですね。まさかフランス人と一緒に音楽を作るとは思わなかったね(笑)」
Shen「自分たちでもビビったね(笑)」
Micro「グザヴィエはとっても線が細い人で、もし僕らが同じ高校だったら、授業中にフザけて、ちょっかい出してただろうなって思うようなタイプ(笑)。きっと音楽を通してじゃなかったら、こんなに通じ合えなかっただろうな」
Shen「That’s Power of music!だね(笑)」
Micro「そうそう(笑)。僕がゴリゴリにディープに向かっていくと、Shenがアッパーに来てくれて、さらにそこに全然関係ない惑星からグザヴィエが来て、フッとすくい上げてくれた。そんな1曲だと思いますね」
――それはエミ・マイヤーと共演している『The Key』にもあてはまりますか?
Micro「そうですね。去年のライブイベントでエミと一緒になったときにShenが彼女をナンパして(笑)」
Shen「してないし(笑)。確かに、そういう気持ちは1%もなかった!…とは言い切れないけど(笑)、その場に僕の奥さんと子供もいたし。ちなみに奥さんの名前もエミです(笑)」
Micro「寝言で名前を言っても大丈夫!(笑)」
Shen「(笑)。普通に英語で話せたから、“良かったらスタジオ行かない?”って。スタジオに入ったらすごく自然に、楽しみながらパパッと1~2時間でこの曲が出来ちゃって」
――とても心地よい曲で、他の曲とも色合いが違っていて、最初にMicroさんが言われていたように、相容れないような曲たちが1枚のアルバムに収まっているのは、Def Techの度量の大きさ、懐の深さといえるでしょうか?
Micro「やっぱり“面白さ”ですかね。Shenと僕とで、毎日スタジオでWBC(World Baseball Classic)をやってるようなものなのかな(笑)。日米対抗で英語と日本語の攻防戦で、文化の衝突や食い違ってるところもあるし、お互いストレートを投げるときもあれば、変化球を投げることもあるし。SONPUBとやった『Anniversary feat. SONPUB』(M-1)はいわゆるダブステップの曲なんですが、僕らは“ラブステップ”と呼んでいて。世にあるダブステップよりも愛の量が全然違う仕上がりになってるんですね。クラブでかかってるダブステップは、僕にとってはすごくおぞましく感じられて、衝撃的でもあって。それを見よう見まねでやって、単にインパクトとか衝撃力だけで勝負したくなかったから、僕らにしか出来ない愛を散りばめた“ラブステップ”になりました(笑)」
僕たちは関西の人たちが大っ好きで
その内大阪に引っ越すんじゃないかなって気がしてる(笑)
――日本赤十字社のCM曲として配信された『Bolero』もそうですが、Def Techの曲を聴くとじわじわと力が湧いてくるのを感じます。何がそうさせるのかな?と考えたときに、このアルバムの中で2人が全力で楽しんだり、ぶつかったり、挑んだりしている様や、やわらかなメロディや強い音からにじみ出るあたたかさ。そういったもの全部がこちらの命に響いて、作用するのかなとも思いました。
Shen「よく話してるんだけど、このアルバムって“笑顔で苦しんでる”とか “真面目なんだけどフザけてる”とか“喜んでるけど泣いてる”とか、そういうどちらか一方だけじゃない僕らの両面が、よく伝わるアルバムだと思いますね」
Micro「お母さんに“あんた、いい加減にしなさい!”ってパーンと頬っぺた叩かれた後、お母さんの顔をよく見たら目にいっぱい涙をためてる、みたいな。そういう人間味ですかね(笑)」
――その人間味溢れるアルバムを携えて、12月19日(木)には神戸国際会館こくさいホール、20日(金)には大阪・オリックス劇場でライブがあります。関西のオーディエンスに向けてメッセージをお願いします。
Shen「ツアーって、僕たちがお客さん1人1人と会えるチャンスだし、その機会を僕らはすごく大切に思っているので、ぜひ楽しみにして来てください。僕たちは関西の人たちが大っ好きで、その内大阪に引っ越すんじゃないかなって気がしてる(笑)。“アメリカっぽい”っていう言い方はヘンなんだけど、リラックスしてる感じとか、知らない人とでも話せてジョークが言える感じとかがすごく好きですね。ライブで関西に来るのはいつもすごく楽しみにしてて、関西のファンは何をしてくるか分かんないから、いい意味でドキドキします(笑)」
Micro「僕は今日、関西のオバちゃんに負けないぐらいの派手なチーター柄のシャツを着てきたんですけど、これは関西に対する“LOVE”の表れです。ライブのときはもっと派手なヒョウ柄のジャケットかなんか作っちゃうぜ!(笑)」
――ありがとうございます! ツアーも派手なジャケットも楽しみにしています!(笑)
Text by 梶原有紀子
(2013年11月 2日更新)
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