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ホイチョイ3部作の『波の数だけ抱きしめて』をアップデートした
クールでメロウなハイクオリティ・シティポップ!
映画のようなひと夏の物語を描く新作『Surfbank Social Club』
一十三十一(ひとみとい)インタビュー&動画コメントが到着

 昨年、5年ぶりのオリジナルアルバムとなる『CITY DIVE』でシーンに帰還。続いてリリースされた邦楽カバーアルバム『YOUR TIME Route1』でも、“シティポップ”という新たなフィールドで、そのコケティッシュで甘い媚薬ヴォイスを存分に発揮したシンガー、一十三十一(ひとみとい)が、早くも新作『Surfbank Social Club』をリリースした。前作『CITY DIVE』の“街場”から“浜辺”へと舞台を移した今作は、’87~91年に一世を風靡した映画『私をスキーに連れてって』(‘87)『彼女が水着にきがえたら』(‘89)『波の数だけ抱きしめて』(‘91)のホイチョイ3部作の『波の数だけ抱きしめて』にインスパイアされ、あの時代のざわめきを現代にアップデートした、まるで映画のような1枚。その制作方法も独特で、アート・ディレクションを手掛けたアパレル・ブランドYugeのデザイナー、弓削匠のシナリオの元サウンドをデザインしていくという、まさにサウンドトラック的なやり方だ。前作に続いての参加となるクニモンド瀧口(流線形)、Dorian、Kashifら気心知れた仲間たちに加え、LUVRAW&BTB、grooveman Spot、Avec Avecらも新たにクルーに加わり届ける、徹頭徹尾キラキラのハイクオリティ・ポップス。波打ち際でシティポップ道を邁進する一十三十一に迫る今回のインタビューでは、新作にまつわる思わぬ裏話も飛び出した!?

何でしょうかこの色香は。一十三十一からの動画コメント!

――それにしても前作『CITY DIVE』(‘12)を出すまでは5年も空いたのに、今回はこれだけ短いスパンでのリリースで(笑)。去年はカバーアルバム『YOUR TIME Route1』('12)も含め制作的にも活発な年だったと思いますけど、再始動してからの濃密な1年を振り返ってみてどうです?
 
「『CITY DIVE』の制作から、新しいスタッフ、新しいミュージシャン、新しいアレンジャー、アートディレクター…5年ぶりのリリースだったんですけど、ホントに満を持してというか、自分のルーツ的な音楽を等身大の仲間たちと一緒に作るっていうのが、とっても有意義な活動だったんですね。なので、引き続き同じスタッフとミュージシャンたちと、テーマはまたちょっと違うんですけど、エンドレスサマーな、ブリージーなことには変わりなく(笑)。もうちょっと“波打ち際”に寄ったのが今回の作品なんですけど」
 
――ただ、一十三十一=夏っていうイメージって、今まで別になかったですよね?(笑)
 
「そうですよね(笑)。制作のリズムが今やシティポ(=シティポップ)界のTUBEみたいな感じになってますけど(笑)。それがフィットしているのは、多分私が無理をしていないところだったり、やっぱり私の基本というかルーツがそこにある、スゴくしっくりする音楽なので」
 
――ルーツという言葉が今までに何度も出てきましたけど、やっぱりその原風景はお父さんが経営してたビッグサンっていうリゾート・レストランがまさにそれということで。北海道なのにそういう場所があったんですね(※一十三十一の出身地は北海道)。
 
「いや、全然なかったんですよ(笑)。私の父がちょっとおかしかったんです(笑)。国道沿いにヤシの木がドーン!ってある感じの、ちょっと西海岸系のお店を北海道でやってたんですけど」
 
――その風景を見たら、子供心にやっぱり残りますよね。
 
「まだ80年代で私が子供の頃は、そこは大人たちのキラキラなデートスポットだったので、カッコいい車に乗って、素敵なドレスを着て、お客さんがデートしに来たり。何かそういう大人への憧れの時代というか、ビッグサンの中でそういう大人たちを見ていて、いいな~と思っていた時代ですね。そこで掛かっていた音楽がまさに吉田美奈子さんだったり、(山下)達郎さんだったり」
 
――ずっと眠っていたというか自分の中に摺り込まれていた感覚が、改めて表現を再開するときにリンクしたというか。そして、そのシティポップのテーマは、街場=『CITY DIVE』から浜辺=『Surfbank Social Club』へと移動したわけですけど、これは元々やりたかったことなんですか?
 
「『私をスキーに連れてって』(‘87)『彼女が水着にきがえたら』(‘89)『波の数だけ抱きしめて』(‘91)のホイチョイ3部作の、『波の数だけ抱きしめて』がスゴい好きで。あのイメージで映画のサントラ作るようにアルバム作りたいなぁと、『CITY DIVE』を作り終えた頃から何となく思っていたんです。『CITY DIVE』よりも、もうちょっと潮風を感じたい。だからよりビッグサン的にはなってるんですけど、よりアロハな感じな、トロピカルな」
 
――ホイチョイ3部作って、当時あの時代にとってはやっぱりトピックだったというか、印象に残ってますもんね。『私をスキーに連れてって』=スキー、『彼女が水着にきがえたら』=スキューバ・ダイビング、『波の数だけ抱きしめて』=コミュニティFMを舞台に繰り広げられる、ネットも携帯もメールもない時代の恋模様というか。うわ~何かまた観たくなってきますね(笑)。
 
「私はリアルタイムで一応観てはいたんですけど、やっぱり当時は子供過ぎて把握出来てなかったので。その中で初めてしっかり内容も分かった上で当時観たのが『波の数だけ抱きしめて』だったんですけど、今観ると松下由樹のかわいさに改めてビックリしちゃうとか、そういう発見もあるんですよね。『私をスキーに連れてって』とかも大人になってから観直しましたけど、携帯とかがない時代の歯痒い恋愛なので、スゴい胸キュンなんですよ。その胸キュン感とか切なさがスゴい好きだし、フォーエバーだなって思うので、その感覚は」
 
――今となっては当時はちょっとバブリーな時代とも言えますけど、それも日常と延長線上の憧れの世界だったというか。日常ちょい脇の夢の世界じゃないですけど。
 
「限りなくファンタジーだけど、現実味のあるファンタジーなので。全く見たこともない世界というよりも、みんなが可能なファンタジー。そういうのを今やりたいなって。それまでは逆に、誰も見たことがない世界に興味があって、そういうファンタジーを描いてきてたんですけど、結婚したり子供を産んだりしてみると、描きたいところがそういうリアルなところになっていったんですよね」
 
 
エンドレスサマー感というか青春感みたいなところで
とても共鳴出来ていたので
 
 
――あと、今作においてはアート・ディレクションを手掛けたアパレル・ブランドYugeのデザイナー、弓削匠さんとの関係が鍵というか。
 
「弓削さんに元々このお話をしたときに、シナリオを作ってきてくれたというか、作ってきたんです(笑)。MVでショートフィルムを作るって。女3人:男3人みたいな物語なんですけど、私の役名とか職業まで詳細に書いてあって。音が出来る前にもう本格的なシナリオがあった、みたいな」
 
――そもそも普通のアルバムの作り方としては、サウンド・プロデューサーと楽曲を煮詰めていった結果、後からアート・ディレクションとかジャケット・ワークが絡んでいって作品が出来るのが普通ですが…。
 
「もう音より先にウェット・スーツを着る案が出る、みたいな(笑)。まず、絵が先に、イメージの方が先にあったんですよね」
 
――それこそ映画を撮って、そのサントラを作る感覚に近いですね。
 
「そう! MVも15分ぐらいあって、ホントにショートフィルムのように作って。その中にアルバムの曲が6曲入ってるんです。セリフはないんですけど、音楽と絵がシンクロしていく。CDのブックレットの写真がそのカットなんで、ちょっと映画のパンフレット調になってるんですけど」
 



――そもそもの弓削さんとの出会いのきっかけは?
 
「『CITY LIVE』の制作のとき、プロデューサーのクニモンド瀧口つながりで。彼が“こういう80's風の作品というか、AORだったりシティポップの感じは弓削さんがいいんじゃないか”って紹介してくれて。『YOUR TIME Route1』も一緒に作ったんですけど、とっても相性がよかったので、今回は最初の最初の段階から弓削さんと構想を練っていった感じですね。弓削さんもそのエンドレスサマー感というか青春感みたいなところで、とても共鳴出来ていたので出来たことなんですけど」
 
――あと、前作『CITY DIVE』があったからこそ、今の一十三十一がやりたいことが明確に見えるので、新たに参加してくれたアーティストも飲み込みが早かったみたいですね。
 
「アレンジャー陣はとてもやりやすかったみたいですね。あとは、曲の中にイメージしている断片的な言葉だったり世界を伝えて、それを受けて上がってきた音のイメージをこっちが聞いてさらに歌詞を書いて、みたいに、アレンジもお互いに寄り添って作ったんですよ。LUVRAW&BTBとかDorianとかも、ホントにもうこれで歌詞が書けるんじゃないかっていうぐらいのイメージをギッシリ描いてきてくれて。それは夜明けの明るみみたいなことだったり、埠頭にレインボーが見えるとか、ハイヒールを履いているとか。そういうイメージからまた私が詞を書いて…気持ちを1つにしてみんなで作れたかなぁと」
 
――歌詞の世界感もこれぞ一十三十一の真骨頂じゃないですけど、“飲み干したジンジャーエール”とか“蜃気楼”“摩天楼”などなど、“キザい”言葉がいいところでガンガン入ってきてますよね(笑)。その辺がより今の一十三十一の音楽を時代に特徴付けている感じがしますね。
 
 
自分のルーツであったり
参加してくれたのが周りの友達でありミュージシャンであることだったり
とても等身大な感じがしています
 
 
――それにしても、作品に出入りしてる人数がこれだけ多いのに、ちゃんとイメージが共有出来ているというか、一糸乱れぬ感じはスゴいですよね。それこそジャケット・ワークにしても、スチールの構図とかも含めて“あるある”という王道のシチュエーションをちゃんと汲みながら、さらに一歩踏み込んでいい絵を見せるっていう。
 
「だから、撮影はいつも大変ですね(笑)。ジャケットで着てるウェット・スーツとかも、当日の朝いきなり着るみたいな感じで。もう全然小さくて着れないんですよ(笑)。でも決め打ちでこれ1着しかないし、しかも千葉(笑)。現地に入ってからどうしようってなったんですけど、もう壁とかに捕まりながらギューッ!って無理矢理押し込んで(笑)。脱いだときに鬱血しちゃってたぐらいギュウギュウだったんですよ。ジャケットでは涼しい顔してますけど、フィジカル的にはかなりキてるんです(笑)」
 
――しかも、バギーにも乗ってたりとカット数も多いから、それなりの時間撮ってるぞみたいな(笑)。
 
「かなり過酷でしたね。去年の『CITY DIVE』のジャケットはジャケットで、冬のプールでの撮影は寒いぞみたいな。それも唇が紫色になりながらで過酷だったんですけど(笑)。今回は天気もいいしよかった~と思ってたら、ウェット・スーツがキツ過ぎるっていう別の試練が待っていて(笑)。ホント、ウェット・スーツはちょっと盲点でしたけど、今回はそこかぁ~!!みたいな(笑)。何かと毎回ドラマチックな現場ですね、フフフ(笑)」
 
――でもホントに相変わらずのクオリティというか、今作で一十三十一の立ち位置を今のシーンでガッチリ見付けられた感じはしますね。
 
「そうですね。やっていても自分のルーツであったり、参加してくれたのが周りの友達でありミュージシャンであることだったり、とても等身大な感じがしています」
 
――今作に伴って、ビルボードライブ大阪でライブもありますね。
 
「今回はLUVRAW&BTBがスペシャルゲストで、ノーナ(リーヴス)のギターのオッケン(=奥田健介)と小松(シゲル)くんがドラムで」
 
――次の作品の青写真も見えているということで、まだまだちょっと楽しみな2013年ではありますけど。働きますね、でも(笑)。
 
「そうですね(笑)。でもホントに今は最高のスタッフ、ミュージシャンに囲まれているので楽しいです!」
 
――そちらも楽しみにしていますので。本日はありがとうございました!
 
「ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2013年8月 9日更新)


Check

Release

日常ちょい脇のファンタジーを
徹底的に構築した海辺のシティポップ

Album
『Surfbank Social Club』
発売中 2800円
Billboard Records
HBRJ-1009

<収録曲>
01. surfbank social club 1
02. LAST FRIDAY NIGHT SUMMER RAIN
03. DOLPHIN
04. STARDUST TONIGHT
05. PRISMATIC
06. BEFORE VELVET HOUR
07. FEEL LIKE BAYSIDE LOVE
08. PASSION GIRL
09. LONESOME AIRPORT
10. METAMORPHOSE
11. surfbank social club 2
12. ENDLESS SUMMER HOLIDAY

Profile

ひとみとい…札幌出身。幼少時代よりスパイシーな家族とともに世界諸国を旅して廻る。’02 年に『煙色の恋人達』でCDデビュー。“媚薬系”とも評されるエアリーでコケティッシュなボーカルで、アーバンでエキゾな独自のポップスを展開。’07 年にはディスニーアニメ『リロイ& スティッチ』のエンディングテーマを歌う『JINTANA&EMERALDS』はじめ、別名義でのプロジェクトにも多数参加し、CM音楽やナレーションなど様々なフィールドで活躍。’11 年初夏には、初の主演映画『百合子、ダスヴィダーニャ』が公開。そして’12 年、5年ぶりとなるオリジナルアルバム『CITY DIVE』と邦楽カバーアルバム『YOUR TIME Route1』をリリースした。

一十三十一 オフィシャルサイト
http://www.hitomitoi.jp/


Live

東阪のみの貴重なレコ発ライブに
ノーナ他豪華メンツが参加!

『Welcome to“Surfbank Social Club”』
【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼8月10日(土)18:00/21:00
ビルボードライブ東京
自由席6800円
ビルボードライブ東京■03(3405)1133
※未就学児童は入場不可。チケットはサービスエリア自由席。

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード204-080
▼8月12日(月)18:30/21:30
ビルボードライブ大阪
自由席6000円
【メンバー】一十三十一(vo)/LUVRAW(Talkbox)/BTB(Talkbox)/
奥田健介(g)/南條レオ(b)/冨田謙(key)/ヤマカミヒトミ(sax, fl)/
小松シゲル(ds)
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※未就学児童は入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。

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Column

5年ぶりのオリジナルアルバム
『CITY DIVE』と80s邦楽カバー
『YOUR TIME Route1』で魅せた
ニューモードは“シティポップ”!
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