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らしさと懐かしさと新しさ、温故知新のハイブリッド・ミュージック
SURFACE→椎名慶治のデビュー15周年を飾る
幸福なハプニングが生み出した2ndフルアルバム『S』
ロングインタビュー&動画コメントが到着!

 今年でデビュー15周年を迎える椎名慶治が1月にリリースした、アニバーサリーイヤーの幕開けを飾る2ndフルアルバム『S』。Shiina(椎名)、Solo、Singer、SURFACE、Showa(昭和)、SU(素)etc…椎名慶治にまつわる“S”という言葉の数々。’10年のSURFACEの解散以来、ソロとしてのキャリアを歩み始めた彼の内面を最も深く描き出すことになった今作のインタビューでは、あれれ? お得意のマシンガントークは息を潜め、どうやらお疲れモードの椎名さん。それもそのはず、自身の内面が吐露されたのは、充実ゆえのハードデイズがもたらした、意図的というよりは不可抗力の産物。ゆえにリアル、ゆえにディープな今作は、今まで以上に1人の男としての椎名慶治の人生と、アーティストとしての椎名慶治の生き様がクロスフェードした興味深い1枚となっている。そしてこの『S』には、共同プロデューサーの山口寛雄(b)、玉田豊夢(ds)といった100sメンバー陣に、携わった楽曲やバンドは数知れずのスーパーギタリスト友森昭一、元THE MAD CAPSULE MARKET’Sの石垣愛(g)、abingdon boys schoolの岸利至(key)、ゆず、JUN SKY WALKER(S)etcの演奏/アレンジや、KARA、嵐、ナオト・インティライミらへ楽曲提供を手掛ける磯貝サイモンらに加え、個性溢れるアレンジャーが多数参加し、彩りを添えている。緩急自在でスリリングなメロディの上を独特の語感で軽やかにステップする“椎名節”と、温故知新の刺激的なサウンドとの幸福な化学反応を魅せた『S』の世界。後半になるにつれて元気が出てくる、生々しい椎名さんの姿と共にお楽しみください(笑)。

椎名慶治からの調子いい動画コメントはコチラ!

――それこそ前回のインタビューでは“『I & Key EN』は今までで1番好きな作品になった”みたいなことを言ってて。でも、それに伴うツアーは絶不調みたいな…。

 
「相当でしたね…。やっぱり2012年はプライベートでも結構いろいろあって、仕事の面でもすでに今回のアルバムを視野に入れながら動いてたんで、頭の中がグチャグチャなったところがあって。頑張り過ぎた結果が喉にきたんだろうなって…それを今でもちょっと引き摺ってる。結局そういう責任感や気負いが表に出過ぎてるところがあって。自分の作品ではあるけどちょっと他人行儀というか、もうちょっと俯瞰で自分のことを見た方がいいんじゃないかなって気はしてて」
 
――シンガーだから歌えてないことが=生活にもきますもんね。そこが気持ちよくないと。
 
「全てダイレクトにきますから。1回不調なライブとかがあると、“また次もかな…?”とか思っちゃうじゃないですか。負け癖が付くってヤツですね。作品に関しても『RABBIT-MAN』っていういいアルバムが出来て、『I & Key EN』で自己満足出来て、いざ2ndフルアルバムを作りましょうってときに、やめときゃいいのにそれを聴き返しちゃったんですね。そしたらエラいよく出来てんなぁって(笑)。自分の曲を聴いて“こういう曲、今は作れねぇなぁ”って萎縮しちゃったというか。ホント1番大変でしたねぇ…『I & Key EN』の一連の動きが終わった後に動き始めたんで、実質去年の9~11月の3ヵ月で全部作ったんですけど、その間は自分ともう1人のプロデューサーの山口寛雄と1週間に1回ぐらいしか会うタイミングがなくて。次の週に会うまでに作詞して仮歌を2曲録って、またその日に新曲2曲作ってまた次の週みたいな感じで。結局スタジオで会ったのは14曲で3回ですよ?(笑)」
 
――スゴいなぁ。会ったその場で曲を作るって、逆に言うとそこまで出来ちゃうモンなんですか?
 
「出来てましたね。そこで出来てなかったら発売延期ですよね?(笑)」
 
――いろんな人に参加してもらってる割には、案外誰とも会ってない(笑)。
 
「それはありましたね~。山口寛雄が“俺の知り合いでいいアレンジャーいるから”って言うから、“お前仕事一緒にしたことあんの?”って聞いたら、“いや、ないんだよ。飲み仲間で”“え? 飲んだだけ!?”って(笑)。『いざ尋常に』(M-2)とかをアレンジしてもらって、結果よかったんですけど」
 
――1回このキツい流れを仕切り直して、とはなかなかならないモンですね。
 
「リセット出来なかったですね。『I & Key EN』を引き摺ったままだったんで。逆に言うと『S』は『I & Key EN』の延長上にあると思ってて。『I & Key EN』は自己満足したい、やりたいことを詰め込もうと出来た作品で。ただ、そこでワガママを言った分、今回はバラードも何曲か入れますよっていう。あとは、『愛のせいじゃない 愛は関係ない』(M-9)テイストの曲だったらいくらでも作れるから、リハビリ代わりに10分ぐらいで作って(笑)。そこから80~90年代のちょっと懐かしい感じ、いわゆる“ビーイング系”みたいな曲をやろうとか。今聴いたら笑っちゃうけど、知らない子からすると新しいかもなって。3~4曲作り始めてようやく、“俺、アルバム作ってるな”みたいな感覚になってきましたね」
 
――今日も話してて、今までで1番テンションが低いというか。
 
「スッゲェ疲れてますね、ホンットに。だから大変だったなっていうのが1番色濃く残ってるアルバム。“出来たー!!”よりは、“出来た…”みたいな。まぁ今までで1番自分の内面をえぐったような作品になってるから、そういう意味で1番俺っぽいアルバムだなって思ってるんで。SURFACEのときからの俺って、明るくポジティブで背中を押す応援歌みたいなイメージが強いけど、そことはちょっと違うモノというか、どちらかって言うとちょっと暗い。でも、こっちの方がプライベートな俺っぽい。これがもし受け入れられるなら、プライベートの俺も好きなんじゃないの?っていう(笑)」
 
――テンション上げてる“あの”椎名さんの感じじゃない(笑)。
 
「ホントに素に近い作品だなぁって。歌うときにちょっと抵抗を感じる曲もあったりしますから。自分に近過ぎて」
 
――素の自分に近いモノが出たのって何でですかね?
 
「時間がなかったからですね(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「アーティスト・椎名のスイッチに切り替えて書く暇がなかったんじゃないかなぁ。だから、自分の恋愛のちょっとしたMっぽさとかをフワッと書いて、“アレ? 何書いてんだろう俺?”みたいな(笑)。仮歌ってだいたい1番までしか歌詞を書かないんですけど、それを見て“うわぁ~エグッてんな~自分のこと”って思いながら、2番でちょっと軌道修正するというか、それでやっと帳尻が合う。2番でもそれをやっちゃったら、ただの自己反省の曲になっちゃうから。だから1番までは結構自分に近い曲が多いですね」
 
――そう考えたらホントに、今回のアルバムは“アーティスト・トリップ”的な状態ではなかったわけですよね。
 
「もう完全に素でしたね。でも、『RABBIT-MAN』だって制作期間は3ヵ月ぐらいしかなかったし、今回は同じ3ヵ月でこうなっちゃったっていう。生きてきたプロセスってこんなにも影響するのかって。『これからも』(M-8)とかも最後の最後で、レコーディング当日に直しましたし。どうしても腑に落ちなくて、ちょっとだけ椎名フィルターを通させてもらった。“その瞳その仕草その笑顔も”の部分は書き直してるんですけど、それはフィルターを通してSURFACEの椎名慶治が出てきたんですよね。『君の声で 君のすべてで...』(‘99)っぽくなったらいいなぁみたいな、ちょっとそういう気持ち。何か照れ隠しで“椎名くんっぽいよね”ってワードを入れておこうと思って。もっとリアルだったんで」
 
 
アレンジャーに曲を投げるときも、“ゴメン、ビーイングで!”って(笑)
 
 
――さっき話したB’z、T-BOLAN、WANDS etcの90年代歌謡ロックな“ビーイング系”の風味とかも含めてなんですけど、このアルバムでさらに独自路線を突き進んだ感じはしますね。ある種の椎名さんが元から持っている色というか。裏切るのも1つの手ですけど、それを増幅させる部分が今回はあったなぁと。
 
「4曲目の『call my name』なんて、もう初めからそのつもりで作ってたので。アレンジャーに曲を投げるときも、“ゴメン、ビーイングで!”って(笑)」
 
――今その発注する人いないでしょうからね(笑)。
 
「しかもそこを全然通って来なかったアレンジャーさんなのに、無茶振りですよね?(笑) どっちかって言うとR&Bの人なんで、相当大変だったんだろうなぁって。こっちは得意分野なんで軽々しく言っちゃったんですけど」
 
――元THE MAD CAPSULE MARKET’Sの石垣愛さんのペンによる『lo0p』(M-10)もカッコいいですよね。でも、椎名さんとの接点があんまり見えないですね。
 
「元々石垣さんがSURFACEを好きで聴いてくれていたらしくて。TAKUYA(ex.JUDY AND MARY)さんから“何かお前の音楽好きらしいよ~”とだけは聞いてたんですよ。それからLOVE(ex. CORE OF SOUL)ちゃん伝いにTwitterでちょっと絡むことになって、trfのYU-KIさんとかと一緒にメシ食いに行って。それから何ヵ月後かに、マネージャーのところに“お前をイメージして曲作ったんだけど聴いてくんない?”って音源が届いて。向こうは俺がレコーディング中なんて知らないから、ただ聴いて欲しいだけ。それを聴いて石垣さんに“今回のアルバムに攻めの曲がなくてこれから作ろうと思ってたんですけど、石垣さんの曲に俺が歌詞を書いて兄貴が納得出来たら、アルバムに入れていいですか?”ってスタジオから電話して。その日に歌詞を書いて送って、ホントにやりましょうってなったという。だから出会って3~4年、食事に行くまでに2年かかってます(笑)」
 
――嬉しいハプニングですね。しかもすぐに送った割には歌詞がスゴくいい。
 
「ホント嬉しかったです。しかも一切書き直してないです」
 
――スゴい。この2行とかも!?
 
「“間違えは比べるものがあるから間違いだと気付く やり直し出来ない人生じゃイエスかノーの2択はないんだ”ね」
 
――やっぱ2択って勝手に思ってますからね。
 
「ないっスよね、そんなの(笑)」
 
――そう言われて初めてそういう価値観があるんだって気付けるというか。コレは発見だなぁと。
 
「ありがとうございます! 自分本位ってネガティブに取られそうだけど、でも全員が自分本位だったら絶対に世界は平和なんですよね。誰かが誰かのために生きるってキレイごとをぬかし始めると、それがどんどん屈折していって、何かが歪み始める。人のために歌うんじゃなくて、自分が歌いたいから歌ってる。君の為に生きてんじゃない でも君を離せはしない”とか、“自己満足が螺旋状に”とか、なかなかカッコいいこと言ってんな俺って(笑)」
 
――コレぞ椎名節! というフレーズは、もはや考えくても自ずと出てくるでしょうね。
 
「『lo0p』も結局は自問自答ですから。ずっと同じことを考えてしまう自分本位の繰り返しが螺旋状になる。『lo0p』は“エル・オー・ゼロ・ピー”って書いてあって、ゼロにどうしても戻ってしまうっていう意味を込めたくて。常に原点に戻ってしまうから、同じ悩みは尽きない。これからも俺は悩むでしょうし」
 
――俺、今回の曲で“自問自答”って資料にメモした曲が他にもあったなぁ…。
 
「何だろ? 『フラット♭』(M-7)かなぁ?」
 
――そう!
 
「やっぱり! 何か近いっスよね、感性が(笑)。『フラット♭』は、もう作り始める頃から絶対8ビートなロックンロールにしようと狙ってて。例えば奥田民生さんとか、斉藤和義さんとか、あれぐらい着飾らないサウンドを俺がやったらどうなるんだろう?って。この曲は確かに“俺自身どうなんだろう? 笑えてんのかなぁ?”って自問自答してる曲だと思う」
 
――今回は椎名節を作品として磨き上げていく時間があまりなかったのに、返ってその本人が出るっていうね。
 
「そういう意味では、3年やってきて節を出し過ぎて飽和してたところもあるんで。ここに来て何も考えずに素直に作ったのは、自分にとってプラスだったかもしれない。あくまで結果論ですけど」
 
――このアルバムって、ここで何かが変わるというよりは、これからの椎名慶治のホップ・ステップ・ジャンプのホップだったりステップな感じがするんですよね。
 
「だからこそ次は作り込んで、逆にスゲェ計算高いアルバムを作りたいなぁとも思うし。例えば、個人名義・椎名慶治で出さなくてもいいと思ってるし。そう思えたのも今回のアルバムでこういう素の部分が出たからこそで。それこそ今はAstronautsみたいな企画モノもやってみたいと思えるし、誰かと組むのもいいと思う。さすがにもう2年でアルバムと名の付くものを4枚出してますから。早いですね」
 
――SURFACEのときよりハードですか?
 
「めっちゃハードですよ!!(笑) 何言ってんですか!? SURFACEの後期は2年に1枚ぐらいですから、今の方が動いてるし作品を多く出してる。けど、楽です。SURFACEのときは作品を出せなかったから」
 
――なるほど。そっちの苦しみが。
 
「でも腐ってるわけにはいかないし。確かにSURFACEの12年の前半6年は忙しくて、休みたくても休めないみたいな。後半6年は我慢でしたからね。そういう意味では、SURFACEの前半戦ぐらい今は忙しくやってる。でも、楽しいんですよね」

――それにしても、個人事務所になって、メジャーみたいに定期的にリリースを求められる環境じゃなくなったのに、むしろマイペースじゃなくて。
 
「ハイペースですね(笑)。嫌だったら嫌って言うんですけど、やっぱり自分の作品がコンスタントに世に出せる、出すことによってプラスになると言われたら、断る理由はねぇしなぁって。身体にガタがきてるとしてもちょっと踏ん張って、待ってるお客さんがいるなら楽しませてあげたい。あとはやっぱり時間がない中でも、“作りたい”っていう気持ちがどこかにあるんですよね」
 
――やっぱり1つの接点を生み出すキッカケですもんね。
 
「そうなんですよ。曲があることによってライブが出来たりするし。ホント音楽って目に見えないくせに…人を繋ぐのに形は要らないんだなって。ミュージシャンって素晴らしい仕事だなって、たまに思ったりしますけど」
 
――シンガーはホントにアスリートに近いから、他の楽器よりも身体が資本なところはあるでしょうし。
 
「みんなガッタガタだと思いますよ。まさかダイレクトに感じるようになるとは思ってなかった。風邪を引いたら即、声が出ない。何も誤魔化せないのがボーカルなんで。しかもソロでやってるから。責任の『S』ですからね、ってホントかよ!(笑)」
 
――前回前々回のインタビューはね、そんなことばっかり言ってたと思いますよ(笑)。
 
「ホントですか?(笑) レコーディング中も結構調子が悪いことも多くて、スタジオの中でずっと葛藤してましたね。ブースの中で座り込んでうーんうーんって考えたりとかしてました」
 
――ソロである以上、そこをクリアするのは自分でしかない。
 
「だから、発売日にTwitterで“みんな『S』ってどう?”って聞いたときの反応を見て、正直ホッとしましたね。自分が思い描いていた感想が多かったので。自分の理想とファンの感情って近いところにあるんだなぁって、ちょっとホッとしたところはありました」
 
――あと、アルバムのリード曲であり、今回のビジュアル・イメージの核となった『いざ尋常に』の世界観って、ネタ元は何なんだろう?ってやっぱ思っちゃいますね。
 
「何か知らないけど“かぶいていたい”っていう言葉が出てきちゃって。そこから広げていった感じなんですけど。影響を受けたのは間違いなく原哲夫さんの漫画『花の慶治』だと思うんですけど…何でそれとフィーチャリングしたんだろうな(笑)」
 
――今回のアーティスト写真が今までで1番作り込んでたんで、明確なルーツとか路線が自分の中であるのかなと。
 
「実は『I & Key EN』ときから、和装がしたいとは言ってたんです。でも、かぶいてる感じだったら普通に着物着てるだけじゃつまんないから、じゃあクロムハーツのベストとか、ストールはルイヴィトンだったり、アクセサリーもジャラジャラ付けて。デザイナーとスタイリストと相談していってこの形になったんですけど。大正ロマンとか和装とかは、僕の中でのジャケット・デザインのテーマでもあったんで」
 
――そこに惹かれるのは何かあるんですかね?
 
「何でしょう? 今回だけじゃないんですよね。うーん…“男版”椎名林檎なんですかね。当時から観てていいなって思ってたんで。同じ椎名だし(笑)。デビュー日が'98年の5月27日で全く一緒だし。全く同じ日に15周年を迎えるんですよ。和装してるのうらやましかったなぁ、大正ロマン俺も好きだったのになぁ、じゃあ俺も15周年だしちょっとやってみようって。だから観た人が“カッコいい”と思うよりも、“何してんの椎名くん!?”って言ってくれた方がオモシロいなぁと。最初に今回のアー写が世に出たとき、結構ザワついてたんで(笑)。コレが俺が狙ったところだなぁと」
 
 
前はSURFACEの看板を一生懸命背負ってたんですけど
ようやくSURFACEが自分の身体の一部分になっちゃった
 
 
――あと、今回のツアーに関しては、アコースティックとバンドの2パターンあって。
 
「コストをかけて動くことがなかなか出来ない中でも、普段あまり行けない場所でも歌える方法はないのかなって。2年前にソロなった辺りでもね、機材車で廻ってみようとは言ってたんですよ。その後何となくやらないまま2年経って、あの企画はやっぱなかったんだなと。今の俺はもう一切車移動したいとも思ってないですしね。けど、ここに来てマネージャーが“だったら車移動にすればいいっすね~”みたいな。2年越しかぁと(笑)」
 
――しかも身体が弱り始め、体力の衰えを感じ始めた今(笑)。
 
「ただ、言い出しっぺは俺なんで“そうですねぇ~!”なんて言って(笑)。だから、ギタリストとキーボーティストと僕とで、一緒に車で移動してね。そういうツアーをやりたいですねって、“2年前は”確かに言った(笑)。あと、東名阪3ヵ所だけはバンドでやる。このやり方に手応えを感じれば、今度からアコースティックとバンドの両面をやっていけばいいし。次回のツアーでやらなかったら、“あ、椎名くん、もう嫌だって言ったんだろうな”って(笑)」
 
――機材車でマスクして固まってる椎名さん思い浮かぶわ~何か。
 
(一同爆笑)
 
――それで具合悪そうに機材車から出て来る(笑)。想像出来る(笑)。
 
(一同笑)
 
「間違いない!(笑)」
 
マネージャー「その前に免許を取ってもらわないと」
 
「俺も運転すんの!?(笑)」
 
(一同爆笑)
 
――やっぱね、ドライバーは1人でも多い方がね(笑)。でも、取るキッカケとしてはいいんじゃないですか?(笑)
 
「しないしない! キッカケにしない!(笑) 免許取りたてで高速何100キロも走らせないでくださいよ!(笑)」
 
――SURFACEは最初からポーンッと売れたけど、ホントはみんなそういう道をたどってって、大きくなっていくわけですから。
 
「ホントそうなんです。それこそ振り返ればSURFACEのときもそんなことを言って、1回車で走ったことがあったんですけど、まぁ大変でしたね。やっぱり永谷喬夫(ex.SURFACE)というのはスゴくムズカしい人間で(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「僕は以外と車が好きな方で、最初の3日間ぐらいは元気だと思います。大丈夫ですよ~とか言ってると思います。ただ4日目辺りから喋らなくなると思う」
 
――アハハハハ!(笑) でも今回の2ndアルバムで、ライブにおける球数は揃いましたね。
 
「自分のソロ名義の曲で2時間全然出来ちゃうんで。だからと言って、それは違う。ツアータイトルは『Strip? or Stripper?』で、『S』とは言ってないじゃないですか。コレを『S』にしちゃって、14曲中12~13曲やんなきゃいけないってなっちゃうと、逆にライブが組み立て辛いのでちょっと違うタイトルにして、“いや俺、別に『S』って言ってねぇし!”って言い訳が出来るようにしてます(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「その中にSURFACEの曲があったり、下手すると他人の曲があったりとかも、全然可能性はあるし。『S』って“椎名”だったり“SURFACE”だったり“昭和”だったり…ホントに自分にまつわる“SONY、ソロ、シンガー、サウンド、スクリーム、スピリット、ソウル”とかからきてるから。SURFACEもこの『S』に含まれてるって自分で言って気付いたのが、前はSURFACEの看板を一生懸命背負ってたんですけど、ようやくSURFACEが自分の身体の一部分になっちゃった。“SURFACE守って行かなきゃ”みたいなヘンなプレッシャーがなくなったんだなぁって」
 
――そもそも、このタイトルの『S』は、何の気なしに浮かんできたんですか?
 
「もともと『S』から始まる単語の候補があったんです。でも、今回のアルバムはこの意味だけじゃないと思えてきて、文字を消していって残ったSを見て、これでいいやって」
 
――ちなみに最初のタイトルは何だったんですか?
 
―沈黙―
 
――え?
 
「言わない」
 
――何で?
 
「何だろう? スゲェカッコ悪いから」
 
(一同笑)
 
「『RABBIT-MAN』に続く造語だったんですよ。だから今はもう恥ずかしくて言えない。コレ(レコーダー)が回ってるから言わないんじゃないからね、止めても言わないから(笑)。そうやってヒネってる自分が嫌だったんですよ。2回目もまたヒネっちゃったんだ、ああいうの1回だからオモシロいのにって。ヘビ年で『SNAKE-MAN』だったらどうします!?」
 
(一同爆笑)
 
「なるでしょ!? “はぁ?”って」
 
――『SNAKE-MAN』じゃなぁ…(笑)。
 
 
椎名慶治名義としては『S』で1回ゴール出来た気がしてる
 
 
――そして、今年は図らずしてデビュー15周年というのもありまして。
 
「ね。でも15周年って祝う年じゃないと思いません? とりあえずは『S』のツアーをやって、終わるのが4月17日(水)の“椎名の日”なんで(笑)。その1ヵ月後から15周年が始まるわけですよ。と言うことは、下半期も何かやんなきゃマズいですよね? バースデーライブは毎年12月30日に決まってやるけど、15周年だからってやるわけじゃない。そうなると結局、新しい作品…って言い出すと思うんですよね、マネージャーが(笑)」
 
――今度こそゆっくり作ろうって言ってたのに、みたいな(笑)。今作を踏まえて、次の作品がどこへ向かうのか。
 
「もう今、自分の中でやりたいサウンドがあって。最近、浅井健一さんのアルバムの曲を聴いて、それが音数少ないんですけどちゃんとロックしてて、スゲェカッコよかったんですよ。俺がギターが弾けるなら掻き鳴らして、ドラムとベースの3ピースみたいな、そうウンドがやりたい。ただ、僕はギターを弾く気はないですけど」
 
――これを機にギターを学び、免許も取って。
 
(一同笑)
 
「イヤイヤイヤイヤ!(笑)」
 
マネージャー「一人旅だ(笑)」
 
「ないない!」
 
――自分で運転してライブハウスに行って、リハやって。
 
「スガシカオさんか!」
 
(一同爆笑)
 
「どうしても好きなギターを全面に出してしまう癖があるので、今回は敢えてギター以外の音と、ボーカルを押し出そうって話を山口寛雄にして。次回はギターがうるさい感じのアルバムに出来たらなぁとちょっと思ってますね。石垣さんがもう1度やろうよとも言ってくれてるんで」
 
――とは言え、冒頭の『僕等の中』(M-1)のギターとかはカッコいいですね~。
 
「ズルいっすよね! やっぱり世代的にギターヒーローがいた時代なんで、憧れちゃうんですよね。今の時代にギターヒーローって皆無じゃないですか。それこそCharさんがいて、布袋さんがいて、この人たちが死んだら日本にギターヒーローっていなくなっちゃうのかなぁって」
 
――今はそういう志向のギタリストが弾ける場所=楽曲がないんじゃないですか? 椎名さんがそういう曲を書いたら、そこで次世代のギターヒーローを育成出来るかもしれない。
 
「スゴくいいアイディアですね。ただ、僕は下を育てるのがどうも苦手みたいで。よく一緒にやってますけど、磯貝サイモンとかZEROとか、どうでもいいですもん!(笑) ZEROは今回1曲もラップで絡んでないし。何でしょうね? もういいかなと思って(笑)」
 
(一同爆笑)
 
――コラコラ~!(笑)
 
「相乗効果がやっぱ欲しいですよね。昨年末のバースデーライブでは、俺の隣でギターを弾いてるTAKUYAさんを見て、スゴいケミストリーを感じたというか…川畑(要)はね、俺の地元の後輩ですけど(笑)。本気のTAKUYAさんを見ましたね、逆に言うと、自分はまだペーペーだったな、やっぱり上には上がいるなぁと思った。やっぱまだまだダメっすね。緊張とかしてる場合じゃない。“俺のステージだぜ”みたいになんないと。TAKUYAさんは“この2曲でお前ら楽しませるからそれ観て帰れ”ぐらいの気持ちでやってるから。コレだよなぁ、流石ドームに立った人だなぁって思って観てました。だから俺はここ止まりなんだって反省もしたし。もっと俺が俺がっていう部分、いい意味でナルシストな部分ってアーティストには必要なんだって刺激を受けました。ある意味、椎名慶治名義としては『S』で1回ゴール出来た気がしていて。この次に作る作品では何か新しい風を吹かせたいし、もしかしたらクレジットの違う形でも、何か出来ればなぁと思ってます!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2013年4月 5日更新)


Check

Release

まるでジェットコースター! 
緩急自在の2ndフルアルバム

Album
『S』
発売中 2940円
BEATSISTA
BSCL-0007

<収録曲>
01. 僕等の中
02. いざ尋常に
03. お節介焼きの天使と悪魔と僕
04. call y nae
05. I still...-アイシテル-
06. I Love Youのうた
07. フラット♭
08. これからも
09. 愛のせいじゃない 愛は関係ない
10. lo0p
11. byte × bite -type S-
12. 駆け出しのヒーロー
13. ハッピーロンリーライフ
14. 遮ニ無ニ

Profile

しいな・よしはる…’75年12月30日生まれ。SURFACEのボーカルとして、’98年にシングル『それじゃあバイバイ』でデビュー。親しみやすいメロディと独特の詞世界、スリリングかつドラマティックなアレンジが融合したサウンドが支持を集める。その後もライブ活動を精力的に行いその名を広め、SURFACEとしてシングル21枚、オリジナルアルバム6枚をリリース。’10年6月13日の東京国際フォーラム・ホールA公演にて、惜しまれながらもSURFACEの12年の活動に終止符を打つ。バンド解散後、’10年11月に1stミニアルバム『I』でソロデビュー。’11年6月に1stアルバム『RABBIT-MAN』を、同年12月にはライブDVD『椎名慶治1st Solo Live「RABBIT-MAN」』、1stシングル『I Love Youのうた』を同時リリース。'12年4月に2ndミニアルバム『I & key EN』を発表。

椎名慶治 オフィシャルサイト
http://www.yoshiharushiina.com/


Live

新作ツアーバンドVer.開幕!
大阪公演が間もなく

 
『YOSHIHARU SHIINA LIVE #3
 Strip? or Stripper? -Type S-』
【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード189-285
▼4月5日(金)19:30
名古屋クラブクアトロ
スタンディング4600円
ジェイルハウス■052(936)6041
※4歳以上有料。3歳以下は入場不可。

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード189-226
▼4月7日(日)18:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング4600円
※3歳以下は入場不可、4歳以上は有料。

【東京公演】
チケット発売中 Pコード189-026
▼4月17日(水)19:30
赤坂BLITZ
1Fスタンディング4600円 2F指定4600円
VINTAGE ROCK■03(3770)6900
※3歳以下は入場不可。4歳以上はチケット必要。ドリンク代別途必要。

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Column

SURFACEから続くキャリアと
ソロとしての新たな刺激が結実
人と人の縁が導いたミニアルバム
『I & key EN』を語る

SURFACEの解散から何から
ぶっちゃける!(笑) 1stアルバム
『RABBIT-MAN』インタビュー