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音楽に何が出来るのか、音楽で何が出来るのか
震災復興、ハイスタ、『AIR JAM』、そして新作『Best Wishes』
Ken Yokoyamaが3.11以降の全てを語る!
日々を戦う全ての皆に贈るインタビュー&動画コメント

 一昨年の東北の大震災から、Ken Yokoyamaの動きはミュージシャンの中でも早かった。物資を届けるという音楽家の前に人としての動き、Tシャツを制作し費用を工面してのフリーツアー、そしてHi-STANDARDとしても11年ぶりの『AIR JAM』…。そんな一連の流れを経ての新作造り。そんな中生まれた『Best Wishes』は、世の中の状況を憂いた怒りに満ちた作品になるかと思いきや、強い意志はありつつも、よりグッドメロディに導かれた内容なのが不思議でもあり、嬉しく響いた。日本では越路吹雪のカバーでも知られるシャンソンナンバー『If You Love Me (Really Love Me)』(=『愛の賛歌』)が、ラストナンバーなのも本当に素晴らしかった。Ken Yokoyamaからの胸にズシリとあたたかさと強さが残るメッセージの数々、受け取って欲しい。

Kenさんからのグッとくる動画コメントはコチラ! さすがです

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――アルバムのお話を伺うにあたり、やはり一昨年3.11の東北の大震災から振り返って頂きたいのですが。
 
「誰もが考える通り、人として何が出来るかを考えて…今は物資を持っていかなきゃなと。音楽家としての自分はフリーツアーを行なうことに着地したけど、発生から72時間くらいは音楽では何も出来できないんだとショックでしたね。暖房がちゃんと効いてるところでこそ音楽が聴けるというか…人の支えはもちろん必要なんだけど、ライフラインがあってこそというか。無力感ですよ。例えば、被災地の仮設住宅に行っても、老人にリクエストをされた曲は歌えないだろうなとかね。『STAY GOLD』は老人の方には響かないですから」
 
――でも、フリーツアーには大きな意義があったと思います。
 
「何ヵ月か経ってライフラインが復旧するときに、ようやく音楽が必要かなと思えたので。そこで考えたのがフリーツアーで、俺らを聴いてくれている若い世代には、こんなときだからこそ祭が必要だと。企画して良かったなと。“WE ARE FUCKIN’ ONE”と書いたTシャツを売り始めて、その収益でフリーツアーをやって。募金とは違う形で、みんなの工面を受けられたのは良かった。音楽が好きであることを声高に叫ぶことというか…Tシャツが広がっていけばいいなって」

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世の中からしたらハイスタなんてちっちゃいことだし
どんだけいさかいゴタゴタがあっても
みんなのためになるなら一瞬で復活するぞと思える事態だった
 
 
――Kenさんの動きには何かしらしっかりとしたメッセージがあると感じるのですが、ファンの中では伝説になりつつあったイベント『AIR JAM』を、11年ぶりに復活したのも大きかったのではと。
 
「Hi-STANDARDは11年間ゴタゴタがあったけど、そんな自分らのことより、みんなにとりあえず元気になってもらいたいと思って。実際にハイスタを好きでいてくれた人たちが被災地にもいたし、“友人が流されちゃったけど、ハイスタが好きだったから、喜んでいると思う”と言われたりもして…。世の中からしたらハイスタなんてちっちゃいことだし、どんだけいさかいゴタゴタがあっても、みんなのためになるなら一瞬で復活するぞって思える事態だったんです。震災後、ようやく頭も洗えた、おにぎりも食べられた、そして久しぶりにTwitterでも覗こうかと思った被災地の人が、俺らの写真を見て、“うわぁ~!”となって欲しかった。自分のフリーツアーをする前にも盛岡と八戸でライブもやれたし、今はマメに足を運ぶしかないと思ってたね。SLANGのKOが宮古で行なったフリーフェスにも参加したんだけど、平たくいうと“元気出せよ!”と思ってたけど…“この街に東京の人が来ると思わなかった”と現地の人に言われるくらい、酷い状況だったね…。でも、ライブを観て“生きていてよかった”と思って欲しかったから」

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パンの素人がおいしいか、おいしくないかを
言っちゃいけないことはないわけでしょ?
知識がない者が怖いと思ったら、それが事実なんです
 
 
――そのような状況の中で、いつぐらいから音源を制作しようと動き始めたんですか?
 
「2011年に東北をひっきりなしに回って、その後、新曲を書こうと思ったら浮かばない。アイデアは浮かぶけど膨らませる気にならないし、どうすれば形になるかが分からない…。自分でも“何でだろう?”って。作りたいと思う一方で、今こんなコード進行を並べてる場合でもないし…という気持ちもあって。今までに感じたことのない、得も言われぬ感じ…震災のことを盛り込むことに自覚的だったわけじゃないけど、ちゃんとアップデートされた気持ちになってないといけないなと。震災後の希望と絶望というかね。それで一旦制作にストップをかけて、換気扇の下で夜な夜な考える時間が始まったんですよ。パンクなのか? メタルなのか? そんなときに『You And I, Against The World』(M-2)っていう、“お前とオレで世の中に立ち向かうんだ”というタイトルを思い付いて。この曲が求めるものを作ればいいと思えた。このタイトルから発想したと言っても、過言ではないね。今までもタイトル先行の曲がなかったわけでもないけど、“これだ~!!”とまで思えたのはなかったですよ。そこからは早かったですね、テンションも高かったですし」
 
――今作はいつも以上に言葉が強く感じるんですが、世の中の状況的にも、もっと感情的な、怒りがもっと全面に出るのかなと思ってたんですね。あと、同時にグッドメロディが際立っているところも不思議ですね。
 
「そこは自分でも実はよく分からないところで。例えば『You And I, Against The World』という曲は原発事故から発想したものなんだけど。俺は脱原発派なんだけど、だいたいは“知識がない者が何を言ってるんだ!”という批判が多いんですね。でも、発信するのに、顔色を伺う必要はないと思うから。パンの素人がおいしいか、おいしくないかを言っちゃいけないことはないわけでしょ? 知識がない者が怖いと思ったら、それが事実なんです。言いたいと思うことがあるなら言わないといけないよ、という歌なんですよ。原発事故から、そこまでの曲になったんです。 “FUCK東電”と俺が歌うのは違うと思ったんです。怒りは怒りなんだけど、大人になったのかな。日常的には東電や政府についていろいろ思っていても、それを俺が歌にするのは違うなと。いろんな温度があってもいいと思うし」

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ずっと頑なに生きてきた人間が、震災で心の壁を壊すきっかけが作れたかなと
 
 
――『Ricky PunksⅢ』(M-6)では、Kenさん自身を比喩した楽曲というか…己を振り返る感じがしました。
 
「これはシリーズになっている曲で、毎回カッコ悪いパンクスのリッキーくんというキャラクターについて歌っているんだけど、リッキーくんに何かやらせたいなって。今回の震災で自分らがどう動いたか、どういう心の動きがあったかを物語にして残しておけば、自分が分かってくるんじゃないかと思ったんですよ。小さいコミュニティで満足しているリッキーくんが、衝動的に動き、物資を持って現地へ駆け付けようとする姿を書いたんだけど…考えてみたら自分たちそのものだったし、震災前は如何に小さなことで壁を作っていたかが分かった。震災後の今、周りのバンドはまとまれていると思うんです。まぁパンクの精神性だとも思うんだけど、その中に馴れ合いを拒む拒絶性があって、その感じも美しいわけですよね。そうやってずっと頑なに生きてきた人間が、震災でそういう心の壁を壊すきっかけが作れたかなと思います」
 
――震災が起きたときに、いわゆるジャンルでいうところのパンク筋の人たちの動きが本当に早かったですよね。とりあえず動け!…というか。それは本当に感じました。
 
「何なんですかね? 嬉しくも誇らしくもあるんだけど、不思議だなと思いますね。でも今まで交流のなかったジャンルのバンドにも、スゴく動いている人たちもいて。近くはないけど、みんなやっているんだなって。だから今はもう、小さなことを言っている場合じゃないんですよね」

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今やんなきゃダメっしょ!と思えた
 
 
――それと今回、ラストに収録されている『If You Love Me (Really Love Me)』(M-12)なんですけど…スゴく救われたんですよ。Kenさん先ほど、被災地に行かれたときに、結局老人の方に伝わる歌がないと意味がないということをおっしゃっていたんですけど…。
 
「それだ! 俺、今回いっぱい取材受けてるけど初めて、そこと繋がったわ! 最後に誰もが知っているシャンソンの古いメロディをやるのは、自分が落ち着きたかったと思ってたんだけど、音楽が必要とされるときはコレ(=誰もが知る曲)でしょという風景と、今重なりましたね。ホント、そうですよ。震災後、ギター1本持って駆け付けるなら、都はるみさんが歌えないと、アンパンマンが歌えないとと思ってたんですが…“私は越路吹雪さんの『愛の賛歌』が聴きたい”と思う人がいてもおかしくないですもんね。あぁ~それもあったのかもしれない。だから、俺やりたかったのかな!? いいっすね、その説いいっすね!(笑) 誰もが知っているメロディだから、やりたかったんでしょうね。震災があったから出来たカバーなんですよ。昔からやりたかったんだけど、誰もが知り過ぎている曲だし、自分がやる必要はないのかなって。でも、今やんなきゃダメっしょ!と思えた。その考えの源には、震災後に自分が感じた音楽の無力感というか…“これが音楽じゃないの?”という自分の疑問に答えたかったのかもしれない。当たり前ですけど、曲がいいんですよ!」
 
――本日は本当にたくさんの話を聞けました。ツアーも楽しみにしています。ありがとうございました!
 
 
Text by 鈴木淳史
Photo by 河上良(bit Direction lab.)

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(2013年1月24日更新)


Check

Release

心を鼓舞する熱き言霊の嵐!
音楽の力に奮い立たされる強力盤

Album
『Best Wishes』
発売中 2300円
PIZZA OF DEATH RECORDS
PZCA-59

<収録曲>
01. We Are Fuckin’ One
02. You And I,Against The World
03. Soul Survivors
04. Not A Day Goes By
05. This Is Your Land
06. Ricky Punks III
07. Everybody’s Fighting
08. Sold My Soul To R ’N R
09. I Can’t Be There
10. Good Bye For A While
11. Save Us
12. If You Love Me (Really Love Me)

Profile

ケン・ヨコヤマ…’69年10月1日生まれ。’91年、Hi-STANDARDを結成し、’00年活動休止。’04年にアルバム『The Cost Of My Freedom』ソロデビュー。『Nothin' But Sausage』('05年11月発表)、『Third Time’s A Charm』('07年9月発表)、『Four』('10年3月発表)と4枚のアルバムを発表し、今作『Best Wishes』(‘12年11月発表)が5枚目。日本武道館、神戸国際展示場、幕張メッセと大規模なライブも成功させていく中、'11年3.11の東北の大震災後、Hi-STANDARD の活動再開とAIR JAMの11年ぶりの開催も発表。とき代に敏感に、そして迅速に動く姿は、多くのミュージシャンからも敬意を表される。そしてBBQ CHICKENSのギタリストでもあり、『PIZZA OF DEATH RECORDS』の代表取締役社長も兼務。

PIZZA OF DEATH RECORDS
オフィシャルサイト

http://www.pizzaofdeath.com/


Live

各地でソールドアウト続出!
全国ツアーもいよいよ後半戦に

 
『Ken Yokoyama “Best Wishes Tour”』
【長崎公演】
Thank you, Sold Out!!
▼1月24日(木)19:00
DRUM Be-7
【福岡公演】
Thank you, Sold Out!!
▼1月25日(金)19:00
DRUM LOGOS
【鹿児島公演】
Thank you, Sold Out!!
▼1月27日(日)18:00
CAPARVOホール

 
チケット発売中 Pコード182-914
【熊本公演】
▼1月28日(月)19:00
DRUM Be-9 V1
【大分公演】
▼1月30日(水)19:00
DRUM Be-0
スタンディング2500円
キョードー西日本■092(714)0159
※保護者同伴に限り、未就学児童は入場無料にて入場可。小学生は保護者同伴に限り、チケット購入の上入場可。子供の体調不良や怪我等は保護者の管理責任となります。

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【松山公演】
Thank you, Sold Out!!
▼1月31日(木)19:00
SALONKITTY
オールスタンディング2500円
[ゲスト]SUNMARINE
SALONKITTY■089(945)0020

【高松公演】
Thank you, Sold Out!!
▼2月2日(土)19:00
DIME
オールスタンディング2500円
[ゲスト]BURL
DIME■087(862)4440

【京都公演】
Thank you, Sold Out!!
▼2月3日(日)19:00
KYOTO MUSE
スタンディング2500円
[ゲスト]SCOTLAND GIRL
SMASH WEST■06(6535)5569


『Ken Yokoyama
 “Best Wishes Tour Final”』
【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼2月7日(木)19:00
Zepp Tokyo
1Fスタンディング3000円
2F指定席3000円
スマッシュ■03(3444)6751

ツアーの最後を飾る追加公演が
いよいよ今週末チケット発売!

『Ken Yokoyama
 “Best Wishes Tour Extra Show”』
一般発売1月26日(土)
Pコード189-350
▼2月10日(日)19:00
横浜ベイホール
スタンディング3000円
[ゲスト]dustbox
スマッシュ■03(3444)6751
※未就学児童は無料。13歳未満は保護者同伴に限り入場可。

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急遽アコースティックライブが決定
ソロで大阪・中崎町のNOONに登場!


『横山 健(アコースティックライヴ)』
▼3月3日(日)19:00
大阪・中崎町NOON
前売2500円
【共演】渡辺俊美/サイトウ "JxJx" ジュン
NOON■06(6373)4919
※電話&メール予約 info@noon-web.com
(イベント名/名前/電話番号をご記入ください)

Column

LOSTAGEの五味岳久(vo&b)と
Ken Yokoyamaが熱く語る!
連載企画『奈良からの手紙』で
感動の対談が実現!!

Column

神戸での初の大規模ライブ
にかける、熱きパンク魂!
挑め『DEAD AT BAY AREA』
言魂に震える前回のインタビュー