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チャイコフスキー国際コンクール優勝から20年
ザ・シンフォニーホールでソロ・リサイタルに臨む
ピアニスト、上原彩子にインタビュー (2/2)

ピアノをやってきて良かったな、幸せだったな。
 
■組曲『展覧会の絵』はすごく色彩感のある作品ですね。ムソルグスキーの頭の中ではオーケストラが鳴っていたようにも思えてきます。
 
上原:ムソルグスキーはピアノ曲の作曲家ではないし、オペラなどがやっぱり一番充実してる分野だと私は考えているので、彼の中ではかなりオーケストレーションのイメージがあったんじゃないかと思います。それをやる時間がなかったのかどうなのか、そのあたりはよくわからないんですが。ただ不思議なのは、オーケストラで聴く時よりも、ピアノ1台で聴いた時の方が華やかになり過ぎなくて、素朴さなどが浮かび上がるのが面白いところだと思います。
 
■最後に『キエフの大門』ですごく盛り上がるんですが、いくつかのプロムナード(回廊)を通って10枚の絵を見る感じですよね。その気分とか、あるいは音そのものがとてもうまく結びつけられているように思えます。
 
上原:聴いている人は音楽と一緒に風景を見ながら、目の前で風景が変わっていくみたいな感覚をかなりわかりやすく味わえる曲だと思います。よく考えられているし、それまでこうした構成の曲というのはなかったから、そういう意味ではすごく彼独自の方法で曲をまとめた感じはありますけど、難しいことは考えないでただ楽しんでもらえたらうれしいと思います。
 
■『展覧会の絵』通して弾いて、上原さんはどのあたりを弾いてる時が一番好きですか。
 
上原:好きなのは… そうですね。 最近好きなのは『古い城』ですね。昔弾いた時はあのゆっくりなテンポ感に耐えられずに、いろいろやろうとしてしまったんだけど、最近になってやっと一本の線で淡々と歌うことが前よりもうまくできるようになったような気がします。 だからなんだかすごく今は弾いていて気持ちがいいです。
 
■昔より今の方がうまくできるようになってきた。上原さんほどのピアニストでもそんな実感があるんですね。
 
上原:たくさんあります。それが弾いていて一番うれしいところかな。以前はこの作品を1曲ごとに追いながら弾いてる感じがあって、今の私がその頃とは違うなと思うのは、今は一歩引いたところで作品全体を見ながら1曲1曲を味わうことができる。そういうことができるようになったのがうれしいという感じですね。
 
■シューマンやリストについても同じように、昔と今では違う感じでしょうか。
 
上原:シューマンとリストは練習を始めたのが今年に入ってからなので、違いも何もっていう話なんですが(笑)。ただリストは難しい曲ですが、初めて取り組んだ頃よりは音の感じを広がりをもって捉えることができるようになったかなと思います。私がリストで目指したいのは、ピアノを聴いたんだけどピアノじゃないみたいだったっていう風に感じてもらうこと。『展覧会の絵』は壮大な作品ですが音に具体性がありますよね。ここはこの楽器、ここはこんな響き、みたいな。ロ短調ソナタにはそういうものとはまたちょっと違う広がりがあるんです。こうしたそれぞれの作品の個性みたいなものを表現したいと思っています。
 
■ありがとうございます。大事なことを1つ訊くのを忘れていました。上原さんは今年がデビュー20周年ですね。
 
上原:これまで私がやってきたのはピアノだけで、その1つのことだけで20年を見てみると20年前との違いっていうのを1回1回のコンサートの積み重ねみたいな形で感じることができて、ありきたりな表現ですけどピアノをやってきて良かったな、幸せだったなって思います。そういうものが全部積み重なって、今を迎えていることに感謝しています。
 
■最後に、コンサートを楽しみにしているお客さまにメッセージをお願いします
 
上原:ザ・シンフォニーホールは大きなホールなのに音がとても隅々まできれいに届くし、自然な響きで大好きなホールです。今回はそのホールの響きをうまく使いながら弾こうと思っています。ピアノ1台なのだけど「ああ、すごくいろんな音がしていたな」と感じていただける2時間になればうれしいと思います。
 
■2022年7月6日 Zoomにてインタビュー。



(2022年7月28日更新)


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上原彩子プレミアム・リサイタル

8月7日(日)14:00開演
ザ・シンフォニーホール
全席指定5,000円
チケット発売中 Pコード 207-150

【プログラム】
シューマン:幻想小曲集op.12
       ゆうべに
       飛翔
       なぜ
       気まぐれ
       夜に
       寓話
       夢のもつれ
       歌の終わり
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調S.178
ムソルグスキー:組曲『展覧会の絵』

【問い合わせ】
ザ・シンフォニーチケットセンター
■06-6453-2333

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