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ショパン、フォーレ、チャイコフスキー
繊細な翳りを帯びた色鮮やかな響き
横坂源 チェロ・リサイタル2022《Elegy》 (1/2)

チェロの横坂源が3月19日(土)、ザ・シンフォニーホールでリサイタルを行う。好評だった昨年に続く1年ぶりの登場である。10代の頃から小澤征爾、岩城宏之らと協奏曲を共演するなど注目を集めた横坂は、渡欧後シュトゥットガルト国立音楽大学、フライブルク国立音楽大学で研鑚を積み2010年には難関ミュンヘン国際音楽コンクールで第2位を受賞、国際的なキャリアをスタートさせた。豊かな表情の中に繊細な翳りを帯びた響きは多くのファンの心をつかんでいる。今回のリサイタルで話題を呼びそうなのが、前半に置かれたショパンの2曲のチェロ作品。横坂の響きはピアノとは異なるショパンの表情を伝えてくれることだろう。(音楽ライター/逢坂聖也)

チェロ・ソナタはショパンが晩年の思いを込めた大事な曲。
 
■リサイタルのタイトルは前回に引き続き「エレジー」。フォーレの名曲の題名でもあります。
 
横坂:ガブリエル・フォーレの『エレジー』(悲歌)という曲が、僕は小学校の頃初めてレッスンを受けた時から大好きだったので、前回、リサイタルが決まった時にぜひ弾きたいと思ってプログラムに入れました。そこから打ち合わせを重ねる中でリサイタル全体がこのタイトルに決まっていったんです。思い入れの深い作品ですからもちろん今回も弾きますし、第2回ということで統一性を考えてタイトルにも同じものを付けました。
 
■前半にショパンのチェロ作品。今回はこの2曲が目を惹きます。
 
横坂:とても対照的な2曲だと思います。序章と華麗なるポロネーズはまだポーランドを出る前の若いショパンの天真爛漫さがシンプルに感じられ、またサロンのための音楽ということもあって、すごく聴きやすい曲だと思っています。チェロ・ソナタの方は彼が晩年に、自分の身の回りの世話をしてくれていた親しかったチェリスト(※①)のために書いた曲です。ショパンは生前最後のコンサートでこの曲を取り上げているんですが、複雑という以上に歪み切っていると言うか、すごくデモーニッシュな力の強い曲だと思います。ショパンがその晩年に特に思いを込めた大事な曲だったのではないかと僕は感じています。 
 
■ショパンのフランスでの境遇や当時の心情などが反映された作品ということでしょうか。
 
横坂:ショパンはパリにいてもポーランドの誇りをずっと持ち続けていた人だし、作曲のスタイルも頑固一徹な人のように僕には思えるんですね。同じ時代の中でシューマンをはじめ、いろんな作曲家たちがさまざまな書法を生み出していく中で、この人はあまり周りに影響されないで自分がどうしたいのかということだけを考えながら曲を書いてきているような感覚があります。体が弱くて繊細というイメージが強い人ですが、内面は相当に男性的なものがあるというか、すごく強い野心だったり意志があった人なんじゃないかなと思います。そうしたものが、この晩年のチェロ・ソナタにはたくさん含まれているような気がしています。

Gen-Yokosaka-no-credit_2-270.jpg■ピアノは津田裕也さん。ミュンヘンで入賞された時に一緒に演奏された方ですね。 
 
横坂:津田さんはピアニストの伊藤恵さんに紹介していただいて、それがきっかけで2010年にコンクールで出会いました。そこから定期的に共演の機会を重ねています。コンサートの時、自分の中では、ただこの曲をやりたいというのではなくて、この人とこの曲をやりたいという気持ちがいつも先行してあるので前回は萩原麻未さんとラフマニノフを弾きたかったし、今回は津田さんと弾くならショパンを、という気持ちがあります。

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(2022年3月 1日更新)


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横坂源 チェロ・リサイタル2022《Elegy》

3月19日(土)19:00開演
ザ・シンフォニーホール
全席指定:4,400円 
チケット発売中 Pコード 197-397

【プログラム】
ショパン:序奏と華麗なるポロネーズ
ショパン:チェロ・ソナタ ト短調
フォーレ:蝶々
フォーレ:エレジー
クライスラー:愛の悲しみ
クライラー:美しきロスマリン
ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調
「英雄ポロネーズ」※ピアノ・ソロ
チャイコフスキー:
懐かしい土地の思い出「メロディ」
アイルランド民謡:ロンドンデリーの歌
ポッパー:ハンガリー狂詩曲

【チェロ】横坂源
【ピアノ】津田裕也

※本文中に登場するチェリスト
①オーギュスト・フランコム(1808-84)
②ピエール・フルニエ(1906-86)
③ムスティラフ・ロストロポーヴィチ(1927-2007)
④グレゴール・ピアティゴルスキー
(1903-76)
⑤エマヌエル・フォイヤマン(1902-42)
⑥ダニール・シャフラン(1923-97)

【問い合わせ】
ザ・シンフォニーチケットセンター
■06-6453-2333

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