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ホーム > インタビュー&レポート > 春の訪れを告げるように、オペラの名作から選りすぐりのアリアを 気鋭のソプラノが歌う。ザ・シンフォニーホールで リサイタル・デビューを果たす伊藤晴にインタビュー。


春の訪れを告げるように、オペラの名作から選りすぐりのアリアを
気鋭のソプラノが歌う。ザ・シンフォニーホールで
リサイタル・デビューを果たす伊藤晴にインタビュー。 (1/2)

気鋭のソプラノ、伊藤晴がザ・シンフォニーホールでリサイタルを行う。伊藤晴は三重県出身。三重大学卒業後、武蔵野音楽大学大学院、日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第25期を修了し渡欧。ミラノ、パリで研鑽を積み、パリ地方国立音楽院コンサーティスト・ディプロマ課程を修了した。帰国後は所属する藤原歌劇団の2014年創立80周年記念公演『ラ・ボエーム』のムゼッタ役で本公演デビュー。以後、『カルメン』のミカエラ、『椿姫』のヴィオレッタなど次々と大役を歌い注目を集めている。ザ・シンフォニーホールには2021年のジルベスター・コンサートで初登場。今回が初めてのソロ・リサイタルとなる。堂々たる歌唱と華やかな魅力、そして飾らない人柄は関西でも多くのファンをつかむことだろう。(音楽ライター/逢坂聖也)

デビューのムゼッタは、自分から一番遠いキャラクター(笑)。

■昨年のジルベスター・コンサートがザ・シンフォニーホール・デビューだとうかがいました。ホールやお客さまの反応はいかがでしたか?
 
伊藤:ほんとに楽しいコンサートでした。お客さまが暖かくてノリが良いっていうんでしょうか、会場と一緒に盛り上がっている感じがあって(笑)。ザ・シンフォニーホールは広いホールですが、お客さまとの距離が近いし響きも素晴らしいですね。無理をしなくても声が自由に飛んで行ってくれる、とても歌いやすいホールです。ここでまた歌えることを楽しみにしています。
 
■とても順調にキャリアを重ねていらっしゃいます。伊藤さんが歌手になりたいと思ったのはいつ頃のことなのですか?
 
伊藤:遅いんですよ。私は自分が歌手になるなんて思っていなくて、ずっと地元でピアノの先生になろうと考えていましたから。歌もそのために必要だったから始めたという感じでした。歌手になりたいと思ったのはもう卒業間際のことで、その頃には毎年卒業生がファイナル・コンサートというのを開いていて、そこで生まれて初めてソプラノのソロを歌ったんです。チレアの『アドリアーナ・ルクヴルール』のアリア「私は卑しい芸術の神の僕(しもべ)」を。その時ですね。「私はこれがやりたいんだ!」って強く思ったのは。
 
■スポットライトを浴びて、喝采を聞いてしまったんですね。
 
伊藤:その通りです(笑)。それから大学院で本格的に学ぶことになりました。ただここでも歌とオペラについて結構悩みました。歌を学ぶことはできても、それを通して舞台の上のキャラクターをトータルに表現するということが自分の中でなかなかつながらなくて。それがわかるようになったのはずっと後のことです。でも大学院を卒業する頃にはオペラの道に進もうと決めていて、藤原歌劇団の研究生を経て留学しました。
 
■ミラノとパリで学ばれていますが、成果はいかがでしたか?
 
伊藤:一番大きかったことは、パリ地方音楽院でマルゴーニ富佐子先生に出会えたことだと思います。当時先生が私を導いてくださって、今も導いてくれています。歌というのは自分の身体が楽器ですから、その楽器を理解してくれて、なおかつ自分に合う先生を探すということがとても難しいんですね。そして身体は歳とともに変わっていきますから、自分の一番いいタイミングで先生に出会えたということが私にとってとても大切なことで、もし先生がいなければ私は今オペラを歌えていないと思います。
 
■これまで歌って来た中で好きな役、ぜひまた歌ってみたい役は?
 
伊藤:デビューが『ラ・ボエーム』のムゼッタだったのですが、自分からは一番遠い役(笑)!すごく魅力的で街を歩いたらみんなが私のことを見て、みたいな女性なので。自分をかなぐり捨てて役に入らなきゃいけないキャラクターという意味ではやりがいはありすぎるぐらいあったので、私自身には「やった!」っていう達成感がありました。日本人の感覚からするとちょっと難しいような感情もあったり、でも心の中はすごく優しい人で、いい女じゃなくちゃいけない。難しい役ではあるんですが、とても好きな役です。また歌ってみたいということでは『椿姫』のヴィオレッタ。1度しか歌ってはいないんですが、あれは体力があるうちじゃないと絶対できないし、でも声が若すぎてもダメですし、ぜひいいタイミングで歌うことができたらと思っています。
 
■昨年には藤原歌劇団の日生劇場公演で『蝶々夫人』も。有名なアリア『ある晴れた日に』は今回のリサイタルのタイトルでもあります。
 
伊藤:『蝶々夫人』は私がヒロインを歌ったオペラの中では一番重い作品だと思うんです。幕が進むにつれて声に深いものが必要となってきます。私自身の声の質としてはむしろ歌いやすくなっていくんですが、やっぱり第1幕では15歳の蝶々さんの可愛らしさも必要で…着物を着てヴィオレッタ以上に体力も使うので、ぜひまた歌えればいいなとは思うものの、やはり役との出会いはタイミングが大切になってくると思います。

次のページ⇒今回はいろいろなオペラの場面を演じながら歌おうと思っています
 



(2022年3月14日更新)


Check

ベスト・オブ・アリア
~ある晴れた日に~

伊藤晴 ソプラノ・リサイタル

3月21日(月・祝)14:00開演
ザ・シンフォニーホール
全席指定:4,400円 
チケット発売中 Pコード 201-996

【予定曲】
▶プッチーニ
歌劇『蝶々夫人』~「ある晴れた日に」
歌劇『ジャンニ・スキッキ』
 ~「私のお父さん」
歌劇『ラ・ボエーム』~「私の名はミミ」
▶ビゼー
歌劇『カルメン』
 ~「何を恐れることがありましょう」
▶ヴェルディ
歌劇『シチリア島の夕べの祈り』
 ~「ありがとう、愛する友よ」
▶グノー
歌劇『ファウスト』~「宝石の歌」
▶シャルパンティエ
歌劇『ルイーズ』~「その日から」
▶アーン:「リラに来るうぐいす」 
     「春」
▶ロッシーニ:「約束」
▶中田喜直:「さくら横ちょう」
      「たんぽぽ」

【ソプラノ】伊藤晴
【ピアノ】仲田淳也

【問い合わせ】
ザ・シンフォニーチケットセンター
■06-6453-2333

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