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日本センチュリー交響楽団「ハイドン交響曲集Vol.1」リリース。
首席指揮者とレコーディング・エンジニアが語る
「ハイドンマラソン」その最新の成果! (2/2)


指揮者とオーケストラと世界的なエンジニアのトライアングル。飯森範親


UKI_2579200_260.jpg■今、少しお話にも出ましたが、おふたりはずっと学生時代からの友人同士とうかがっています。その背景がレコーディングやCD制作のプロセスにも生きたということでしょうか。

飯森:35年の付き合いなんですよ。桐朋の1年生の時から。彼はトランペット科でした。

江崎:普通はプロデューサーと指揮者って一線を越えてはいけないような部分っていうのはあって、両方遠慮しちゃうんだけど、そこを突っ込んで言えるっていうことは、これはものすごい強みだと思いますね。

飯森:相当ズバズバいうよね(笑)。

江崎:お互いにね(笑)。でもそこを遠慮したらやっぱりいいものはできないね。

飯森:僕がこうしてほしいなと思うことや、また彼がやってほしいんだなって思うことも、結構わかるんですよ。僕が気になっている部分というのは、当然のように彼から指摘されますし、その逆も。何箇所にも渡ってそういう部分がある。

江崎:これは奇遇というか稀というか、本当に大事なコラボレーションだと僕は思ってますね。いろいろな仕事をやる中で、飯森さんとのCD創りというのは相当高い次元の、本当に従来からの録音製作の一番上の部分を体験できているっていうのが正直なところです。一切の妥協なくできています。

飯森:指揮者とオーケストラと世界的なエンジニアっていうトライアングルが、うまく機能しているんだと思いますね。

■録音エンジニアからみた飯森マエストロっていうのはどういう印象なんでしょうか。

江崎:彼の優れたところは限られた時間の中でも、音楽的に必要なことはすべて行うことができるという点。それから人としてのコミュニケーション能力がすごく高くて、指揮者としての必要条件というのがすべて備わっているなって思いますね。そして僕の立場からいうなら、彼はレコーディングに対しても、非常に理解があって、大事に考えていてくれる。コンサート活動とレコーディングっていう、両輪をバランスよく行えているということが「飯森範親」っていう指揮者像をきっちり安定させているんじゃないかなって思います。
 

UKI_2606300_200.jpg飯森:ただ、レコーディングについては、もう関係者全員の努力と理解、としか言えないですから。

江崎:コンサートでわずかな音程のミスとか何にも気にならないことが、やっぱりマイクを通すと気になる。どうしても「そこをもう1回」ってやらないといけないんですよ。オーケストラにとってはつらいですよ。でも彼がいると「うん、やろう」ってことになる。そこがこの人の人徳っていうかね。そこのバランス感覚が。


SACDのハイドン全集って、まだないんです。-江崎友淑

■飯森さんにうかがいたいのですが、レコーディングも含めて、1年半経過したハイドンマラソンの、手応えはいかがでしょう?

飯森:お客さまが増えてきているのが、すごくありがたいですよね。ハイドンを通じて、今まで積み重ねてきた日本センチュリー交響楽団の奏でる響き、それからメンタリティーをみなさんが感じて下さってるのかなと思います。泣いたり笑ったり、ちょっと弾けてみたり、というのが音にも表れているので。


■ハイドンの交響曲自体に、あの手この手というか、いろんなヴァラエティがありますよね。

飯森:ハイドンの作品というのは、その時代の貴族とか、エスターハ―ジの宮廷の人たちとか、お金は出してくれているけど音楽にあんまり興味がないような観客に、いかにして自分の音楽を楽しんでもらうかっていう、仕掛けがいっぱいあるんですね。ただそれを楽譜から読み取るのは、なかなか難しいんです。それをセンチュリーの人たちは、どんどんやってくれるし、いろんなアイデアを出してくれるし、そのキャッチボールが回を重ねるごとに増えていて面白いですよね。


江崎:有名な曲ばかりでなく、今まで光の当たらなかった曲のより細部にまでこだわって、深い考えを持って音作りをしているっていうところが、ハイドンマラソンの画期的なところだと思います。


■「オクタヴィア・レコード」ではハイレゾの配信も行っていますよね。そのあたりの棲み分けっていうのはどのように?

江崎:これはちょっと話が長くなるんですけど、SACDにはかなり初期から携わっていたんです。ソニー株式会社とSACDの開発を一緒にやったところから始まるんですが、DSD録音の先駆けで、DSDというのはPCも超えた最高スペックなので、それで押さえておけばどういうかたちにでも展開できるんです。352.8kHzのハイレゾでも作れるし、普通のハイレゾも作れるし、DSDも作れるし…そういう最高の信号で録音するっていうポリシーを変えていくつもりはないので、その時のニーズに合ったアウトプットを今後はやっていけたらなと、思っています。もちろん、これはオーケストラ自身のお考えも含めてですけど、今のセンチュリーの個性を見せていくには、録音というのはいいツールなんで「今の旬がこれ!」というものを捉えて創っていきたいなと僕は思います。

■ありがとうございます。お聞きしたかったことは以上です。あとはこのCDをおすすめいただいて、終わりにできれば。


飯森:あとひとつ、お伝えしておきたいのはこのCDの表ジャケットの文字のデザイン。カリグラフィーっていうんですが、これは私がやりました。ちょっと注目していただければうれしいと思います。内容については、もうこれは僕が聴きたいCDですから。結構いろんなところでブラインドで聴いてもらったんですけど、日本のオーケストラの音だって、誰も思わなかった。


■大変な作業だっておっしゃってましたけど、ではこれから先も2枚目3枚目を期待して。

飯森:そうですね。とりあえずスタートとしては最高のものができたんですけど、最初にも申し上げたように「先が長いな」と(笑)。

江崎:まだSACDでハイドンの全集ってないんですよ。だから体力の続く限りがんばって、それを創っていきたいなって思ってます(笑)。

UKI_2553_630.jpg〔取材・文:逢坂聖也/ぴあ 写真:田原由紀子 服部緑地オーケストラハウスにて〕




(2017年1月27日更新)


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《CDプレゼントのお知らせ》

株式会社オクタヴィア・レコードより販売されている、飯森範親指揮 日本センチュリー交響楽団演奏の下記のCDを抽選で各3名様にプレゼントいたします。下記リンクの「ぴあ関西版web 試写会、ご招待プレゼントページ」応募フォームよりご応募ください!

https://kansai.pia.co.jp/invitation/present/2017-01/century-cd2017.html


■ハイドン交響曲集Vol.1

レコード芸術 2017年1月号 特選盤

ハイドン:
交響曲 第6番 ニ長調 「朝」
交響曲 第17番 ヘ長調
交響曲 第35番 変ロ長調

指揮:飯森範親
2015年6月5日
大阪、いずみホール にてライヴ録音
¥3,200(税抜)
HQ Hybrid盤 OVCL-00610


■マーラー:大地の歌

レコード芸術2016 2月号 特選盤受賞

指揮:飯森 範親
テノール:福井 敬
バリトン:与那城 敬
2015年4月10日、11日
ザ・シンフォニーホール にてライヴ録音。
¥3,000(税抜) CD盤 OVCL-00584


■ブラームス:交響曲全集

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68
交響曲 第2番 ニ長調 作品73
交響曲 第3番 へ長調 作品90
交響曲 第4番 ホ短調 作品98

指揮:飯森 範親
2014年4月17日~19日 
ザ・シンフォニーホールにて録音
¥5,000(税抜)
HQHybrid盤 OVCL-00554