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日本センチュリー交響楽団「ハイドン交響曲集Vol.1」リリース。
首席指揮者とレコーディング・エンジニアが語る
「ハイドンマラソン」その最新の成果! (1/2)

祝・レコード芸術特選!飯森範親指揮、日本センチュリー交響楽団による「ハイドン交響曲集Vol.1」がリリースされた。ハイドンの全交響曲を8年がかりで演奏・録音しようというプロジェクト「ハイドンマラソン」初回のライヴである。1曲目、交響曲第6番「朝」から一聴してふくよかな空気感に耳を奪われる。その美しさはSACD層に、特に鮮やかな音像を結んでいる。オーケストラとともにこの成果を創り上げたのが日本センチュリー交響楽団首席指揮者の飯森範親と、日本きってのレコーディング・エンジニアでもある株式会社オクタヴィア・レコード代表取締役社長、江崎友淑。桐朋学園以来の友人でもあるというふたりにインタビューを行った。

僕との仕事って普通じゃないらしいんですよ。-飯森範親

■まず「ハイドン交響曲集」第1弾のリリースおめでとうございます。ハイドンマラソンのひとつの成果だと思うのですが、演奏自体も含めて、とても音の良いCDに仕上がっている印象があります。その感慨も含めたところからまずお聞きしたいと思います。

飯森:ありがとうございます。これは(ハイドンマラソンを)スタートした時の演奏会を録音したCDなんですが、やはり日本センチュリ―交響楽団って、アンサンブル能力がものすごく高いし、ひとりひとりの演奏家もポテンシャルが高いので、最初からある程度のレベルはいくだろうと思ってはいたんです。ただ仕上がりについては江崎くんも「最高のレコーディングだ!」と言ってくれているので、自分としても出発点としては非常にいいものが残せたかなと思います。とは言え、まだまだ先は長いので、どうやって完走させるか、という課題の重さはひとしおですよね。

■江崎さんはそのあたりいかがですか?

江崎:僕は最初99パーセントの人からはネガティブな意見しか聞かなかったんですよ。「本当にできるの?」「日本のオケでハイドンって何が魅力なの?」とかね。その中で真っ向からぶつかって、とにかくクオリティ勝負で「絶対ほかに負けないものを創るんだ!」っていう強い思いはありました。だから飯森くんに編集にもたくさん立ち会ってもらって、とにかく遠慮なく議論して、あそこまで創り上げたっていう、そういう感慨はありますね。だけどこれだけ手間ひまかけた作業をこれからも毎回やっていかなきゃならないっていう責任感もあって、それはかなり重いなと(笑)。


飯森:正直いうと、僕は江崎くんの仕事っていうと、これが当たり前だと思っていたんだけど、彼に言わせると僕との仕事って当たり前じゃないらしいんですよ。指揮者の思いとレコーディングのエンジニアとしての江崎くんの思いとはなんか、違う部分があるらしくて。そのへん話して(笑)。

江崎:かなり違いますね。僕らの仕事で多いのは、録音して「第1次編集できました」という段階で聴いてもらうと、あとは全部こちらにおまかせになるパターン。あるいは、10箇所程度のやり直しの希望が来て、それが完了するとOKが出るというパターン。でも彼の場合は、音出して数秒後に「ちょっと止めて」ってくるわけです。「まずここと、ここと、ここなんだけどね」って。多い時は気になるところが数小節に5,6箇所~10箇所くらいって出てくる。これは一緒に立ち会ってもらってやらないと埒が開かない。

飯森:僕は自分の演奏を将来、自分で聴きたいんですよ。ナルシストだから(笑)。自分で納得できて自分で聴きたいなっていう演奏じゃないと、ほかの人に聴いてほしくないんです。これは僕のポリシーなんですね。やはり後世の人たちに自信を持って聴いてほしいっていうものしか残したくないんです。例えばいつか僕が死んで、僕の息子たちがある時図書館に行ったら「あ、これお父さんのCDだ」っていうことが起こるわけでしょう? その時に「いい録音だな」って思ってくれるようなものを遺したいと思うんです。とにかく納得できるまで付き合ってもらって。

江崎:飯森くんとは30年以上の付き合いの中で、学生の時に一緒にたくさんのレコードを聴いたりいろんな議論をしたので、ものを創り上げるプロセスや必要に思っていることの感性が近いんですね。彼が直してほしいっていっていることって僕にはほとんどの部分がわかるし、なぜか?ということもわかるんです。でもそれをやるのはものすごく危険なことが多いんですよ。だから僕は自分が技術者としてでき得ることは完璧に創るんですけど、それに対しても彼の意見を聞きながら「そこは変える」「そこは残す」っていうことをひとつひとつ確認しつつ、一歩一歩進めていったんです。それを何度も何度も、何度も何度も繰り返して、正面から見ても裏から見ても上から見ても下から覗き込んでも、一応恥ずかしくないものには仕上がった、ということですね。
 

 



(2017年1月27日更新)


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《CDプレゼントのお知らせ》

株式会社オクタヴィア・レコードより販売されている、飯森範親指揮 日本センチュリー交響楽団演奏の下記のCDを抽選で各3名様にプレゼントいたします。下記リンクの「ぴあ関西版web 試写会、ご招待プレゼントページ」応募フォームよりご応募ください!

https://kansai.pia.co.jp/invitation/present/2017-01/century-cd2017.html


■ハイドン交響曲集Vol.1

レコード芸術 2017年1月号 特選盤

ハイドン:
交響曲 第6番 ニ長調 「朝」
交響曲 第17番 ヘ長調
交響曲 第35番 変ロ長調

指揮:飯森範親
2015年6月5日
大阪、いずみホール にてライヴ録音
¥3,200(税抜)
HQ Hybrid盤 OVCL-00610


■マーラー:大地の歌

レコード芸術2016 2月号 特選盤受賞

指揮:飯森 範親
テノール:福井 敬
バリトン:与那城 敬
2015年4月10日、11日
ザ・シンフォニーホール にてライヴ録音。
¥3,000(税抜) CD盤 OVCL-00584


■ブラームス:交響曲全集

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68
交響曲 第2番 ニ長調 作品73
交響曲 第3番 へ長調 作品90
交響曲 第4番 ホ短調 作品98

指揮:飯森 範親
2014年4月17日~19日 
ザ・シンフォニーホールにて録音
¥5,000(税抜)
HQHybrid盤 OVCL-00554