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《第14回大阪アジアン映画祭》が3月8日(金)に開幕! (2/2)

タブーを打ち破る中国映画の新鋭を徹底紹介。
2019年はベトナム映画に開眼して!
<第14回大阪アジアン映画祭注目作紹介vol.2>
 

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今年はアジアだけでなく、セルビア、クロアチアまで17の国と地域で製作された全51作品を上映する大阪アジアン映画祭(以下OAFF)。上映作品には、世界の中で存在感を増している映画や製作国の勢いが反映されている。
今年の傾向と上映作品について、プログラミング・ディレクターの暉峻創三氏(以下暉峻PD)のコメントと共にご紹介したい。
 
●タブーを打ち破る中国映画の新鋭が登場!
 その背景は?
先日開催されたベルリン国際映画祭ではチャン・イーモウ作品を含めた中国映画2作品が上映取りやめになりながらも、中国映画『ソー・ロング・マイ・サン(英題) / So Long, My Son』が演技賞を独占し、今の中国映画の勢いを感じさせる結果となった。他の映画祭でも好調だという中国映画。その現象について、暉峻PDは、
「中国では、上海や北京国際映画祭という国家肝いりの映画祭とは一線を画す、新しいタイプの映画祭が必要だという機運が起きている。国家の干渉をダイレクトに受け、規模が大きすぎてどの作品を見ればいいか分からない巨大映画祭ではなく、ブディックサイズの映画祭をと、ジャ・ジャンクー主宰の平遥国際映画祭が誕生。OAFFと同規模の映画祭で、選ばれた映画が一本一本際立つように見せており、新しい才能を発掘する場になっている」と中国国内の映画祭事情の影響も大きいことを明かした。
 
今回のOAFFではそれらの映画祭で評価された作品も含め3本、そして香港との合作で注目すべき1本がラインナップされている。デビュー作ながら、従来の中国映画の検閲では通ることが難しい描写にも果敢に挑んだ力作たちを一挙ご紹介したい。
 
 
『過ぎた春』<コンペティション部門>
 

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(c)Wanda Media Co., Ltd. 

深センから毎日国境を超え、香港の高校に通う女子高生が、親友と日本へ行く旅費を稼ぐために、スマートフォンの密輸に手を染める。青春映画と犯罪映画がミックスした物語は、中国と香港の両方にルーツを持つ主人公のバックグラウンドにも迫る。新鋭バイ・シュエが取材を重ね、脚本も執筆した注目作。
 
暉峻PD「平遥国際映画祭で最優秀賞を受賞。映画が始まった瞬間から一つひとつのショットの繊細で鋭利な力感に打ちのめされる、圧巻の監督デビュー作です」
 
 
『美麗』<コンペティション部門>
 

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(c)FORTISSIMO FILMS

幼い頃両親に捨てられ、義兄から様々なハラスメントを受けてきた若い女性が、ガールフレンドと上海に出て幸せをつかもうとするが、人生は思う通りにいかなくて・・・。中堅都市で皮肉な運命にもがきながら懸命に生きる女性を描くヒューマンドラマ。カメラワークも秀逸。主人公を演じたチー・ユンは脚本にも参加し、最優秀演技賞を受賞している。
 
暉峻PD「レズビアンが題材なので、中国政府の認可が得られなかった作品。中央政府の目の届きにくい奥地で開催される西寧FIRST国際映画祭で世界初上映し、その驚くべき才能が認められた必見作!」
 
 
『桃源』<ニューアクション、アジア!>

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日中合作映画『COMPLICITY コンプリシティ』で藤竜也と共に主演を務めた俳優のルー・ユーライの初長編監督作。妻に去られた男の葛藤に満ちた人生を詩情豊かな映像で綴る。女性が主人公の作品が目を引く中、苦悩する男の悲哀が胸を打つ作品。
 
暉峻PD「今、中国では80年以降に生まれた作家が抜群に面白いものを作り始めている。この作品も例外ではなく、平遥国際映画祭で披露され、中国の地方映画祭発大阪への流れに乗った今年ならではの作品!」
 
 
『雨季は二度と来ない』<Special Focus on Hong Kong 2019>
 
oaff2019-10.jpg4人の男女生徒それぞれの物語をリレー形式でつなぎ、高校最後の1年を映し出す青春映画。同性愛、兄弟愛を取り上げ、性への目覚め、一方通行の恋を瑞々しく描く。高校の行事も中国らしさが現れ、短編ながら濃厚な味わいを残す作品だ。
 
暉峻PD「香港人が中国に向かう流れが語られがちななか、本作の監督のホアン・シャオポンは中国人で、香港バプテスト大学に映画を学びに来た人。中国で撮影、全編北京語なので、中国映画の最新動向をチェックするという観点からも要注目。チャウ・シンチーに大いに気に入られ、最新作『新喜劇之王』には共同監督としてクレジットされ、役者としても起用されているほど!」
 


●2019年はベトナム映画に開眼!
映画祭の顔となるオープニング作品とクロージング作品。今年はオープニングが鈴木卓爾監督の『嵐電』、そしてクロージングは初のベトナム映画となる『パパとムスメの7日間』だ。「ベトナム映画に目覚める人が増える年」と断言した暉峻PD。必見の2作をご紹介したい。
 
 
【パパムスがベトナム版でパワーアップ!】
『パパとムスメの7日間』<クロージング>
 

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舘ひろし&新垣結衣主演で2007年にドラマ化された原作が、昨年OAFFで上映した韓国版 に続き、ベトナム版で登場!監督は日本人の落合賢(『太秦ライムライト』)。OAFF2015『ホイにおまかせ』の主演、プロデューサーコンビが参画し、昨年12月公開から現地で大ヒット中のハートフルムービー。
 
暉峻PD「今までオープニングやクロージング作品は、日本、中国、韓国、香港、台湾など商業公開作でもおなじみの国がほとんどだった。ベトナム映画がオープニング、クロージングを飾るのは、OAFFはもちろん日本の映画祭の中で初めてではないか。『パパとムスメの7日間』はアジア映画ファンでなくても馴染みがある上、ベトナムでも大ヒット。これまでベトナム映画に関心がなかったという人にもうってつけの傑作です。ぜひ楽しんで!」


 
【娘を取り戻す母は無敵だ!ハリウッドも注目のアクション大作!】
『ハイ・フォン』<コンペティション部門>
 
 
oaff2019-12.jpgOAFF2017『フェアリー・オブ・キングダム』でデビューを果たし、OAFF2018『仕立て屋 サイゴンを生きる』も記憶に新しいゴー・タイン・バンの主演最新作。子どもを奪われた女とある組織の戦いを見事なアクションでみせる、今年のOAFFきってのアクション大作。
 
暉峻PD「突然アメリカでのロードショーが決まるほど、とにかく出来栄えが素晴らしい。主演女優のゴー・タイン・バンは『スターウォーズ 最後のジェダイ』にも出演し国際的知名度のあるベトナムのトップ女優。今年は"女の強さ"が印象的な作品が多いですが、本作はその極めつけの1本です!」

取材・文:江口由美



(2019年2月21日更新)


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《第14回大阪アジアン映画祭》

会期:2019年3月8日(金)~17日(日)
会場:ABCホール、シネ・リーブル梅田、阪急うめだホール、国立国際美術館

[問]大阪アジアン映画祭 運営事務局
■06-4301-3092

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