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ジャ・ジャンクー監督、オ・ミヨル監督、
河瀬直美監督のほか、斎藤工ら俳優も東大寺に駆けつけ
『東アジア文化都市2016奈良市』華やかに開幕!

日本・中国・韓国の3カ国が文化交流を通じて友好を深める事業『東アジア文化都市2016奈良市』の開幕式典が、26日(土)、奈良市・東大寺大仏殿前庭で行われ、奈良市の仲川げん市長は、1300年前の天平文化を例にあげつつ「文化の力で3カ国の和平と友好、そして未来を切り開くというこの取り組みのつなぎ役として、奈良は大きな役割を果たせるのではないかと大きな可能性を感じています」と挨拶した。
 
『東アジア文化都市』とは、2010年に奈良で行われた日中韓の文化大臣会合の中で「文化の力で3カ国の友好を深めたい」と提唱し始まった事業で、各国において文化芸術の発展を目指す都市を選定し、それぞれの都市で、美術、演劇、食文化、市民同士の交流など様々な角度でイベントを実施していくもの。第1回は横浜(2014年)、第2回は新潟(2015年)、そして第3回となる今年は、中国の寧波(ニンポー)市、韓国の済州(チェジュ)特別自治道と共に奈良が抜擢された。
 

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この日は、映像交流プロジェクト作品を制作した、ジャ・ジャンクー監督『GOODBYE(再見)』(中国)、オ・ミヨル監督『HAENYEO(海女)』(韓国)、河瀬直美監督『RESPECT』(日本)という、国際的な評価を受けている映画監督がそれぞれの都市を独自の視点で捉えた新作短編映画を上映。3監督のほか、急遽駆けつけた出演俳優ら(チャオ・タオ、斎藤工、中村優子、村上虹郎)も上映後に登場。それぞれの作品について語った(下記参照)。その後は、越劇(中国)、済州楽(韓国)、伎楽(日本)といった各国の伝統芸能の披露も行われた。
 
『東アジア文化都市2016奈良市』は今年の12月まで約9ヶ月の間に、春日大社や元興寺といった奈良市内各所でアートインスタレーションの展開や、劇作家、演出家として知られる平田オリザが舞台芸術ディレクターを務め、維新派による新作舞台公演が野外で披露されるほか高校生演劇などを、ほかの部門とも連携しつつ、多彩なイベントを展開していく。



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『GOODBYE』について
「ドローンを使って撮影しました。空から地上や人をドローンのレンズを通して見ると集中的に感じられるでしょう。そして、意識的に映像の中の人たちに目を向けることで初めて心象風景が見えてきます。中国・寧波(ニンポー)市の有名な湿地の道を通り抜けた先にストーリーが続いていることをイメージしてほしい。なぜなら、どんな道にも人それぞれのストーリーがあるからです」
ジャ・ジャンクー監督●作品を発表するごとに国際的な評価を高め、前作『罪の手ざわり』ではカンヌ映画祭で脚本賞を見事受賞、関西では5月より公開となる新作『山河ノスタルジア』も控えている中国の若き巨匠。
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「人は“別れ”をあきらめきれなくなるものです。でも、(今回演じた役は)別れるときにまた会うことを期待している。あきらめないことを気にして演じました」
チャオ・タオ●ジャ・ジャンクー作品のミューズとして『青の稲妻』(2002年)、『長江哀歌』(2006年)、 『罪の手ざわり』(2013年)、『山河ノスタルジア』(2015年)など数多くの作品に出演する女優。2011年にはイタリア映画『ある海辺の詩人~小さなヴェニスで~』で主演を務めた。
 
 

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『HAENYEO』について

「海女は海面に上がってきたときに大きく息をはきます。それは命の音であり、人生の歌でもあります。済州の海女たちの辛い歴史を振り返り、希望はどういうものなのかを感じさせようと思った作品です」
オ・ミヨル監督●『チスル』がサンダンス映画祭では韓国映画として初めてワールドシネマ・グランプリを受賞した済州島出身の新鋭監督。インタビュー記事はこちら
 
 
 

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『RESPECT』について
「斉藤工くんは目が見えない役、中村優子ちゃんは耳が聞こえない役、村上虹郎くんは話せない役。人間が持っている代表的な機能をひとつ奪われてしまっている人たちが交流するときに、どう繋げていけばいいのかをテーマに描きました」

河瀬直美監督●初めての劇場用映画『萌の朱雀』(1997年)で、日本人初となるカンヌ映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞以降、昨年手がけた傑作『あん』も含め、世界の注目を集めている奈良県出身の映画作家。インタビュー記事はこちら
 
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「この撮影では、目が見えない役だったので撮影時以外も視覚からくる情報をシャットアウトしていました。そうすると耳が研ぎ澄まされたり、手で触れる感触が鋭くなっていくという発見がありました。何かが欠けていると思うのは自分だけかもしれない。完璧な人はいない。だれもが何かが欠けているかもしれない。(短編映画ですが)映画は時間じゃないんだなと思いました」(3人を代表して、斉藤工から)
左から、『RESPECT』に出演している村上虹郎、中村優子、斉藤工。
 
 
 

(2016年3月28日更新)


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Event Data

『東アジア文化都市2016奈良市』

主な年間予定

●3月
奈良市オープニング
船を作るプロジェクト公開制作開始

●4月
済州道オープニング
寧波市オープニング
食部門オープニングシンポジウム

●5月
平城京天平祭「春」

●5月~8月
食プロジェクト

●8月
なら燈花会
平城京天平祭「夏」

●9月
なら国際映画祭
春日野音楽祭

●9月~10月
古都祝奈良-時空を超えたアートの祭典

●10月
平城京天平祭「秋」

●12月
「高校生と作る演劇」公演
奈良市クロージング

【公式サイト】
http://culturecity-nara.com/