ホーム > インタビュー&レポート > キープ・オン・童貞! 『中学生円山』宮藤官九郎&平岡拓真インタビュー
――『中学生円山』を観て、10代の頃の自分を思いだしました。この映画に描かれていることって、男性なら誰もが通る道ですよね。
宮藤官九郎(以下、宮藤):現実なんて退屈なことで、僕も主人公の円山克也同様「自分以外の家族がみんな宇宙人だったらどうしよう」というような妄想でバランスをとっていました。ただ、あまりにそれが膨らみすぎて「自分はヘンな人間なのかな」と不安に思うこともありました。そして、それがやがて性的な興味へと変わっていく。「何でこんなことを考えちゃうんだろう、どうして自分のアソコのことがこんなに好きなんだろう」って(笑)。でも学校の友だちには言えない。だから悶々としていました。
平岡拓真(以下、平岡):実は僕もいろんな妄想をしています。まさに「自分以外の家族がみんな宇宙人だったら」とか、女の子のこととか。でも宮藤監督がおっしゃったように、そういうことを考えているのは自分だけだと思っていたんです。だから、本作の台本を読んだとき、「僕だけじゃないんだ」と安心しました。
――実は僕は、中学時代に官能小説を書いていました。悶々とした気持ちや妄想を、ワープロにすべてぶつけて形にしていたんです(笑)。
宮藤:さすがに官能小説は書かなかったけど(笑)、ラジオが好きだったから、はがきの投稿で(気持ちを)ぶつけていましたね。そういう経験が今の自分につながっていると思います。
――なぜ男性が誇大妄想をするのか。それは「何も知らない」からですよね。いわゆる「童貞マインド」。クリエイティヴな仕事をしていると、あのときの突拍子もない発想を取り戻したい気持ちに駆られるときがある。でもそれは無理。なぜ取り戻せないのか、その最大要因は恋愛や女性を知ってしまったから。そこで男は、こじれていたものが一気に放出されてしまう。
宮藤:そうなったら、あとはもうモテるしかない。モテるモテないの土俵で闘うしかないから。
――これを平岡さんに聞くのはさすがに酷なので(笑)、宮藤監督に伺いますが、女性を知った瞬間ってガラッと変わりましたか。
宮藤:僕はアレが遅かったので、変わらなきゃしょうがなかった。ただ、中学時代を振り返ってみると、数人いた仲間がひとり減り、またひとり減って、どんどん疎遠になり、最終的に親密な友だちはふたりだけになった。つまり、みんな“アッチ側”に行ってしまったんです。ただ自分はそうしなかった。なぜかというと、本能的に“アッチ側”に行ってしまうとおもしろいものがひとつ減ると感じていたから。モテようとか、異性と交際しようとか、好きな子を作って、当たり前のようにみんなと“アッチ側”へ行っていたら、きっと今の俺はなかった。そう考えると怖いですね。
――行っていたら、『中学生円山』を撮れてないですもんね。
宮藤:そういう人間だから、こういう作品を作ったのか。こういう作品を作りたくて、コッチ側に残ったのか。それは分からないけど、ただ“アッチ側”は絶対に後で後悔する気がしていた。タイムマシンに乗るまでもなくそう思っていました。
――その話を受けての、平岡さんなんですよ! 僕らはこの映画を観て当時を思いだし、切なくなったりする。「女の子に触れることって難しい」「大人になっても触れられないんじゃないか」とか考えていた。あの頃、自分の目に女の子はどう映っていたのか…。その記憶がフラッシュバックした。そこでリアルに中学生の平岡さんは、今の女の子たちがどう見えているのか聞きたくて。
平岡:実は最近、同級生が(異性と)付き合ったりすることが多いんですよ。結構みんな早くて。だから、昔ほどではないかも知れません。さすがに「触れられない」とまでは…(笑)。だけど僕自身、あまり学校ではモテるキャラではないと思っているんで、悶々とした気持ちはあります。それにまわりのいろんな噂を聞くから、うらやましさがあります。
――宮藤監督の「“アッチ側”には行かない」という話もありましたが。
平岡:僕は…モテたいですね。宮藤監督、ごめんなさい(笑)。
宮藤:いやいや(苦笑)。僕もモテたくないわけじゃないんですよ!ただモテるために、なにも失いたくないってことなんですよ。モテる努力をしないでモテるのは一向に構わない。
(2013年5月17日更新)
●5月18日(土)より、梅田ブルク7ほかにて公開
【公式サイト】
http://www.maruyama-movie.jp/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/160377/
★『中学生円山』特製ピンズプレゼント受付中! (締切:6/9(日))
https://kansai.pia.co.jp/invitation/cinema/2013-05/maruyama-movie.html