ホーム > LOSTAGE 五味岳久の奈良からの手紙~LOVE LETTER form NARA~ > 第8回 オオルタイチさん×浅村朋伸さん
オオルタイチ(写真左)
1999年、多重録音されたカセットアルバム『?』リリースを機に音楽活動をスタート。その後、打ち込みのトラックに“歌”を乗せるスタイルへと変化。そして2007年には『Drifting My Folklore』で新たな一面を見せた。アメリカツアー、EUツアー(いずれも2009年)と活動の場は世界へと拡大。振付家・ダンサーの康本雅子との共演、舞台への楽曲提供、アニメ映画の音響・音楽監督なども手がけている。2015年1月に公開された、スターフライヤーと北九州芸術劇場による共同製作PV『そらダン』で音楽を担当。また、4月15日(水)にリリースされる水曜日のカンパネラの新作EP『トライアスロン』に楽曲を提供している。現在は活動停止中だがバンド、ウリチパン郡でもボーカルと作曲を担当。今秋、女性アーティスト YTAMO(ウタモ)との新しいプロジェクトを本格的に始動予定、アルバムをリリースする。
『そらダン』PV
オオルタイチHP
http://www.okimirecords.com/
浅村朋伸(写真中)
1996年より滋賀県にて故・高橋俊夫氏に仏像彫刻、修復技法を学ぶ。3年間の基礎修行を終えた後、九州や大阪で彫刻の修行を経て2011年、奈良市にて独立。天台寺門宗 総本山三井寺 熊野社 本地仏(阿弥陀如来、薬師如来、千手観音菩薩)などを手がける。普段は仏像の製作、修理を行うが、Daedelus、Battlesら海外のミュージシャンからの依頼で作品を製作することも。仏師としての活動のほか、天台寺門宗 総本山三井寺が2012年より和歌山県、奈良県、大阪府に跨る日本最古の山岳修行ルートである「葛城二十八宿」の入峯修行を復興するにあたって、調査の依頼を受け、ルート設定と山伏の入峯修行の道案内を行っている。
浅村朋伸の世界一周自転車旅行記
http://www.shiga-miidera.or.jp/travel/index.html
五味岳久(写真右)
ロックバンドLOSTAGEのボーカル&ベース。地方発信/地域密着をモットーに、地元奈良を拠点に独自の活動を展開中。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。2011年、結成10年目の節目に自主レーベルTHROAT RECORDSを設立、ミニアルバム『CONTEXT』をリリース。2012年7月にはフルアルバム『ECHOES』を発表し、『FUJI ROCK FESTIVAL'12』に初出演も果たした。2014年、ニューアルバム『GUITAR』をリリース。4月18日(日)のRECORD STORE DAYに合わせ、シンガーソングライター長谷川健一とのスプリット7inchをリリース。
LOSTAGE HP
http://www.lostage.co/
五味岳久オフィシャルサイト
http://takahisagomi.com/
THROAT RECORDS
http://throatrecords.tumblr.com/
【オオルタイチ】
『Flower Of Life EP』
発売中
\1,800(税込)/OKIMI-015
<収録曲>
01.Flower Of Life
02.Flower Of Life? HAPPY JEEZUZ MIX
(Remixed by Dustin Wong)
03.Beauty Step / 5:09
04.Minor / 6:30
『Cosmic Coco, singing for a billion Imu's Hearty Pi』
発売中
\2,571(税込)/KBS-DDCO-1012
<収録曲>
01.Tiger Melt
02.Futurelina (Album version)
03.Shiny Foot Square Dance
04.Coco (feat. OLAibi)
05.Vofaguela
06.Sononi
07.Merry Ether Party
08.Venus
09.Linking Pi
10.Permanent Candy
11.Futurelina (EYE remix)
12.Futurelina (Daedelus remix)
【LOSTAGE】
長谷川健一×LOSTAGE
スプリット7インチ
4月18日(日)発売
\1,512(税込)/THR-009
長谷川健一「僕は今ここにいる」
LOSTAGE
『GUITAR』
発売中
\2,300(税込)/DDCZ-1968
<収録曲>
01. コンクリート / 記憶
02. Nowhere / どこでもない
03. いいこと / 離別
04. Guitar / アンテナ
05. 深夜放送 / Unknown
06. Flowers / 路傍の花
07. Boy / 交差点
08. Good Luck / 美しき敗北者達
【オオルタイチ】
『パラシュートセッション祭 2日目 昼
<オオルタイチ+ウタモ × 吉田ヨウヘイgroup>』
▼5月2日(土) 13:30
月見ル君想フ(東京)
前売-2800円 当日-3300円
(ドリンク代500円別途要)
[出演] オオルタイチ+ウタモ/吉田ヨウヘイgroup
[問] 月見ル君想フ
『オオルタイチ企画/
キセル ライヴ in なら/
~土からの音色 ぼくの合いの手~』
▼5月5日(火・祝)19:30
cafe polkadot(奈良)
[出演]キセル/五味岳久&五味拓人(from LOSTAGE)
[DJ]オオルタイチ
※SOLD OUT
[問] OKIMI RECORDS
Pコード:259-487
『キセル ライヴ in わかやま/~スパイラルスパイス お好みでご使用ください~』
▼5月6日(水・休) 19:30
バール・ヌメロ・オンセ(和歌山)
オールスタンディング-3000円(整理番号付)
[出演]キセル
[BGM]オオルタイチ
[問]バール・ヌメロ・オンセ
[TEL]073-425-1222
チケット情報はこちら
Pコード:781-398
『森、道、市場2015 ~モリハイヅコへ~』
▼5月8日(金)~10日(日)
ラグーナビーチ(大塚海浜緑地) (愛知)
8日前夜祭入場券-800円
9日入場券-1850円
10日入場券-1850円
9日・10日通し入場券-3500円
9日臨時駐車場券-1500円
10日臨時駐車場券-1500円
9日・10日通し臨時駐車場券-3000円
[出演]toe/JUN”JxJx”SAITO/
john*,Tim Scanlan,トシバウロン,野口明生+tricolor/スチャダラパー/ドレスコーズ/
□□□/tofubeats/青葉市子/奇妙礼太郎/
SIMI LAB/kz/オオルタイチ/Avec Avec/
tricolor/水中、それは苦しい/yojikとwanda/
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC/cero/
サニーデイ・サービス/Polaris/砂原良徳/
ハンバートハンバート/KIMONOS/
ジム・オルーク/group_inou/やけのはら/
ALTZ/HARCO/ザッハトルテ/タテタカコ/
T.V.not january/てあしくちびる/他
※出演者は、5/8(金)、9(土)、10(日)のいずれかに出演。
※最新情報・注意事項等は公式HP・ブログにてご確認ください。チケットを購入した時点で、注意事項すべての記載内容に同意したものとみなします。チケットは当日限り有効。開催時間=10:00~20:00。但し、5/8(金)は17:00~22:00。駐車場利用時間=8:00~22:00(22:00までに出庫)。但し、5/10(日)は8:00~21:00(21:00までに出庫)。チケットは、当日会場にてリストバンドと引換え。小学生以下は保護者同伴に限り無料。
[問]森、道、市場実行委員会
[TEL]080-4309-1245
※オオルタイチ出演は5/9(土)。オオルタイチソロセットおよび、別ブースにてアコースティックライヴも予定。
チケット情報はこちら
『ジスイズパラダイス』
▼6月6日(土)11:00
一言カフェ(静岡)
[出演]sugar me/オオルタイチ+ウタモ/
惑星のかぞえかた/ペガサス/
6birds barked in the park/steteko
[チケット取扱・問] 『ジスイズパラダイス』
【LOSTAGE】
Pコード:258-844
『Rainbow’s End 2015』
▼5月24日(日) 12:00
京都市円山公園音楽堂(京都)
前売-3800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]向井秀徳アコースティック&エレクトリック/YeYe/五味岳久/Homecomings/LOVE LOVE LOVE/他
※雨天決行・荒天中止。
[問] KYOTO MUSE
[TEL]075-223-0389
※五味岳久による弾き語りソロ出演。
チケット情報はこちら
Pコード:259-607
『長谷川健一/LOSTAGE
7inch Release Live』
▼5月26日(火) 18:30
磔磔(京都)
自由-3000円(ドリンク代別途要)
[出演]LOSTAGE/長谷川健一BANDSET
[問]磔磔
[TEL]075-351-1321
チケット情報はこちら
▼6月12日(金)19:30
月見ル君想フ(東京)
前売-3000円 当日-3500円(ドリンク代別途要)
[出演]LOSTAGE/長谷川健一BANDSET
[問]月見ル君想フ
▼6月25日(木)
cafe&bar Legato(大阪)
[出演]五味岳久
[共演]前田ヨウセイ(RED SNEAKERS)
[問]cafe & bar Legato
時間、料金等、詳細はお問い合わせ先サイトでご確認ください。
『TAKAHISA GOMI ILLUSTRATION ○●』
▼5月1日(金)~17日(日) 12:00~24:00
digmeoutART&DINER
無料
[問]06-6213-1007
LOSTAGE 五味岳久さんがインタビュアーとなり、“今、気になる人”と会い、それぞれの生活圏から見えている景色や、これから見たい光景を語り、考える、連載企画『奈良からの手紙』。第8回はミュージシャンのオオルタイチさんと、仏師の浅村朋伸さんとの鼎談です。タイチさんは奈良県出身、現在は奈良と県境の京都・木津川に、浅村さんは奈良にお住まいと、奈良にゆかりのある3人が集いました。第8回は、連載初の鼎談かつ、奈良について大いに語った、タイトルどおり「奈良から」発信する内容となりました。
「THROAT RECORDSはレコード屋に行くっていうより
お寺とかに行く感じに近いです(笑)」(タイチ)
五味岳久
(以下、五味)
まず自己紹介してもらっていいですか?
浅村朋伸
(以下、浅村)
僕は3年前に奈良に移ってきて、仏像の彫刻をしています。
オオルタイチ
(以下、タイチ)
僕は二十歳くらいのときに奈良から大阪に出て、それから10年以上、大阪で活動していて。2年前に木津川に引っ越してきました。ずっと音楽をやってます。27、8歳で仕事を辞めてから、音楽一本で。
五味
今、申告する時は何て書くんですか?
タイチ
音楽家って書いてます。
五味
浅村さんは?
浅村
仏師あるいは彫刻家です。
五味
仏師って、職業として結構いるんですか?
浅村
僕が知らないだけで、結構いると思います。
五味
タイチくんは奈良ではなく、木津川は京都府でなんですけど。奈良に近いというか、ほとんど奈良です(笑)。
タイチ
そうですね(笑)。実家は奈良です。
五味
なんでこっちに帰ってきたんですか?
タイチ
奈良に帰ろうという意思はなかったんですけど、引越しすることになって。で、郊外がいいなと思って、奈良も含めて木津川とかあの辺を探してたんです。
五味
何で木津川の辺にしようと?
タイチ
最初は加茂町あたりの手つかずの感じがなんとなく好きで探していたのですが、そこではなかなか見つからず、一緒に物件を探してくれていたおじさんが今の家を紹介してくれて木津川市に住むことになりました。奈良も近くなったんで実家に帰る機会も増えて、母親の仕事を手伝う機会も増えたし、THROAT RECORDSに行って五味さんと話もできました。
五味
浅村さんは何で奈良なんですか?
浅村
僕は元々、東大寺三月堂の仏像を見て仏師になりたいと思ったので、自分が独立してやるんだったら奈良でやりたいってずっと思ってて。
五味
仏像を作ることと住む場所って関係あるんですか? 京都とか大阪に住んでても、仏像は見に来れるじゃないですか。
浅村
例えば昼の休憩の時にちょっと行ったりとか。
五味
そういう感じで行きたい。
浅村
そうですね、朝、ちょっと東大寺に行ってみようとか。すっと行ける環境でやりたかったっていうのがあります。
タイチ
そういうの、めっちゃ分かります。
五味
分かるんや(笑)。
タイチ
僕は仏師さんじゃないから仕事のために行くんじゃないけど(笑)、音楽作ってて、何か煮詰まったりとか、キリがよくなったら、寺とか行きたくなるんですよ。
五味
気分転換っていうか、何かもらいに?
タイチ
そうですね。何となくですけど。大阪はそういう場所があんまりないっていうか、近場ではなくて。
五味
僕はずっと奈良にいるので、もちろん奈良がいいところやっていうのは外に向けて言いたいんですけど、どういいのかはあんまり自覚的じゃないんですよ。寺に行きたいとかあんまり思わないんですよね、住んでて。だから、何で奈良を選んで住んでるのかっていうことに興味あるんです。いいとこやと思うんですけど、改めて考えてみて、どこがいいのか…。
浅村
空気感が全然違います。例えば奈良公園のあたりって、すっごいのどかじゃないですか。あそこでイライラしたりとか、ぜったいにない。
タイチ
いや、本当にそうなんですよね(笑)。
浅村
これね、あそこを歩いて嫌な気分には絶対にならないです。
五味
(笑)そう!?
タイチ
いやいや、本当にそうなんです。
浅村
絶対そうです。
タイチ
あと、守られてる感があると思うんですよ。
五味
何に!?
タイチ
空気感で。そういう感じが僕にもあるんですよ。でも、10代の頃はのどかな感じを受け付けなかったんです。どっちかっていうと大阪とか外に出てやりたいっていうのがあったんですけど、今になって奈良の持つ土地の力がすごいなって思うようになってきて。
五味
あるんですかね、そういうの。住んでたら麻痺して分からなくなってます。
浅村
外から来た人間の方がよく感じるのかも分からないですけど、僕、京都にも住んでたことあるんですよ。まあ、住んでたって言っても五条大橋の下とかなんですけど(笑)。何ヶ月間か…。
五味
住むとこなくて?
浅村
はい。大津の膳所(ぜぜ)っていうところでワンルームマンションを借りてたんですけど、家賃払うのがバカらしくなって。
五味
バカらしくて!?
浅村
その頃、京都でアルバイトしてたんですけど、家に帰るころには終電がなくなっていたので自転車で往復してたんですよ。ある日、その自転車が盗まれたので、京都から琵琶湖まで走って帰るようになって。でも、それもバカバカしくなって、それやったらもう橋の下で寝て、朝、普通に電車で滋賀まで動いたらいいじゃないかってなって、寝るのはずっと橋の下で。部屋も引き払って。で、その当時、五条大橋の下は人がいっぱいいたんで、北隣の松原の橋の下で寝たりとか。ただ、松原の場合は横から雨が入ってくるんで、五条大橋の方が安全なんですけど(笑)。
五味
それいつ頃ですか?
浅村
22歳ぐらいかな?
五味
めっさ若いじゃないですか(笑)。
タイチ
それは“家”は建ててたんですか? 寝袋やったんですか?
浅村
その時は一式、でっかいリュックに寝袋とか、着替えとか、全部入れて、ずっと移動してて。
五味
バックパッカーみたいに。でもバイトはしてた?
浅村
バイトはしてた。滋賀で彫刻の修行をしていて、それが終わったら京都で夕方から夜中2時ぐらいまでバイトして。朝、また滋賀の師匠のところで作業してっていうことを繰り返してて。
タイチ
それ、どのくらい続けてたんですか?
浅村
数ヶ月くらい。その後、旅館の住み込みのバイトに変わって。
五味
それでじゃあ、生活も落ち着きました?
浅村
はい。まかない付で、布団で寝かしてもらったりとか。
五味
タイチくんは苦労話とかあります?
タイチ
そこまでの苦労はないですねぇ(笑)。
五味
それに比べたら奈良は…。いや、それと比べられないですけど(笑)。僕、店にいるじゃないですか。お客さんとか、東京とか遠方から結構来てくれるんですよ。そういう人と話をしてたら、多分、空気のことやと思うんですけど、“奈良はいい空気が流れていてすごい好きです”とか聞くんですけど、それが何なのかあんまり分からないんですよね。
浅村
一昨日も奈良公園に行って、こののどかさは何だろうって考えてたんですよ。空がどーんと開けてるので、建物もそんなに高く感じない。道幅も広いし、公園の植物もバーっと広まってるし。ああいう条件の場所って大阪とか京都にないじゃないですか。だから特にのどかに感じるのかなって。
タイチ
五味さんの奈良に対する思いって、どの辺から…?
五味
僕の場合、奈良への思いっていうか、たまたま自分が奈良に生まれて、そこで暮らして、たまたま外に出ずに活動していたので。自分のいる場所をもっと注目してもらう、面白いと思ってもらうためにやれることは何かって考えて。奈良やからいいとか、奈良が他の町とかと違うっていう、そういう感覚ってあんまりないんです。たまたま、今自分がいる場所が奈良やったっていう。でも、そうやって奈良がいいって引っ越してきはる人とか、僕の友達とかもバンドマンでちょいちょいいるんです。その人たちの話を聞いたら嬉しい気持ちになるんですけど、みんな、どういう感じで奈良をいいと思ってるのかなって。何となくしか分からない。今言った空気感とか、僕も感覚的に享受してるんやとは思うんですけど…。無自覚っていうか。創作活動において、そういう感じが必要やったってことですか?
浅村
僕の場合は、当然、勉強するために見るんですけど、過去の仏像とか、彫刻とかが身近にあったら、昔の人のすごいところを少しでも学ぶことができる。ここに住んでいたら、そういう面ですごく便利です。
五味
ちょいちょい寺とか見に行って。
浅村
分からなかったらすぐに見に行ける。
五味
資料とかじゃなく。
浅村
立体って写真だと分からないんですよ。三次元で角度を変えて見ないと。上から見たり、下から見たりしないと、カーブも写真では分からない。この時代、実際はどうなってたっけ?って思ったとき、もちろん先に本とかで確かめたりするんですけど、足を運んで確認しないと分からないことがたくさんあるので。
五味
やっぱり見たら分かるんですか。
浅村
そうですね。一目瞭然というか、百聞は一見にしかずというか。見るのが一番早いです。
タイチ
昔のものがたくさんあるっていうのが、それもすごい。しかも歴史もすごい古いし。
五味
僕、前も言ったかもしれないですけど、そういう歴史とかを押してるじゃないですか、奈良って。観光地になってる。文化遺産があるから見に来てもらう。それが出すぎててちょっといやなんですよ(笑)。
浅村
いやいや、全然押してないですよ。
五味
僕らは音楽をしてるじゃないですか。僕はずっと奈良にいるし。奈良のもっと別の文化にスポットを当てたい。そっちにばっかり注目されているのが悔しいというか…(笑)。
浅村
すべてのことに対して、奈良ってアピールしていないと思うんですよ。
五味
……(笑)、そんなこと言われるとは。
浅村
いや、すべて奈良発祥じゃないですか。
五味
全部?
浅村
全部が。京都の人はよく“天皇さんは今、東京に遊びに行ってるだけだ”って言ってますけど、本当は奈良の人が“そうそう、そうだよね。うちから京都に寄り道して東京に遊びに行ってるんだよね”っていう発想にならないとおかしいと思うんです。
五味
ああ、そういう発想もない。
浅村
ないですし、食事とか、お酒にしても、“うちが本家だ”とか、まったくアピールしないじゃないですか。音楽だって、日本の古典音楽って奈良が発祥だから、音楽をやってる人はそれをもっと意識してもいいと思うんですけど、まったくそんなんないじゃない。
五味
スケールがでかい(笑)。
浅村
なんでそういうふうなことを言わないのかなって思うんです。
タイチ
奈良人の感覚として、どっちもあるんですよね。広めたくないっていうのもあって。
五味
あー。
タイチ
そういう微妙な感情もあるんですよね。守っておきたいし、自慢もしたい。
五味
あ、そうですね。
タイチ
奈良の友達にもそういうのめちゃ感じるんですよ。京都はイケイケな感じ、めちゃ大っぴらにしてると思うんですけど。
五味
奈良の一般的なイメージが「修学旅行で行った」「大仏と鹿」とかで。それがほんまいややなって昔から思ってた。
浅村
そうですか? 大仏のイメージって何でそんな、アレなんですか?
五味
僕ら大仏、見ないですもん。今、35歳ですけど、今まで3回くらいしか見たことない。浅村さん、結構、見てるでしょ?
浅村
頻繁に行ってます。
五味
(笑)。寺とか、遺跡とか、僕の場合は生活の中にあんまり組み込まれてなくて、思い入れもそんなにないというか。“奈良といえば”っていうところの第一印象を変えていきたい、そのために頑張りたいなっていうのがありますね。
タイチ
僕らが10代の頃から比べたらいい感じになっていますよね。
五味
いい感じになってるけど、可能性としては、まだのりしろがあるような気がしてるんですよね。そのために何をやるかっていうので、こういう対談とか、うちの店で知り合った人といろいろと一緒にやっていくっていうのが大きなテーマ。ライフワークじゃないですけど。大仏に勝つ(笑)。
浅村
……やっぱり、どの時代の人間もそういうふうな気持ちって絶対大事やと思うんです。
五味
彫るときって、やろうっていう気持ちになったらやるんですか?
浅村
何というか、調子が悪いと思ったら触らないです。“あれ? 何か違うな”って違和感があったら、とりあえず一遍、手を止めて。(気持ちが)バシッとならないと…。
五味
そういうことってあります?
タイチ
ありますね。長い間、止まったときはやらないですね。2時間、3時間続けるとかは、作業としては長い方。昔は寝ずにとか、そういう感じやってたんですけど。
五味
“今や!”ってならないときは、何してるんですか?
浅村
他の作業してます。違う作業とか、道具の手入れとか。
五味
普段、何してるか分からないですよね、タイチくんも。
タイチ
僕、基本的に音楽を作って、今、ちゃうなっていうときは、それこそ散歩に行ったりとか。そんなんしてるうちに終わりますけどね、一日が(笑)。
五味
タイチくんは木津やけど、奈良として聞きますね(笑)。奈良に引っ越して、何か変わりました?
タイチ
変わったかどうかは分からないですけど、居心地がいいところにちゃんと行けたなっていうのはすごい感じます。
五味
落ち着くとこ?
タイチ
うん。落ち着くところに行けた感じはあります。自分が今からやろうとしている音楽のスタンスと、何かすごい近い雰囲気があって。気分的に都会に出てガツガツやる感じがなかったので。
五味
具体的にどういうスタンスでやろうと思ったんですか?
タイチ
自分が満足する、納得できる状態を作って、それを作品にして。広めるときも、自分が納得してやっていきたいなって。
五味
今まではそうじゃなかった?
タイチ
今までは頭の中に雑音があったような感じがして…。
五味
要らんことを考えずに。
タイチ
うん、考えずに。こっちに来て、いろんな面でそういうことがすっきりした感じはめちゃあります。あとは……やっぱりTHROAT RECORDSの存在はめちゃ大きいです。
五味
そうですか。……それ、好感度上げようとしてます?
タイチ
ちゃいますよ(笑)! いや、だって、THROAT RECORDSにいてたら新喜劇かっていうタイミングがあるじゃないですか。話題にしてた張本人が来たりとか。
五味
(笑)、それは僕もびっくりしてます。
タイチ
浅村さんも…。
五味
浅村さんとの出会いは、タイチくんと一緒に店に来てくれて。
タイチ
ロサンゼルスでDUBLABというネットラジオを主宰しているDJ FROSTYという人がいて、僕は前から知り合いやって。彼が奈良に来て、観光したいから案内してほしいって言われて。ぜひぜひ!って。で、当日、待ち合わせて、“もう一人、彫刻家の友達がいるから一緒に回りたい”って言われて、“いいね”って。で、来たんが浅村さんやった(笑)。で、話を聞いたら何かすごい人やなって。それで、そのロスから来た方がレコードが好きやから、THROAT RECORDSに連れて行って。
五味
浅村さんは音楽に全然、興味ない。興味ないって言ったら語弊があるかもしれないですけど、そんなに聴かない。たまたま音楽をやってる知り合いが多いっていう。
浅村
そうですね。
五味
普通に過ごしてたら、そうやって知り合うきっかけもないじゃないですか。そういうのって面白いなと思って。
--THROAT RECORDSが大きいっていうのは、一つの拠点になっている?
タイチ
そうですね。それはあると思います。レコード屋やけど、それ以外の機能が…。
五味
そうですね、最近はそうです。
タイチ
気持ち的に、レコード屋に行くっていうより、本当にお寺とかに行く感じに近いです(笑)。
浅村
場所的にも行きやすいですよね。あの近辺のお寺とかに行くだけより、いろんな人が五味さんに会いに行きたいっていう気持ちを持ってると思いますね。
五味
来てください。音楽は聴かないかもですけど…。
浅村
こないだ買ったんですよ、レコード。
五味
あ、買った! 何で?
浅村
たまたま、リサイクルショップでジャッキー・チェンのレコードが目に留まって、これは買おう!と。
五味
プレーヤーは持ってるんですか?
浅村
プレーヤーは、自走式の。
五味
なんか車みたいなの?
浅村
あれで聴いてる。
五味
あれで聴いてるんや!(笑)。でも、嬉しいです。