ホーム > LOSTAGE 五味岳久の奈良からの手紙~LOVE LETTER form NARA~ > 第8回 オオルタイチさん×浅村朋伸さん
オオルタイチ(写真左)
1999年、多重録音されたカセットアルバム『?』リリースを機に音楽活動をスタート。その後、打ち込みのトラックに“歌”を乗せるスタイルへと変化。そして2007年には『Drifting My Folklore』で新たな一面を見せた。アメリカツアー、EUツアー(いずれも2009年)と活動の場は世界へと拡大。振付家・ダンサーの康本雅子との共演、舞台への楽曲提供、アニメ映画の音響・音楽監督なども手がけている。2015年1月に公開された、スターフライヤーと北九州芸術劇場による共同製作PV『そらダン』で音楽を担当。また、4月15日(水)にリリースされる水曜日のカンパネラの新作EP『トライアスロン』に楽曲を提供している。現在は活動停止中だがバンド、ウリチパン郡でもボーカルと作曲を担当。
『そらダン』PV
オオルタイチHP
http://www.okimirecords.com/
浅村朋伸(写真中)
1996年より滋賀県にて故・高橋俊夫氏に仏像彫刻、修復技法を学ぶ。3年間の基礎修行を終えた後、九州や大阪で彫刻の修行を経て2011年、奈良市にて独立。天台寺門宗 総本山三井寺 熊野社 本地仏(阿弥陀如来、薬師如来、千手観音菩薩)などを手がける。普段は仏像の製作、修理を行うが、Daedelus、Battlesら海外のミュージシャンからの依頼で作品を製作することも。仏師としての活動のほか、天台寺門宗 総本山三井寺が2012年より和歌山県、奈良県、大阪府に跨る日本最古の山岳修行ルートである「葛城二十八宿」の入峯修行を復興するにあたって、調査の依頼を受け、ルート設定と山伏の入峯修行の道案内を行っている。
浅村朋伸の世界一周自転車旅行記
http://www.shiga-miidera.or.jp/travel/index.html
五味岳久(写真右)
ロックバンドLOSTAGEのボーカル&ベース。地方発信/地域密着をモットーに、地元奈良を拠点に独自の活動を展開中。メジャー/インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交も深い。2011年、結成10年目の節目に自主レーベルTHROAT RECORDSを設立、ミニアルバム『CONTEXT』をリリース。2012年7月にはフルアルバム『ECHOES』を発表し、『FUJI ROCK FESTIVAL'12』に初出演も果たした。2014年、ニューアルバム『GUITAR』をリリース。4月18日(日)のRECORD STORE DAYに合わせ、シンガーソングライター長谷川健一とのスプリット7inchをリリース。
LOSTAGE HP
http://www.lostage.co/
五味岳久オフィシャルサイト
http://takahisagomi.com/
THROAT RECORDS
http://throatrecords.tumblr.com/
【オオルタイチ】
『Flower Of Life EP』
発売中
\1,800(税込)/OKIMI-015
<収録曲>
01.Flower Of Life
02.Flower Of Life? HAPPY JEEZUZ MIX
(Remixed by Dustin Wong)
03.Beauty Step / 5:09
04.Minor / 6:30
『Cosmic Coco, singing for a billion Imu's Hearty Pi』
発売中
\2,571(税込)/KBS-DDCO-1012
<収録曲>
01.Tiger Melt
02.Futurelina (Album version)
03.Shiny Foot Square Dance
04.Coco (feat. OLAibi)
05.Vofaguela
06.Sononi
07.Merry Ether Party
08.Venus
09.Linking Pi
10.Permanent Candy
11.Futurelina (EYE remix)
12.Futurelina (Daedelus remix)
【LOSTAGE】
長谷川健一×LOSTAGE
スプリット7インチ
4月18日(日)発売
\1,512(税込)/THR-009
長谷川健一「僕は今ここにいる」
LOSTAGE
『GUITAR』
発売中
\2,300(税込)/DDCZ-1968
<収録曲>
01. コンクリート / 記憶
02. Nowhere / どこでもない
03. いいこと / 離別
04. Guitar / アンテナ
05. 深夜放送 / Unknown
06. Flowers / 路傍の花
07. Boy / 交差点
08. Good Luck / 美しき敗北者達
【オオルタイチ】
『パラシュートセッション祭 2日目 昼
<オオルタイチ+ウタモ × 吉田ヨウヘイgroup>』
▼5月2日(土) 13:30
月見ル君想フ(東京)
前売-2800円 当日-3300円
(ドリンク代500円別途要)
[出演] オオルタイチ+ウタモ/吉田ヨウヘイgroup
[問] 月見ル君想フ
『オオルタイチ企画/
キセル ライヴ in なら/
~土からの音色 ぼくの合いの手~』
▼5月5日(火・祝)19:30
cafe polkadot(奈良)
[出演]キセル/五味岳久&五味拓人(from LOSTAGE)
[DJ]オオルタイチ
※SOLD OUT
[問] OKIMI RECORDS
Pコード:259-487
『キセル ライヴ in わかやま/~スパイラルスパイス お好みでご使用ください~』
▼5月6日(水・休) 19:30
バール・ヌメロ・オンセ(和歌山)
オールスタンディング-3000円(整理番号付)
[出演]キセル
[BGM]オオルタイチ
[問]バール・ヌメロ・オンセ
[TEL]073-425-1222
チケット情報はこちら
Pコード:781-398
『森、道、市場2015 ~モリハイヅコへ~』
▼5月8日(金)~10日(日)
ラグーナビーチ(大塚海浜緑地) (愛知)
8日前夜祭入場券-800円
9日入場券-1850円
10日入場券-1850円
9日・10日通し入場券-3500円
9日臨時駐車場券-1500円
10日臨時駐車場券-1500円
9日・10日通し臨時駐車場券-3000円
[出演]toe/JUN”JxJx”SAITO/
john*,Tim Scanlan,トシバウロン,野口明生+tricolor/スチャダラパー/ドレスコーズ/
□□□/tofubeats/青葉市子/奇妙礼太郎/
SIMI LAB/kz/オオルタイチ/Avec Avec/
tricolor/水中、それは苦しい/yojikとwanda/
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC/cero/
サニーデイ・サービス/Polaris/砂原良徳/
ハンバートハンバート/KIMONOS/
ジム・オルーク/group_inou/やけのはら/
ALTZ/HARCO/ザッハトルテ/タテタカコ/
T.V.not january/てあしくちびる/他
※出演者は、5/8(金)、9(土)、10(日)のいずれかに出演。
※最新情報・注意事項等は公式HP・ブログにてご確認ください。チケットを購入した時点で、注意事項すべての記載内容に同意したものとみなします。チケットは当日限り有効。開催時間=10:00~20:00。但し、5/8(金)は17:00~22:00。駐車場利用時間=8:00~22:00(22:00までに出庫)。但し、5/10(日)は8:00~21:00(21:00までに出庫)。チケットは、当日会場にてリストバンドと引換え。小学生以下は保護者同伴に限り無料。
[問]森、道、市場実行委員会
[TEL]080-4309-1245
※オオルタイチ出演は5/9(土)。オオルタイチソロセットおよび、別ブースにてアコースティックライヴも予定。
チケット情報はこちら
『ジスイズパラダイス』
▼6月6日(土)11:00
一言カフェ(静岡)
[出演]sugar me/オオルタイチ+ウタモ/
惑星のかぞえかた/ペガサス/
6birds barked in the park/steteko
[チケット取扱・問] 『ジスイズパラダイス』
【LOSTAGE】
Pコード:258-844
『Rainbow’s End 2015』
▼5月24日(日) 12:00
京都市円山公園音楽堂(京都)
前売-3800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[出演]向井秀徳アコースティック&エレクトリック/YeYe/五味岳久/Homecomings/LOVE LOVE LOVE/他
※雨天決行・荒天中止。
[問] KYOTO MUSE
[TEL]075-223-0389
※五味岳久による弾き語りソロ出演。
チケット情報はこちら
Pコード:259-607
『長谷川健一/LOSTAGE
7inch Release Live』
▼5月26日(火) 18:30
磔磔(京都)
自由-3000円(ドリンク代別途要)
[出演]LOSTAGE/長谷川健一BANDSET
[問]磔磔
[TEL]075-351-1321
チケット情報はこちら
▼6月12日(金)19:30
月見ル君想フ(東京)
前売-3000円 当日-3500円(ドリンク代別途要)
[出演]LOSTAGE/長谷川健一BANDSET
[問]月見ル君想フ
▼6月25日(木)
cafe&bar Legato(大阪)
[出演]五味岳久
[共演]前田ヨウセイ(RED SNEAKERS)
[問]cafe & bar Legato
時間、料金等、詳細はお問い合わせ先サイトでご確認ください。
『TAKAHISA GOMI ILLUSTRATION ○●』
▼5月1日(金)~17日(日) 12:00~24:00
digmeoutART&DINER
無料
[問]06-6213-1007
「奈良にずっと住んで、自分の生活と昔の人の生活を重ね
合わせたことなかった。でも、意識を変えると近くなる」(五味)
五味
スケールが何千年とかなったりすると、残ったりするじゃないですか。今までそんなこと考えたこともなかったです。音楽ってどうなんですかね、残るんですかね。何千年とか。
タイチ
そうですね。音楽自体はなくならへんと思うけど。はっきりとは残らないような気はします。
五味
自分が作ったものが千年後に誰かに聴かれてるとか、考えたこともなかった。
浅村
仏像も、僕が彫ったけど、5年後に火事でなくなりましたとか、そういう可能性もあることですから、必ず200年後、300年後、500年後、千年後に残るかどうかっていうのは、これは誰も断言できないです。けど、彫り手としてはそれを前提に彫るということです。100年後になくなってるからいいやとかじゃなくて、やっぱり千年以上、信仰の対象になるものだからっていう気持ちで取り組むというか。
五味
それ、めちゃくちゃ大事なことなんですけど、僕はあんまり考えたことがなかったです。もしかしたら自分の音楽を100年後の人も聴く可能性があるじゃないですか。記録媒体もあるし。それ、すごいなと思いましたね。
浅村
僕が奈良ですごく感じるのは、千年以上前の人の生活を想像しやすいんです、奈良って。千数百年前の建築物が建ってたりとか、ここで確実に人が生活してたんだなっていう痕跡がいたるところで感じられる。その時代にも多分、音楽って絶対あったと思うんです。それが日本の中でどういうふうに伝承されたかは、ある程度変遷はあったと思うんですけど、何かしらの基本的な部分って伝わってきてると思うんです。千年以上伝わってきているから、今の人間が作るものもまた千年以上残ると考えて音楽を作ることは普通のことだと思います。僕はどっちかっていうと、千年という括りよりも、もっと。1万年ぐらい前でも。信仰にしても、音楽にしても、食事にしても、そこで生活していた人がいた以上、あったことなので、そこの源流を探って、意識して取り組んでいった方が未来に対しても想像しやすいというか。過去に思いを馳せるというのは、今度自分から向こう千年、2千年、1万年ということですね、僕の中では。
五味
前、浅村さんと飲みに行ったんですけど、その時に今みたいな話をしていて、“この人、すごい昔の話をめっちゃするなぁ”と思って聞いてたんです(笑)。僕、どっちかっていうと、今よければいい、今楽しくしたい、今の奈良を、今の文化で、今いる僕の周りのヤツらが楽しくなるように、今を面白くしようという感じの考え方でやってきたんですけど、“この人、昔の話ばっかりするなぁ”っていうのは、別に後ろ向きというわけじゃなくて、面白いなと思って聞いてたんです。その時はあんまり感じなかったんですけど、今、自分が音楽を作るという面で千年後のこととか考えたこともなかったし、そういうものを彫ってるんやなぁって考えたら、すごい生産的な気がしてきたというか。前は、前向きな感じの話じゃないんかなって思って聞いてたんです。ただ見ているポイントがすごい先やっていうだけのことで。今ちょっと、ハッとしたというか。
浅村
小学校でも歴史を習うじゃないですか。誰でも思うと思うんですけど、“何でそんな何の役にも立たんことを勉強するんや”って。小学校の担任の先生が、なぜ歴史を勉強するのか教えてくれて。それは、“今、何をするか知るために勉強するんだ”って言ってたんです。
五味
めちゃいい先生ですね。そんなん言われたことない。
浅村
最初は、ん?と思って腑に落ちなかったんですけど、やっぱり人間の一生にしても、国という単位、世界という単位で考えても、過去を学ばないとこれからどこを目指して進んでいけばいいのか分かりにくいなって思い始めて。それで、小学校の先生の言葉もあって歴史も関心を持つようになったんです。
五味
音楽で歴史のこと考えたことあります?
タイチ
ないですね(笑)。ただ、音楽にとってのリアルなものを考えたりしたら、昔のものに意識がいったりするし、そういう意味でも自分が音楽をやる以上は本質的なものをしたいなっていう意識があるので。過去のことを考えて、それがさらに自分が今からやっていくこと、未来のことに反映されるので。
五味
今までそう考えてやったことありました?
タイチ
ありましたね。やっぱ感銘を受けます。最近、特に感銘を受けるものがそういった受け継がれてきたものというか。ただ単に古いものとしては聴かなくて。
五味
俺、初めて思いました。まったく考えたことなかった。
浅村
僕もね、仏像が新しいと思い始めたのは、奈良に来て、遺跡とか、古墳とか見て回ったからなんです。回っていて、あれ?ってなったんですよ。仏像ははっきりと、いつ作ったとか資料もある。資料のあるものは全部新しい。古墳時代とか、それ以前は何も分からない。想像でしか分からないじゃないですか。その時代ってどうだったんだろう、こんな感じだったんかなとか、いろんなことを考えるんですけど、仏教が入ってきた時代はある程度、説明が残っているんですよ。だから新しいって感じるようになったんです。奈良であちこち行って、そんな感覚になったんです。
タイチ
奈良ってそういう視点になってしまいますよね。
浅村
なりますね。当然、新潟の方の縄文土器とか、日本のあちこちにそういうものはありますけど、僕、東北とか新潟とか、しょっちゅういけないので、関西では奈良をうろうろする。でも、奈良の古墳とかは縄文時代に比べると当然、新しいんです。
五味
古墳も新しい(笑)。
浅村
1700年前とか、それってすごい最近ですよね。物もきちんと残ってるし。
五味
もっと前がある。
浅村
人が生活してたのは1万年前とか。それこそ、この間もタイチさんと一緒に木津の方に行って、そこで“2万年くらい前のこれがどうで”とか説明受けてたんです。それから考えたら古墳とか新しいですよね。
タイチ
そうですね、新しいですね。
浅村
古いって書いてるけど、やっぱり新しいんじゃないの?って。
五味
そのスケール感が新鮮です。流行ってあるじゃないですか。そういうのって、ちっさいな~って今、思いましたね(笑)。音楽も、時代の音、大きい括りでロックとか、ジャズとかあるじゃないですか。なんかそれも小さいなーって(笑)。
浅村
小さいとかじゃなくて、例えば、インターネットで五味さんが東京の人とずっとやりとしていたら、そんなにその人と距離を感じないと思うんですよ。海外にいる友達とも毎日SNSとかでやり取りしていたら、距離感って全然、感じないと思うんです。でも、小学校のときのクラスメイトで、もう、20年ぐらい会ってなかったら距離感がすごいあると思うんです。それは実際の時間的なスパンとかじゃなくて。
五味
もっと感覚的な。
浅村
どれだけ身近に頭の中にそれがいつもあるか…。
五味
それが長くあると入って来やすい。
浅村
そうですね。
五味
あー。現場感がある。
浅村
そうです。だから、ここに引っ越してきたのも、東大寺とか興福寺とか、天平時代のお寺とかも、奈良だとすぐパッと行ける。身近に感じられて、時間的な遠さをまったく感じないんですよね。
五味
あー…! すごい分かりました。
浅村
当然、今は天平時代じゃないですけど、ある程度近く生活できるというか。
五味
それ、すごい分かりやすかったですね。
タイチ
浅村さんと会って話してると、時間の感覚が変わりましたね。僕の生まれた町は、唐古・鍵遺跡(からこ・かぎいせき)とか近くで、今でも“なんだかなぁ”って気分になることもあるんです。けど、唐古・鍵遺跡とかめっちゃ身近に感じてきて、その昔、ここも大きな集落として栄えていたと思うと“いいやん”みたいな(笑)。
浅村
唐古・鍵遺跡、すっごいいいですよ! すっごいいい! めちゃくちゃいいですよ。あそこで楼閣の屋根が描かれている土器の破片が出てきたときの新聞記事を見たとき、その時僕、20歳ちょっとだったんですけど、衝撃を受けました。
五味
その新聞記事を見て。
浅村
はい。で、復元されてますけどね。
五味
あ! あれですか!
浅村
そうです。
五味
あー、あれ復元されたやつなんですね。あんなん“何やねんこれ”って感じやった(笑)。
タイチ
そうなりますよね(笑)。
浅村
あれ見たら、すっごい気分が高揚しますね。あそこの資料館があるんですけど、そこの柱がどういうふうに並んでたとか分かるんです。その使われていた柱は滋賀県の田上山から持ってきてて。で、“ああ、そうか、そうか、そういう時代にあっちの方の遠くから持ってきてたんだな”と。奈良時代に東大寺が作られたときも、やっぱりそこから木を持ってきてて。“あ、なんだ、奈良時代も、それ以前も、材料の調達とかそんなに変わってなかったんだな”と。木津川とかに流してたんでしょうけど。
五味
川を使って。
浅村
はい。なんかすごい身近に感じられるんですよね、その時代が。
五味
それが新鮮な感じなんですよね。僕、奈良にずっと住んでて、今の自分の生活と昔の人の生活を重ね合わせたことなかったから。そういう意識を変えると近くなる。
浅村
奈良はめちゃくちゃ面白いですよ、ほんとに。道を走ってたら、そういう案内板とか、看板がいたるところに出てくるじゃないですか。
五味
寺とか、遺跡とか。
浅村
はい。何ていうか、つい寄ってみたくなって目的地にたどり着けない。
タイチ
分かります(笑)。目的地に行くまでに、気になる場所がたくさんありすぎて“ここ行ったらよさそう”とかなりますね。
浅村
前も言いましたけど、僕にとってはほんとに、奈良ってディズニーランドなんですよ。
五味
名言出た!(笑)
タイチ
奈良ドリームランド(笑)。
五味
アトラクションがあんまりない。
浅村
パビリオンがある。
五味
それ、浅村さんだけじゃないですか(笑)。
浅村
いやいやいや、結構いますよ。正倉院展とかすっごい人が来るじゃないですか。
五味
ああ、あれ、すごいですね。
浅村
あれはあり得ないですよ。本当は奈良に住みたいって人、結構いると思うんです。あのね…口には出さないですけど、サイレントマジョリティが結構いますよ。
五味
意識を変えるとそういうふうに思えるんやって、面白かったです。
浅村
多分、単純なことで、遺跡とかにパーンといったら、視点とか、見方とか、簡単に変わると思いますよ。
五味
そういう感覚になれますかね?
浅村
古墳とか行って石室とか見たとき、“重たかったんやろうな”って普通に想像できるじゃないですか。“何人ぐらいで引いて来たんやろう”とか、“何日くらいかけて運んできたんやろう”とか、目の前に物があったら自然と想像してしまう。そんなに距離を感じないですよね。昔の人やからめちゃくちゃ力があったとかはないと思うんです。今の人とそこまで変わらないと思います。しんどいときはしんどいやろうし。
五味
なるほど…。今度行ってみます。
浅村
一緒に行きましょうよ。
五味
行きます! 前も誘ってもらってたんですけど、店やってたんで。ちょいちょいみんなで行ってるみたいですね。資料館に行ったり。
浅村
古墳に行ったり。
タイチ
そういう遊び方は今までしたことがなくて。
浅村
こないだ行った古墳もね、すごかったですよね。
タイチ
すごかったですよ。古墳なんですけど、線路でぶつ切りにされてて。
五味
作るためにガっていかれたんですか?
浅村
線路作ったときは古墳って分からなくて。で、バーって古墳の間に線路を通して、のり面が崩れて補修をした時に石室が出てきて、“あれ、これ古墳やった”って。線路を作ったのは明治時代とかで、その時はそれが前方後円墳だとはまったく気づかなかったらしいです。
五味
そういうとこ行ってるんですね、一緒に。ついていけるかな(笑)。いると分からないこともあって。ずっといると。
タイチ
五味さんみたいに、今の奈良と真正面からやっている感じって、それはめっちゃ尊敬します。そういう向き合い方ってなかなか…。
五味
結構いっぱいいっぱいなんですよ、今で(笑)。
タイチ
いや、難しいと思います。
五味
昔のことを考えると息が上がる(笑)。でも、行きたいですね。
浅村
昔って思うからちょっと…。昨日、今日くらいに思ったら。
五味
そんな感覚にはいきなり…(笑)。でも、今日は僕になかった価値観が。あの古墳、どうやって作ったんやとか、そんなこと考えたことなかった。
浅村
五味さん、桜井ですよね、出身。ホケノ山古墳って分かります?
五味
いや、分からないです。
浅村
箸墓古墳(はしはかこふん)は?
五味
あ、名前は。
浅村
箸墓古墳のすぐ近くに3世紀のホケノ山古墳ってあるんですけど、6世紀に再利用されていて、その時に石棺の石とか、二上山から運んできてるんですよ。
五味
どうやって運んできたんですか。
浅村
多分、修羅に乗せて、丸太の上を転がして運んできてると思うんですけど、そういうのを知ったら、じゃあなんで二上山から運んできたのか、何人くらいで運んできたのかとか、いろんなことを想像しないですか…?
タイチ
その想像、めっちゃ基本的なんですけど、なかなか…。そこでね、楽しみを見出すのが難しい。
浅村
二上山って信仰の対象やったんですよ。三輪山とかは今でも信仰の対象になってるんですけど、二上山はそういうふうな捉え方はしない。でも、古墳時代とか、奈良時代でもそうですね、万葉集でも歌に詠まれています。そういうふうにして山を見たら、“あ、この山を古墳時代の人、飛鳥時代の人は、こういうふうな気持ちで見てたのかな”とか。自分が住んでるところが違った感じに見えると思うんです。
五味
それがなかなか難しいんですよ。リセットできない。小学校の歴史でも自分が住んでるところのことが書いてあるんですよ。言うたら、教科書とかのせいで余計に隔離された感じがするんですよ。自分が住んでるところのことが書いてあるけど、学校で習うことっていう感覚が先に刷り込まれるから、“いいや、分からへん”って。多分、歴史が好きじゃないんですよ。
浅村
教科書に書いてあることもありますけど、書いてないことの方が多いですからね、歴史って。
五味
苦手意識があるんですよね。でも、今の話聞いて、なるほどなって思いました。まあ、歴史やと思わんことですね。
浅村
僕らが習う歴史なんて、これからバンバン変わっていきますからね。分かっていることだけを載せているのであって、今、五味さんの実家の下から何か見つかったら、そこで歴史の教科書は変わりますから。
五味
どっちかっていうと、手の届く範囲、自分の身近なところでやりたいっていう。それが音楽だったり、今の店だったり、普段の活動とかもそうですね。まずは身の回りから。
タイチ
理由はどうであれ、自分の身の回りや自分の地元にちゃんと意識を置くっていうのは、これからすごい大事やなと思います。ちょっと変な話をしますけど、土地が持ってるパワーってあると思うんです、僕。奈良はそれが強いし、そういう土地からのパワーって人に入っていくと思うんですよね。この間も宮古島に行ってそれを感じたんです。宮古島は人が住まわしてもらっているっていう感じがすごいあって、その土地からめちゃパワーをもらってはる感じがあって。奈良もそれに近いものがあるなぁと思って。
五味
スケールがでかすぎて、まだついていけてないですけど、すっごい大きい括りでの現場感とか、少なからず影響を受けてるのかもなって思いました。行かないと分からないですね。いる場所、その町とか、土地の風景、エネルギーとかっていうのは、そこにいる人に宿るというか、人がいてそこに何かが宿る。それが町とか、人のエネルギーだったり、場所のエネルギーだったり。
タイチ
五味さんはやっぱり人ですね。
五味
そうですね、まず人ですね。でも、行ってみないと分からない。昔の空気感を現場で感じて、千年前はそんなに昔じゃないんだって、そこに行かないと分からないですよね。話を聞いて、今までそんな感覚になったことはないですけど、浅村さんが言っている感じもすごい分かるし。結局、僕が店でやろうとしていることと変わらないというか、店に来てもらって話をしたり、現場で音楽を聴いてもらったりすることと同じというか。遺跡に行って昔の人のことを感じる、仏像を見て作った人がどう思ってたとか、どういう時代背景やったとか、肌で感じることは一緒。尺度が違うだけで。なんか、そういう感じがしました。お二人の話を聞けてよかったです。あとは、僕も行ってみる。現場に行ってみる。
タイチ
桜井出身とか、めちゃ熱いですよ。
浅村
めっちゃ熱い。そこらじゅうで勝手に掘りたくなる。
タイチ
怒られる(笑)。
五味
僕もそうですが、これをきっかけに、いろんな切り口で奈良に興味を持ってもらいたいです。
取材:五味岳久(LOSTAGE)
撮影:河上良(bit Direction lab.)
企画:高橋はじむ
企画・構成:岩本和子
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