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土井コマキのシネマライフ


今回紹介するのは…
『ヴァンパイア』

ヴァンパイア
VAMPIRE (c)2011 Rockwell Eyes, Inc. All Rights Reserved.

『花とアリス』の岩井俊二が
監督・脚本などひとり6役を
務めた8年ぶりの最新作

【あらすじ】

『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』など、“美”にこだわり続ける独自の映像美学で人気を博す岩井俊二監督が、カナダを舞台に全編英語で8年ぶりに撮りあげた最新作。血を飲みたい欲求を抑えられない高校教師・サイモンと自殺志願の少女たちの不思議な関係性とピュアな恋物語が描かれる。一見すると仕事熱心で、認知症を患う母を介護する真面目な高校教師のサイモン。しかし、彼は若い女性の血を飲みたい欲求を抑えきれずにいた。そして、サイモンは自殺サイトを介して、自殺を志願する少女たちを誘い出し、何とか血を手に入れようとするのだが…。主人公のサイモンを『トランスアメリカ』のケヴィン・セガーズが瑞々しく演じるほか、蒼井優や『シーズ・オール・ザット』のレイチェル・リー・クックら若手の注目俳優が多数出演していることも話題となっている。

【Movie Data】

●梅田ガーデンシネマにて上映中

公式サイト
http://vampire-web.com/jp/index.html

Event Information

岩井俊二監督来場トークショー開催!

日時:9月22日(土) 15:00の回上映後
会場:梅田ガーデンシネマ
MC:ミルクマン斉藤
※詳細は劇場HPをご確認ください。

 

「土井コマキのシネマライフ」一覧

コマキ's レビュー

自殺志願の少女たちに贈る
孤独な者から孤独な者への最後の贈り物

この映画のチラシに写っているどの登場人物の顔も辛そうなのが気になっていました。でも、これは恐怖の表情ではなさそう。映画を観て分かりましたが、彼女たちの表情は、寂しさから生じた苦しみから解放される時の表情なのでした。主人公のサイモンは自殺サイトで出会った女性たちを標的にして、一緒に死のうと誘います。死にたい女性たちから血液を頂こうという考えなのです。女性たちも、眠ったように安らかに亡くなっていきます。きっと、死ぬ直前にサイモンと出会い、抱えていた思いを聞いてもらったことで、打ち明けられる仲間が出来たという小さな幸福を感じるから、穏やかな表情をしているのかもしれません。私は、この主人公が恋をしたら、どんな変化が起きるんだろうと考えてしまいました。この映画のサイモンは、とことんヴァンパイアのお約束が当てはまらないんです。血液はボトルから直接飲むし、亡くなった女性を綺麗に安らかな表情のまま冷凍保存しています。きっと、孤独な者から孤独な者への最後の贈り物なんだと思います。静かに心を配りあう相手がいるというのは、なんて美しいことなんだろうと思わずにいられない映画でした。


 

コマキは見た! その①

家具が少なくてこざっぱりとしていて、でも無機質ではなく実は居心地よさそうなのがサイモンの家。現代のヴァンパイアのイメージに合う感じ。母親の衣服や、母親の部屋の壁紙も、ちょっと懐古趣味的な感じで、それがまた岩井俊二的ロマンチシズムかしら、なんて。

コマキは見た! その②

岩井俊二のミューズ・蒼井優をはじめ、出てくる女性が全員魅力的。特に、レディバードの優しい表情と殺してもらう時に選んだ服が素敵。大きくあいたラウンドカラーとシックな色。満ち足りた表情で横たわる姿は、現代の白雪姫みたい。岩井俊二は本当に女性を綺麗に撮りますね。

 

コマキ's select 『ヴァンパイア』に捧げる“5 Songs”


映画を観て、選びに選び抜いたコマキ的
『ヴァンパイア』に捧げる5曲を発表!

①Dustin O'Hallaran「All Things Must Fall」

②阿部芙蓉美「希望のうた」

③森ゆに「夜をくぐる」

④石橋英子×アチコ「サマードレス」

⑤中納良恵「夢」

とても静かで緊張感のあるオープニングでした。個人的にこんな始まり方の映画は久しぶりだったので、音が欲しくて。ピアノの穏やかなメロディが聴こえてきたらいいな~と思っていたら
ビンゴ! そんなわけで、静かで悲しく美しい映画に合いそうなピアノものを。
①はアメリカ人ピアニスト。映画を観ているかのようなピアノの楽曲。
②「無音の状態」が聴こえる悲しいのに温もりを感じるような、すごい曲。動けなくなる。
③冷たい夜の空気に似合う凛とした清潔感のある曲。
④奇才女子2人組。クラシックと先鋭的なところが絶妙に融合。
⑤パワフルなエゴラッピンよっちゃんのソロ。抑えめなボーカルが余計に情熱的。消える直前の命の灯火のよう。

 

次回更新は10月5日(金)予定!


(9月21日更新)


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