ホーム > NEWS > 「映画『クーキー』を観に行ったら、 『マッドマックス 怒りのデスロード』 みたいだったw」という噂を検証!
1996年、『コーリャ 愛のプラハ』でアカデミー外国語映画賞に輝いたヤン・スヴェラーク監督が、チェコ伝統の操り人形の技法を駆使して完成させたパペット・ムービー『クーキー』が、9月12日(土)よりシネ・リーブル梅田、9月26日(土)よりシネ・リーブル神戸、順次 京都シネマにて公開される。ゴミとともに捨てられてしまった熊の人形クーキーが、持ち主だった少年のもとに帰ろうと大冒険を繰り広げる。クーキーの奇妙で愛らしいビジュアルに思わず目を奪われる1作だ。そこで、3名の方に本作の魅力を語ってもらった。
ゴミとして捨てられたピンクのぬいぐるみクーキーが、持ち主の少年が住む、ホーム(家)を目指す冒険をチェコの伝統芸でもあるマリオネット(操り人形)技術と操作師を起用して、CGを極力使わず、ほぼ実際に森の中で撮影された実写映画『クーキー』。
可愛いいだけをウリにした、おしゃれ映画だろうなと実は思っていたのですが、「『クーキー』を観に行ったら、『マッドマックス 怒りのデスロード』みたいだったw」との噂が(笑)。
確かに、『デスロード』のように、劇中で何度も展開される、臨場感のあるカーチェイスは、主人公たちの乗る4輪駆動モーターの小型模型車と、彼らを追う悪役たちの乗る強力なエンジンを搭載した大型模型車を 実際に走らせて撮影されており、アクシデントで大型エンジン車に轢かれた小型モーター車がペシャンコに大破する勢いで、『デスロード』と同じく、実際に目の前で起きた「リアル・アクション」が撮影されている。
ロケ先の気候や環境の変動で製作期間が延びてしまった『デスロード』と同じく、本作も35日の撮影予定が、案外無かった「完璧な森の画」の為に100日も延びてしまい、スタッフはチェコ中の森にセットを組んだり、移動しながらの撮影が大変だったのだとか。
『デスロード』で主人公達が遭遇する部族「ヤマアラシ族」や「イワオニ族」のように、本作にも沢山の生きた動物たちが、ホームへの道中に出現する。CGも使われていたようですが、生きた動物と操り人形のあまりにも自然すぎる競演は、どこか夢の世界のような本作が持つ、非日常的な現実感を増幅させている。
このように、主人公が様々な出合いや出来事を経験しホームを目指す物語や、極悪な悪役たちとの迫力のカーチェイスだけでなく、「リアル・アクション」にこだわって制作された作品としても、不思議な共通点があるこの2作品。自然の中にある葉の間から指す光りや、空気中を漂うタンポポの綿毛を昆虫の視点でリアルに描きたい、という発想で制作された『クーキー』は、病弱な少年のどこか不気味で生暖かい悪夢を感じさせる独特な世界観と、脚本は監督の父親が担当し、主人公とクーキーの声は監督の息子さんが演じるという、血族にこだわった制作スタイルも興味深く、独特な『デスロード』に仕上がっていた。
蛇足ですが、 コミック作家を招き、各シーンを実際に描いたストーリーボードを多数制作して、作品の世界観やストーリーが構築されていった『デスロード』、『クーキー』もチェコのゲームクリエーター兼デザインチーム「アマニタ・デザイン」が、登場する全キャラクターをデザインしており、『デスロード』と同様に、同チームによる世界観を掘り下げた、コミックブックも発売されているよう(こちら)。
「ちょっと変な」という意味がある『クーキー』と、「超狂気」な『マッドマックス』、タイトルの意味からしても何となく同族な両作、ぜひ観比べてみて下さい。
UE神
うえしん●ロフトプラスワンWESTにて、映画イベントV-ZONEを主催。ロックバンド The SWAGでVO&Gを担当し、DJ EENNとしてDJ活動、クラブイベントや映画館での特殊上映会もオーガナイズ。大回転中です。
『クーキー』レビュー①堤千津恵さん
大切にされたモノは、その表情も深い クーキーも角度によって様々な表情をみせる そんなところにも、人形愛が伝わってくる
『クーキー』レビュー③キングジョーさん
ビスケットかと思って口に入れたら、チーズ鱈だったような、大人にも突き刺さる作品
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(2015年9月10日更新)
●9月12日(土)よりシネ・リーブル梅田、
9月26日(土)よりシネ・リーブル神戸、
順次 京都シネマにて公開
監督・脚本・製作:ヤン・スヴェラーク
(『コーリャ 愛のプラハ』『ダーク・ブルー』)
撮影:ブラディミル・スマトニー
グラフィック・アーティスト:ヤクブ・ドヴォルスキー
音楽:マイケル・ノビンスキー
キャラクター・デザイン:アマニタ・デザイン
主演:オンジェイ・スヴェラーク
2010/チェコ/原題:KUKY SE VRACI/95分
【公式サイト】
http://kooky-movie.com/
【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/167613/